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第X章 踊れ!悪魔の腕の中で
第二話 ファーストコンタクト
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「そういえば、昨日のあれはなんやったの?」
昼下がり。唐突に岩永がそんなことを言ったので、村崎は思わず昨日の記憶を検索した。
202号室のリビング。テーブルを囲んで、昨日のようにお茶をしている最中だ。
流河はげっそりした顔で、
「思い出したくもない…ろくでもない…」
と死霊のような声で呟いた。
「吾妻が原因…やんな?」
岩永は村崎の顔を見てから、流河を見て尋ねた。
村崎に限って、流河に迷惑をかけるはずがないし、という信頼だ。
村崎は思い当たったあと、気まずそうな顔をする。
「吾妻クンと村崎クンが原因です! 俺、あんな頭痛い瞬間に居合わせたことを末代まで祟る!」
「…誰に?」
余程根に持っているらしく、流河らしからぬ台詞が飛び出した。
岩永はおそるおそる問いかける。
「……………………………………迂闊な自分の脳味噌、かな…………」
流河は勢いを失って、へにょりとテーブルに顔をうつぶせ、力無く呟いた。
吾妻や村崎、と言い切らないあたりが流河の優しいところだ。
「つまり村崎も原因やった…ってこと?」
「…まあ」
岩永の、まさか信じられない、という台詞に、村崎は躊躇いがちに頷いた。
「絶対バカップル資質が高いよねー。201号室の二人と村崎クンって」
「…資質ってなんや」
「元々生まれ持った才能。バカップルになる才能だよ。
吾妻クンと白倉クンも大概だけど、キミも大概」
きっぱり言い切られて、村崎は密かにショックを受ける。
「やけど、それは嵐が―――――」
「“運命の人やったから”とか言わないでね」
台詞を先読みされて拒まれ、村崎は小さな声で謝った。当たりだったらしい。
それに、岩永が若干顔を赤くしながら、引く。
「お前、その反応はないやろ…」
「えー、せやかて、運命って……」
岩永はないない、と言いたげだ。
恥じらっているならまだしも、本気で「ない」と思っているらしい。
「そういえば、岩永クンって案外情緒ないもんね」
「ロマンチストとかいう称号は吾妻か白倉か優衣に任すわ」
俺は現実的に生きんねん、と岩永は真顔で言う。
村崎は悲しくなった。
「村崎のことは、運命やからやなく、性格とか顔とか全部好みのタイプやったってことやろ……」
へこんだ村崎を見て、岩永は今度は恥じらって呟いた。
「…嵐」
あからさまに感動して、気分が浮上した村崎を見遣って、流河が呆れる。
「そういえば、そろそろやない?」
村崎に見つめられているのが恥ずかしいのか、岩永は話を逸らすように話題を変えた。
「ああ、もしかして、抜き打ち検査?」
「そうそう」
「七月の恒例行事だもんね。今日か来週の土日でしょ」
流河の言葉に、岩永は同意する。村崎もしかたなく同意した。
話題を変えられたのは寂しいが、かわいい岩永が見れたしかわいい台詞も聞けたので満足しておこう、と思っていると、見透かされたのか流河に呆れた眼差しを向けられた。
扉がこんこん、とノックされる。
「あれ、今日だったか?」
流河が顔を上げて、椅子から立ち上がる。
「抜き打ち検査やけどー」
真鍋が扉を開けて顔を出した。
「今年はこの階、賢人ちゃんの担当か」
岩永も椅子から立ち上がって、真鍋を見て呟いた。
「はいはいまいてくでー。ちゃっちゃとやんでー」
「…真鍋先生? どしたの? なんかお疲れみたいだね…」
随分投げやりな真鍋の様子に、流河は苦笑して尋ねた。
真鍋はげっそりした顔で、
「隣は誰と誰の部屋や」
とだけ答えた。
それで、流河と岩永、村崎には「ああ、バカップルの被害にあったんや(だ)な」と理解できたので、それ以上は問わなかった。
「せやけど、賢人ちゃんでよかったわ。
あんまりなじみのない先生やと、帰るまで緊張しっぱなしやから」
一階につき、一人の教師で抜き打ち検査を行う。
どの階にどの教師が来るかはわからない。
教師本人も、決まるまでわからない。
厳密に言えば、抜き打ち検査もレクリエーションの一つだ。
この高級ホテルのようなNOA寮は大概なんでも持ち込み許可が出てしまうので、抜き打ち検査でなにかを没収された生徒は過去数えるくらいしかいない。
寮生自身が、このイベントを楽しんでもいる。
「…この棚は、全部媒体か?」
「そーでーす」
流河の寝室。
奥の棚にずらりと並ぶのは、流河が主に媒体に使う傘や扇子だ。
真鍋は傘の一つを手にとって開いてみる。
「…こういう趣味か?」
「それは誕生日にもらったもの」
傘の柄は恐ろしい顔をした鬼の面がプリントされている。
普通、こんな傘は使わないし、普通の店にはまず売ってないだろう。
「こんなん誕生日によこすん誰やねん…」
「俺やけど」
真鍋がぼやくと、岩永が手を挙げた。真鍋は若干呆れた顔をしたが、それだけだった。
「それだけ?」
岩永が意外そうな声を挙げる。
「どうせ、岩永は他の本命プレゼントがあったんやろうしな…」
「さすが真鍋先生、よくおわかりで」
真鍋の台詞に、流河が微笑んで答えた。
岩永プレゼントの傘を戻して、もう一つ傘を手に取る。
開くと、今度は様々な花があしらわれた豪華な傘だった。ちなみに花の縁取り部分の色は金である。
というか、女性が使うような傘だ。
「これも貰い物か?」
「あー、それねー………」
流河が遠い目をする。
「化野クンがくれたんだけど、『俺の御利益で勝率あがるよきっと』って言われてね?
