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第八章 さよならの森の中で
第十一話 それでも彼だった
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302号室。
村崎が一人で暮らす部屋だ。
岩永ともう一度向き合えてからは、たまに彼が遊びに来ることもあった。
非常に恥ずかしがりなので、いつも流河や誰かが一緒で、つき合わされることちが大変だよ、と流河はさほど嫌でもなさそうに笑っていた。
最近は、202号室に遊びに行くことも多かった。
デートなんてまだまだ気軽に誘えない岩永と一緒に休日を過ごすには、彼の部屋に行くのが一番よかった。
202号室は流河の部屋でもあるから、彼もそんなに緊張しなくて済むらしい。
もっとも、たまに流河は勝手に気を利かせていなくなることもあり、岩永は徐々に警戒しだしていたな、なんて思い出しても、胸は暖まらない。
「…ああ」
そうだった、と呟いた声は誰もいない部屋に響く。
落ち着かない気持ちを宥めようと見ようとしたお守りが、今自分の手元にないことに気づいた。
いつも、岩永と二人写った写真と一緒にパスケースの中にしまっているから、一緒に渡してしまった。
岩永が気づいてなければいいが。
今の岩永は知らない。
自分もお守りを持っていること。その中にあの頃の彼のメッセージが入っていること。
外に出られたら、自分で買って渡すから、という約束はきっと一生果たされない。
岩永が特別棟に隔離されて、一週間が経った。
面会の許可はまだ誰にも降りておらず、自分も会えていない。
幸い、ペナルティはなしでチーム戦に支障はなく、他の生徒たちは岩永は訓練に地下都市に行っていると思っている。
そう心配するな、と九生は言っていた。
「そもそも、今回だけなら違法使用でもなんでもないしの。
今回の岩永のが違法使用になるなら、俺の普段の脳への干渉も違法使用じゃ。
ただ、今回はあいつに『あの力の使い方はいけない』と教える必要があったから、この対処じゃ」
その説明に安堵したけど、ならどうしてずっと面会できないままなのか。
あのときも怖かった。
同じくらいの恐怖がある。
チーム戦前の開かずの間の一件。
開かずの間の前で倒れていた岩永を見たときから、目を覚ますまで怖かった。
また、その瞼が開いて、自分を知らない人のように見たら。
「アホやな…」
今は、彼は倒れたりしていないのに。
寂しいだろうけど、きっと元気でいるはずなのに。
どうしてこんなに胸が騒ぐんだ。
「村崎くん」
寝室の扉が開いて、訊き馴染んだ声が自分を呼んだ。
「さっきから呼んでたんだけど…」
あと鍵開いてた、と流河は笑って言う。
「ああ、すまん…」
「いいよ。
わかるし、俺も同じ」
流河はいつも通り明るく見えるが、自分と同じように瞳の奥が怯えていた。
きっと、流河も怖い。
「大丈夫だってわかってるんだけど、自分の部屋でじっとしてられなくってさ」
「…ああ、そうか」
流河の言葉に、今頃気づいた。
岩永がルームメイトだから、彼がいないということは、部屋に一人ということだ。
「御園は?」
「優衣くんはまあ、202号室にいるんだけどさ…」
「え?」
流河は言いにくそうに口にする。
「ほら、彼のルームメイトは夕くんじゃない。
岩永くんはほんとに訓練でいないのかって訊かれても困るから避難してきてるの」
「…ああ」
そういえば、白倉や吾妻たちも知らないはずだ。
彼らをここ一週間見ていない。
「だけど、なんかなに話しても同じとこに戻っちゃうからさ…」
「…気持ちは分かる」
きっと自分も、なにか違う話題を振られても、結局岩永の話に戻してしまう。
「だから、ならいっそ村崎くんと岩永くんの話してようかなーって」
「御園には言うたんか?」
「『じゃあジュース買って来るわ』だって」
「…つまり来るんやな」
流河のなかなかにうまい関西弁に笑いながら、寝台から立ち上がった。
「だって、村崎くんにいろいろ訊きたかったし」
「なにを訊くことがある」
「そりゃ、岩永くんとのこととか?」
流河は明るく笑うが、無理しているのがわかる。
「正直なところ、どうなの?
