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第四章
第45話 セレスの世界へのゲートを開け
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「マサヤ! 身体は大丈夫ですか!?」
目を覚ますと、俺は布団で横になっていた。
俺が倒れたから、わざわざセレスが布団を用意して寝かせてくれたのか。
「手間を掛けさせてゴメン。もう大丈夫……」
そう言って立ち上がろうとしたが、身体がだるい上に頭もまだ痛く、布団から起き上がるのがやっとだった。
「マサヤ、あまり無理をしないで下さい。それよりもさっきは何があったんですか?」
「実は……」
俺はテレパシーを飛ばして起きた出来事を説明して、大した害が無いと考えたのが甘かったと告げる。
「それでしたら、無理をして私達の世界に連絡を取ろうとするのを止めた方が良いのでは……」
「とは言っても、このままだと連絡を取るだけでも20年はかかるわけだし、可能性があるなら試していきたいんだ」
「気付いたのですが、繋がる相手が無作為なのですから、私達の世界が選ばれ、かつ私を知っている方に繋がる確率はもの凄く低いのではないでしょうか」
……ぐうの音が出ない程の正論だ。
まず別世界がどれだけあるかも分からないし、仮にセレスのいた世界に繋がったとしても、あそこは死者が集う場所でもあるんだ。セレスと無関係な人達が多数いることは容易に想像がつく。
そうなると、俺の狙い通りに行く確率なんて下手したら宝くじで1等が当たるよりも低いかもしれない。
「確かに。運が悪ければ百年かかっても成功しなさそうだ……」
テレパシーを飛ばす案は捨てよう。
とはいえ、他にどんな方法がある……?
「そういえば、セレスはこの世界にどうやって来た?」
「魔力でこの世界に繋がるゲートを開いて……ですね」
「なるほど、ゲートか……」
こうなったら、セレスの世界に繋がるゲートを開く方が相手を選ぶ必要が無い分、成功する可能性が高いだろう。だけど、全く違う世界に繋がったあげく、前みたいな化け物と遭遇する危険だってあるよなあ……。
そうだ。ゲートの大きさを小さく調整すれば、例えヤバイ存在に出くわしても、ゲートを通り抜けてこっちの世界に来る危険性は激減するはずだ。上手くいった場合はゲートを大きく広げれば済む話だし……。よし、この方法で試してみよう。
「セレス、今度は俺がゲートを開けるかを試してみたいんだ。あ、今は何かできる状態じゃないから、明日になってからにするけど……」
明日は土曜日で休みだし、また森へ遠出しよう。
× × ×
次の日の夜。俺とセレスの2人で、もはやお馴染みとなっている森までやって来た。
魔法に目が無い三浦や、セレス目当ての一樹も誘おうかとも考えたが、命の危険がゼロってわけじゃないからな……。参加させない方が賢明だ。
さらに慎重を期して、俺達2人に防御魔法を掛けた上で、セレスは最初に着ていた防御性能の高い服を身にまとっている。
「じゃあ方針を確認するけど、運良くセレスのいた世界に繋がればそれで良し。もし違う世界に繋がった場合は、変なものが出てくる前にさっさとゲートを閉じるから」
「分かりました。これで上手くいくと良いのですが」
よし、ゲートを開く前にまずはセレスのいた世界をしっかりとイメージして……。
……そういえば、死んだ時にセレスのいた世界を見たことがあったけど、白く輝く空間ばっかりで、具体的に何があるのか全然分からなかったんだよな。
それでもノーヒントよりはまだマシか。
ひとまず白く輝く風景をイメージしながら両手を前に突き出して、『セレスの世界への道よ拓け!!』と念じてみる。
「あ! 空間が揺らぎ始めました! もっと力を強めてください!」
「手ごたえありか、よし!!」
セレスの言葉を受け、俺はさらに意識を集中させる。
少しすると、目の前の景色の一部が俺にもハッキリと分かるくらいに歪みだして、こぶし程の大きさの穴が宙に開いた。
「やった……ぎゃあああああ!!!!」
俺が上げた喜びの声は、ゲートから吹き込んでくる猛吹雪によって悲鳴へと変わった。
この吹雪、冷たいを通り越して痛い!! 明らかに生半可な寒さじゃないぞ!?