だからさ、それ使って万一負けちゃったらどんな目に遭わされるんだろーって思ったら怖くて使えないんだ…」
流河の切実な台詞に、岩永も村崎も、真鍋も黙ってしまった。
教師の自分がなにか言わなければ、と真鍋は思考をフル回転させるが、不意にハッとして顔を上げ、耳を澄ませた。
「…え、今、」
「揺れたし、悲鳴もしたな」
流河の困惑した声に、真鍋は鋭く答える。
傘を流河に放り投げると、真鍋は扉に向かって走り出した。
「絶対部屋から出るなよ! ええな!」
厳命して、真鍋は部屋から駆け出して行った。
勢いのついていた扉が閉まる。
「…って言われても」
流河は呟いて、岩永と村崎を見る。
二人とも、おとなしくここで待つ表情ではない。
流河の影が不意に伸びて、中から優衣が現れた。
「今の聴いたか?」
唐突に尋ねられたが、流河はすぐに頷いた。
「お前の瞬間移動で飛ばしてくれ」
「もちろん。おやすいご用だよ。
岩永クンたちも、そのつもりでしょ?」
岩永と村崎は頷く。
「じゃ、行くよ。動かないように!」
流河は声高々に言って、意識を集中させた。
騒ぎ声がする場所は、どうやら「開かずの間」らしい。
真鍋が到着すると、既に生徒達の野次馬がたくさんいた。
生徒達に退くよう言って、部屋の前まで行く。
見ると、目張りなどで塞いであった扉が、中側から破壊されて跡形もなかった。
おそらく超能力だ。
ここに収納されていたのは、超能力を使用した発明品(?)だったし、それを作った主は良くも悪くも天才だった。
下手に片付けようとしたら、寮を一時封鎖する騒ぎになるかもしれないと危惧されて、開かずの間として放置されたのだから。
部屋の中は混沌としている。様々なアイテムが、床にしっちゃかめっちゃかに転がっている。
「賢人ちゃん」
「あ、ああ」
野次馬の中にいた夕が、真鍋に近寄ってきた。
「すごいなあ。なにがあった?」
「それは調べてみんとわからんから、近づくな…………」
夕を手で制止して、視線を室内に戻したところで、真鍋の声が途切れた。
「賢人ちゃん?」
疑問に思って、部屋の中を覗こうとした夕の鳩尾に、いきなり真鍋の蹴りがたたき込まれて、夕は背後に数メートル吹っ飛ばされた。
どうにか着地して、腹を押さえて呻く。
「ちょ、真鍋センセ。なにしてんだよ!?」
反対側の廊下にいた久遠がびっくりして叫んだ。周囲の生徒達もざわめいている。
「賢人ちゃん、ひどいじゃん。なにすんのいきなり…」
「いきなり、なあ」
夕の非難に、真鍋は口角を上げる。
「いきなりで予想外なら、なんでしっかりガードしとんの?」
真鍋の低い声音、内容に久遠はハッとした。
まともに入ったなら、普通うずくまる。動けないだろう。
なのに、夕は立っているし、せき込みもしなかった。
夕は驚いたあと、にやりと笑った。
まるで、歪な悪魔の笑みみたいに。
「うーん、流石に、教師ともなると、聡いな」
「…夕やないな、自分。誰や?」
「誰でもあらへん」
夕ははっきりと言い切った。その姿が文字通り歪んだ。
まるで、ノイズの入った映像のように、縦に波が走って身体そのものの形が歪む。
その場の生徒達が驚愕して声も失う中、その姿は赤い髪の男に変わった。
「え、嘘!?」
久遠が大声を上げる。目の前の出来事を否定したいように。
なぜなら、そこに立っている、今さっきまで夕だった“存在”の姿は、久遠そのものになっていたからだ。
「俺は、ただの化け物ってとこだ」
言い切る声ももう夕のものではない。
大きく口を開けた久遠の姿をしたなにかは、ハッとして周囲を見回す。
「お前はどうやら、出会った人間から姿・記憶・力をコピーする人型道具らしいな。
どうも、他のいろんな発明品と一緒くたに置かれとった所為で、変な不具合が生じたとみえる」
真鍋は淡々と解析する。
久遠の姿をした“人型道具”は自分を囲む壁を叩いている。
彼の周囲を覆うのは、文字通り透明な“壁”だ。
彼が発動させようとした久遠の“声”の超能力ごと、声を封じた。
「つまり、あれは人間ではない、と…?」
久遠の隣にいた山居が、おそるおそる尋ねた。
「せや。
やって、今あいつを隔離しとる壁は“酸素”すら通さへん。
人間なら、呼吸困難起こす頃や」
真鍋は山居に答えて、自分の壁によって身動きのとれない相手に近寄る。
「こうなったら廃棄処分や。
恨むな」
宣言して、右手を勢いよく上に持ち上げる。
瞬間、廊下の幅一杯に出現した透明な“壁”が“人型道具”を高速で押し、一気に廊下の端まで追いやった。
最後は、“壁”と廊下の壁の間に挟まれ、音を立てて壊れる。
そこには、機械の線や部品だけが残った。
「相変わらずすげー力だけど、…俺の姿してるヤツがぺちゃんこになるのって見たくねぇな…」
久遠が若干気持ち悪そうに呟いた。真鍋は振り返ってすまなそうに苦笑する。
「悪かったな。あとでなんかおごったるから」
「マジ!? ならオッケー!」
「それで浮上できるなら“気持ち悪かった”とは言いません」
「うるせー山居」
口だけで反論して自分の方を向かない久遠に、山居はため息を吐いた。
「でも、真鍋先生の力を見れたのは、久しぶりですね」
「まあ、教師は普通俺らの見えるとこじゃ力使わねーし」
眼鏡を押し上げて言った山居に、久遠がやっと振り向き、賛同した。
その大きな目が、山居を見て止まる。
山居が反応する暇なく、その身体を後ろからがっちりホールドして、背面投げをした久遠に、周囲の生徒は驚いた。
久遠はそのまま“山居”を自分の身体の下で拘束する。
「お前も今の“発明品”だろ?」
久遠の断定した問いかけに、彼の動きが止まった。
「よりによって山居に化けるとは許せねぇ!
九生がここに居合わせなかったことを感謝するんだな!」
久遠の声をじっと黙って動かず聴いていた“人型”は、不意に唇を歪めて笑う。
「なるほど、“九生くん”」
「…え、あっ!」
なにか思いついた風な言葉に、久遠が自分の失敗を悟ったが、遅かった。
瞬間、“人型”の姿は弾けて消え、その場には大きな鏡の破片が残る。
破片を拾って、久遠は戦慄した。
「本気で能力をコピーしやがった…」
驚きを上回るのは、恐怖に近い。
一部始終を見ていた真鍋は、スマートフォンを取りだし、NOA本部にかける。
「真鍋です。
開かずの間から人形が逃走。
戦闘部隊と、至急生徒の避難を――………え?」
『それが、異変を察知して向かった教師たちが、寮の建物周囲に見えないバリアが出現していて、壊せないと言うんだ。外からも中からも、通れない。
実質、今、そこは外界から隔離されている』
本部にいる同僚の言葉に、真鍋は凍り付いた。
周囲にいる久遠や、他の生徒が異常を察したのか、不安そうな視線を寄越した。
生徒達を見回して、真鍋は考える。
この建物には、中等部男子の生徒のほとんどが残っている。
あとは、抜き打ち検査に訪れている教師が数人。
そのメンバーで、どうにかするしかない。
最悪なことに、おそらく敵は―――― 一体じゃない。
104号室。
九生と白倉の部屋だ。
白倉が吾妻の部屋に泊まるようになってからは、九生一人の部屋と認識されて、久遠をはじめとした仲間がよく遊びに来る。
「なんか、今騒ぎ声が…」
九生は扉を開けて、廊下に出る。
人気のない最上階の廊下。
しん、と静まっている。
気のせいだろうか、と首をひねる。
「九生くん」
名前を呼ばれて、九生は視線を先ほど顔を向けていたのと反対側の廊下に向けた。
「山居」
山居が立っている。
「どうしたんじゃ?
