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第七章 星間の黒麒麟
第三話 落とされた謎
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地下都市の入り口は、NOAの立入禁止区域の地下三階に存在した。
長い長い廊下の奥。
煌々と人工の明かりが照らす下。
固く閉ざされた扉の前に佇んでいたのは、NOAのスタッフだろうか。
時波と藍澤、白倉の顔を一瞥して、「訓練ですか?」と穏やかに尋ねた。
それから吾妻の顔を見て、首を傾げた。
困ったような顔をして、持っていたノートパソコンらしきコンピューターを開き、なにかを調べる。
吾妻が心臓をばくばくさせて待つと、数分後、彼はパソコンを閉じて、微笑んだ。
「中等部三年一組、吾妻財前くんですね。
特例ですが、入ってもいいですよ」
優しい声音の言葉に、吾妻は一瞬ぽかんとして、それから白倉を抱きしめてしまった。
流石に白倉に叩かれたが、嬉しかったので痛くなかった。
「なぜ許可がおりたんだろうな」
地下都市といっても、地下に本当に街があるわけではなかった。
地下30階までの、街と同じ面積の「施設」。それが地下都市らしい。
長い通路を歩いて、訓練室に向かう最中、藍澤が呟いた。
「確かに。可能性はかなり低かったと思うが」
「特例って言ったよな?」
なんで吾妻に許可が降りたか、いぶかっているらしい。
時波と白倉も首をひねる。
「だけど、許可は許可だよ」
「いや、俺達がすっきりしない。
お前は許可さえ出ればどーでもいいんだろうが」
吾妻の言葉に、藍澤はドライに言う。
吾妻が微かに傷付いた顔をしたが、気にしない。
「多分、白倉の覚醒を後押ししたらしい、と認識されとるからじゃろ」
通路の向こうを、吾妻は今頃ハッとして見た。
ひたすら長く続く廊下。
その途中の扉の前で、背中を預けて佇んでいたのは九生だ。
「そうか。白倉の覚醒スイッチかもしれない、と思われてるんだな…」
時波が「だから特例か」と呟く。
九生の存在には全く驚かない。
吾妻は驚いた。九生は暴走キャリアじゃないはずだ。
「彼も、暴走キャリアなのか?」
同じ疑問を藍澤も抱いたらしく、そう尋ねた。
九生は笑顔で駆け寄ってくる。
「ここで会うんは初めてやの。
俺は暴走キャリアじゃないが、…なんちゅうか、“対策”の一部ってとこじゃ」
九生は考えながら、しっくり来る言葉を探した様子でそう言った。
藍澤はわかったらしい。ああ、と頷いた。
「じゃあ、俺は一人でも大丈夫だから、ここで別れるな」
「えっ!」
白倉が奥の扉を指さして、そう言ったので吾妻はショックを受けた。
ここまで来て別れるなんて。
「休憩時間には行くし」
「いやだよ。一緒がいい!」
白倉の手を掴んで懇願する。
吾妻の頭が不意に叩かれた。
「我が儘言うんじゃない。白倉の能力は他者が同じ部屋にいると危険なんだ」
時波だ。表情は無表情。
吾妻は白倉の二つ目の力を思い出して、それはそうだが、納得いかないと思った。
そんな吾妻の手を白倉が握る。
「終わったらずっと一緒だから…。
一緒にご飯たべて、今度こそ一緒にお風呂はいろ?」
愛らしい微笑みを浮かべてお願いされ、吾妻の顔は一気に真っ赤になった。
九生と時波が軽く青ざめる。
「…う、うん」
吾妻は白倉から視線を逸らし、どうにか頷いた。
こんなかわいい生き物をこれ以上見つめていたら、どうにかしてしまいそうだ。
俺が暴走する。
横を向いてしまった吾妻の心境はわかっているらしく、白倉は嬉しそうにはにかむと、伸び上がって吾妻の頬にちゅ、と口付けた。
「吾妻、ありがと。だいすき」
と、トドメに耳元で甘く囁かれ、吾妻は腰を抜かしそうになった。
むかついたらしい九生に腰を蹴られたおかげでどうにか免れたが。
「うん、…好きだよ」
目の前の白倉しか目に入らず、そのまま彼を抱きしめたら、今度は時波に背中を叩かれた。
背後で藍澤が「暑苦しい」と呟いた。
藍澤も危険だから一人で訓練を行うといなくなってしまい、吾妻は必然的に時波の訓練に付き合うことになった。
戦闘鳥籠〈バトルケイジ〉のような室内。
時波の向かいに立つのは、この地下都市のスタッフだ。
「まあ、いい機会じゃな」
壁際。吾妻の隣に立っていた九生がそう言う。
吾妻は首を傾げた。
「知りたかったんじゃろ?
