【完結保証】超能力者学園の転入生は生徒会長を溺愛する

兔世夜美(トヨヤミ)

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第八章 さよならの森の中で

第三話 天才と意地

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 砂浜に風が吹く。
 波の寄せる海を横手に、向かい合う。
 夕が前に進み出て、不敵に笑った。
「さて、やっと勝負つけられるなあ、優衣」
 その言葉に、優衣も一歩前に出た。
「それはこっちの台詞や」
「ずっとなんでか、直接対決の機会がなかったからな」
「ほな、今ここで決着つけよか」
 拳をならして、優衣は右手を大きく振るう。
 足下の影が大きくふくれあがって、幾重にも分かれ無数の刃の形を作る。
 夕は地面に足を踏ん張って、自分の周囲に巨大な風を生み出した。
「じゃあ」
「行くでっ!」
 叫び合って攻撃を仕掛けようとした瞬間、夕は首根っこを背後から掴まれ引っ張られてバランスを崩した。
 放つタイミングだったので、コントロールを失った風が岩永達に高速で向かってくる。
 迎え撃とうとした優衣は胸を二つの手に突き飛ばされてよろけた。
 優衣を突き飛ばした岩永と流河が息のあった動きで、傘と吹雪をまとわせた手で風の塊をはじき飛ばした。
 村崎は体勢を立て直した優衣の頭を拳で殴っていて、優衣は痛みにうめいた。
「念願の従兄弟相手で興奮するのはええけど、これはチーム戦や」
「陣形崩さないでよね優衣くん。
 君は後衛!」
 岩永と流河に振り向かないまま叱られて、優衣はハッと我に返った。
「…あ、ごめん」
 それもそうだった、と気づく。
 これはチーム戦だし、自分は後衛で、前衛は岩永と流河だった。
 自分と同じく突っ走りかけた夕は向こうで間久部と明里に怒られている。
「全く、味方に陣形崩されるとかないからね。
 気をつけて」
 優衣を軽くとがめながら、流河は傘を開いて大きく旋回させる。
 巨大な炎を生み出し、目配せ合った岩永と同時に放つ。
 岩永が放ったのも温度操作で生み出した業火だ。
「夕さん、くれぐれも突っ走らんで」
「はいはい」
 明里の注意に軽く頷いて、夕は地面を蹴った。
 風の高速移動で、一気に岩永達の上空に飛ぶ。
 岩永達が放った業火を、拳の一撃で吹き飛ばした間久部が、大きく踏み込んだ。
 岩永と流河に向かって猛スピードで接近してくる。
「岩永くん、間久部くん任せた」
「了解」
 岩永の声を聞いてから、流河は傘布で夕の撃った風を受け止める。
 物質変換の力で変換し、傘を回してそのままそっくり上空の夕に返した。
 夕は軽々避けて、風ごとつっこんで来る。
 岩永に接近する間久部の前に大きな岩盤が出現した。村崎だ。
 しかし、間久部は拳で破壊し、岩永の眼前に現れる。
 岩永は構えて、温度操作の力をまとわせた蹴りを繰り出すが、間久部の蹴りに弾かれてよろける。
 滅多に苦痛を表に出さない岩永の顔が痛みで歪んでいる。
 岩永の顔面目掛けた間久部の拳は、岩永の顔の前に出現した影に防がれる。
 その隙を見逃さず、体勢を立て直した岩永が水弾を放った。
 間久部は数メートル吹っ飛ばされたが、足でブレーキをかけて止まり、顔を上げる。
 相変わらずの打たれ強さだ、と村崎は思う。
 一方、流河は向かってきた夕の攻撃を寸前で、転移して躱し、夕の背後に現れる。
 反応が遅れたに見えた夕の背中に傘を振り下ろすが、空を切る。
 夕は一瞬で自分の背後に飛んでいた。
 放たれた蹴りを、どうにか構えた扇子で受け止めたが、軽く飛ばされて砂浜に着いた足が数メートルの長い線を作った。
「いったい…!」
 岩永が間久部に蹴られた足を軽く振って、呟く。
 未だ痛むらしい。
「接近戦うまいよねぇ、あのふたり」
 雨から身体を隠すように傘の柄を肩に乗せて、流河はしみじみ呟いた。
 やから前衛なんやろ、と優衣が言う。
「岩永くん、大丈夫?」
「なんとか」
 岩永は身構えながらそう返し、夕と間久部の遙か向こうにいる白野を見やった。
 明里が手を振るった。
『夜の支配者』と呼ばれる彼でも、昼の時間では闇しか操れない。
 案の定、空を切って飛来した闇の弾を、優衣の影が全て撃ち落とす。
 間久部が地面を蹴った。
 たたき込まれた蹴りを、岩永はクロスガードでさばくが、相変わらずの激痛に顔が歪む。
 お返しとばかりに顔目掛けて足を一閃させる。
 頬をかすっただけに留まった。
 夕が放ったかまいたちを、流河は転移の力で遠くへと飛ばし、走り出した。