なんかあったんか?」
駆け寄ってきた九生に、山居は顔を曇らせる。
「実は、開かずの間から人型が逃走したらしくて、騒ぎになっているんです」
「人型?」
「あの部屋にあった発明品の一つでしょう。
その場に居合わせた真鍋先生がおっしゃるには、いろいろな発明品と一緒に長い間放置されていた所為で、妙な不具合が生じている、と」
「…不具合なあ」
九生は腕を組んで考え込む。
九生を見つめて、山居は微かに微笑んだ。
「…それって、お前さんみたいに、他人の身体や記憶や力を模倣したり、一種の人格が備わっとったりすること?」
九生の問いかけに、頷きかけて、“山居”は動きを止めた。
眼前で、九生は笑っている。どこか、凄みのある笑みだ。
九生の手が白い光をまとって振るわれた。避ける暇なく、“山居”の頭を破壊する。
ただの人型に戻った身体が、床に倒れ込んだ。
ロボットのような胴体と、壊れた頭。
「山居に化けて出るなんて、万死に値するぜよ。
俺が、あいつを間違うと思うなよ」
低く鋭い声で言い、九生は自室の扉を開けて、遊びに来ていた仲間の名前を呼ぶ。
部屋から出てきた本物の山居は、廊下に倒れている人型を見て、驚いた。
「開かずの間の発明品の一個らしいな」
「…それはまた」
「こいつを見る限り、他人の身体や記憶や力を模倣する能力と、破壊衝動に近い人格が備わっとるっぽいぜ」
「…よくわかりましたね」
山居はしみじみ感心したように呟く。
「そりゃ、お前に化けてたからな」
「ああ」
私は部屋の中にいましたもんね、と山居は納得する。
九生は内心「他の場所におったとしても、見間違える気はねぇけど」と思うが、口にはしない。なんとなく気恥ずかしい。
「あとは、俺の能力やの」
「ああ、人型なら、私たちのような脳はありませんから、九生くんの力が干渉できませんしね」
山居はうんうん頷いて、とりあえず他の階を見に行きますか、と言う。
その時、スピーカーから音声が流れた。放送だ。
『全寮生に至急連絡。
寮内に、姿・記憶・能力を模倣する人型が複数体紛れ込んどる。
加えて、この寮は外界と隔絶されとる。
外から助けが来るまでの間、傍にいる仲間と連携して、身を守れ。
決して一人になるな!』
おそらく一組の担任の真鍋だ。
抜き打ち検査に来ていたのだろう。
「だ、そうじゃ」
「では、しばらくご一緒しましょうか」
山居が微笑んで差し出した手を掴んで、九生は不意ににっこりと微笑んだ。
きょとんとした山居にぎゅっと抱きつく。
「あー、やっぱり本物の山居はええの~」
「はい? それどころではないのでは?」
「細かいこと言いなさんな。俺のハートはブロークンしかけたんじゃ」
「…はあ」
偽物とはいえ、お前に攻撃するんは痛いのー、と呟いて、九生は山居にしがみついていたが、不意に廊下の向こうから聞こえた足音に顔を上げる。
若干引きつった笑みは、それ以上に頼もしさと信頼を映している。
「よう。出陣か?」
そこに立っているのは、105号室の住人、若松と雪代。
そして、最上の人間しか住めない100号室の住人、化野。
「だって、面白そうじゃない」
化野は微笑む。
「俺の知りあいに化けてたら、バラバラにしてあげようかな、って」
楽しげな台詞を聴いて戦慄した九生は、雪代にことそり訊いた。
「実は、若干不機嫌?」
「…今日、映画に行く予定だったからな」
雪代は小声で答えてくれた。
転移の力で三階に飛んだ流河たちは、一見静かな廊下に、息を呑む。
「俺ら、四階に行ってみるな」
「くれぐれも気をつけろや」
岩永の発案に、優衣が軽く釘を刺す。
放送を訊く限り、厄介そうだ。心配されている。
岩永は微笑んで、村崎の手を握る。
「村崎がおるからへーき」
そう答えて、長い廊下を走り出す。
手を引かれるまま後を追う村崎の頬が若干赤かったので、つっこもうかとも思ったが、結局手を振るだけに留めた。
「先生たちも何体いるかわかってないんだよね?」
「多分な」
流河と優衣は三階の廊下を歩きながら、潜めた声で会話する。
「お前、この前開かずの間に入ったやろ?
なんかそんなもん見ぃひんかったんかいな」
「そこまで余裕あるわけないじゃん。吾妻クンが女になったのに」
「ま、そーか」
優衣はあっさり納得して、廊下に並ぶ部屋の扉を見遣る。
その中の一つから、大きな音がした。
「今の」
「行くで!」
廊下の端から三番目の部屋だ。扉を蹴破って入ると、部屋の隅に倒れているその部屋の住人と、中央に立つのは、傘を持った――――。
「うわ、訊いてたけど不気味~」
流河理人、の姿をした人型。
人型は、自分のオリジナルがいることを認識して、すぐに攻撃に移った。
傘を振るって風を起こし、飛びかかってくる。
流河は成り行きから持ってきてしまった、化野プレゼントの花柄傘を閉じたまま、振るい発生させた吹雪で人型を凪ぎ払う。
「本気である程度、能力を模倣できるみたいだね」
「やっかいやな」
人型は着地すると傘を振るい、炎を発生させる。
六つの矢となって流河と優衣に向かった炎に、優衣が右手を振るう。
優衣の手の周囲に踊るように浮かんだ影が、六つの矢の形となって飛ぶ。
炎を全てたたき落とした。
「情報追加。本物ほどの攻撃力はない」
「みたいね」
人型は能力を模倣するが、本物ほどの力の質はないようだ。
人型が傘を握って高く飛ぶ。
天井を蹴って方向転換し、流河と優衣の背後に着地する。
「あ、こら逃がすかっ!」
勝ち目がないと悟る頭や危機への恐怖もあるらしい。
逃亡を図った人型に、流河と優衣は慌てて廊下に出る。
そこで、床から伸びた幾重ものコードに四肢を縛られ、もがく人型の姿を見る。
「君たちが戦っていたのか。らしくないな、逃がすなんて」
人型の前に立っていた長身の男は、黒縁の眼鏡を押し上げる。