「セ、セレスの世界にこんな極寒地帯なんてあんの!?」」
「こんな場所はないです!! 私のいた世界とは違います!!」
もしかして、白く輝くイメージが豪雪地帯として反映されたってことか!?
っていうか、吹雪が強すぎて目を開けてられないんだけど!!
「マサヤ!! ゲートを閉じて下さい!! 早く!!」
「そ、そうか!! ゲ、ゲートよ閉まれ!!」
セレスの指示を受け、慌ててゲートを閉じるようにイメージを集中させた。
すると吹雪が急速に収まっていく。
状況が落ちついたので目を開くと、ゲートは消え、元通りの風景に戻っていた。
い、今のはヤバかったな……。
どっと押し寄せてくる疲労感に思わず座り込んだ瞬間――地面につけた手と尻から強烈な冷たさが伝わってきた。
「冷てえ!!」
あまりの冷たさに驚いた俺はとっさに飛び上がってしまう。当然能力の影響を受けてしまい、猛烈な勢いで身体が空高く跳ね上がっていく。
「ああ! しまった!!」
数十メートルの高さまで上昇したところで落下し始め、どんどん加速しながら地面へと迫っていく。
このままじゃ地面に激突する!! 前に空を飛んだら制御できないまま山に衝突したから今度は別の方法で……。
「と、止まれ!!」
確かに落下は止まった。だけど……。
う、動けない……。
意識は残っているのに、身体を動かそうとしてもピクリともしない。
「マサヤ!! どうしたんですか?」
セレスの心配する声が聞こえるが、返事をしようにも声を出すことすらできなかった。
これじゃ落下を防げても、もっと厄介な状態になってるじゃないか。早く元に戻らないと……。
今度は動けるようになれと全力で念じ始める。
う、動け……動け!!
すると、硬直が解けて動けるようになった!! が、同時に落下の勢いも復活して、俺はそのまま地面に叩きつけられた。
うう……止まったら自分まで動けなくなって、停止が解けたら加速まで元に戻るってゲームの一時停止かよ。
「しかし、さっき座った時のメチャクチャな冷たさはなんだったんだ……うわ」
改めて地面を見てみると、6月になって結構気温が高くなっているにも関わらず、吹雪がかかった部分の地面や草が完全に凍り付いている。
あの短時間でここまで被害が出るなんて……三浦と一樹を呼ばないで本当に良かった。
こんな吹雪を浴びていたら、凍傷どころか全身が凍結して命が危なかっただろう。
「そうだ。セレスは大丈夫か?」
「服の守りがありますから怪我は無いです。寒さは完全には防げなかったですけど」
「しかし防御魔法を貫通するなんて、かなり凶悪な吹雪だったんだな」
「あの……私の防御魔法で防げるのは物理的な攻撃だけなんです。今みたいな属性攻撃に対しては無力でして」
「え、じゃあ属性攻撃を防ぐ魔法も掛けないとまずいじゃん」
「今の私ではその魔法を使う力が戻っていないのです。前に用いた全力で発動させるシールドなら属性攻撃も防げますが、魔力を全般的に遮ってしまうので、シールド越しにゲートを開くことはできないかと……」
しっかり防御を固めたと思ってたのに、属性攻撃っていう穴があったのか。
まあ、俺は身体が丈夫になっているし、セレスの服は属性攻撃を防げてるから何とかなるか……。
「しょうがない。お互い大したダメージは無かったわけだし、このまま続けよう」
気を取り直して、再びこぶし大ほどの大きさのゲートを開く。
今度はいきなり何かが飛び出すことはなかったが、向こうの風景が白い霧に覆われていて、何があるのかわからない。
近くから見れば分かるかもと思い、ゲートに近づいていく。それにしても、何か変な匂いがしてどうも鼻がツンとするな。
ゲートから漏れ出た白い霧が俺の顔に触れた瞬間、ジュウッと音がして顔面に焼けるような激痛が走った。
「あっつううぅぅああああああ!!!!」
あまりの痛みに思わず地面を転がって悶絶《もんぜつ》した瞬間――。
