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とある作家の話
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こんにちは。私は◆◆市出身のホラー小説家、浜松と申します。普段は物語の裏側に身を潜めるようにして暮らしていますが、今回は少し勇気を出して、このようなエッセイという形で自分のことを綴ってみることにしました。拙い部分もあるかと思いますが、最後まで目を通していただけますと幸いです。
私は主にホラージャンルの小説を執筆しております。しかし、ホラー作家と名乗ってはいるものの、作品を締めくくるオチを考えることに関してはあまり得意とは言えません。いつも頭にふっと浮かんだ情景や感覚をそのまま文字にして、勢いのまま完結まで持っていく、そんな作り方をしてしまうことが多いのです。
今日は、その中でも私の処女作「戦慄のマンション」について、お話しさせてください。
私は、いわゆるアダルトチルドレンとして育ちました。幼いころから両親に怒鳴られ、殴られ、存在そのものを否定されるような日々でした。あの頃のことを言葉にしようとすると、胸が強く締め付けられるように痛みます。当時の私は、生きるという行為そのものが常に苦しく、どうすればこの生活から抜け出せるのだろうか、そればかりを考えていました。そんなとき、出会ったのがWeb小説という世界です。
浅はかだったのかもしれませんが、「自分の気持ちをそのまま書いたら、誰かが気づいてくれるかもしれない」「もし読んでくれる人が増えれば、解決策が出てくるかもしれない」「雀の涙ほどにしかならないかもしれないが多少リワードも入ってくる、運が良ければ書籍化もありえるかもしれない」、そんな期待を抱きながら、私は『Winter』というノンフィクション作品を書き上げました。
思っていた以上に共感の声をいただき、心の底から嬉しかったのを覚えています。しかし、PVは伸びても二桁止まりでした。私は『読んでほしい』というより『一緒に考えて欲しかった』のです。あの日々から抜け出すための方法を、一緒に探してほしかった。
そこで私は考えました。
ノンフィクションという形で書くのではなく、フィクションの物語の中に、自分の感情や日記のような記録を溶かし込むことはできないだろうか、と。
流行していた異世界系の作品は世界観を構築するのが大変ですし、ラブコメは私の性格上どうにも照れが勝ってしまう。では、自分が最も惹かれてきたジャンル、『ホラー』でなら、書けるかもしれない。
そうして誕生したのが、「戦慄のマンション」でした。
内容としては、不穏な入居条件のあるマンションに住んだ3人の住人の話です。しかし、そのマンションには『怪異』がいて、3人とも良いところで捕まってしまいます。特に3人目は、情報を集めて怪異の生前と強くつながりがあった管理人から話を聞き、怪異から自我を引き出すことに成功します。それでも、怪異の『自分はバッドエンドだったから許さない』という感情に負けてしまうのですが。
この怪異である少女は、15歳で母親の手により命を奪われてしまいます。母から日常的に中途半端な暴力を受け、罵られ、死にたいと思いながらも『生』は美しいと感じていた、そんな人物です。少女は幼いころに、怪異のであるものに気付かないうちに目を付けられ、それから運がどんどん悪くなっていきます。少女の人生は、悪い方向へ転がり続ける、という運命に呪われているかのようでした。
優しかった母は豹変し、勉強してもテストで100点はとれない。そのことについて責められ続け、さらに学校でも先生たちに理不尽な対応をされる。生徒会になってもクラスメイトからは信頼されず、高校受験にも失敗します。それに激昂した母が衝動的に少女を殺すのです。
この少女は、怪異からその事実を知ります。では自分の人生の運命は決まっていたのか、としょうがなく思う気持ちもありましたが、自分の悲しみは、痛みは、絶望はすべてこの『怪異』のせいなんて、そんなの許せない、と怪異を乗っ取ろうとしました。少女はこれに成功します。
実はこの少女が体験したことは、私自身が歩んできた日々をもとにしています。誰もいないはずの浴室の扉が開いたこと、瞬きをすると翌日になっていたこと、母からの心無い言葉、努力しても認められない現実。
それら全てを、私は『怪異のせい』という形にして物語へ落とし込みました。けれど、書き終えたあと、ふと考えてしまったのです。
……私の人生は、一体何なんだろうか、と。
もしかしたら、自分に当てはまるのかもしれない、と考えてぞっとしたりもしましたが、奇妙な経験はあっても怪異に触れたことなんてない。それでも、あまりに続く不運や理不尽に、何か『説明のつかない力』が働いているのではないかと考えてしまう瞬間があったのも事実です。
とはいえ、現実はそう簡単に上手くはいきませんし、私が書いたホラー小説が話題になったことで両親から一旦離れることができました。皆さん、本当にありがとうございます。
今では、過去の記憶が不意にフラッシュバックすることはありますが、それでも当時に比べれば、心の自由を取り戻せたあの地獄のような日々から逃げ出すことができて本当に良かった、と実感しています。
私の人生を変えたトリガーは何だったのか。
そう考えた時、ひとつ思い当たったのは『結果としての成功』でした。
私はこれまで、過程だけなら成功していることが多かったのです。テストはほとんど90点以上、生徒会執行部に所属し、様々な実績を積みました。それでも、肝心の受験には失敗し、副会長選挙にも落ちました。これだけではありませんが、『過程は良いのに結果が出ない人生』を歩んできたのです。自分が書いた小説が書籍化という『結果』での成功を通して何かが変わった気がしなくもありません。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