右手を軽く振るうと、人型を縛り上げていたコードが更に身体を戒め、人型を粉々に破壊した。
コードは生き物のように踊って、その男の手に、猫のような仕草ですり寄る。
「瀬生」
三年一組所属の瀬生という生徒は、にっ、と笑った。
「ここで出会ったのも縁だ。一緒に行くかい?」
瀬生の言葉に、流河と優衣は顔を見合わせて、頷いた。
四階の廊下を走る岩永と村崎は、騒音が上や下の階から聞こえることを察して、「ここにはまだおらんみたいや」と判断する。
四階には人型は侵入していないらしい。
「あるいは、四階を担当しとる先生がどうにかしたんかもな」
「ああ、そっか」
村崎の言葉に、岩永は納得する。
「ほな、五階に行ってみて…」
「嵐」
岩永の名前を呼び、村崎はその手を軽く捕らえた。
「…儂と一緒でよかったか?」
「え?」
村崎は微かに不安そうな顔だ。いや、不安ではなく、自信がないというような。
「儂は、防御に特化しとるし、…あまり強い方やない」
自分と一緒では危険かもしれない。と彼は言う。
岩永はああ言ってくれたけれど、うれしいけれど。
ここは戦闘鳥籠〈バトルケイジ〉ではないのだ。
攻撃を喰らえば、怪我をする。
致命的な傷を負えば、死ぬかも。
岩永は意外すぎることを言われたらしく、びっくりしていた。
「…そんなん、村崎やからやもん」
と、当たり前の口調で答える。
村崎は意味がわからず困惑した。
「村崎と一緒におりたいんやから、一緒におるんが自然やんか」
岩永は微笑んで答えた。
村崎はしばらく間の抜けた顔で固まって、不意に赤くなる。
「な?」
念を押すように笑う岩永がかわいくてしかたない。
ああ、抱きしめたいけど、今はダメだ。
これが終わったら、目一杯抱きしめよう。彼が恥ずかしがっても。
そう幸せな気持ちで誓った村崎は、不意に傍に他人の気配を感じて振り向いた。
岩永もぎょっとして振り向く。
そこには、声をかけるにかけられず、困った顔の吾妻。
「うわ、吾妻!」
「…驚きたいの、こっちだよ…」
吾妻は軽く照れた顔で、困ったように頭をかく。
「すまん。気づかんで」
「いや、かまわない。僕も声かけなかったし」
村崎が謝ると、吾妻は気にしてない、と手を振った。
「吾妻はんも、人型を倒しに?」
「ん? ああ」
「不用心やで。一人で行動するなって言われたやんか」
岩永が若干きつい口調で咎めると、吾妻は途端不安そうに、
「だけど、白倉が自販機に行くって言って、帰って来ないから…」
と答える。
それでは、しかたないかも、と岩永も村崎も思う。
「ずっと探しとったんか?」
「うん」
岩永が尋ねると、吾妻は頷いた。
「ほな、儂らも探すから、一緒に行こうや」
「ほんと? ありがとう」
吾妻は嬉しそうに笑った。
違和感を唐突に覚えて、岩永は吾妻の顔を見た。
「…お前、」
じっと、吾妻の顔を見る。どこから見ても吾妻だ。気配も。
だけど、なんか、自分たちの知っている吾妻とは、なにか違う感じが。
岩永の注視を受けて、吾妻は不意に笑った。
瞬間的に発動させた炎が自分を襲うのを、信じられない気持ちで見ていたのに、身体では目の前の吾妻を敵と認識していたのだ。
身体は素早く動いて、吸収の壁を出現させる。
炎はそれに吸い込まれた。
吾妻が背後に飛ぶ。
「あれは」
「人型! …のはずや」
村崎の早口の問いに、岩永は間髪入れずに答えたが、なぜか自信なさげに付け足した。
「やっぱり、その力は怖いね」
“吾妻”は不敵に微笑んで、手を宙で踊らせる。
炎がその軌跡にそって、燃え上がった。
村崎と岩永は構える。
“吾妻”の周りを踊った炎が、一瞬で二つの巨大な業火に変化して、村崎と岩永を襲う。
岩永は村崎の前までカバーして、吸収の力を発生させる。
吸い込まれた炎。
しかし、“吾妻”は眼前まで迫っていた。
炎を纏わせた蹴りを、吸収の力を纏わせた腕で防ぐが、背後に数メートル吹っ飛ばされた。
「嵐!」
村崎の声が遠くで聞こえる。
「余所見は駄目だよ」
“吾妻”は笑って、村崎に向き直る。
咄嗟の防御が遅れた村崎の顔面に、球状の炎を投げつける。
村崎は廊下を転がるように飛ばされ、床に倒れ込む。
「村崎!?」
ここは戦闘鳥籠〈バトルケイジ>じゃないのだ。顔に怪我なんてしたら、下手したら命も。
「んのっ!」
岩永は床を蹴って、“吾妻”に突っ込む。
“吾妻”は炎を放ったが、岩永が周囲に纏う吸収の壁に吸い込まれる。
“吾妻”の間近で、温度操作の力を操り、水弾を発生させる。
首を狙った一撃は、あっさり防がれた。
“吾妻”の周囲を覆うのは、透明な、灼熱の壁。
「…あ」
一気に蒸発した水。吾妻が片手を突きだした。
咄嗟に頭を背後に反らして交わす。
顔の上を通過した大きな手は、壁に当たった。
壁がジュッと嫌な音を立てて水のように溶ける。
「っ!」
連続で繰り出される拳と蹴りを、飛んで交わし、岩永は離れた位置に着地する。
「まだまだ、だよ」
“吾妻”は右手を突きだし、手の平に生まれた球状の炎を放つ。
岩永は円を宙に描いて、吸収の壁を作る。
“吾妻”が指を弾いて、音を鳴らした。瞬間、丸い炎は、霧散して百を越す小さな弾となり、四方から岩永を襲った。
自分の身体の前にしか吸収の壁を作っていなかった岩永は、もろに喰らって地面に膝を突く。
「…っ…」
肌を焼く傷みに、声が漏れる。
足や腕に、ひどい火傷ができている。鋭く痛んで、意識が霞みかけた。
違和感がある。
違う。吾妻じゃない。
でも、人型とも思えない。
「お前、何者や…」
本物の力をただ模倣するなら、記憶もコピーするなら、あんな多彩な力の使い方はできない。
自分たちの知る吾妻は、あんな多彩な使い方を知らない。
力業で、ただ炎を放つ。それが吾妻の筈だ。
「さあ?」
“吾妻”は悠然と微笑んだ。
そして、床を蹴る。