俺がなんで白倉と時波の身体を操るか、許可されとるか」
九生は吾妻を見上げて、妖しく微笑む。
吾妻は唾を飲み込んで、無言で頷く。
「暴走キャリアは、未覚醒の力を自分では操れん。
それは、力のコントロール権を、掌握しとらんからじゃ」
視界で、スタッフが時波目掛けて超能力を発動させた。
吹雪の力だ。
「そもそも、暴走キャリアがなんで生まれるかっちゅうと、人間の超能力を内包する限界許容量が決まっていて、それは大抵は一つが限界。
二つ目の力を内包するのは、許容量を超えとるからじゃ。
お前みたいに平気なやつもおるが、難しいヤツもおる。
じゃから、抑圧された力は“暴走”しやすい形に変貌し、宿主を喰らう。
暴走キャリアが訓練するのは、二つ目の力の覚醒と、身体の許容量を大きくするため」
九生は微笑んだ。
眼前で、時波が手をかざす。
吹雪は時波の手に触れた瞬間、あの日の吾妻の業火のように消滅した。
時波の瞳が琥珀色に輝いている。
「瞳の色が変化するんは、暴走キャリアの力を使った時じゃな。
暴走キャリアの力はどれだけ未然に覚醒させても、大概宿主の全身を巡ってなんらかの干渉を起こしとる。
それが瞳に対しても起ことていて、結果瞳の色の変化になる、と言われとる」
九生の口調。九生の説明の続きの言葉。
それは、時波の口から発せられた。
琥珀色の瞳のまま、時波は吾妻を振り返った。
「暴走キャリア以上の干渉を外側から起こし、体内だけで巡る超能力を引っ張り出し、宿主にコントロール権を掌握させる。
俺の、“他者の脳を操る”力は、それに最適でな。
だから、俺は時波や白倉の身体を操ることを許可されとるんじゃ」
時波の口元が笑んだ。時波の声で、吾妻に説明する。
「…なるほど」
吾妻はかろうじてそう返した。
九生がなぜ白倉と時波の身体を操っているか、知りたかったからだ。
「まあ、これは全員にあてはまらん。他の方法の方がええっちゅうヤツもたくさんおる。
俺はたまたま時波たちの力に対応できるだけじゃ」
九生の声は真横から聞こえた。
吾妻が顔を上げると、九生は己の身体で微笑んでいる。
「ただ、夏のチーム戦は俺は手助けできんし、戦闘試験でも普通禁止じゃ。
だから、二人とも急いどる」
「…あれ、反則だったの?」
吾妻は数秒考えてから、そう尋ねた。
時波と戦った時の九生の干渉。
九生はただ笑うだけだ。
「あと、俺の力はそんな万能じゃないからの。
お前の身体を操るには至らん」
「…? どういうこと?」
「身体の主が許していない以上、外から脳を完全に支配するんはちぃと今の俺じゃ難しい。
精々、身体の自由を奪ったり、お前にやったみたいに脳を軽くいじったりするんが限界。
身体を操るんは、無理じゃ」
九生の言葉に、ふと思い出した。
出会ったばかりの頃、自分に悪夢のような映像を見せた九生。
あれのような状態か、と納得する。
「少しは謎がとけたかの?」
九生は自分の隣で明るく笑った。
年相応の笑顔だ。
「…あんた、存外僕にやさしいね?」
吾妻がつられて口の端に笑みを浮かべて尋ねると、九生は肩をすくめた。
「しょうがないじゃろう。
弟分みたいなもんだから」
「…」
吾妻は眉を寄せた。意味がわからない。
「妹の旦那。
俺と時波は小舅ってとこか?」
けらけら笑って九生が言った言葉に、吾妻はげんなりする。
「この年からそんなもんはほしくない…」
疲れたように呟いたが、わかっている。
本当は、満更嫌でもない自分を。
白倉の訓練が終わるまで地下都市をぶらついていた。
本当に長い廊下の数メートル向こうの扉から、一人、男が出てきて、中に向かってなにか話してから扉を閉める。
そして、吾妻に気づいた。
振り返った男の顔は、吾妻がほれぼれするくらいの美男子っぷりだった。
亜麻色の髪に、すらりとした肢体、整った容貌。
白倉とはちょっとタイプが違うが、似た感じの王子様といった美形だ。
吾妻の姿に、彼はぱちぱち瞬きをして、驚いた表情を浮かべる。
「吾妻、だよね?」
そう尋ねた声は柔らかい。
よく通る綺麗な声だ。
吾妻に近寄ってきて、まじまじと見上げてきた顔には、見覚えがある。
「同じクラス、だよね? 確か」
同じ三年一組で何度か見た顔だ。印象に強く残る美貌だったから記憶している。
いかにも爽やかな容貌の男。
「ああ、うん。
同じクラスの、Aランク最上位、久世小虎。
覚えていてくれたなんて、光栄だな」
久世はにっこり微笑んで言った。
「同じクラスだよ。そりゃ当然…」
「でも、俺、久遠たちから“吾妻はクラスメイトの顔も覚えない”って聴いたよ?」
覚えていて当然だ、と言い終わる前に、痛い言葉を投げかけられた。
「…あれは」
どうしよう。なんて言っても嘘臭い。
自分が悪いんだけど。
「あ、いいよ。
吾妻が他のクラスメイトの顔、記憶しないのはしかたないし」
「…どうして?」
「だって、キミ、四六時中、白倉しか見てないんだろ?」
いぶかったら、とても爽やかに輝かしい笑顔で断言されてしまった。
全く否定できない。
「顔ナビみたいに白倉の顔だけ認識して素早く見つける機能搭載してるでしょ。
白倉に関しては素早くてとっても恋する少年だよね」
「……いや、否定はしない」
やばい。どう考えても否定できない。
そんな風に映っていたのか自分。
でも、そんな自分を全く否定できないし、変えたくもない。
「他の人との態度みたら、割と天然っぽいのに」
と、久世は言ってから、ぽんと手を打った。
「俺のこと覚えていてくれたのって、もしかして俺が男前だから?
だったらうれしいなあ」
とても綺麗に微笑んで尋ねてきた。
「…いや、まあそうだから」
「ほんと?
うれしいよ!」
にこにこと笑う久世を見ながら、内心「白倉と明らかにタイプ違う」と思った。
白倉は自分の美貌を自負してはいるが、口には出さない。
冗談であっても。
むしろ告白されたり逆ナンされたりと、嬉しくないと言うこともある。
久世は逆だな、と思った。
自らその「特権」を謳歌していそうな。
久世の言ったことは、否定しない。
事実、その際だった美貌だからこそ印象に残っていたのだ。
好みとかそういうことでは全くなく、ただその整いすぎた顔立ち故に記憶に焼き付いた。
「吾妻みたいな美形に褒められると悪い気しないな」
「…僕の口からはあまり褒めてないよ」
「え? 男前って言ってない?」
「ない」
「…あ、そっか。俺が言ったのか。やだなあ言ってよ」
「……言ったよ」
どこまでもにこやかで爽やかな久世に気圧されつつ、吾妻は彼の印象を付け足す。
なんだろう。すごくカッコイイのに、なんかうざい。
「でも、びっくりしたよ。
吾妻にもここに入る許可出るんだね」
吾妻がそう思った時、久世が意外そうに言った。
「多分、白倉が覚醒するきっかけ、になったから?」
「…」
吾妻の自信なさげな言葉に、久世はあからさまに「そうかなあ?」といぶかった沈黙を寄越した。
そんな反応されると自信が一気になくなる。社交辞令でも肯定しないか?
