要らねえチート物語

汐乃タツヤ

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第三章

第28話 聖也厄介事を背負い込む

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 俺のグループからは3人が勝ち抜けした。
 向こうのグループは一樹かずきを含めて2人が勝ち抜き、残された枠は後2つ。
 
「あいこでしょっ!! あいこでしょっ!!!!」
 
 あいこが続くたびに、俺は必死さが増して自然と声がでかくなっていく。
 
「よっしゃああああっ!!」

 ついに俺は魂のチョキで勝ち抜けし、ドッジボールの参加枠をもぎ取った!!

「やったな、聖也まさや
「サ、サンキュー、一樹かずき。ジャンケンをしただけなのに何かやたらと疲れた……」
 
 ……こんな真剣にジャンケンをしたのは生まれて初めてだ。
 危なかったけど、これで仮病を使わないで済む。
 一樹かずきと一緒になって喜んでいると……。
 
「うおーー!! やったああぁぁ!! やったぞおおぉぉ!!!!」
 
 後ろから凄い叫び声が聞こえてくる。
 驚いて振り返ると、クラス一の巨漢である沢村が、ドッジボールの最後の枠を勝ち取って歓喜している。
 
「なんだ、沢村もジャンケンに勝ったのか」
「だな。それにしてもアイツあんなにでかい声を出す奴だっけ?」
 
 一樹かずきの疑問に答えようと、普段の沢村を思い返してみる。
 沢村とは今年から同じクラスだが、アイツがあそこまで騒がしくしていた記憶はない。
 
「別にそうでもなかったけどな。まあ、そんなに気にしなくてもいいんじゃないか?」
 
 何はともあれドッジボールに決まった時点で、俺はすっかり山場を越えた気分になっていた。
 
× × ×
 
「ねえ、ドッジボールに参加して大丈夫なの? さっきは凄く喜んでいたみたいだけど」
 
 ホームルームが終わり放課後になったところで、三浦が小声で訊ねてくる。
 
「ロクに力を出さなくてもごまかしが効くから何とか……。バスケットボールやバレーボールと違ってボールを追いかけるために走らなくていいのがでかい」
「そう、それなら良かった」

 三浦は安堵した様子だが、どこか残念そうにも見える。

「ちょっと必殺シュートを見たかったけど、流石にそうもいかないよね」
「それをやると文字通り人を必ず殺しちまうから無理」
「だよね。それじゃあ私はこれで」

 三浦はそう言った後、何人かの女生徒と一緒に、「土日明けからジャージを持参して練習を始めよう!」とか話しながら教室を出ていった。
 
 そういや三浦はバレーボールに参加するんだったか。
 我が道を行くってイメージだったけど、こういう行事には普通に参加するんだなぁ。
 
「吉村!! ちょっと来てくれ!!」
「うわっ!! どうしたんだよ、沢村!?」
 
 三浦に気を取られていたところに、沢村が俺の正面に飛び出してきた。
 突然の出来事に思わず驚きの声が出る。

「いいから話したいことがあるんだ!! こっちに来てくれ!!」
「な、なんだよ!? いったい!!」
 
 俺の驚きなどお構いなしに、沢村が教室の奥へ誘導する。
 何だと思いながらついていくと、そこには一樹かずきだけでなく、坂本、上条、清水、関口とドッジボールのメンバーが勢ぞろいしていた。
 皆も俺と同じく沢村に呼ばれたクチなんだろうか。
 
「話ってなんだよ。沢村」
「もう帰りたいんだから、さっさと終わらせろよ」

 待たされていた連中の内、上条と清水が不満そうに沢村を急かす。
 
「話っていうのは……1時間、いや、30分でもいいんだ! 放課後、ドッジボールの練習に付き合ってくれ!!」

 ちょっと待て!! ドッジボールに決まって球技大会は安泰あんたいだと思っていたのに、いきなり何を言い出すんだ!!

「はあ? 何でドッジボールにそこまでやんなきゃならないんだよ」
「どうせ注目されないんだから、別にそこまでやんなくたっていいだろ」
 
 沢村の提案に一樹かずきを含めたメンバー全員が露骨に渋い反応を見せるが無理もない。メンバー全員がスポーツやる気ない勢だもんな。
 そして口には出さなかったが、俺も同じような心境だった。
 俺が練習に参加して能力が発動しようものなら死人が出る。だから、クラスの平和のためにも余計な真似はしないでくれ。
 
「俺、帰るわ」
「俺も。練習がしたけりゃ1人でやればいいだろ」
「あっ、ちょっと待ってくれ!!」
 
 話は終わったとばかりに、次々とメンバーが足早に教室から出て行き、沢村が引き留めようと後を追う。
 このメンツじゃこうなるよなと思いながらその光景を見ていると、後ろから一樹かずきに肩を叩かれた。

聖也まさや、俺達も逃げるぞ」
「あ、ああ、そうだな」

 沢村が少し気の毒だが、こればっかりは仕方ない。
 巻き込まれる前に早く逃げよう……。
 一樹かずきが走って教室から抜け出し、俺もそれに続こうとするが、高速ダッシュになるのが怖くて素早く走れない。
 
「吉村あぁぁぁぁ!!!!」
「げっ!! 沢村!?」

 もたついて廊下に出ると、戻ってきた沢村が叫びながら俺に向かって突進してきた!!
 何とか逃げようとするが、あっさり追い付かれ、そのまま両肩をつかまれて沢村の正面に振り向かされる。
 力を入れて振りほどくわけにもいかずに戸惑っていると、更に沢村の顔面がズイッと眼前まで迫ってくる。

「吉村あぁぁぁぁ!! 頼むよ!! 練習に付き合ってくれよおおぉぉぉぉ!! もうお前しかいないんだよおぉぉぉぉ!!!!」

 沢村がそう叫びながら俺の肩をゆさぶってくる。
 な、何でドッジボールにそこまで入れ込むんだよ。

 周りを見てみると、騒ぎを聞きつけた生徒が何事かと集まってきていた。

「い、いや……たかがドッジボールなんだし、そこまでガチにならなくたっていいんじゃないか?」
「俺はこのドッジボールに懸けてるんだよおおぉぉ!!!!」
「ほ、ほら、ドッジボールは大して注目もされないんだしさあ」
「注目されてる、されてないは関係ねぇんだぁぁぁぁ!!!!」

 ダメだ。何とか沢村をなだめたいけど、全く効果が無い。
 うっ、おまけに涙まで浮かべ始めたぞ。
 そ、そんな顔をされても、俺が練習に付き合うわけには……。

「げ、月曜からは練習に付き合うから……きょ、今日は練習すると思ってなかったから、先に用事を入れちまってたんだ……。急ぎのやつを……だ、だから今日だけは勘弁してくれ……」
「本当か!? 吉村!! 月曜からは練習に付き合ってくれるんだな!?」
「あ、ああ……。だからいいかげんに放してくれ」
「分かった!! 月曜からは頼むぞ!!」
「お、おう……」

 やっちまった!! どうしてここで突っぱねられないんだ!! 俺は!!
 
 沢村の声を背に、何であんなことを言ってしまったのかと後悔しながら廊下の角を曲がると、一樹かずきが俺を待っていた。
 
聖也まさや。お前、沢村に捕まってたけど、もしかして……」
「ああ、月曜から練習に付き合うって言っちまった……」
「おいおい、どう考えても無理だろ。お前がボールを投げつけたら沢村が死ぬぞ」
「……セレスに相談してみる」

 俺は正にわらにもすがる思いだった。
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