岩永は足に力を入れてどうにか立つが、ふらついた。
眼前に迫る“吾妻”に、とても対応できそうにない。
「嵐、伏せぇ!」
だが、響いた村崎の声に思わず反応した。
“吾妻”の背後を狙って放たれたのは、巨大な岩の刃。
しゃがもうとした。だが、一瞬後には、“吾妻”は眼前にいない。
自分の背後に回った“吾妻”が身体を羽交い締めにした。
視界に迫るのは、村崎の放った石の刃。
「ら…」
村崎の声が、聞こえた気がした。
泣きそうな声が。
昼下がり。唐突に岩永がそんなことを言ったので、村崎は思わず昨日の記憶を検索した。
202号室のリビング。テーブルを囲んで、昨日のようにお茶をしている最中だ。
流河はげっそりした顔で、
「思い出したくもない…ろくでもない…」
と死霊のような声で呟いた。
「吾妻が原因…やんな?」
岩永は村崎の顔を見てから、流河を見て尋ねた。
村崎に限って、流河に迷惑をかけるはずがないし、という信頼だ。
村崎は思い当たったあと、気まずそうな顔をする。
「吾妻クンと村崎クンが原因です! 俺、あんな頭痛い瞬間に居合わせたことを末代まで祟る!」
「…誰に?」
余程根に持っているらしく、流河らしからぬ台詞が飛び出した。
岩永はおそるおそる問いかける。
「……………………………………迂闊な自分の脳味噌、かな…………」
流河は勢いを失って、へにょりとテーブルに顔をうつぶせ、力無く呟いた。
吾妻や村崎、と言い切らないあたりが流河の優しいところだ。
「つまり村崎も原因やった…ってこと?」
「…まあ」
岩永の、まさか信じられない、という台詞に、村崎は躊躇いがちに頷いた。
「絶対バカップル資質が高いよねー。201号室の二人と村崎クンって」
「…資質ってなんや」
「元々生まれ持った才能。バカップルになる才能だよ。
吾妻クンと白倉クンも大概だけど、キミも大概」
きっぱり言い切られて、村崎は密かにショックを受ける。
「やけど、それは嵐が―――――」
「“運命の人やったから”とか言わないでね」
台詞を先読みされて拒まれ、村崎は小さな声で謝った。当たりだったらしい。
それに、岩永が若干顔を赤くしながら、引く。
「お前、その反応はないやろ…」
「えー、せやかて、運命って……」
岩永はないない、と言いたげだ。
恥じらっているならまだしも、本気で「ない」と思っているらしい。
「そういえば、岩永クンって案外情緒ないもんね」
「ロマンチストとかいう称号は吾妻か白倉か優衣に任すわ」
俺は現実的に生きんねん、と岩永は真顔で言う。
村崎は悲しくなった。
「村崎のことは、運命やからやなく、性格とか顔とか全部好みのタイプやったってことやろ……」
へこんだ村崎を見て、岩永は今度は恥じらって呟いた。
「…嵐」
あからさまに感動して、気分が浮上した村崎を見遣って、流河が呆れる。
「そういえば、そろそろやない?」
村崎に見つめられているのが恥ずかしいのか、岩永は話を逸らすように話題を変えた。
「ああ、もしかして、抜き打ち検査?」
「そうそう」
「七月の恒例行事だもんね。今日か来週の土日でしょ」
流河の言葉に、岩永は同意する。村崎もしかたなく同意した。
話題を変えられたのは寂しいが、かわいい岩永が見れたしかわいい台詞も聞けたので満足しておこう、と思っていると、見透かされたのか流河に呆れた眼差しを向けられた。
扉がこんこん、とノックされる。
「あれ、今日だったか?」
流河が顔を上げて、椅子から立ち上がる。
「抜き打ち検査やけどー」
真鍋が扉を開けて顔を出した。
「今年はこの階、賢人ちゃんの担当か」
岩永も椅子から立ち上がって、真鍋を見て呟いた。
「はいはいまいてくでー。ちゃっちゃとやんでー」
「…真鍋先生? どしたの? なんかお疲れみたいだね…」
随分投げやりな真鍋の様子に、流河は苦笑して尋ねた。
真鍋はげっそりした顔で、
「隣は誰と誰の部屋や」
とだけ答えた。
それで、流河と岩永、村崎には「ああ、バカップルの被害にあったんや(だ)な」と理解できたので、それ以上は問わなかった。
「せやけど、賢人ちゃんでよかったわ。
あんまりなじみのない先生やと、帰るまで緊張しっぱなしやから」
一階につき、一人の教師で抜き打ち検査を行う。
どの階にどの教師が来るかはわからない。
教師本人も、決まるまでわからない。
厳密に言えば、抜き打ち検査もレクリエーションの一つだ。
この高級ホテルのようなNOA寮は大概なんでも持ち込み許可が出てしまうので、抜き打ち検査でなにかを没収された生徒は過去数えるくらいしかいない。
寮生自身が、このイベントを楽しんでもいる。
「…この棚は、全部媒体か?」
「そーでーす」
流河の寝室。
奥の棚にずらりと並ぶのは、流河が主に媒体に使う傘や扇子だ。
真鍋は傘の一つを手にとって開いてみる。
「…こういう趣味か?」
「それは誕生日にもらったもの」
傘の柄は恐ろしい顔をした鬼の面がプリントされている。
普通、こんな傘は使わないし、普通の店にはまず売ってないだろう。
「こんなん誕生日によこすん誰やねん…」
「俺やけど」
真鍋がぼやくと、岩永が手を挙げた。真鍋は若干呆れた顔をしたが、それだけだった。
「それだけ?」
岩永が意外そうな声を挙げる。
「どうせ、岩永は他の本命プレゼントがあったんやろうしな…」
「さすが真鍋先生、よくおわかりで」
真鍋の台詞に、流河が微笑んで答えた。
岩永プレゼントの傘を戻して、もう一つ傘を手に取る。
開くと、今度は様々な花があしらわれた豪華な傘だった。ちなみに花の縁取り部分の色は金である。
というか、女性が使うような傘だ。
「これも貰い物か?」
「あー、それねー………」
流河が遠い目をする。
「化野クンがくれたんだけど、『俺の御利益で勝率あがるよきっと』って言われてね?