「ああああぁぁぁぁ!!!!」
力加減を考えずに動いたせいで猛烈な勢いで転がっていき、土壁にめり込んだことでようやく止まった。
うう……顔面は痛いし、メチャクチャ回転したせいで、すっげえ気持ち悪い……。
それでも、吐きそうになるのをこらえながらどうにか土壁からはい出てくる。すると目の前が光って、顔の痛みが治まっていった。
「マサヤ、大丈夫ですか?」
「ありがとう……回復魔法、すっげえ助かる……」
セレスのおかげで顔の痛みは無くなったが、頭はまだクラクラしていて吐き気は残ったまんまだ。この状態を治す魔法とかないだろうか……。
「あのさ……さんざん回転したせいで今すっげえ気持ち悪いんだけど、治せる?」
「すみません。毒によるものであれば治せるのですが、目を回したというのは……」
うう、そんな狭い用途に使う魔法は流石になかったか……。だからといって自分の能力を使うのは、効果が強すぎて何が起こるか分からないから使いたくない……。
何度か深呼吸を繰り返して、少し気分が落ち着いたところでヨロヨロと起き上がると、ゲートから漏れ出した白い霧が草にかかり次々と黒焦げになっていくのが見えた。
「セレス、元の世界にあんな霧が出てくるところなんてあった……?」
「ありません!! 間違いなく別の世界です!!」
やっぱり今回も失敗してたのか……。
足元をふらつかせながらも、霧がかからない位置まで大きく回り込みつつゲートに近づいていく。何とかゲートを閉じたところで、辺りから鼻にツンとする匂いが上がっているのに気付いた。
さっきの匂いはこの霧から出ていたのか……。焼けるような痛みと草が黒焦げになってることから、何か強力な酸が霧状になっていたんだろうな。
ふと、自分の顔が焼けただれたりしていないか不安になって、顔をぺたぺたと触ってみる。……良かった。いつもと変わらない感触だ。
しかし、白く輝く空間ってイメージしても、想定とは全く違う世界に繋がっちまうから、何か別の場所に切り替えた方がいいかもしれない。他に俺が見た場所と言えば……。
そうだ、セレスの神殿があった。あの時はセレスにほとんど目を奪われていたけど、宮殿で見るような柱があって……、それから壁に火が灯された燭台《しょくだい》が取り付けられていたのは覚えているぞ。
イメージする風景を切り替えてゲートを開き、3回目に繋がった世界は――。
「な、何だここは?」
今度も俺の想定とは全く違う場所だった。
目を覚ますと、俺は布団で横になっていた。
俺が倒れたから、わざわざセレスが布団を用意して寝かせてくれたのか。
「手間を掛けさせてゴメン。もう大丈夫……」
そう言って立ち上がろうとしたが、身体がだるい上に頭もまだ痛く、布団から起き上がるのがやっとだった。
「マサヤ、あまり無理をしないで下さい。それよりもさっきは何があったんですか?」
「実は……」
俺はテレパシーを飛ばして起きた出来事を説明して、大した害が無いと考えたのが甘かったと告げる。
「それでしたら、無理をして私達の世界に連絡を取ろうとするのを止めた方が良いのでは……」
「とは言っても、このままだと連絡を取るだけでも20年はかかるわけだし、可能性があるなら試していきたいんだ」
「気付いたのですが、繋がる相手が無作為なのですから、私達の世界が選ばれ、かつ私を知っている方に繋がる確率はもの凄く低いのではないでしょうか」
……ぐうの音が出ない程の正論だ。
まず別世界がどれだけあるかも分からないし、仮にセレスのいた世界に繋がったとしても、あそこは死者が集う場所でもあるんだ。セレスと無関係な人達が多数いることは容易に想像がつく。
そうなると、俺の狙い通りに行く確率なんて下手したら宝くじで1等が当たるよりも低いかもしれない。
「確かに。運が悪ければ百年かかっても成功しなさそうだ……」
テレパシーを飛ばす案は捨てよう。
とはいえ、他にどんな方法がある……?