 傘を振るって生み出した水を夕の風が凪ぐ。
 夕に向かって、地面を蹴って高く飛び、傘を振り下ろした瞬間、身体を襲った感覚に流河は思わず舌打ちした。
 その一瞬の隙に、夕が鳩尾に風をたたき込んできた。
 そのまま吹っ飛ばされる。
 優衣が慌てて長く伸ばした影で流河の身体を絡め取り、間近に着地させた。
 岩永が反射的に白野の方を見た。微笑んだ唇が見えた。
 すぐに自分の感覚が狂って、思わずその場に片膝をついてしまう。
 それを狙って間久部が繰り出した拳を、村崎が腕で防いで腹を思い切り蹴り飛ばした。
 だが、間久部は少し背後によろけただけで、せき込みもしない。
 笑っている。
「…あーあ、ほんまにタチ悪い」
「同感だね…」
 どうにか立ち上がった岩永の言葉に、流河がかすれた声で同意した。
「大丈夫か?」
「あんまり」
 岩永はそれもそうだよな、と思いながら、手を頭上に挙げて振るう。
 岩永と流河の周囲を踊った吸収の力が、身体を襲う感覚を無効化した。
「これだから、白野ちゃんって嫌」
「哲也も大概やけど」
「がんばれ、前衛」
「おい」
 しみじみ嫌そうに呟いた流河と岩永に、背後から優衣が暢気な声を飛ばす。
 村崎にすぐつっこまれた。
「どうや?
 夕だけなら止められるで」
「…結局一騎打ちがしたいわけな」
 優衣の笑みの混じった言葉に、岩永は呆れる。
 しかし、ため息を吐いたあと、
「しゃあない。許す」
 と短く言った。
 優衣は笑って「よっしゃ」と呟く。
 一瞬で背後から消えた優衣を視線で追わず、岩永は吸収の力を膜にして、自分と流河、村崎にまとわせる。
「多分、何回かは保つ」
「ありがと!」
 流河は勢いよく走り出した。
 向かうのは間久部だ。
 振るった傘が、間久部の足と交差する。
 硬い物質に変換した傘なのに、衝撃で少し曲がってしまった。
「ほんっとにやりにくいなあ君」
「お前も大概や」
 間久部は不敵に笑って、流河の握る傘を大きく弾いて、振りかぶった拳を顔面に打ち込もうとする。
 流河はどうにか素早くかがんで避け、間久部の腕を片腕で捕らえた。
「さっさとリタイアしてよ!」
 懐から取り出したエアガンを間久部の腹に押しつけ、業火に変換した弾を放つ。
 腕を解放する。
 間久部はほんの少しよろけただけで、平然と立っている。
 口元に笑み。
 服すら焼けない。
「…っとに」
 やりにくい。
 呟く暇もなく、視界がかすんだ。
「うわ、うそっ…」
 だって、岩永がバリアを張って一分も経ってないのに。
 かすむ視界に影が映った。
 咄嗟に顔の前で腕を交差させる。
 重い一撃が腕にぶつかって、大きく体勢が崩れた。
 影を通過して夕の間近に出現した優衣の背後をとって、夕はかまいたちを放つ。
 優衣の足下でふくらんだ影が全て飲み込んでしまった。
 優衣は振り向きざまに夕に蹴りをたたき込む。
 腕でさばいた夕の足が、唐突に沈んだ。
 砂に? いや違う。
 咄嗟に足元を見た夕は息を飲む。
 足が、自分の影にずっぽり沈んでいる。
 優衣は夕の鳩尾を蹴り飛ばし、その場から消えた。
 影を通過し、また移動したのだ。
 なのに、どこにも現れない。
 白野の影が不意に刃の形に変質して、白野を背後から狙った。
 しかし、影は白野に当たる寸前でただの影に戻る。
 瞬間、明里の影から優衣が飛び出した。
 苦しげに息を吐く優衣の腕を、明里の操る闇が捕らえていた。
「影は、闇の領域ですよ、御園さん」
「…お前だけなら、つかまらへんわ」
 優衣は舌打ちしたそうに顔を歪める。
「アタシをどうにかすれば、いくらか楽になるものね。
 やから、見え透いてたわ」
 優衣のコントロールする力が弱まったため、夕は風を身体にまとわせて影から足を引き抜き、優衣の側に着地する。
 三人に囲まれて絶体絶命の優衣の四方を、岩盤の壁が覆った。
 村崎だ。
 すぐに優衣は手を掴まれる。
 側にはいつの間にか流河の姿。
 一瞬で岩永達の間近に連れ戻される。
「ほんとにやっかいでしょ?」
「…ほんまにな。酸欠になりかけたわ…」
「あら、呼吸器官麻痺させられたのか。道理で」
 顔が青いと思った、と流河。
 その流河は、着ていたはずの黒い上着がない。シャツだけだ。
「俺も目がやられてさ。
 岩永くんが一瞬でも遅かったらやばかった」
「ほんまに嫌やわ。あいつら」
 上着ぼろぼろに破かれたからぬいだよ、と流河。
 遠く佇む白野をどうにかするのは骨が折れそうだ。
 逃げたほうがいいかもしれないが、夕を前に逃亡するのは優衣は悔しい。
