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第2章
馴れ初め
しおりを挟む僕の幼馴染―井口柚葉。
僕と彼女は僕が小学校一年生の夏休みに出会った。
彼女の父親の仕事の都合により僕の家の隣に引っ越して来た。そして彼女はまだ幼稚園児ながらどこか日本人離れした雰囲気を醸し出していた。彼女が小学校に入る頃に知ったが彼女の母方の祖母がロシア人だったらしく彼女は日本とロシアのクオーターなのだ。その話を彼女の母から聞いたとき腑に落ちたという感情を初めて知った気がした。
柚葉は初め,僕の妹二人と仲良くなり遊んでいたのだが…,
夏休み最後の日。
彼女と妹たちがいつものように妹の部屋で遊んでいたときのこと彼女が急に僕の部屋のドアを開け。
「―陽葵くん?」
言葉を交わすことは何度かあったが,それはお互いに所謂クローズドクエスチョンで「はい」「いいえ」の返事を返すだけのことだった。
お互い名前を呼ぶことなんか一度もなかったので僕は少しだけドキッとしたのを覚えている。
「一花ちゃんと二葉ちゃん寝ちゃったから帰るね」
客人を招いておいて寝るとは,よくできたシスターズだ。
いつものように「うん」とだけ返す。そしてバイバイと言おうとしたが…,
「今度は陽葵くんも一緒に遊ぼ。―それと陽葵くんも名前で呼んでねっ」
彼女は満足気な顔をしていたのを覚えている。今にして思えば柚葉は幼稚園児の頃からませていた。
それからは僕が小学校を卒業するまで放課後は毎日のようによく遊んだし,家族ぐるみで一緒に旅行にも行ったりした。時間が経つにつれ,妹たちと過ごす時間より僕と過ごす時間の方が多くなっていた。僕が小三になった頃にはお互いくん付けやちゃん付けはしなくなり呼び捨てで呼び合うようになっていた。
しかしというかやはり,中学生にもなると男子は思春期を迎えるもの。
僕は彼女が同じ中学校にあがってきた頃にあまり遊ばなくなり距離をとるようになっていた。
みんなからかわれるのを恐れてと何より幼馴染とはいえ異性と一緒にいるのが恥ずかしかった。
しかし彼女は一方的に僕に話しかけてくれたし,僕が野球部の部活が終わるのをいつも待っていてくれた。まあそのおかげで結局,何度も同級生にからかわれたわけだけど。僕はそれをどこかで楽しみにしていたのかもしれない。
三年生になった頃には彼女といることに恥ずかしさなんて感じていなかった。僕を彼女はいつもからかうというのが日常だった。
しかしそれは起こった…
―暑い夏の日。また夏休みだったのを覚えている。
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