「そういえば、セレスはこの世界にどうやって来た?」
「魔力でこの世界に繋がるゲートを開いて……ですね」
「なるほど、ゲートか……」
こうなったら、セレスの世界に繋がるゲートを開く方が相手を選ぶ必要が無い分、成功する可能性が高いだろう。だけど、全く違う世界に繋がったあげく、前みたいな化け物と遭遇する危険だってあるよなあ……。
そうだ。ゲートの大きさを小さく調整すれば、例えヤバイ存在に出くわしても、ゲートを通り抜けてこっちの世界に来る危険性は激減するはずだ。上手くいった場合はゲートを大きく広げれば済む話だし……。よし、この方法で試してみよう。
「セレス、今度は俺がゲートを開けるかを試してみたいんだ。あ、今は何かできる状態じゃないから、明日になってからにするけど……」
明日は土曜日で休みだし、また森へ遠出しよう。
× × ×
次の日の夜。俺とセレスの2人で、もはやお馴染みとなっている森までやって来た。
魔法に目が無い三浦や、セレス目当ての一樹も誘おうかとも考えたが、命の危険がゼロってわけじゃないからな……。参加させない方が賢明だ。
さらに慎重を期して、俺達2人に防御魔法を掛けた上で、セレスは最初に着ていた防御性能の高い服を身にまとっている。
「じゃあ方針を確認するけど、運良くセレスのいた世界に繋がればそれで良し。もし違う世界に繋がった場合は、変なものが出てくる前にさっさとゲートを閉じるから」
「分かりました。これで上手くいくと良いのですが」
よし、ゲートを開く前にまずはセレスのいた世界をしっかりとイメージして……。
……そういえば、死んだ時にセレスのいた世界を見たことがあったけど、白く輝く空間ばっかりで、具体的に何があるのか全然分からなかったんだよな。
それでもノーヒントよりはまだマシか。
ひとまず白く輝く風景をイメージしながら両手を前に突き出して、『セレスの世界への道よ拓け!!』と念じてみる。
「あ! 空間が揺らぎ始めました! もっと力を強めてください!」
「手ごたえありか、よし!!」
セレスの言葉を受け、俺はさらに意識を集中させる。
少しすると、目の前の景色の一部が俺にもハッキリと分かるくらいに歪みだして、こぶし程の大きさの穴が宙に開いた。
「やった……ぎゃあああああ!!!!」
俺が上げた喜びの声は、ゲートから吹き込んでくる猛吹雪によって悲鳴へと変わった。
この吹雪、冷たいを通り越して痛い!! 明らかに生半可な寒さじゃないぞ!?
「セ、セレスの世界にこんな極寒地帯なんてあんの!?」」
「こんな場所はないです!! 私のいた世界とは違います!!」
もしかして、白く輝くイメージが豪雪地帯として反映されたってことか!?
っていうか、吹雪が強すぎて目を開けてられないんだけど!!
「マサヤ!! ゲートを閉じて下さい!! 早く!!」
「そ、そうか!! ゲ、ゲートよ閉まれ!!」
セレスの指示を受け、慌ててゲートを閉じるようにイメージを集中させた。
すると吹雪が急速に収まっていく。
状況が落ちついたので目を開くと、ゲートは消え、元通りの風景に戻っていた。
い、今のはヤバかったな……。
どっと押し寄せてくる疲労感に思わず座り込んだ瞬間――地面につけた手と尻から強烈な冷たさが伝わってきた。
「冷てえ!!」
あまりの冷たさに驚いた俺はとっさに飛び上がってしまう。当然能力の影響を受けてしまい、猛烈な勢いで身体が空高く跳ね上がっていく。
「ああ! しまった!!」
数十メートルの高さまで上昇したところで落下し始め、どんどん加速しながら地面へと迫っていく。
このままじゃ地面に激突する!! 前に空を飛んだら制御できないまま山に衝突したから今度は別の方法で……。
「と、止まれ!!」
確かに落下は止まった。だけど……。
う、動けない……。
意識は残っているのに、身体を動かそうとしてもピクリともしない。
「マサヤ!! どうしたんですか?」
セレスの心配する声が聞こえるが、返事をしようにも声を出すことすらできなかった。
これじゃ落下を防げても、もっと厄介な状態になってるじゃないか。早く元に戻らないと……。
今度は動けるようになれと全力で念じ始める。
う、動け……動け!!