だからさ、それ使って万一負けちゃったらどんな目に遭わされるんだろーって思ったら怖くて使えないんだ…」
流河の切実な台詞に、岩永も村崎も、真鍋も黙ってしまった。
教師の自分がなにか言わなければ、と真鍋は思考をフル回転させるが、不意にハッとして顔を上げ、耳を澄ませた。
「…え、今、」
「揺れたし、悲鳴もしたな」
流河の困惑した声に、真鍋は鋭く答える。
傘を流河に放り投げると、真鍋は扉に向かって走り出した。
「絶対部屋から出るなよ! ええな!」
厳命して、真鍋は部屋から駆け出して行った。
勢いのついていた扉が閉まる。
「…って言われても」
流河は呟いて、岩永と村崎を見る。
二人とも、おとなしくここで待つ表情ではない。
流河の影が不意に伸びて、中から優衣が現れた。
「今の聴いたか?」
唐突に尋ねられたが、流河はすぐに頷いた。
「お前の瞬間移動で飛ばしてくれ」
「もちろん。おやすいご用だよ。
岩永クンたちも、そのつもりでしょ?」
岩永と村崎は頷く。
「じゃ、行くよ。動かないように!」
流河は声高々に言って、意識を集中させた。
騒ぎ声がする場所は、どうやら「開かずの間」らしい。
真鍋が到着すると、既に生徒達の野次馬がたくさんいた。
生徒達に退くよう言って、部屋の前まで行く。
見ると、目張りなどで塞いであった扉が、中側から破壊されて跡形もなかった。
おそらく超能力だ。
ここに収納されていたのは、超能力を使用した発明品(?)だったし、それを作った主は良くも悪くも天才だった。
下手に片付けようとしたら、寮を一時封鎖する騒ぎになるかもしれないと危惧されて、開かずの間として放置されたのだから。
部屋の中は混沌としている。様々なアイテムが、床にしっちゃかめっちゃかに転がっている。
「賢人ちゃん」
「あ、ああ」
野次馬の中にいた夕が、真鍋に近寄ってきた。
「すごいなあ。なにがあった?」
「それは調べてみんとわからんから、近づくな…………」
夕を手で制止して、視線を室内に戻したところで、真鍋の声が途切れた。
「賢人ちゃん?」
疑問に思って、部屋の中を覗こうとした夕の鳩尾に、いきなり真鍋の蹴りがたたき込まれて、夕は背後に数メートル吹っ飛ばされた。
どうにか着地して、腹を押さえて呻く。
「ちょ、真鍋センセ。なにしてんだよ!?」
反対側の廊下にいた久遠がびっくりして叫んだ。周囲の生徒達もざわめいている。
「賢人ちゃん、ひどいじゃん。なにすんのいきなり…」
「いきなり、なあ」
夕の非難に、真鍋は口角を上げる。
「いきなりで予想外なら、なんでしっかりガードしとんの?」
真鍋の低い声音、内容に久遠はハッとした。
まともに入ったなら、普通うずくまる。動けないだろう。
なのに、夕は立っているし、せき込みもしなかった。
夕は驚いたあと、にやりと笑った。
まるで、歪な悪魔の笑みみたいに。
「うーん、流石に、教師ともなると、聡いな」
「…夕やないな、自分。誰や?」
「誰でもあらへん」
夕ははっきりと言い切った。その姿が文字通り歪んだ。
まるで、ノイズの入った映像のように、縦に波が走って身体そのものの形が歪む。
その場の生徒達が驚愕して声も失う中、その姿は赤い髪の男に変わった。
「え、嘘!?」
久遠が大声を上げる。目の前の出来事を否定したいように。
なぜなら、そこに立っている、今さっきまで夕だった“存在”の姿は、久遠そのものになっていたからだ。
「俺は、ただの化け物ってとこだ」
言い切る声ももう夕のものではない。
大きく口を開けた久遠の姿をしたなにかは、ハッとして周囲を見回す。
「お前はどうやら、出会った人間から姿・記憶・力をコピーする人型道具らしいな。
どうも、他のいろんな発明品と一緒くたに置かれとった所為で、変な不具合が生じたとみえる」
真鍋は淡々と解析する。
久遠の姿をした“人型道具”は自分を囲む壁を叩いている。
彼の周囲を覆うのは、文字通り透明な“壁”だ。
彼が発動させようとした久遠の“声”の超能力ごと、声を封じた。
「つまり、あれは人間ではない、と…?」
久遠の隣にいた山居が、おそるおそる尋ねた。
「せや。
やって、今あいつを隔離しとる壁は“酸素”すら通さへん。
人間なら、呼吸困難起こす頃や」
真鍋は山居に答えて、自分の壁によって身動きのとれない相手に近寄る。
「こうなったら廃棄処分や。
恨むな」
宣言して、右手を勢いよく上に持ち上げる。
瞬間、廊下の幅一杯に出現した透明な“壁”が“人型道具”を高速で押し、一気に廊下の端まで追いやった。
最後は、“壁”と廊下の壁の間に挟まれ、音を立てて壊れる。
そこには、機械の線や部品だけが残った。
「相変わらずすげー力だけど、…俺の姿してるヤツがぺちゃんこになるのって見たくねぇな…」
久遠が若干気持ち悪そうに呟いた。真鍋は振り返ってすまなそうに苦笑する。
「悪かったな。あとでなんかおごったるから」
「マジ!? ならオッケー!」
「それで浮上できるなら“気持ち悪かった”とは言いません」
「うるせー山居」
口だけで反論して自分の方を向かない久遠に、山居はため息を吐いた。
「でも、真鍋先生の力を見れたのは、久しぶりですね」
「まあ、教師は普通俺らの見えるとこじゃ力使わねーし」
眼鏡を押し上げて言った山居に、久遠がやっと振り向き、賛同した。
その大きな目が、山居を見て止まる。
山居が反応する暇なく、その身体を後ろからがっちりホールドして、背面投げをした久遠に、周囲の生徒は驚いた。
久遠はそのまま“山居”を自分の身体の下で拘束する。
「お前も今の“発明品”だろ?」
久遠の断定した問いかけに、彼の動きが止まった。
「よりによって山居に化けるとは許せねぇ!
九生がここに居合わせなかったことを感謝するんだな!」
久遠の声をじっと黙って動かず聴いていた“人型”は、不意に唇を歪めて笑う。
「なるほど、“九生くん”」
「…え、あっ!」
なにか思いついた風な言葉に、久遠が自分の失敗を悟ったが、遅かった。
瞬間、“人型”の姿は弾けて消え、その場には大きな鏡の破片が残る。
破片を拾って、久遠は戦慄した。
「本気で能力をコピーしやがった…」
驚きを上回るのは、恐怖に近い。
一部始終を見ていた真鍋は、スマートフォンを取りだし、NOA本部にかける。
「真鍋です。
開かずの間から人形が逃走。
戦闘部隊と、至急生徒の避難を――………え?」
『それが、異変を察知して向かった教師たちが、寮の建物周囲に見えないバリアが出現していて、壊せないと言うんだ。外からも中からも、通れない。
実質、今、そこは外界から隔離されている』
本部にいる同僚の言葉に、真鍋は凍り付いた。
周囲にいる久遠や、他の生徒が異常を察したのか、不安そうな視線を寄越した。
生徒達を見回して、真鍋は考える。
この建物には、中等部男子の生徒のほとんどが残っている。
あとは、抜き打ち検査に訪れている教師が数人。
そのメンバーで、どうにかするしかない。
最悪なことに、おそらく敵は―――― 一体じゃない。
104号室。
九生と白倉の部屋だ。
白倉が吾妻の部屋に泊まるようになってからは、九生一人の部屋と認識されて、久遠をはじめとした仲間がよく遊びに来る。
「なんか、今騒ぎ声が…」
九生は扉を開けて、廊下に出る。
人気のない最上階の廊下。
しん、と静まっている。
気のせいだろうか、と首をひねる。
「九生くん」
名前を呼ばれて、九生は視線を先ほど顔を向けていたのと反対側の廊下に向けた。
「山居」
山居が立っている。
「どうしたんじゃ?
