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第1章
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しおりを挟む今現在,相沢ではなくそうあの学校一のイケメンの相沢ではなく僕が女性に追いかけられている。
残り数分の昼休み,急遽始まった泥警を二人で行っている…
そんな僕らを相沢はケラケラ笑いながら「陽葵やっぱ最高」とか言いながら見ていた。
絶対こいつの悪評を世に送り込んでやる。男子生徒はというとあの後「お幸せに」とだけ彼女に告げ潔く教室に戻ってしまった。
おい少年よ,ガンガン行くんじゃなかったのかよ。
必死に走りながら考える―そういえば一体いつから彼女は気づいていたのだろう?
確かに僕らは距離があるとはいえ告白の現場から完全に隠れた位置取りをしているとはいえなかった。現場を見るため,そして会話を聞くためにはどうしても顔だけでも部室棟の陰から出すような形になるが,気付かれているようなそんな素振りなんて…
僕は部室棟の前の坂を上り切った先のグラウンドで逃げながら分析していた。
「はぁはぁ」
部活をやめて早半年。こんなに早くガタが来るとはな。
「こらぁ。なんで逃げるのー」
そりゃ泥警ですから。まあ泥棒ではなく覗き犯だが…,どちらにせよ犯罪者ではある。しかし息も上がって質問に答えられそうにないし,回答も見つからない。
彼女はいうと,まだまだ余力たっぷりで僕を追いかけて来る。
もう昼休みも残りわずか。グラウンドまで様子を見に来ていた相沢はもう姿が見当たらない。許すまじ。
「ムカついた。本気出す」
そういった彼女はあっという間に僕との十メートルほどの距離を縮め。
「逮捕ー」
ついに捕まえられた。そんな僕を他所に彼女は百メートル走で有名なメダリストが行うゴール後のパフォーマンスを物真似している。足の速さには自信があったのだが彼女の本気は計り知れない。
汗粒一つかかず,息切れ一つしていない。そんなスプリンターが鬼の形相で僕に問う。
「久しぶり陽葵。なーんで可愛い可愛い幼馴染の柚葉ちゃんから逃げたのかなー?」
まさかこんな再開の仕方になるとは思いもしなかった。
入学式以来か…, この学園に入学するなんて聞いてもいなかった。
それで彼女は自分で可愛いとか言ってる。しかし表情が怖い。
ともあれ弁解しなければ責任の一端は少なからず僕にある。
「はぁはぁ。いや相ざ―,いや友達がどうしてもっておっしゃるもんでですね」
キーンコーンカーンコーン。
その時,ほんとにいいタイミングで五限目の始まりを告げるチャイムが鳴ってくれた。授業の始まりを告げるチャイムはいつも憂鬱になるが,今日ばかりは教会に木霊する鐘の音色のように聞こえた。
「あっ。授業始まっちゃった。…この続きは放課後にね。駅前の『喫茶ニュートン』でね」
「おまっ…柚葉。勝手に決めるな」
なぜ、僕の行きつけの喫茶店を知っている。
ともあれだ,とても厄介なことになってしまった。
授業の遅刻などもはやどうでもいい。
僕の平穏な学園生活は歯車をガタガタと,そしてギシギシと軋むような音をたてて崩れていく気がした。
もとは相沢が言い出したんだが,誘いに乗ってしまった僕ももちろん悪い。
いうならばこの再会は意図せず仕組んでしまった…
そう―マッチポンプ。
そしてこの再会は僕と幼馴染の柚葉との物語の一端に過ぎない。
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