岩永くんがああも純情だとさー、我慢大変じゃない?」
「……わかっとって訊いとるやろ」
自分の心境なんて、流河や優衣には筒抜けのはずだ。
「まあだいたいわかるけど、村崎くんに訊いたことはなかったかも?って」
「訊いたことはないが、からかうことならようあるな」
そう返すと、流河は「そうだっけ?」ととぼけた。
「……我慢してないといったら嘘やが、…そもそも元々あいつは儂より奥手やったからな」
「……そうだったっけ?」
「気づいてへんかったか?
つき合った当初から、先に進むのは大変やったぞ」
流河は記憶をたぐっているのか、腕を組んで黙り込み、しばらくして「あ」と声を漏らした。
「そういえば志津樹くんに、最初にキスしようとした時に、やっぱり吹っ飛ばされたって訊いた」
「…志津樹の奴…」
なにを話しているんだ、と思う。
せめて自分の許可を得て欲しい。出さないけど。
「…まあそんな具合やったからな、元々そんな進展してへんかったし」
「……そうなんだ」
流河は少しびっくりした様子で目を瞬き、それからなにかに気づいたように自分に顔を近づけた。
「…ちゃんとやることやったんだよね?
最後まで」
よく考えたら暴走以前、彼らがつきあい始めたのが四月の始め。
暴走は五月二十日。
二ヶ月くらいしか交際期間がなかったはずだ。
「…一応したが、…そんな回数は…」
村崎は非常に答えにくそうに答えた。
ここに岩永や優衣がいたら絶対答えなかっただろう。
「…あ、じゃあ村崎くんもそんなに慣れてるわけじゃないんだ?」
「当たり前や。
つき合うたのもあいつが初めてやし」
「…そっか。初耳」
流河はてっきりもっと慣れているのかと思った、と呟く。
「慣れとらんから同じ轍を踏んだんやろが」
「ああ、そうだね。
二回吹っ飛ばされたもんね」
慣れてたらしないね、と流河は笑う。
その顔を見ていて、村崎はふと思い至った。
「…なあ」
「ん?」
急に低くなった村崎の声に、流河は首を傾げる。
「…その話、まさか嵐は訊いてへんよな?」
もし志津樹が流河にその話をする機会があるとしたら、自分が二度目に吹っ飛ばされたあの日の出来事の可能性が非常に高い。
その場合、もしかしたら岩永もそれを訊いた可能性が。
「……ああ、岩永くん、すっごい驚いてたね」
「……っ」
流河の言葉に、岩永も訊いていたと知って、言葉では言い表せない衝撃を受けた。
「…知られたなかった」
「なんで?
村崎くんばっか岩永くんの記憶があるのもずるいじゃん」
流河にきっと他意はない。
だって、彼も知らない。
でも、一瞬息を飲んでしまった。
「…どうしたの?」
流河がその反応をいぶかしんだ。
「…いや」
これでごまかされてくれはしないだろうが、ごまかしたかった。
過ぎた話だ。
あのときの流河は全く正しく、自分は間違っていた。
いくら、流河が真実を知らなかったからとはいえ、誤っていたのは自分の方だ。
だから、流河に知られたくなかった。
岩永にも、知られたくなかった。
『三度目があったら、どうする気じゃ?』
そんなはずないんだから。
三度目なんかあって堪るか。
三度目がもしあったなら、この世界の神様は、自分と岩永の思いを許さないのだ。
「……あのさ」
流河の言葉に唾を飲み込む。
「…神社行かない?」
ずばり核心を尋ねられると思ったから、一瞬なにを言われたのか理解できずに固まった。
「え?」
びっくりして流河の顔を見る。
流河は普通に微笑んでいる。
「神社。
つき合ってよ」
「……お守り?」
かろうじてそう訊くと、流河は明るい声の調子で、
「いや、リベンジ。
ほら、去年、おみくじ引いたのに何度引いても小吉だったじゃん?