「…え? どうなんだろうそれ?
そうだった?」
「おいおい」
「だって、そもそも恋愛感情が引き金なの?」
久世は心底疑問だ、納得いかない、という風に尋ねる。
吾妻はわからなくなって、言葉を失った。
そもそも自分は流河から聴いただけだし。
「流河だって、彼らの心を覗いたわけじゃないだろう?
確信していいのかい?」
「…そりゃ、まあ」
「大体、岩永だって、村崎が原因じゃなかったんだからさ。
その説おかしいよ?」
久世は眉根を寄せて、指を立てて振った。
頷きかけて、吾妻はハッとする。
「あんた、今、なんて…」
「あ、時間だ。
ごめん。もう行かなきゃ。またね」
吾妻の言葉を遮り、久世は腕時計を見て笑顔で謝ると、さっさと背中を向けた。
走り去る背中を終えず、吾妻はその場に立ち尽くす。
「…あいつ、一体」
断言した。言い切った。
岩永の暴走の原因が、村崎ではない、と。
言い切れる根拠を持っている顔だった。
今頃思い出す。
自分は「流河から聴いた」なんて言ってない。一言も。
なのに、彼は「流河」の名前を出した。
もしかして、彼も自分と同じなのか?
心を読む能力者。そうなのか?
「久世、小虎…」
聴いたばかりの名前を呟く。
王子様みたいな爽やかな美貌だが、油断の出来ない人物ではないか?
そう思った。
地下都市から帰寮したあと、吾妻は寮の裏の庭に出てきた。
静かに落ちる月光。星が輝く。
「吾妻?」
背後から声がした。下生えを踏む音に、振り返ると岩永がいた。
「窓から見えた?」
「うん」
私服姿に着替えた岩永は、未だ制服姿の吾妻を訝った。
「帰ってきたばっかなん?」
「…あー」
岩永の問いに、吾妻は返事を躊躇って、緑の生い茂った地面にしゃがみ込んだ。
「地下都市に連れてってもらって」
「ああ、白倉たちにな。
…お前に入る許可が出たん?」
納得したあと、疑問が引っかかったという岩永の声に、吾妻はやっぱりと思う。
やっぱりその話題に行くよな。
「…俺が白倉の覚醒のきっかけっぽいから?」
「ああ」
岩永はなるほど、と得心して、吾妻の傍に立つが、吾妻はそこはかとなく後ろめたい。
久世と会って以降、ずっと頭の中に彼が残した発言が渦巻いている。
村崎が原因じゃなかった?
その疑心を抱えたまま、口では当たり障りのない事情を話す。
嘘を吐いている気分だ。気持ちのいいものではない。
「チーム戦、予選が来週やな」
「ああ。
…予選ってどんなことするの?」
チーム対抗トーナメントが予選と本戦からなるのは知っている。
しかし、本戦と違い、予選はトーナメント方式ではないらしい。
「予選は、ブロックを六つにわけて、総当たり戦や」
「…総当たり」
「トリプルツリーでな。
やって、全校生徒数が半端ないんやで?
いちいちトーナメント方式でやっとったら終わるまでにどんだけかかんねん」
「…ああ、そうだよね」
岩永の切々とした言葉に、吾妻も理解した。
確かに、全校生徒数がとんでもないのだ。総当たり戦でもないと、夏の間に終わるかすら怪しい。
トリプルツリーでやるなら、バトル鬼ごっこのチーム版みたいなものだろうし。
「やから、明日からやな。
衣装選ぶんが」
「…衣装?」
吾妻は目を瞑った。
岩永はさも当たり前の口調で繰り返す。
「衣装。知らん?
予選は仮装してやるんやで?」
「………えぇ」
全然知らなかった。吾妻はげんなりした声を挙げてしまう。
わざわざ仮装するのか。それで戦うのか?
正直めんどくさい。
「全部NOAから借りられるから大丈夫やて」
「や、それは想像ついたよ」
あさってのフォローをした岩永に、力無くつっこんだ。
仮装というくらいだから、普通に店で買ったような服じゃダメだろうし、そしたらNOAで貸し出してるだろうことが推測できる。
「…あ」
岩永がふと空を見上げて呟いた。
吾妻もしゃがんだまま空を見る。
時折、星が降る。
「流星雨かな?」
「かもな」
この街で見れるのは珍しい。
落ちた星が消えて、見えなくなってしばらくして、また星が落ちる。
沈黙がその場に流れるが、嫌ではない。
吾妻は不意に、手を祈りの形に組み合わせた。
岩永がそれを見て首を傾げる。
星がきらりと落ちた瞬間、
「白倉とセックス。白倉とセックス。白倉とセックス」
と早口で呟いたので、聞こえていた岩永がぎょっとした。
妙な間が落ちる。
「…願い事は三回言うんでしょ?」
吾妻は引きつった表情の岩永をいぶかって、そう尋ねた。
岩永が我に返る。
「俺の真横で星にとはいえそういうことほざくな!」
怒鳴って吾妻の頭を叩く。
「思想の自由は憲法で認められてる!」
「お前のソレは欲望や!」
しゃがんだまま堂々と宣言する吾妻に、岩永は間髪入れずに言い切った。
「なんて、誰かとセックスすることが自分にとっても“他人事”じゃなくなったから、恥ずかしいんじゃない?」
「…お前、気持ち悪い」
吾妻はにまにま笑ってそう言ってくる。
岩永の頬が若干赤くなったことを、きっと察している。
「大体、そんな願い事するか?
白倉が悲しむぞ?」
「んー?」
吾妻と同じようにしゃがみこんだ岩永から視線を外し、吾妻は笑う。
心の中で念じた。
“恥ずかしい?”