なんかあったんか?」
駆け寄ってきた九生に、山居は顔を曇らせる。
「実は、開かずの間から人型が逃走したらしくて、騒ぎになっているんです」
「人型?」
「あの部屋にあった発明品の一つでしょう。
その場に居合わせた真鍋先生がおっしゃるには、いろいろな発明品と一緒に長い間放置されていた所為で、妙な不具合が生じている、と」
「…不具合なあ」
九生は腕を組んで考え込む。
九生を見つめて、山居は微かに微笑んだ。
「…それって、お前さんみたいに、他人の身体や記憶や力を模倣したり、一種の人格が備わっとったりすること?」
九生の問いかけに、頷きかけて、“山居”は動きを止めた。
眼前で、九生は笑っている。どこか、凄みのある笑みだ。
九生の手が白い光をまとって振るわれた。避ける暇なく、“山居”の頭を破壊する。
ただの人型に戻った身体が、床に倒れ込んだ。
ロボットのような胴体と、壊れた頭。
「山居に化けて出るなんて、万死に値するぜよ。
俺が、あいつを間違うと思うなよ」
低く鋭い声で言い、九生は自室の扉を開けて、遊びに来ていた仲間の名前を呼ぶ。
部屋から出てきた本物の山居は、廊下に倒れている人型を見て、驚いた。
「開かずの間の発明品の一個らしいな」
「…それはまた」
「こいつを見る限り、他人の身体や記憶や力を模倣する能力と、破壊衝動に近い人格が備わっとるっぽいぜ」
「…よくわかりましたね」
山居はしみじみ感心したように呟く。
「そりゃ、お前に化けてたからな」
「ああ」
私は部屋の中にいましたもんね、と山居は納得する。
九生は内心「他の場所におったとしても、見間違える気はねぇけど」と思うが、口にはしない。なんとなく気恥ずかしい。
「あとは、俺の能力やの」
「ああ、人型なら、私たちのような脳はありませんから、九生くんの力が干渉できませんしね」
山居はうんうん頷いて、とりあえず他の階を見に行きますか、と言う。
その時、スピーカーから音声が流れた。放送だ。
『全寮生に至急連絡。
寮内に、姿・記憶・能力を模倣する人型が複数体紛れ込んどる。
加えて、この寮は外界と隔絶されとる。
外から助けが来るまでの間、傍にいる仲間と連携して、身を守れ。
決して一人になるな!』
おそらく一組の担任の真鍋だ。
抜き打ち検査に来ていたのだろう。
「だ、そうじゃ」
「では、しばらくご一緒しましょうか」
山居が微笑んで差し出した手を掴んで、九生は不意ににっこりと微笑んだ。
きょとんとした山居にぎゅっと抱きつく。
「あー、やっぱり本物の山居はええの~」
「はい? それどころではないのでは?」
「細かいこと言いなさんな。俺のハートはブロークンしかけたんじゃ」
「…はあ」
偽物とはいえ、お前に攻撃するんは痛いのー、と呟いて、九生は山居にしがみついていたが、不意に廊下の向こうから聞こえた足音に顔を上げる。
若干引きつった笑みは、それ以上に頼もしさと信頼を映している。
「よう。出陣か?」
そこに立っているのは、105号室の住人、若松と雪代。
そして、最上の人間しか住めない100号室の住人、化野。
「だって、面白そうじゃない」
化野は微笑む。
「俺の知りあいに化けてたら、バラバラにしてあげようかな、って」
楽しげな台詞を聴いて戦慄した九生は、雪代にことそり訊いた。
「実は、若干不機嫌?」
「…今日、映画に行く予定だったからな」
雪代は小声で答えてくれた。
転移の力で三階に飛んだ流河たちは、一見静かな廊下に、息を呑む。
「俺ら、四階に行ってみるな」
「くれぐれも気をつけろや」
岩永の発案に、優衣が軽く釘を刺す。
放送を訊く限り、厄介そうだ。心配されている。
岩永は微笑んで、村崎の手を握る。
「村崎がおるからへーき」
そう答えて、長い廊下を走り出す。
手を引かれるまま後を追う村崎の頬が若干赤かったので、つっこもうかとも思ったが、結局手を振るだけに留めた。
「先生たちも何体いるかわかってないんだよね?」
「多分な」
流河と優衣は三階の廊下を歩きながら、潜めた声で会話する。
「お前、この前開かずの間に入ったやろ?
なんかそんなもん見ぃひんかったんかいな」
「そこまで余裕あるわけないじゃん。吾妻クンが女になったのに」
「ま、そーか」
優衣はあっさり納得して、廊下に並ぶ部屋の扉を見遣る。
その中の一つから、大きな音がした。
「今の」
「行くで!」
廊下の端から三番目の部屋だ。扉を蹴破って入ると、部屋の隅に倒れているその部屋の住人と、中央に立つのは、傘を持った――――。
「うわ、訊いてたけど不気味~」
流河理人、の姿をした人型。
人型は、自分のオリジナルがいることを認識して、すぐに攻撃に移った。
傘を振るって風を起こし、飛びかかってくる。
流河は成り行きから持ってきてしまった、化野プレゼントの花柄傘を閉じたまま、振るい発生させた吹雪で人型を凪ぎ払う。
「本気である程度、能力を模倣できるみたいだね」
「やっかいやな」
人型は着地すると傘を振るい、炎を発生させる。
六つの矢となって流河と優衣に向かった炎に、優衣が右手を振るう。
優衣の手の周囲に踊るように浮かんだ影が、六つの矢の形となって飛ぶ。
炎を全てたたき落とした。
「情報追加。本物ほどの攻撃力はない」
「みたいね」
人型は能力を模倣するが、本物ほどの力の質はないようだ。
人型が傘を握って高く飛ぶ。
天井を蹴って方向転換し、流河と優衣の背後に着地する。
「あ、こら逃がすかっ!」
勝ち目がないと悟る頭や危機への恐怖もあるらしい。
逃亡を図った人型に、流河と優衣は慌てて廊下に出る。
そこで、床から伸びた幾重ものコードに四肢を縛られ、もがく人型の姿を見る。
「君たちが戦っていたのか。らしくないな、逃がすなんて」
人型の前に立っていた長身の男は、黒縁の眼鏡を押し上げる。
右手を軽く振るうと、人型を縛り上げていたコードが更に身体を戒め、人型を粉々に破壊した。
コードは生き物のように踊って、その男の手に、猫のような仕草ですり寄る。
「瀬生」
三年一組所属の瀬生という生徒は、にっ、と笑った。
「ここで出会ったのも縁だ。一緒に行くかい?」
瀬生の言葉に、流河と優衣は顔を見合わせて、頷いた。
四階の廊下を走る岩永と村崎は、騒音が上や下の階から聞こえることを察して、「ここにはまだおらんみたいや」と判断する。
四階には人型は侵入していないらしい。
「あるいは、四階を担当しとる先生がどうにかしたんかもな」
「ああ、そっか」
村崎の言葉に、岩永は納得する。
「ほな、五階に行ってみて…」
「嵐」
岩永の名前を呼び、村崎はその手を軽く捕らえた。
「…儂と一緒でよかったか?」
「え?」
村崎は微かに不安そうな顔だ。いや、不安ではなく、自信がないというような。
「儂は、防御に特化しとるし、…あまり強い方やない」