今度こそ大吉引きたくて」
と言った。
気遣われたのだろう。
でも、ホッとした。
謝りたくもなった。
「…そうやな。
儂も新しくお守り買うか」
「じゃあ決まり。
行こう!」
流河が元気よく宣言したところでやってきた優衣が首を傾げた。
去年と同じ神社で、去年と同じく「無病息災」のお守りを買って、一緒についてきた優衣と「お参りもするか」と話していると、おみくじを引きに行った流河が暗い顔をして戻ってきた。
「…その顔は、また小吉か?」
村崎が尋ねると、流河はへこみまくった顔を上げないまま、引いたおみくじを差し出した。
「…大凶」
優衣が軽く驚いて、おみくじに書いてある運を読み上げた。
「…お前が大凶って、逆に奇跡やないか?」
「そうやな。
逆に幸先ええんかも…」
優衣と自分は、全く同じ感想を抱いてしまった。
しかし、流河は「そんなわけないじゃない!」と叫ぶ。
「大凶なんて普通入れておくかな。
縁起悪いじゃないか。空気呼んで欲しい」
「……いや、おみくじや神社の人に文句言うてもしらんがなって言いたいと思うで?」
優衣がもっともな言葉を返したが、流河の表情は暗い。
まさかと思っていても、やはり彼も怖いのだ。
「…村崎?」
「儂らも引くか」
歩き出した自分を不思議そうに呼んだ優衣を振り返り、村崎はそう言った。
そして社務所の方に足を向ける。
「…せやな。
俺も引くわ」
「頼んだ。
あとは君たちが頼りだ。優衣くん、村崎くーん」
流河が他力本願とばかりに応援の声を上げたが、相変わらず元気がなくてちょっと怖い。
「運関係であいつが外すこと自体普通ないもんなあ…」
優衣はそう呟きながら、おみくじを一つ引く。
先に引いていた村崎がおみくじを開いて、じっと食い入るように見た。
「どうだった?」
少し元気になったのかのぞき込んできた流河に、村崎は笑顔を見せる。
「初めて引いたわ」
そう言って、おみくじを流河に渡した。
そこには「大吉」の文字。
「うっそ…」
「愛の差やな」
正直、一回も引いたことがなかったから村崎自身驚いたが、嬉しかったのでそう言った。
「…うそー。
俺の友情が劣るって?」
「愛情やから」
「えー」
納得いかない、と流河は言う。
「お前、さっきまで代わりに仇はとってくれみたいな感じやったやん。
いざ大吉引いたらなんやそのリアクション」
「お株を盗られたみたいで悔しい」
「ああ、そう」
優衣のツッコミにも、流河は悪びれない。
「優衣くんは?」
「俺も初めてかなあ…」
優衣の引いたおみくじを見て、流河は固まった。
村崎が優衣の肩越しにのぞき込んで、ああ、と呟く。
「お前、俺達に運流した?」
優衣がそう言った瞬間、流河は頭を抱えてしまう。
「俺のアイデンティティがー!」
「叫ぶな神社で」
優衣は流河の頭を軽く叩く。
その手に握られたおみくじには「大吉」の文字。
「ええやんか。
お前かて勘外すことはあるし、猿も木から落ちる、や」
「…うう、悔しい…」
流河はまだ納得がいかないらしい。
「気持ちなら負けてないもん」
「そこは疑ってへん」
ぶつぶつ言っていた流河も、村崎の「はよ持っていってやろう」の言葉に頷いた。
「でも会えないよね…」
「直談判してみよか」
「そうやな」
三人で話しながら神社の長い階段を下り、鳥居をくぐろうとしたところで、鳥居の下で自分たちを待っていた様子の男と視線があった。
茶色の髪に、茶色の瞳の、自分たちが焦がれた人そのものの顔と姿。
けれど、村崎と優衣、流河は素早く間合いを取って、身構えた。
彼を睨む。
「…なんや」
彼はがっかり、という風に呟く。
「一瞬くらいだまされてくれるかと思ったんに」
岩永そのものの顔、姿、声。
けれど違う。
違う世界の、岩永嵐。
「記憶隠蔽解けたんや?」
妖しく微笑む彼を見据えて、流河は咄嗟に扇子をポケットから取り出した。
「攻撃できひんのやから、やめへん?」
彼は笑みを浮かべる。
からかうように。
「思い出したならわかるやろ?