そうこの場にいない白倉に尋ねると、数秒して返事があった。
“恥ずかしいわ。アホ”
吾妻は顔がにやけるのを堪える。
吾妻を通じて、この場の会話を聞き取っていた白倉の、恥ずかしそうな声。
“一番の願い事じゃないから、言えるのに”
白倉が怪訝な気配を寄越す。
“誠二とずっと、一緒にいたい”
心から願って、熱く囁くと、白倉が息を呑んだ気配が感じ取れた。
“ずっとずっと、一緒にいたい”
白倉が、熱く息を吐いたのも、伝わる。
少しして、うん、と恥ずかしそうに頷く声。
“なんて、一番の願い事は、星になんか託さないよ。
不確かなものに頼みたくない。
岩永にも言いたくない。
…誠二にだけ、言いたいよ”
もう一度、白倉がうん、と頷く。
きっと、真っ赤になっている。
その顔を見たいと思った。
“…こっち、来て。
星、見ない?”
誘ったら、白倉の返事が途切れた。
吾妻はわかったので、笑って彼の足音を待つ。
「吾妻? なにさっきから黙ってにやけとんねん」
黙ったままの吾妻を不気味がって、岩永は少し離れた。
「いや?」
「あやしいなあ…」
岩永は引いて呟く。ポケットで鳴った携帯を取りだして見て、「部屋戻るな」と言って背中を向けた。
「うん」
吾妻は笑って頷く。
岩永はやはり、おかしなものを見るような視線を寄越して、寮の入り口に戻っていった。
また落ちる星を見上げて、待つ。
草が鳴った。
吾妻は振り返って、微笑む。
「誠二」
呼びかけると、そこに立っていた白倉が、赤い顔で、
「心の中以外で、そう呼ぶな…」
と恥ずかしそうに言った。
メールの主は流河だった。
部屋に帰ると、「おかえり、どこ行っていたの?」と普通に尋ねる。
「ちょお、散歩?」
「ふうん」
流河は他意なく頷いて、いれたばかりの紅茶をテーブルに置いた。
椅子に座って、有り難く頂く。
「そういえば、村崎クンが同室になりたがってたんだって?」
流河は時折、前置きなく本題に入る。
岩永はむせそうになった。
「…」
「あら、うれしくないの?」
微妙な表情をした岩永を見て、流河は意外そうだ。
「俺は、流河の方が落ち着くし…」
「まあ確かにそうだろうね」
岩永の言いたい意味がわかるので、流河は同意してくれる。
その表情が引きつった。
その顔を見て、岩永はハッとする。
今、背後で扉の開く音が。
振り返ると、なんとも言えない顔の村崎がいた。
「実家から茶葉を送ってもろたんで、飲むかと思ってな…」
来たんやが、という村崎は居心地が悪そうだ。
岩永は慌てて椅子から立ち上がると、村崎の間近まで近寄る。
「あの、村崎と同室なんが嫌とかやのうて…ただ」
傷付けたくない。そうじゃないんだ、と説明しようとする岩永に、村崎は笑いかけると持ってきた茶葉の入った袋をテーブルに置いて、岩永の頭を優しく撫でた。
「大丈夫や。わかっとるから」
「……うん」
安心させるように髪を撫でる手に、心から落ち着く。
村崎はわかってくれる。それが嬉しくて、安心する。
「落ち着かへんだけやろ?」
「…うん」
頷きながら、岩永はもどかしくなった。
ああ、ちょっと違う。
落ち着かないけど、嬉しかったりドキドキしたりして、それは絶対不快なものじゃないんだって、言いたいのに。
「中国で買うてきたらしいお茶なんやが、飲むか?」
岩永の頭から手を退かして、村崎はそう言う。
急須、どっかにあるやろ、と棚に向かう背中が、寂しくて、思わず手を伸ばした。
村崎の手を掴んでしまい、村崎がびっくりしてこちらを振り向く。
村崎の瞳に見つめられた瞬間、岩永は思わず手を離してしまう。
「あ…」
恥ずかしかった。
でも、離れるのは嫌だ。
躊躇いがちに、一度離した手を、また掴む。
「…もう少し、傍…おって?」
視線を合わすのはすっごく恥ずかしかったけど、頑張って瞳を見たまま言う。
村崎は驚いたが、すぐに頬を緩めて、嬉しそうに笑った。
「ああ」
頷いてくれる優しい声に、愛しさが沸く。
名前を呼ぼうとして、岩永は気づいた。村崎も気づいた。
自分たちの真横の椅子に座って、にやにや笑っている流河の存在に。
「うわっ!」
岩永はひっくり返った声を挙げて、村崎の手を離してしまった。
「いやいやいいよ~?
お気になさらず?