「白野レベルの感覚支配は、つらいな…。
 もう何度もバリア張り直してんねんけど」
 岩永が顔ににじんだ汗を手で拭いながら、疲れた口調で呟いた。
 白野の能力は「感覚支配」だ。
 人間の五感を操り、時に身体の機能すらも操る。
 そして、間久部の能力は「肉体変異」。
 自分の身体を様々な物体に変異させられる。
 強靱なものに変異した身体を攻撃してもびくともしないし、硬いものに変異させた腕で殴られれば当然こちらが悲鳴を上げる。
 どちらも嫌な相手だ。
 岩永の吸収で白野の干渉は防げるが、はっきり言って効果が切れるのが早すぎる。
 それだけ白野の干渉が強いのだ。
「せやけど、そう簡単に逃げるんはいやなんやろ?」
 岩永に問われて、優衣は笑う。
「そらそうやわ」
「ならしゃあない」
 岩永は地面を蹴って、一気に夕の間近くに飛ぶ。
 流河の転移の力だ。
 夕が放った風をあっさり吸収し、夕に向かって吹雪を放つ。
 明里が読んで防いだが、岩永はその隙に巨大な竜巻を生み出している。
 夕と明里に向かって放たれた竜巻を、二人はどうにか受け止める。
 岩永は吸収の力を使える故に、自分で自分の身を白野の干渉から守れるから、敵陣に乗り込んできたのだ。
 悠然と佇む白野目掛けてかまいたちを放った。
 だが、一瞬で身体の感覚を失い、あっさり地面に転がっていた。
「戦術としては惜しかったわ。
 やけど、甘いわよ」
 頭上に立つ白野が笑う。
「アタシかて、元キャリアやもの」
「……ああ、せやったな」
 しまった。失念していた。
 夕と明里も来る。これはやばい。
 だが、倒れたままの岩永の身体が一瞬で影に沈んだ。
 夕が咄嗟に遠く離れた優衣の方を見やると、彼の側に岩永の姿がある。
「あいつらも大概卑怯じゃないか?
 転移系の能力者が二人も」
「まあ、みんな反則的な能力やないですか」
 夕の言葉に、明里は淡々と返した。
 優衣の側で起きあがった岩永は、向こうで戦っている間久部と流河を見やる。
 ほぼ肉弾戦になっているが、流河の方が分が悪い。
「おらっ!」
 間久部が放った拳を傘で受け止めるが、傘が完全に折れ曲がった。
 流河は舌打ちして傘を放る。
 取り出した扇子を回転させて次々繰り出される間久部のパンチを防ぐが、そう長く保たないだろう。
「喰らえっ!」
 間久部が扇子ごと流河の腕を弾いた。
 しまった、と思う。
 胸元ががら空きだ。
「鋼鉄化&痛覚増幅攻撃!」
 不穏なことを叫んだ間久部の放った拳は、胸ではなく流河の顎を殴り飛ばした。
 腕を鋼志津樹化しただけでなく白野が流河の感覚を操り「痛覚を増幅」した一撃だ。
 流河はそのまま痛みで気絶すると踏んだが、流河の片手が自分の肩をしっかり掴んだので、間久部はびっくりした。
「――――っったく」
 そのまま顎をのけぞらせたまま、もう片手でもう片方の肩を掴む。
「なぁいっ!!!」
 のけぞった姿勢から勢いよく繰り出された頭突きを喰らい、間久部は小さなうめきを漏らして、その場にぶっ倒れた。
「ほんとーに、なにするんだよもう!
 すっごい痛い!」
 涙目になって叫ぶ流河の足下で、間久部はぴくりとも動かない。
「あれ…哲也!?」
 夕も明里も慌てる。
 白野もさすがに顔を引きつらせた。
「流河、お前、今痛くないって…」
 叫んだ側から、とつっこんでしまう岩永の方を向き、流河は、
「火事場の馬鹿力だよ!」
 と意味不明なことを言った。
「だいたい、俺は物質変換の能力者なんだから!
 自分の身体を変換して、間久部くんみたいなことは出来るんだからね!」
「…つまり、おもくそ硬いものに頭を変異させての頭突きなわけか…」
 そら哲也もぶっ倒れるわ、と夕は驚くしかない。
 間久部はおそらく、先の攻撃を放ったばかりですぐに身体を変異させられなかったのだろう。
 超能力を扱うには、一呼吸が必要だ。
 岩永が咄嗟に全員に吸収の膜を張った。
 白野の干渉から守るためだ。
 瞬間、その場に吹き荒れた大きな竜巻。
 夕の力だ。
 岩永達はあえて追わない。
 風が消えたあとには、夕や明里、間久部に白野の姿はなかった。
「……よかった。助かった」
 向こうが退いてくれて。岩永はそう思う。心底。
「流河、ナイスや」
「ほんっとに痛かったぁっ!」
 流河はその場にしゃがみ込んで、顎を押さえる。
「うんうん、ご苦労さん」
 側に立ってねぎらった岩永に肩を軽く叩かれても、流河は痛そうにしていた。

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