俺を傷つけたら、お前達のあいつも傷つく」
その言葉に、流河と優衣は悔しそうに唇を噛んだ。
忘れた訳じゃない。
でも、悔しい。
「…嵐になにをした?」
村崎の抑揚のない声に、彼は目を瞠る。
「…なにもしてへんよ?」
相変わらず、村崎に向ける声と視線は、優しい。
「お前が教えたんやろ」
「…ああ。
でも、あいつのためになればと思って」
「嘘や」
優衣が間髪入れずに否定した。
彼が村崎との会話に割って入られたことにか、眉を寄せる。
「お前、理由はわからへんけど、…憎んでへんか?」
しかし、その問いには驚いたようで、笑みが一瞬消える。
「違う世界の自分を、あいつを、憎んでへんか?」
「……へえ」
優衣を見据えて、彼は感心したように呟く。
「ようそこまでわかったなあ」
否定しない。
否定されても、納得は出来ない。
それくらい、彼の憎悪は明らかだった。
「なんで、世界が違うとはいえ、自分自身を憎む?」
「そんなん、俺だけと違うやろ?」
彼の言い分は、吾妻も同じだと言いたいようだった。
「自分自身やからこそ、愛しくて憎らしい。
普通やない?」
「…普通じゃないね」
流河は正気の沙汰じゃない、と言うように、彼を睨む。
彼は楽しそうに笑った。
「そらそうや。
俺もあいつも、おかしいねん」
真っ向から受け入れて、彼は無邪気に微笑む。
不愉快とすら思っていない、虚勢でもない、本気で。
「自分がいかれとることくらい承知の上や。
そうやなかったら、あそこまでせぇへんやろ?」
そう言われたら、なにも言えない。
確かに、彼は笑って自分たちを平気で傷つけた。
「……なんで」
それなら、なんでそこまで歪んでしまった。
なぜ、そこまで狂ってしまった。
彼は唇に指を当てて、「秘密」と囁いた。
「…それより、こんなとこで暢気にしとってええのん?」
風が不意に吹く。
夏だから、生ぬるい。
「こっちの俺、なんか一週間くらいずっと意識が戻らんらしいやん?」
彼の言葉に、村崎も流河も、優衣も一瞬理解が及ばなかった。
「やから、こっちの俺。
そのおみくじ渡す相手。
チーム戦のあと、ぶっ倒れてそのまま起きひんのやて」
「………」
言葉が見つからない。
嫌な予感はしていた。
事実、胸はずっと騒いでいた。
でもまさか。
「お前、いい加減な嘘言うなや!」
「嘘って思ってもええけど、ほんまやったらどうする?」
彼は笑ったまま、愉快そうに言う。
まるで、これを望んでいたみたいに。
「これで三度目、や」
嬉しそうですらある顔。
それは、自分の愛しい人と全く同じだ。
でも、違う。
全く違う。
心が。
だって、彼は本気で、自分と岩永の不幸を望んでる。
「村崎くん!?」
流河が自分の名前を呼ぶ。
村崎は大股で彼に駆け寄って、無防備に佇む彼の胸ぐらを掴んだ。
拳を振り上げる。
たとえ違う世界の岩永でも、望んでこの結果を招いたなら、許せなかった。
そのはずなのに、拳は彼にぶつかる寸前で止まる。
どれだけ力を込めても、微笑むその顔には届かない。
「…静流」
違う心だ。
自分の愛しい彼とは全く違う。
なのに、その声は懐かしい響きだった。
彼は愛おしそうに自分の頬に手を伸ばして、かすめるように唇の横にくちづけた。
「…」
茫然と見下ろしてくる村崎を見て、屈託なく笑う。
「大好き」
そう心の底からの響きで囁いて、彼は村崎から離れた。
振り返りもせずに歩き出す。
「おい。…お前!」
優衣が思わず追いかけたが、その手が届く前に幻のように消えてしまった。
「…村崎くん」
流河が心配そうに自分に近寄る。
「…いや、平気や」
「でも」
そう言いながら、自分が動揺していることも、村崎は気づいていた。
でも、それが先ほどのキスのせいなのか、わからなかった。
「…地下都市に行こう」
もし、ほんとうに彼の言うとおりなら。
岩永が、自分を見てまた「だれ?」と言ったら。
それが泣きたいほど怖かったのかも知れない。