これは私がふと感じたことを、ありのままに綴っただけの文章です。「ああ、作家の浜松はこんなことを考えていたのか」と軽く受け取っていただけますと嬉しいです。
改めまして、この度はホラー小説『未知への旅路』書籍化ありがとうございます。読んでくださる皆さんのおかげです。
どうぞ今後とも、よろしくお願いいたします。
私は主にホラージャンルの小説を執筆しております。しかし、ホラー作家と名乗ってはいるものの、作品を締めくくるオチを考えることに関してはあまり得意とは言えません。いつも頭にふっと浮かんだ情景や感覚をそのまま文字にして、勢いのまま完結まで持っていく、そんな作り方をしてしまうことが多いのです。
今日は、その中でも私の処女作「戦慄のマンション」について、お話しさせてください。
私は、いわゆるアダルトチルドレンとして育ちました。幼いころから両親に怒鳴られ、殴られ、存在そのものを否定されるような日々でした。あの頃のことを言葉にしようとすると、胸が強く締め付けられるように痛みます。当時の私は、生きるという行為そのものが常に苦しく、どうすればこの生活から抜け出せるのだろうか、そればかりを考えていました。そんなとき、出会ったのがWeb小説という世界です。
浅はかだったのかもしれませんが、「自分の気持ちをそのまま書いたら、誰かが気づいてくれるかもしれない」「もし読んでくれる人が増えれば、解決策が出てくるかもしれない」「雀の涙ほどにしかならないかもしれないが多少リワードも入ってくる、運が良ければ書籍化もありえるかもしれない」、そんな期待を抱きながら、私は『Winter』というノンフィクション作品を書き上げました。
思っていた以上に共感の声をいただき、心の底から嬉しかったのを覚えています。しかし、PVは伸びても二桁止まりでした。私は『読んでほしい』というより『一緒に考えて欲しかった』のです。あの日々から抜け出すための方法を、一緒に探してほしかった。
そこで私は考えました。
ノンフィクションという形で書くのではなく、フィクションの物語の中に、自分の感情や日記のような記録を溶かし込むことはできないだろうか、と。
流行していた異世界系の作品は世界観を構築するのが大変ですし、ラブコメは私の性格上どうにも照れが勝ってしまう。では、自分が最も惹かれてきたジャンル、『ホラー』でなら、書けるかもしれない。
そうして誕生したのが、「戦慄のマンション」でした。
内容としては、不穏な入居条件のあるマンションに住んだ3人の住人の話です。しかし、そのマンションには『怪異』がいて、3人とも良いところで捕まってしまいます。特に3人目は、情報を集めて怪異の生前と強くつながりがあった管理人から話を聞き、怪異から自我を引き出すことに成功します。それでも、怪異の『自分はバッドエンドだったから許さない』という感情に負けてしまうのですが。
この怪異である少女は、15歳で母親の手により命を奪われてしまいます。母から日常的に中途半端な暴力を受け、罵られ、死にたいと思いながらも『生』は美しいと感じていた、そんな人物です。少女は幼いころに、怪異のであるものに気付かないうちに目を付けられ、それから運がどんどん悪くなっていきます。少女の人生は、悪い方向へ転がり続ける、という運命に呪われているかのようでした。
優しかった母は豹変し、勉強してもテストで100点はとれない。そのことについて責められ続け、さらに学校でも先生たちに理不尽な対応をされる。生徒会になってもクラスメイトからは信頼されず、高校受験にも失敗します。それに激昂した母が衝動的に少女を殺すのです。
この少女は、怪異からその事実を知ります。では自分の人生の運命は決まっていたのか、としょうがなく思う気持ちもありましたが、自分の悲しみは、痛みは、絶望はすべてこの『怪異』のせいなんて、そんなの許せない、と怪異を乗っ取ろうとしました。少女はこれに成功します。
実はこの少女が体験したことは、私自身が歩んできた日々をもとにしています。誰もいないはずの浴室の扉が開いたこと、瞬きをすると翌日になっていたこと、母からの心無い言葉、努力しても認められない現実。
それら全てを、私は『怪異のせい』という形にして物語へ落とし込みました。けれど、書き終えたあと、ふと考えてしまったのです。
……私の人生は、一体何なんだろうか、と。
もしかしたら、自分に当てはまるのかもしれない、と考えてぞっとしたりもしましたが、奇妙な経験はあっても怪異に触れたことなんてない。それでも、あまりに続く不運や理不尽に、何か『説明のつかない力』が働いているのではないかと考えてしまう瞬間があったのも事実です。
とはいえ、現実はそう簡単に上手くはいきませんし、私が書いたホラー小説が話題になったことで両親から一旦離れることができました。皆さん、本当にありがとうございます。
今では、過去の記憶が不意にフラッシュバックすることはありますが、それでも当時に比べれば、心の自由を取り戻せたあの地獄のような日々から逃げ出すことができて本当に良かった、と実感しています。
私の人生を変えたトリガーは何だったのか。
そう考えた時、ひとつ思い当たったのは『結果としての成功』でした。
私はこれまで、過程だけなら成功していることが多かったのです。テストはほとんど90点以上、生徒会執行部に所属し、様々な実績を積みました。それでも、肝心の受験には失敗し、副会長選挙にも落ちました。これだけではありませんが、『過程は良いのに結果が出ない人生』を歩んできたのです。自分が書いた小説が書籍化という『結果』での成功を通して何かが変わった気がしなくもありません。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
これは私がふと感じたことを、ありのままに綴っただけの文章です。「ああ、作家の浜松はこんなことを考えていたのか」と軽く受け取っていただけますと嬉しいです。
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