俺、優衣クンの部屋行くからさ」
流河は楽しそうに言って、椅子から立ち上がり、村崎の顔を見上げる。
「村崎クン、顔に本音出てるよ?」
「…え」
指摘されて、村崎は思わず顔を引き締める。
岩永が村崎の顔を見上げたが、よくわからない。
「“いいとこだったのに~”ってほ・ん・ね。
じゃ、ごゆっくり~」
流河は言うだけ言って、スキップで部屋を後にした。
絶対面白がっている、と村崎は思う。
岩永は真っ赤になって、村崎から少し離れてしまったし。
「…まあ、急須借りるわ」
気を取り直して、そう言った。
そのうち落ち着くだろうと思って。
棚に向き直り、急須を探す村崎の背中を見て、岩永はなにか言いたげに口を開く。
それから、同じ部屋にいる村崎の姿に、嬉しくなって笑い、そっと近寄った。
背後で岩永の気配が近づいたことを察して、村崎は心臓の鼓動が速くなるのを感じた。
背後から伸びた手が、村崎の胸に回る。
ぎゅっと、後ろから抱きつかれて、息が止まった。
「…ちょお、このまま。振り返らんで」
自分に抱きついた岩永の、少しくぐもった声が聞こえる。
どうにか頷いた。
声が裏返らないか、心配だった。
きっと、自分の顔は真っ赤だ。
岩永が自分から、こうやって触れてくれたことはない。
少なくとも今は。
急に進めるなと言うし、一体いつキスできるかもわからない。
けど、今だけは、彼のペースで、彼からこうやって手を伸ばしてくれるなら、何ヶ月かかっても待てると、思った。
長い長い廊下の奥。
煌々と人工の明かりが照らす下。
固く閉ざされた扉の前に佇んでいたのは、NOAのスタッフだろうか。
時波と藍澤、白倉の顔を一瞥して、「訓練ですか?」と穏やかに尋ねた。
それから吾妻の顔を見て、首を傾げた。
困ったような顔をして、持っていたノートパソコンらしきコンピューターを開き、なにかを調べる。
吾妻が心臓をばくばくさせて待つと、数分後、彼はパソコンを閉じて、微笑んだ。
「中等部三年一組、吾妻財前くんですね。
特例ですが、入ってもいいですよ」
優しい声音の言葉に、吾妻は一瞬ぽかんとして、それから白倉を抱きしめてしまった。
流石に白倉に叩かれたが、嬉しかったので痛くなかった。
「なぜ許可がおりたんだろうな」
地下都市といっても、地下に本当に街があるわけではなかった。
地下30階までの、街と同じ面積の「施設」。それが地下都市らしい。
長い通路を歩いて、訓練室に向かう最中、藍澤が呟いた。
「確かに。可能性はかなり低かったと思うが」
「特例って言ったよな?」
なんで吾妻に許可が降りたか、いぶかっているらしい。
時波と白倉も首をひねる。
「だけど、許可は許可だよ」
「いや、俺達がすっきりしない。
お前は許可さえ出ればどーでもいいんだろうが」
吾妻の言葉に、藍澤はドライに言う。
吾妻が微かに傷付いた顔をしたが、気にしない。
「多分、白倉の覚醒を後押ししたらしい、と認識されとるからじゃろ」
通路の向こうを、吾妻は今頃ハッとして見た。
ひたすら長く続く廊下。
その途中の扉の前で、背中を預けて佇んでいたのは九生だ。
「そうか。白倉の覚醒スイッチかもしれない、と思われてるんだな…」
時波が「だから特例か」と呟く。
九生の存在には全く驚かない。
吾妻は驚いた。九生は暴走キャリアじゃないはずだ。
「彼も、暴走キャリアなのか?」
同じ疑問を藍澤も抱いたらしく、そう尋ねた。
九生は笑顔で駆け寄ってくる。
「ここで会うんは初めてやの。
俺は暴走キャリアじゃないが、…なんちゅうか、“対策”の一部ってとこじゃ」
九生は考えながら、しっくり来る言葉を探した様子でそう言った。
藍澤はわかったらしい。ああ、と頷いた。
「じゃあ、俺は一人でも大丈夫だから、ここで別れるな」
「えっ!」
白倉が奥の扉を指さして、そう言ったので吾妻はショックを受けた。
ここまで来て別れるなんて。
「休憩時間には行くし」
「いやだよ。一緒がいい!」
白倉の手を掴んで懇願する。
吾妻の頭が不意に叩かれた。
「我が儘言うんじゃない。白倉の能力は他者が同じ部屋にいると危険なんだ」
時波だ。表情は無表情。
吾妻は白倉の二つ目の力を思い出して、それはそうだが、納得いかないと思った。
そんな吾妻の手を白倉が握る。
「終わったらずっと一緒だから…。
一緒にご飯たべて、今度こそ一緒にお風呂はいろ?」
愛らしい微笑みを浮かべてお願いされ、吾妻の顔は一気に真っ赤になった。
九生と時波が軽く青ざめる。
「…う、うん」
吾妻は白倉から視線を逸らし、どうにか頷いた。
こんなかわいい生き物をこれ以上見つめていたら、どうにかしてしまいそうだ。
俺が暴走する。
横を向いてしまった吾妻の心境はわかっているらしく、白倉は嬉しそうにはにかむと、伸び上がって吾妻の頬にちゅ、と口付けた。
「吾妻、ありがと。だいすき」
と、トドメに耳元で甘く囁かれ、吾妻は腰を抜かしそうになった。
むかついたらしい九生に腰を蹴られたおかげでどうにか免れたが。
「うん、…好きだよ」
目の前の白倉しか目に入らず、そのまま彼を抱きしめたら、今度は時波に背中を叩かれた。
背後で藍澤が「暑苦しい」と呟いた。
藍澤も危険だから一人で訓練を行うといなくなってしまい、吾妻は必然的に時波の訓練に付き合うことになった。
戦闘鳥籠〈バトルケイジ〉のような室内。
時波の向かいに立つのは、この地下都市のスタッフだ。
「まあ、いい機会じゃな」
壁際。吾妻の隣に立っていた九生がそう言う。
吾妻は首を傾げた。
「知りたかったんじゃろ?