わからない。
村崎が一人で暮らす部屋だ。
岩永ともう一度向き合えてからは、たまに彼が遊びに来ることもあった。
非常に恥ずかしがりなので、いつも流河や誰かが一緒で、つき合わされることちが大変だよ、と流河はさほど嫌でもなさそうに笑っていた。
最近は、202号室に遊びに行くことも多かった。
デートなんてまだまだ気軽に誘えない岩永と一緒に休日を過ごすには、彼の部屋に行くのが一番よかった。
202号室は流河の部屋でもあるから、彼もそんなに緊張しなくて済むらしい。
もっとも、たまに流河は勝手に気を利かせていなくなることもあり、岩永は徐々に警戒しだしていたな、なんて思い出しても、胸は暖まらない。
「…ああ」
そうだった、と呟いた声は誰もいない部屋に響く。
落ち着かない気持ちを宥めようと見ようとしたお守りが、今自分の手元にないことに気づいた。
いつも、岩永と二人写った写真と一緒にパスケースの中にしまっているから、一緒に渡してしまった。
岩永が気づいてなければいいが。
今の岩永は知らない。
自分もお守りを持っていること。その中にあの頃の彼のメッセージが入っていること。
外に出られたら、自分で買って渡すから、という約束はきっと一生果たされない。
岩永が特別棟に隔離されて、一週間が経った。
面会の許可はまだ誰にも降りておらず、自分も会えていない。
幸い、ペナルティはなしでチーム戦に支障はなく、他の生徒たちは岩永は訓練に地下都市に行っていると思っている。
そう心配するな、と九生は言っていた。
「そもそも、今回だけなら違法使用でもなんでもないしの。
今回の岩永のが違法使用になるなら、俺の普段の脳への干渉も違法使用じゃ。
ただ、今回はあいつに『あの力の使い方はいけない』と教える必要があったから、この対処じゃ」
その説明に安堵したけど、ならどうしてずっと面会できないままなのか。
あのときも怖かった。
同じくらいの恐怖がある。
チーム戦前の開かずの間の一件。
開かずの間の前で倒れていた岩永を見たときから、目を覚ますまで怖かった。
また、その瞼が開いて、自分を知らない人のように見たら。
「アホやな…」
今は、彼は倒れたりしていないのに。
寂しいだろうけど、きっと元気でいるはずなのに。
どうしてこんなに胸が騒ぐんだ。
「村崎くん」
寝室の扉が開いて、訊き馴染んだ声が自分を呼んだ。
「さっきから呼んでたんだけど…」
あと鍵開いてた、と流河は笑って言う。
「ああ、すまん…」
「いいよ。
わかるし、俺も同じ」
流河はいつも通り明るく見えるが、自分と同じように瞳の奥が怯えていた。
きっと、流河も怖い。
「大丈夫だってわかってるんだけど、自分の部屋でじっとしてられなくってさ」
「…ああ、そうか」
流河の言葉に、今頃気づいた。
岩永がルームメイトだから、彼がいないということは、部屋に一人ということだ。
「御園は?」
「優衣くんはまあ、202号室にいるんだけどさ…」
「え?」
流河は言いにくそうに口にする。
「ほら、彼のルームメイトは夕くんじゃない。
岩永くんはほんとに訓練でいないのかって訊かれても困るから避難してきてるの」
「…ああ」
そういえば、白倉や吾妻たちも知らないはずだ。
彼らをここ一週間見ていない。
「だけど、なんかなに話しても同じとこに戻っちゃうからさ…」
「…気持ちは分かる」
きっと自分も、なにか違う話題を振られても、結局岩永の話に戻してしまう。
「だから、ならいっそ村崎くんと岩永くんの話してようかなーって」
「御園には言うたんか?」
「『じゃあジュース買って来るわ』だって」
「…つまり来るんやな」
流河のなかなかにうまい関西弁に笑いながら、寝台から立ち上がった。
「だって、村崎くんにいろいろ訊きたかったし」
「なにを訊くことがある」
「そりゃ、岩永くんとのこととか?」
流河は明るく笑うが、無理しているのがわかる。
「正直なところ、どうなの?