自分と一緒では危険かもしれない。と彼は言う。
岩永はああ言ってくれたけれど、うれしいけれど。
ここは戦闘鳥籠〈バトルケイジ〉ではないのだ。
攻撃を喰らえば、怪我をする。
致命的な傷を負えば、死ぬかも。
岩永は意外すぎることを言われたらしく、びっくりしていた。
「…そんなん、村崎やからやもん」
と、当たり前の口調で答える。
村崎は意味がわからず困惑した。
「村崎と一緒におりたいんやから、一緒におるんが自然やんか」
岩永は微笑んで答えた。
村崎はしばらく間の抜けた顔で固まって、不意に赤くなる。
「な?」
念を押すように笑う岩永がかわいくてしかたない。
ああ、抱きしめたいけど、今はダメだ。
これが終わったら、目一杯抱きしめよう。彼が恥ずかしがっても。
そう幸せな気持ちで誓った村崎は、不意に傍に他人の気配を感じて振り向いた。
岩永もぎょっとして振り向く。
そこには、声をかけるにかけられず、困った顔の吾妻。
「うわ、吾妻!」
「…驚きたいの、こっちだよ…」
吾妻は軽く照れた顔で、困ったように頭をかく。
「すまん。気づかんで」
「いや、かまわない。僕も声かけなかったし」
村崎が謝ると、吾妻は気にしてない、と手を振った。
「吾妻はんも、人型を倒しに?」
「ん? ああ」
「不用心やで。一人で行動するなって言われたやんか」
岩永が若干きつい口調で咎めると、吾妻は途端不安そうに、
「だけど、白倉が自販機に行くって言って、帰って来ないから…」
と答える。
それでは、しかたないかも、と岩永も村崎も思う。
「ずっと探しとったんか?」
「うん」
岩永が尋ねると、吾妻は頷いた。
「ほな、儂らも探すから、一緒に行こうや」
「ほんと? ありがとう」
吾妻は嬉しそうに笑った。
違和感を唐突に覚えて、岩永は吾妻の顔を見た。
「…お前、」
じっと、吾妻の顔を見る。どこから見ても吾妻だ。気配も。
だけど、なんか、自分たちの知っている吾妻とは、なにか違う感じが。
岩永の注視を受けて、吾妻は不意に笑った。
瞬間的に発動させた炎が自分を襲うのを、信じられない気持ちで見ていたのに、身体では目の前の吾妻を敵と認識していたのだ。
身体は素早く動いて、吸収の壁を出現させる。
炎はそれに吸い込まれた。
吾妻が背後に飛ぶ。
「あれは」
「人型! …のはずや」
村崎の早口の問いに、岩永は間髪入れずに答えたが、なぜか自信なさげに付け足した。
「やっぱり、その力は怖いね」
“吾妻”は不敵に微笑んで、手を宙で踊らせる。
炎がその軌跡にそって、燃え上がった。
村崎と岩永は構える。
“吾妻”の周りを踊った炎が、一瞬で二つの巨大な業火に変化して、村崎と岩永を襲う。
岩永は村崎の前までカバーして、吸収の力を発生させる。
吸い込まれた炎。
しかし、“吾妻”は眼前まで迫っていた。
炎を纏わせた蹴りを、吸収の力を纏わせた腕で防ぐが、背後に数メートル吹っ飛ばされた。
「嵐!」
村崎の声が遠くで聞こえる。
「余所見は駄目だよ」
“吾妻”は笑って、村崎に向き直る。
咄嗟の防御が遅れた村崎の顔面に、球状の炎を投げつける。
村崎は廊下を転がるように飛ばされ、床に倒れ込む。
「村崎!?」
ここは戦闘鳥籠〈バトルケイジ>じゃないのだ。顔に怪我なんてしたら、下手したら命も。
「んのっ!」
岩永は床を蹴って、“吾妻”に突っ込む。
“吾妻”は炎を放ったが、岩永が周囲に纏う吸収の壁に吸い込まれる。
“吾妻”の間近で、温度操作の力を操り、水弾を発生させる。
首を狙った一撃は、あっさり防がれた。
“吾妻”の周囲を覆うのは、透明な、灼熱の壁。
「…あ」
一気に蒸発した水。吾妻が片手を突きだした。
咄嗟に頭を背後に反らして交わす。
顔の上を通過した大きな手は、壁に当たった。
壁がジュッと嫌な音を立てて水のように溶ける。
「っ!」
連続で繰り出される拳と蹴りを、飛んで交わし、岩永は離れた位置に着地する。
「まだまだ、だよ」
“吾妻”は右手を突きだし、手の平に生まれた球状の炎を放つ。
岩永は円を宙に描いて、吸収の壁を作る。
“吾妻”が指を弾いて、音を鳴らした。瞬間、丸い炎は、霧散して百を越す小さな弾となり、四方から岩永を襲った。
自分の身体の前にしか吸収の壁を作っていなかった岩永は、もろに喰らって地面に膝を突く。
「…っ…」
肌を焼く傷みに、声が漏れる。
足や腕に、ひどい火傷ができている。鋭く痛んで、意識が霞みかけた。
違和感がある。
違う。吾妻じゃない。
でも、人型とも思えない。
「お前、何者や…」
本物の力をただ模倣するなら、記憶もコピーするなら、あんな多彩な力の使い方はできない。
自分たちの知る吾妻は、あんな多彩な使い方を知らない。
力業で、ただ炎を放つ。それが吾妻の筈だ。
「さあ?」
“吾妻”は悠然と微笑んだ。
そして、床を蹴る。
岩永は足に力を入れてどうにか立つが、ふらついた。
眼前に迫る“吾妻”に、とても対応できそうにない。
「嵐、伏せぇ!」
だが、響いた村崎の声に思わず反応した。
“吾妻”の背後を狙って放たれたのは、巨大な岩の刃。
しゃがもうとした。だが、一瞬後には、“吾妻”は眼前にいない。
自分の背後に回った“吾妻”が身体を羽交い締めにした。
視界に迫るのは、村崎の放った石の刃。
「ら…」
村崎の声が、聞こえた気がした。
泣きそうな声が。
0
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もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。
すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。
主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。
――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました――
風景が目まぐるしく移り変わる。
天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。
移り変わる景色こそは、
第一天 ヴィロン。
第二天 ラキア。
第三天 シャハクィム。
第四天 ゼブル。
第五天 マオン。
第六天 マコン。
それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。
気付けば明星は、玉座に座っていた。
そこは天の最高位。
第七天 アラボト。
そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。
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