俺がなんで白倉と時波の身体を操るか、許可されとるか」
九生は吾妻を見上げて、妖しく微笑む。
吾妻は唾を飲み込んで、無言で頷く。
「暴走キャリアは、未覚醒の力を自分では操れん。
それは、力のコントロール権を、掌握しとらんからじゃ」
視界で、スタッフが時波目掛けて超能力を発動させた。
吹雪の力だ。
「そもそも、暴走キャリアがなんで生まれるかっちゅうと、人間の超能力を内包する限界許容量が決まっていて、それは大抵は一つが限界。
二つ目の力を内包するのは、許容量を超えとるからじゃ。
お前みたいに平気なやつもおるが、難しいヤツもおる。
じゃから、抑圧された力は“暴走”しやすい形に変貌し、宿主を喰らう。
暴走キャリアが訓練するのは、二つ目の力の覚醒と、身体の許容量を大きくするため」
九生は微笑んだ。
眼前で、時波が手をかざす。
吹雪は時波の手に触れた瞬間、あの日の吾妻の業火のように消滅した。
時波の瞳が琥珀色に輝いている。
「瞳の色が変化するんは、暴走キャリアの力を使った時じゃな。
暴走キャリアの力はどれだけ未然に覚醒させても、大概宿主の全身を巡ってなんらかの干渉を起こしとる。
それが瞳に対しても起ことていて、結果瞳の色の変化になる、と言われとる」
九生の口調。九生の説明の続きの言葉。
それは、時波の口から発せられた。
琥珀色の瞳のまま、時波は吾妻を振り返った。
「暴走キャリア以上の干渉を外側から起こし、体内だけで巡る超能力を引っ張り出し、宿主にコントロール権を掌握させる。
俺の、“他者の脳を操る”力は、それに最適でな。
だから、俺は時波や白倉の身体を操ることを許可されとるんじゃ」
時波の口元が笑んだ。時波の声で、吾妻に説明する。
「…なるほど」
吾妻はかろうじてそう返した。
九生がなぜ白倉と時波の身体を操っているか、知りたかったからだ。
「まあ、これは全員にあてはまらん。他の方法の方がええっちゅうヤツもたくさんおる。
俺はたまたま時波たちの力に対応できるだけじゃ」
九生の声は真横から聞こえた。
吾妻が顔を上げると、九生は己の身体で微笑んでいる。
「ただ、夏のチーム戦は俺は手助けできんし、戦闘試験でも普通禁止じゃ。
だから、二人とも急いどる」
「…あれ、反則だったの?」
吾妻は数秒考えてから、そう尋ねた。
時波と戦った時の九生の干渉。
九生はただ笑うだけだ。
「あと、俺の力はそんな万能じゃないからの。
お前の身体を操るには至らん」
「…? どういうこと?」
「身体の主が許していない以上、外から脳を完全に支配するんはちぃと今の俺じゃ難しい。
精々、身体の自由を奪ったり、お前にやったみたいに脳を軽くいじったりするんが限界。
身体を操るんは、無理じゃ」
九生の言葉に、ふと思い出した。
出会ったばかりの頃、自分に悪夢のような映像を見せた九生。
あれのような状態か、と納得する。
「少しは謎がとけたかの?」
九生は自分の隣で明るく笑った。
年相応の笑顔だ。
「…あんた、存外僕にやさしいね?」
吾妻がつられて口の端に笑みを浮かべて尋ねると、九生は肩をすくめた。
「しょうがないじゃろう。
弟分みたいなもんだから」
「…」
吾妻は眉を寄せた。意味がわからない。
「妹の旦那。
俺と時波は小舅ってとこか?」
けらけら笑って九生が言った言葉に、吾妻はげんなりする。
「この年からそんなもんはほしくない…」
疲れたように呟いたが、わかっている。
本当は、満更嫌でもない自分を。
白倉の訓練が終わるまで地下都市をぶらついていた。
本当に長い廊下の数メートル向こうの扉から、一人、男が出てきて、中に向かってなにか話してから扉を閉める。
そして、吾妻に気づいた。
振り返った男の顔は、吾妻がほれぼれするくらいの美男子っぷりだった。
亜麻色の髪に、すらりとした肢体、整った容貌。
白倉とはちょっとタイプが違うが、似た感じの王子様といった美形だ。
吾妻の姿に、彼はぱちぱち瞬きをして、驚いた表情を浮かべる。
「吾妻、だよね?」
そう尋ねた声は柔らかい。
よく通る綺麗な声だ。
吾妻に近寄ってきて、まじまじと見上げてきた顔には、見覚えがある。
「同じクラス、だよね? 確か」
同じ三年一組で何度か見た顔だ。印象に強く残る美貌だったから記憶している。
いかにも爽やかな容貌の男。
「ああ、うん。
同じクラスの、Aランク最上位、久世小虎。
覚えていてくれたなんて、光栄だな」
久世はにっこり微笑んで言った。
「同じクラスだよ。そりゃ当然…」
「でも、俺、久遠たちから“吾妻はクラスメイトの顔も覚えない”って聴いたよ?」
覚えていて当然だ、と言い終わる前に、痛い言葉を投げかけられた。
「…あれは」
どうしよう。なんて言っても嘘臭い。
自分が悪いんだけど。
「あ、いいよ。
吾妻が他のクラスメイトの顔、記憶しないのはしかたないし」
「…どうして?」
「だって、キミ、四六時中、白倉しか見てないんだろ?」
いぶかったら、とても爽やかに輝かしい笑顔で断言されてしまった。
全く否定できない。
「顔ナビみたいに白倉の顔だけ認識して素早く見つける機能搭載してるでしょ。
白倉に関しては素早くてとっても恋する少年だよね」
「……いや、否定はしない」
やばい。どう考えても否定できない。
そんな風に映っていたのか自分。
でも、そんな自分を全く否定できないし、変えたくもない。
「他の人との態度みたら、割と天然っぽいのに」
と、久世は言ってから、ぽんと手を打った。
「俺のこと覚えていてくれたのって、もしかして俺が男前だから?
だったらうれしいなあ」
とても綺麗に微笑んで尋ねてきた。
「…いや、まあそうだから」
「ほんと?
うれしいよ!」
にこにこと笑う久世を見ながら、内心「白倉と明らかにタイプ違う」と思った。
白倉は自分の美貌を自負してはいるが、口には出さない。
冗談であっても。
むしろ告白されたり逆ナンされたりと、嬉しくないと言うこともある。
久世は逆だな、と思った。
自らその「特権」を謳歌していそうな。
久世の言ったことは、否定しない。
事実、その際だった美貌だからこそ印象に残っていたのだ。
好みとかそういうことでは全くなく、ただその整いすぎた顔立ち故に記憶に焼き付いた。
「吾妻みたいな美形に褒められると悪い気しないな」
「…僕の口からはあまり褒めてないよ」
「え? 男前って言ってない?」
「ない」
「…あ、そっか。俺が言ったのか。やだなあ言ってよ」
「……言ったよ」
どこまでもにこやかで爽やかな久世に気圧されつつ、吾妻は彼の印象を付け足す。
なんだろう。すごくカッコイイのに、なんかうざい。
「でも、びっくりしたよ。
吾妻にもここに入る許可出るんだね」
吾妻がそう思った時、久世が意外そうに言った。
「多分、白倉が覚醒するきっかけ、になったから?」
「…」
吾妻の自信なさげな言葉に、久世はあからさまに「そうかなあ?」といぶかった沈黙を寄越した。
そんな反応されると自信が一気になくなる。社交辞令でも肯定しないか?