岩永くんがああも純情だとさー、我慢大変じゃない?」
「……わかっとって訊いとるやろ」
自分の心境なんて、流河や優衣には筒抜けのはずだ。
「まあだいたいわかるけど、村崎くんに訊いたことはなかったかも?って」
「訊いたことはないが、からかうことならようあるな」
そう返すと、流河は「そうだっけ?」ととぼけた。
「……我慢してないといったら嘘やが、…そもそも元々あいつは儂より奥手やったからな」
「……そうだったっけ?」
「気づいてへんかったか?
つき合った当初から、先に進むのは大変やったぞ」
流河は記憶をたぐっているのか、腕を組んで黙り込み、しばらくして「あ」と声を漏らした。
「そういえば志津樹くんに、最初にキスしようとした時に、やっぱり吹っ飛ばされたって訊いた」
「…志津樹の奴…」
なにを話しているんだ、と思う。
せめて自分の許可を得て欲しい。出さないけど。
「…まあそんな具合やったからな、元々そんな進展してへんかったし」
「……そうなんだ」
流河は少しびっくりした様子で目を瞬き、それからなにかに気づいたように自分に顔を近づけた。
「…ちゃんとやることやったんだよね?
最後まで」
よく考えたら暴走以前、彼らがつきあい始めたのが四月の始め。
暴走は五月二十日。
二ヶ月くらいしか交際期間がなかったはずだ。
「…一応したが、…そんな回数は…」
村崎は非常に答えにくそうに答えた。
ここに岩永や優衣がいたら絶対答えなかっただろう。
「…あ、じゃあ村崎くんもそんなに慣れてるわけじゃないんだ?」
「当たり前や。
つき合うたのもあいつが初めてやし」
「…そっか。初耳」
流河はてっきりもっと慣れているのかと思った、と呟く。
「慣れとらんから同じ轍を踏んだんやろが」
「ああ、そうだね。
二回吹っ飛ばされたもんね」
慣れてたらしないね、と流河は笑う。
その顔を見ていて、村崎はふと思い至った。
「…なあ」
「ん?」
急に低くなった村崎の声に、流河は首を傾げる。
「…その話、まさか嵐は訊いてへんよな?」
もし志津樹が流河にその話をする機会があるとしたら、自分が二度目に吹っ飛ばされたあの日の出来事の可能性が非常に高い。
その場合、もしかしたら岩永もそれを訊いた可能性が。
「……ああ、岩永くん、すっごい驚いてたね」
「……っ」
流河の言葉に、岩永も訊いていたと知って、言葉では言い表せない衝撃を受けた。
「…知られたなかった」
「なんで?
村崎くんばっか岩永くんの記憶があるのもずるいじゃん」
流河にきっと他意はない。
だって、彼も知らない。
でも、一瞬息を飲んでしまった。
「…どうしたの?」
流河がその反応をいぶかしんだ。
「…いや」
これでごまかされてくれはしないだろうが、ごまかしたかった。
過ぎた話だ。
あのときの流河は全く正しく、自分は間違っていた。
いくら、流河が真実を知らなかったからとはいえ、誤っていたのは自分の方だ。
だから、流河に知られたくなかった。
岩永にも、知られたくなかった。
『三度目があったら、どうする気じゃ?』
そんなはずないんだから。
三度目なんかあって堪るか。
三度目がもしあったなら、この世界の神様は、自分と岩永の思いを許さないのだ。
「……あのさ」
流河の言葉に唾を飲み込む。
「…神社行かない?」
ずばり核心を尋ねられると思ったから、一瞬なにを言われたのか理解できずに固まった。
「え?」
びっくりして流河の顔を見る。
流河は普通に微笑んでいる。
「神社。
つき合ってよ」
「……お守り?」
かろうじてそう訊くと、流河は明るい声の調子で、
「いや、リベンジ。
ほら、去年、おみくじ引いたのに何度引いても小吉だったじゃん?