すると、硬直が解けて動けるようになった!! が、同時に落下の勢いも復活して、俺はそのまま地面に叩きつけられた。
うう……止まったら自分まで動けなくなって、停止が解けたら加速まで元に戻るってゲームの一時停止かよ。
「しかし、さっき座った時のメチャクチャな冷たさはなんだったんだ……うわ」
改めて地面を見てみると、6月になって結構気温が高くなっているにも関わらず、吹雪がかかった部分の地面や草が完全に凍り付いている。
あの短時間でここまで被害が出るなんて……三浦と一樹を呼ばないで本当に良かった。
こんな吹雪を浴びていたら、凍傷どころか全身が凍結して命が危なかっただろう。
「そうだ。セレスは大丈夫か?」
「服の守りがありますから怪我は無いです。寒さは完全には防げなかったですけど」
「しかし防御魔法を貫通するなんて、かなり凶悪な吹雪だったんだな」
「あの……私の防御魔法で防げるのは物理的な攻撃だけなんです。今みたいな属性攻撃に対しては無力でして」
「え、じゃあ属性攻撃を防ぐ魔法も掛けないとまずいじゃん」
「今の私ではその魔法を使う力が戻っていないのです。前に用いた全力で発動させるシールドなら属性攻撃も防げますが、魔力を全般的に遮ってしまうので、シールド越しにゲートを開くことはできないかと……」
しっかり防御を固めたと思ってたのに、属性攻撃っていう穴があったのか。
まあ、俺は身体が丈夫になっているし、セレスの服は属性攻撃を防げてるから何とかなるか……。
「しょうがない。お互い大したダメージは無かったわけだし、このまま続けよう」
気を取り直して、再びこぶし大ほどの大きさのゲートを開く。
今度はいきなり何かが飛び出すことはなかったが、向こうの風景が白い霧に覆われていて、何があるのかわからない。
近くから見れば分かるかもと思い、ゲートに近づいていく。それにしても、何か変な匂いがしてどうも鼻がツンとするな。
ゲートから漏れ出た白い霧が俺の顔に触れた瞬間、ジュウッと音がして顔面に焼けるような激痛が走った。
「あっつううぅぅああああああ!!!!」
あまりの痛みに思わず地面を転がって悶絶《もんぜつ》した瞬間――。
「ああああぁぁぁぁ!!!!」
力加減を考えずに動いたせいで猛烈な勢いで転がっていき、土壁にめり込んだことでようやく止まった。
うう……顔面は痛いし、メチャクチャ回転したせいで、すっげえ気持ち悪い……。
それでも、吐きそうになるのをこらえながらどうにか土壁からはい出てくる。すると目の前が光って、顔の痛みが治まっていった。
「マサヤ、大丈夫ですか?」
「ありがとう……回復魔法、すっげえ助かる……」
セレスのおかげで顔の痛みは無くなったが、頭はまだクラクラしていて吐き気は残ったまんまだ。この状態を治す魔法とかないだろうか……。
「あのさ……さんざん回転したせいで今すっげえ気持ち悪いんだけど、治せる?」
「すみません。毒によるものであれば治せるのですが、目を回したというのは……」
うう、そんな狭い用途に使う魔法は流石になかったか……。だからといって自分の能力を使うのは、効果が強すぎて何が起こるか分からないから使いたくない……。
何度か深呼吸を繰り返して、少し気分が落ち着いたところでヨロヨロと起き上がると、ゲートから漏れ出した白い霧が草にかかり次々と黒焦げになっていくのが見えた。
「セレス、元の世界にあんな霧が出てくるところなんてあった……?」
「ありません!! 間違いなく別の世界です!!」
やっぱり今回も失敗してたのか……。
足元をふらつかせながらも、霧がかからない位置まで大きく回り込みつつゲートに近づいていく。何とかゲートを閉じたところで、辺りから鼻にツンとする匂いが上がっているのに気付いた。
さっきの匂いはこの霧から出ていたのか……。焼けるような痛みと草が黒焦げになってることから、何か強力な酸が霧状になっていたんだろうな。
ふと、自分の顔が焼けただれたりしていないか不安になって、顔をぺたぺたと触ってみる。……良かった。いつもと変わらない感触だ。
しかし、白く輝く空間ってイメージしても、想定とは全く違う世界に繋がっちまうから、何か別の場所に切り替えた方がいいかもしれない。他に俺が見た場所と言えば……。
そうだ、セレスの神殿があった。あの時はセレスにほとんど目を奪われていたけど、宮殿で見るような柱があって……、それから壁に火が灯された燭台《しょくだい》が取り付けられていたのは覚えているぞ。
イメージする風景を切り替えてゲートを開き、3回目に繋がった世界は――。
「な、何だここは?」
今度も俺の想定とは全く違う場所だった。
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