「…え? どうなんだろうそれ?
そうだった?」
「おいおい」
「だって、そもそも恋愛感情が引き金なの?」
久世は心底疑問だ、納得いかない、という風に尋ねる。
吾妻はわからなくなって、言葉を失った。
そもそも自分は流河から聴いただけだし。
「流河だって、彼らの心を覗いたわけじゃないだろう?
確信していいのかい?」
「…そりゃ、まあ」
「大体、岩永だって、村崎が原因じゃなかったんだからさ。
その説おかしいよ?」
久世は眉根を寄せて、指を立てて振った。
頷きかけて、吾妻はハッとする。
「あんた、今、なんて…」
「あ、時間だ。
ごめん。もう行かなきゃ。またね」
吾妻の言葉を遮り、久世は腕時計を見て笑顔で謝ると、さっさと背中を向けた。
走り去る背中を終えず、吾妻はその場に立ち尽くす。
「…あいつ、一体」
断言した。言い切った。
岩永の暴走の原因が、村崎ではない、と。
言い切れる根拠を持っている顔だった。
今頃思い出す。
自分は「流河から聴いた」なんて言ってない。一言も。
なのに、彼は「流河」の名前を出した。
もしかして、彼も自分と同じなのか?
心を読む能力者。そうなのか?
「久世、小虎…」
聴いたばかりの名前を呟く。
王子様みたいな爽やかな美貌だが、油断の出来ない人物ではないか?
そう思った。
地下都市から帰寮したあと、吾妻は寮の裏の庭に出てきた。
静かに落ちる月光。星が輝く。
「吾妻?」
背後から声がした。下生えを踏む音に、振り返ると岩永がいた。
「窓から見えた?」
「うん」
私服姿に着替えた岩永は、未だ制服姿の吾妻を訝った。
「帰ってきたばっかなん?」
「…あー」
岩永の問いに、吾妻は返事を躊躇って、緑の生い茂った地面にしゃがみ込んだ。
「地下都市に連れてってもらって」
「ああ、白倉たちにな。
…お前に入る許可が出たん?」
納得したあと、疑問が引っかかったという岩永の声に、吾妻はやっぱりと思う。
やっぱりその話題に行くよな。
「…俺が白倉の覚醒のきっかけっぽいから?」
「ああ」
岩永はなるほど、と得心して、吾妻の傍に立つが、吾妻はそこはかとなく後ろめたい。
久世と会って以降、ずっと頭の中に彼が残した発言が渦巻いている。
村崎が原因じゃなかった?
その疑心を抱えたまま、口では当たり障りのない事情を話す。
嘘を吐いている気分だ。気持ちのいいものではない。
「チーム戦、予選が来週やな」
「ああ。
…予選ってどんなことするの?」
チーム対抗トーナメントが予選と本戦からなるのは知っている。
しかし、本戦と違い、予選はトーナメント方式ではないらしい。
「予選は、ブロックを六つにわけて、総当たり戦や」
「…総当たり」
「トリプルツリーでな。
やって、全校生徒数が半端ないんやで?
いちいちトーナメント方式でやっとったら終わるまでにどんだけかかんねん」
「…ああ、そうだよね」
岩永の切々とした言葉に、吾妻も理解した。
確かに、全校生徒数がとんでもないのだ。総当たり戦でもないと、夏の間に終わるかすら怪しい。
トリプルツリーでやるなら、バトル鬼ごっこのチーム版みたいなものだろうし。
「やから、明日からやな。
衣装選ぶんが」
「…衣装?」
吾妻は目を瞑った。
岩永はさも当たり前の口調で繰り返す。
「衣装。知らん?
予選は仮装してやるんやで?」
「………えぇ」
全然知らなかった。吾妻はげんなりした声を挙げてしまう。
わざわざ仮装するのか。それで戦うのか?
正直めんどくさい。
「全部NOAから借りられるから大丈夫やて」
「や、それは想像ついたよ」
あさってのフォローをした岩永に、力無くつっこんだ。
仮装というくらいだから、普通に店で買ったような服じゃダメだろうし、そしたらNOAで貸し出してるだろうことが推測できる。
「…あ」
岩永がふと空を見上げて呟いた。
吾妻もしゃがんだまま空を見る。
時折、星が降る。
「流星雨かな?」
「かもな」
この街で見れるのは珍しい。
落ちた星が消えて、見えなくなってしばらくして、また星が落ちる。
沈黙がその場に流れるが、嫌ではない。
吾妻は不意に、手を祈りの形に組み合わせた。
岩永がそれを見て首を傾げる。
星がきらりと落ちた瞬間、
「白倉とセックス。白倉とセックス。白倉とセックス」
と早口で呟いたので、聞こえていた岩永がぎょっとした。
妙な間が落ちる。
「…願い事は三回言うんでしょ?」
吾妻は引きつった表情の岩永をいぶかって、そう尋ねた。
岩永が我に返る。
「俺の真横で星にとはいえそういうことほざくな!」
怒鳴って吾妻の頭を叩く。
「思想の自由は憲法で認められてる!」
「お前のソレは欲望や!」
しゃがんだまま堂々と宣言する吾妻に、岩永は間髪入れずに言い切った。
「なんて、誰かとセックスすることが自分にとっても“他人事”じゃなくなったから、恥ずかしいんじゃない?」
「…お前、気持ち悪い」
吾妻はにまにま笑ってそう言ってくる。
岩永の頬が若干赤くなったことを、きっと察している。
「大体、そんな願い事するか?
白倉が悲しむぞ?」
「んー?」
吾妻と同じようにしゃがみこんだ岩永から視線を外し、吾妻は笑う。
心の中で念じた。
“恥ずかしい?”