今度こそ大吉引きたくて」
と言った。
気遣われたのだろう。
でも、ホッとした。
謝りたくもなった。
「…そうやな。
儂も新しくお守り買うか」
「じゃあ決まり。
行こう!」
流河が元気よく宣言したところでやってきた優衣が首を傾げた。
去年と同じ神社で、去年と同じく「無病息災」のお守りを買って、一緒についてきた優衣と「お参りもするか」と話していると、おみくじを引きに行った流河が暗い顔をして戻ってきた。
「…その顔は、また小吉か?」
村崎が尋ねると、流河はへこみまくった顔を上げないまま、引いたおみくじを差し出した。
「…大凶」
優衣が軽く驚いて、おみくじに書いてある運を読み上げた。
「…お前が大凶って、逆に奇跡やないか?」
「そうやな。
逆に幸先ええんかも…」
優衣と自分は、全く同じ感想を抱いてしまった。
しかし、流河は「そんなわけないじゃない!」と叫ぶ。
「大凶なんて普通入れておくかな。
縁起悪いじゃないか。空気呼んで欲しい」
「……いや、おみくじや神社の人に文句言うてもしらんがなって言いたいと思うで?」
優衣がもっともな言葉を返したが、流河の表情は暗い。
まさかと思っていても、やはり彼も怖いのだ。
「…村崎?」
「儂らも引くか」
歩き出した自分を不思議そうに呼んだ優衣を振り返り、村崎はそう言った。
そして社務所の方に足を向ける。
「…せやな。
俺も引くわ」
「頼んだ。
あとは君たちが頼りだ。優衣くん、村崎くーん」
流河が他力本願とばかりに応援の声を上げたが、相変わらず元気がなくてちょっと怖い。
「運関係であいつが外すこと自体普通ないもんなあ…」
優衣はそう呟きながら、おみくじを一つ引く。
先に引いていた村崎がおみくじを開いて、じっと食い入るように見た。
「どうだった?」
少し元気になったのかのぞき込んできた流河に、村崎は笑顔を見せる。
「初めて引いたわ」
そう言って、おみくじを流河に渡した。
そこには「大吉」の文字。
「うっそ…」
「愛の差やな」
正直、一回も引いたことがなかったから村崎自身驚いたが、嬉しかったのでそう言った。
「…うそー。
俺の友情が劣るって?」
「愛情やから」
「えー」
納得いかない、と流河は言う。
「お前、さっきまで代わりに仇はとってくれみたいな感じやったやん。
いざ大吉引いたらなんやそのリアクション」
「お株を盗られたみたいで悔しい」
「ああ、そう」
優衣のツッコミにも、流河は悪びれない。
「優衣くんは?」
「俺も初めてかなあ…」
優衣の引いたおみくじを見て、流河は固まった。
村崎が優衣の肩越しにのぞき込んで、ああ、と呟く。
「お前、俺達に運流した?」
優衣がそう言った瞬間、流河は頭を抱えてしまう。
「俺のアイデンティティがー!」
「叫ぶな神社で」
優衣は流河の頭を軽く叩く。
その手に握られたおみくじには「大吉」の文字。
「ええやんか。
お前かて勘外すことはあるし、猿も木から落ちる、や」
「…うう、悔しい…」
流河はまだ納得がいかないらしい。
「気持ちなら負けてないもん」
「そこは疑ってへん」
ぶつぶつ言っていた流河も、村崎の「はよ持っていってやろう」の言葉に頷いた。
「でも会えないよね…」
「直談判してみよか」
「そうやな」
三人で話しながら神社の長い階段を下り、鳥居をくぐろうとしたところで、鳥居の下で自分たちを待っていた様子の男と視線があった。
茶色の髪に、茶色の瞳の、自分たちが焦がれた人そのものの顔と姿。
けれど、村崎と優衣、流河は素早く間合いを取って、身構えた。
彼を睨む。
「…なんや」
彼はがっかり、という風に呟く。
「一瞬くらいだまされてくれるかと思ったんに」
岩永そのものの顔、姿、声。
けれど違う。
違う世界の、岩永嵐。
「記憶隠蔽解けたんや?」
妖しく微笑む彼を見据えて、流河は咄嗟に扇子をポケットから取り出した。
「攻撃できひんのやから、やめへん?」
彼は笑みを浮かべる。
からかうように。
「思い出したならわかるやろ?
