幼馴染とマッチポンプ

西 天

文字の大きさ
4 / 20
第1章

4

しおりを挟む
 
 今現在,相沢ではなくそうあの学校一のイケメンの相沢ではなく僕が女性に追いかけられている。
 残り数分の昼休み,急遽始まった泥警を二人で行っている…
 
 そんな僕らを相沢はケラケラ笑いながら「陽葵やっぱ最高」とか言いながら見ていた。
 絶対こいつの悪評を世に送り込んでやる。男子生徒はというとあの後「お幸せに」とだけ彼女に告げ潔く教室に戻ってしまった。
 おい少年よ,ガンガン行くんじゃなかったのかよ。

 必死に走りながら考える―そういえば一体いつから彼女は気づいていたのだろう? 
 確かに僕らは距離があるとはいえ告白の現場から完全に隠れた位置取りをしているとはいえなかった。現場を見るため,そして会話を聞くためにはどうしても顔だけでも部室棟の陰から出すような形になるが,気付かれているようなそんな素振りなんて…
 
 僕は部室棟の前の坂を上り切った先のグラウンドで逃げながら分析していた。
「はぁはぁ」
 部活をやめて早半年。こんなに早くガタが来るとはな。
「こらぁ。なんで逃げるのー」
 そりゃ泥警ですから。まあ泥棒ではなく覗き犯だが…,どちらにせよ犯罪者ではある。しかし息も上がって質問に答えられそうにないし,回答も見つからない。
 彼女はいうと,まだまだ余力たっぷりで僕を追いかけて来る。
 もう昼休みも残りわずか。グラウンドまで様子を見に来ていた相沢はもう姿が見当たらない。許すまじ。

「ムカついた。本気出す」
 そういった彼女はあっという間に僕との十メートルほどの距離を縮め。
「逮捕ー」 
 ついに捕まえられた。そんな僕を他所に彼女は百メートル走で有名なメダリストが行うゴール後のパフォーマンスを物真似している。足の速さには自信があったのだが彼女の本気は計り知れない。
 汗粒一つかかず,息切れ一つしていない。そんなスプリンターが鬼の形相で僕に問う。

「久しぶり陽葵。なーんで可愛い可愛い幼馴染の柚葉ちゃんから逃げたのかなー?」
 
 まさかこんな再開の仕方になるとは思いもしなかった。 
 入学式以来か…, この学園に入学するなんて聞いてもいなかった。
 
 それで彼女は自分で可愛いとか言ってる。しかし表情が怖い。
 ともあれ弁解しなければ責任の一端は少なからず僕にある。
「はぁはぁ。いや相ざ―,いや友達がどうしてもっておっしゃるもんでですね」
 キーンコーンカーンコーン。
 その時,ほんとにいいタイミングで五限目の始まりを告げるチャイムが鳴ってくれた。授業の始まりを告げるチャイムはいつも憂鬱になるが,今日ばかりは教会に木霊する鐘の音色のように聞こえた。
「あっ。授業始まっちゃった。…この続きは放課後にね。駅前の『喫茶ニュートン』でね」  
「おまっ…柚葉。勝手に決めるな」
 なぜ、僕の行きつけの喫茶店を知っている。
 
 ともあれだ,とても厄介なことになってしまった。
 授業の遅刻などもはやどうでもいい。
 僕の平穏な学園生活は歯車をガタガタと,そしてギシギシと軋むような音をたてて崩れていく気がした。
 もとは相沢が言い出したんだが,誘いに乗ってしまった僕ももちろん悪い。
 いうならばこの再会は意図せず仕組んでしまった…
 そう―マッチポンプ。
 そしてこの再会は僕と幼馴染の柚葉との物語の一端に過ぎない。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

俺の可愛い幼馴染

SHIN
恋愛
俺に微笑みかける少女の後ろで、泣きそうな顔でこちらを見ているのは、可愛い可愛い幼馴染。 ある日二人だけの秘密の場所で彼女に告げられたのは……。 連載の気分転換に執筆しているので鈍いです。おおらかな気分で読んでくれると嬉しいです。 感想もご自由にどうぞ。 ただし、作者は木綿豆腐メンタルです。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

疎遠だった幼馴染が彼女と別れて私に会いに来るようになったのだけど

くじら
恋愛
図書館の定位置には、いつも黒縁メガネの女生徒がいる。 貴族同士の見栄の張り合いや出世争いから距離を置いて穏やかに過ごしていたのに、女生徒の幼馴染が絡んでくるようになって…。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...