そうこの場にいない白倉に尋ねると、数秒して返事があった。
“恥ずかしいわ。アホ”
吾妻は顔がにやけるのを堪える。
吾妻を通じて、この場の会話を聞き取っていた白倉の、恥ずかしそうな声。
“一番の願い事じゃないから、言えるのに”
白倉が怪訝な気配を寄越す。
“誠二とずっと、一緒にいたい”
心から願って、熱く囁くと、白倉が息を呑んだ気配が感じ取れた。
“ずっとずっと、一緒にいたい”
白倉が、熱く息を吐いたのも、伝わる。
少しして、うん、と恥ずかしそうに頷く声。
“なんて、一番の願い事は、星になんか託さないよ。
不確かなものに頼みたくない。
岩永にも言いたくない。
…誠二にだけ、言いたいよ”
もう一度、白倉がうん、と頷く。
きっと、真っ赤になっている。
その顔を見たいと思った。
“…こっち、来て。
星、見ない?”
誘ったら、白倉の返事が途切れた。
吾妻はわかったので、笑って彼の足音を待つ。
「吾妻? なにさっきから黙ってにやけとんねん」
黙ったままの吾妻を不気味がって、岩永は少し離れた。
「いや?」
「あやしいなあ…」
岩永は引いて呟く。ポケットで鳴った携帯を取りだして見て、「部屋戻るな」と言って背中を向けた。
「うん」
吾妻は笑って頷く。
岩永はやはり、おかしなものを見るような視線を寄越して、寮の入り口に戻っていった。
また落ちる星を見上げて、待つ。
草が鳴った。
吾妻は振り返って、微笑む。
「誠二」
呼びかけると、そこに立っていた白倉が、赤い顔で、
「心の中以外で、そう呼ぶな…」
と恥ずかしそうに言った。
メールの主は流河だった。
部屋に帰ると、「おかえり、どこ行っていたの?」と普通に尋ねる。
「ちょお、散歩?」
「ふうん」
流河は他意なく頷いて、いれたばかりの紅茶をテーブルに置いた。
椅子に座って、有り難く頂く。
「そういえば、村崎クンが同室になりたがってたんだって?」
流河は時折、前置きなく本題に入る。
岩永はむせそうになった。
「…」
「あら、うれしくないの?」
微妙な表情をした岩永を見て、流河は意外そうだ。
「俺は、流河の方が落ち着くし…」
「まあ確かにそうだろうね」
岩永の言いたい意味がわかるので、流河は同意してくれる。
その表情が引きつった。
その顔を見て、岩永はハッとする。
今、背後で扉の開く音が。
振り返ると、なんとも言えない顔の村崎がいた。
「実家から茶葉を送ってもろたんで、飲むかと思ってな…」
来たんやが、という村崎は居心地が悪そうだ。
岩永は慌てて椅子から立ち上がると、村崎の間近まで近寄る。
「あの、村崎と同室なんが嫌とかやのうて…ただ」
傷付けたくない。そうじゃないんだ、と説明しようとする岩永に、村崎は笑いかけると持ってきた茶葉の入った袋をテーブルに置いて、岩永の頭を優しく撫でた。
「大丈夫や。わかっとるから」
「……うん」
安心させるように髪を撫でる手に、心から落ち着く。
村崎はわかってくれる。それが嬉しくて、安心する。
「落ち着かへんだけやろ?」
「…うん」
頷きながら、岩永はもどかしくなった。
ああ、ちょっと違う。
落ち着かないけど、嬉しかったりドキドキしたりして、それは絶対不快なものじゃないんだって、言いたいのに。
「中国で買うてきたらしいお茶なんやが、飲むか?」
岩永の頭から手を退かして、村崎はそう言う。
急須、どっかにあるやろ、と棚に向かう背中が、寂しくて、思わず手を伸ばした。
村崎の手を掴んでしまい、村崎がびっくりしてこちらを振り向く。
村崎の瞳に見つめられた瞬間、岩永は思わず手を離してしまう。
「あ…」
恥ずかしかった。
でも、離れるのは嫌だ。
躊躇いがちに、一度離した手を、また掴む。
「…もう少し、傍…おって?」
視線を合わすのはすっごく恥ずかしかったけど、頑張って瞳を見たまま言う。
村崎は驚いたが、すぐに頬を緩めて、嬉しそうに笑った。
「ああ」
頷いてくれる優しい声に、愛しさが沸く。
名前を呼ぼうとして、岩永は気づいた。村崎も気づいた。
自分たちの真横の椅子に座って、にやにや笑っている流河の存在に。
「うわっ!」
岩永はひっくり返った声を挙げて、村崎の手を離してしまった。
「いやいやいいよ~?
お気になさらず?
俺、優衣クンの部屋行くからさ」
流河は楽しそうに言って、椅子から立ち上がり、村崎の顔を見上げる。
「村崎クン、顔に本音出てるよ?」
「…え」
指摘されて、村崎は思わず顔を引き締める。
岩永が村崎の顔を見上げたが、よくわからない。
「“いいとこだったのに~”ってほ・ん・ね。
じゃ、ごゆっくり~」
流河は言うだけ言って、スキップで部屋を後にした。
絶対面白がっている、と村崎は思う。
岩永は真っ赤になって、村崎から少し離れてしまったし。
「…まあ、急須借りるわ」
気を取り直して、そう言った。
そのうち落ち着くだろうと思って。
棚に向き直り、急須を探す村崎の背中を見て、岩永はなにか言いたげに口を開く。
それから、同じ部屋にいる村崎の姿に、嬉しくなって笑い、そっと近寄った。
背後で岩永の気配が近づいたことを察して、村崎は心臓の鼓動が速くなるのを感じた。
背後から伸びた手が、村崎の胸に回る。
ぎゅっと、後ろから抱きつかれて、息が止まった。
「…ちょお、このまま。振り返らんで」
自分に抱きついた岩永の、少しくぐもった声が聞こえる。
どうにか頷いた。
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岩永が自分から、こうやって触れてくれたことはない。
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