俺を傷つけたら、お前達のあいつも傷つく」
その言葉に、流河と優衣は悔しそうに唇を噛んだ。
忘れた訳じゃない。
でも、悔しい。
「…嵐になにをした?」
村崎の抑揚のない声に、彼は目を瞠る。
「…なにもしてへんよ?」
相変わらず、村崎に向ける声と視線は、優しい。
「お前が教えたんやろ」
「…ああ。
でも、あいつのためになればと思って」
「嘘や」
優衣が間髪入れずに否定した。
彼が村崎との会話に割って入られたことにか、眉を寄せる。
「お前、理由はわからへんけど、…憎んでへんか?」
しかし、その問いには驚いたようで、笑みが一瞬消える。
「違う世界の自分を、あいつを、憎んでへんか?」
「……へえ」
優衣を見据えて、彼は感心したように呟く。
「ようそこまでわかったなあ」
否定しない。
否定されても、納得は出来ない。
それくらい、彼の憎悪は明らかだった。
「なんで、世界が違うとはいえ、自分自身を憎む?」
「そんなん、俺だけと違うやろ?」
彼の言い分は、吾妻も同じだと言いたいようだった。
「自分自身やからこそ、愛しくて憎らしい。
普通やない?」
「…普通じゃないね」
流河は正気の沙汰じゃない、と言うように、彼を睨む。
彼は楽しそうに笑った。
「そらそうや。
俺もあいつも、おかしいねん」
真っ向から受け入れて、彼は無邪気に微笑む。
不愉快とすら思っていない、虚勢でもない、本気で。
「自分がいかれとることくらい承知の上や。
そうやなかったら、あそこまでせぇへんやろ?」
そう言われたら、なにも言えない。
確かに、彼は笑って自分たちを平気で傷つけた。
「……なんで」
それなら、なんでそこまで歪んでしまった。
なぜ、そこまで狂ってしまった。
彼は唇に指を当てて、「秘密」と囁いた。
「…それより、こんなとこで暢気にしとってええのん?」
風が不意に吹く。
夏だから、生ぬるい。
「こっちの俺、なんか一週間くらいずっと意識が戻らんらしいやん?」
彼の言葉に、村崎も流河も、優衣も一瞬理解が及ばなかった。
「やから、こっちの俺。
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チーム戦のあと、ぶっ倒れてそのまま起きひんのやて」
「………」
言葉が見つからない。
嫌な予感はしていた。
事実、胸はずっと騒いでいた。
でもまさか。
「お前、いい加減な嘘言うなや!」
「嘘って思ってもええけど、ほんまやったらどうする?」
彼は笑ったまま、愉快そうに言う。
まるで、これを望んでいたみたいに。
「これで三度目、や」
嬉しそうですらある顔。
それは、自分の愛しい人と全く同じだ。
でも、違う。
全く違う。
心が。
だって、彼は本気で、自分と岩永の不幸を望んでる。
「村崎くん!?」
流河が自分の名前を呼ぶ。
村崎は大股で彼に駆け寄って、無防備に佇む彼の胸ぐらを掴んだ。
拳を振り上げる。
たとえ違う世界の岩永でも、望んでこの結果を招いたなら、許せなかった。
そのはずなのに、拳は彼にぶつかる寸前で止まる。
どれだけ力を込めても、微笑むその顔には届かない。
「…静流」
違う心だ。
自分の愛しい彼とは全く違う。
なのに、その声は懐かしい響きだった。
彼は愛おしそうに自分の頬に手を伸ばして、かすめるように唇の横にくちづけた。
「…」
茫然と見下ろしてくる村崎を見て、屈託なく笑う。
「大好き」
そう心の底からの響きで囁いて、彼は村崎から離れた。
振り返りもせずに歩き出す。
「おい。…お前!」
優衣が思わず追いかけたが、その手が届く前に幻のように消えてしまった。
「…村崎くん」
流河が心配そうに自分に近寄る。
「…いや、平気や」
「でも」
そう言いながら、自分が動揺していることも、村崎は気づいていた。
でも、それが先ほどのキスのせいなのか、わからなかった。
「…地下都市に行こう」
もし、ほんとうに彼の言うとおりなら。
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わからない。
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