【完結保証】超能力者学園の転入生は生徒会長を溺愛する

兔世夜美(トヨヤミ)

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第九章 胡蝶の夢

第二話 予定と現実は違うものだ

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 俺と岩永は違う。
 目的は一緒。利害の一致。
 だから一緒にいる。
 でも、明らかに異なる一点がある。
 岩永はこちらの世界の村崎を愛している。
 何事にも容赦がなく、自分自身すら呪っているくせ、村崎にだけは声も視線も優しい。
 彼は、自分が愛した己の世界の村崎を重ねて、こちらの村崎に執着している。
 でも、俺は違うんだ。
 俺がこちらの世界の白倉にこだわるのは、単純に彼が俺達の目的に必要不可欠だからなだけ。
 優しくしておいたほうがいいからそうしてるだけ。
 白倉のことは愛している。もちろん。
 だからここまでのことをしてる。
 でもそれはあくまで俺の世界の白倉だ。
 俺にとって白倉の代わりはいない。俺の白倉はただ一人。
 こちらの白倉を代わりにしようとか全く思わない。重ねたりしない。
 目的のための駒に過ぎない。
 だから、必要があれば殺せる。 
 俺と、岩永は違う。
 彼は、愛しい恋人の姿をした男を決して殺せないだろう。



 目が覚めて、吾妻はしばらく状況を把握出来なかった。
 NOA男子寮の201号室。
 寝室に日差しが差し込んでくる。眩しさに目が覚めた。
 ああ、そういや身体を乗っ取っているんだ。これはこちらの俺の身体。
 そこまで把握したところで、「ん?」と思った。
 自分の身体にかかっている重みがある。
 視線を移すと、自分の胸元に上半身を乗せてすやすや気持ちよさそうに眠っている白倉の姿。
 寝顔は反則なくらいかわいい。
 しかし、自分の裸の胸元に乗っかっている白倉の身体も裸というのはどういうことだ。
 そこまで理解した瞬間、変な悲鳴を上げて飛び起き、寝台から飛び降りていた。
「…な、な、なんっ………!」
 心臓がばくばく言っている。
 無理矢理寝台の上に落とされた白倉は軽くうめいたが、まだ寝ている。
 吾妻は耳まで真っ赤にして、自分の身体を見下ろした。
 ズボンは履いている。

(落ち着け。確か昨日は上半身裸のままで寝たから…!)

 昨晩の記憶をたぐりながら、必死に落ち着こうとする。
 心臓の鼓動がちっとも収まらない。
 それでも勇気を出して、寝台に寝転がっている白倉に近づいた。
 そしてまた離れた。
 やばいよ。どきどきする。
 だってまさか昨日はやることやってないし、無意識にやってましたとかそんなはずはない。
 でも万一やっていたらどうしよう。
 そこまで考えて、吾妻は自分の頭を殴りたくなった。
 それが身体を乗っ取った目的じゃないか。なに言ってんだ自分。
「……そ、そうだよ。
 もしやってたなら、好都合…」
 誰も見ていないのに前髪を掻き上げ、笑ってみせるが引きつった。
「……」
 白倉に近づけない。
 足が少し震えた。
「…って、本当やってたらどうしよ……」
 結局また赤面してその場にしゃがみ込んだ。
 記憶がない。もったいない。
 ではなくて、どうしよう。
 やっていたら好都合なのに、どうしようという思いが先に立つ。
 恥ずかしいのか困惑なのか、混乱なのか区別がつかない気持ちだ。
 おそるおそる立ち上がって、片足を出した。
 長い足を使って、足を大きく開いた状態で身体を寄せる。
 そして伸ばした震える手で、シーツをつまんでそっとどかした。
 すぐに片足をもう片方の傍に戻して素早く離れる。
「…」
 固唾をのんで白倉の身体を見た。
 頬が自然赤くなる。
 なぜか下着だけ身につけているが、その白い裸体にキスマークは確認できない。
「…やってない、かね…?」
 自分自身に言うように呟いた。
 しかし、それならそれでなぜ白倉は下着一枚?
「…んー…」
 白倉がうめいたので、びくりと身体がはねた。
 固まってしまった吾妻の前で、白倉はもぞもぞ動いて手をシーツの上に伸ばす。
 どうやら吾妻を探しているらしい。
 しかしいつまで経っても見つからない吾妻の身体に、ようやく身体を起こした。
 眠そうに閉じたままの瞼を押し上げる。
「…あれ、吾妻…?」
 寝ぼけた口調で、吾妻の方を見て不思議そうに呼んだ。
 なんでそっちにいるんだ、と言いたげに。
「吾妻…?」
 寝起きは悪くないらしい。
 目をこすってから、割とはっきりした口調で自分を呼んだ白倉に、吾妻は我に返る。
「……あ、おはよ」
「うん、おはよう。
 なんでそっちにいんの?
 いつも俺が起きるまで抱いててくれるのに」
「……えー……」
 この「えー」は「えー嘘ー?」の「えー」だ。
「……毎日一緒に寝てるの?」
「え?」
 目を瞠ってびっくりしたような声を上げた白倉に、吾妻はしまった!と思った。
 これは毎日一緒に寝ているらしい。
 しかし、それを吾妻本人が白倉に確認したらおかしい。どう考えたっておかしい。
「…なに言うとんの吾妻」
 案の定、白倉は不審に思ったのだろう。
 そう言って、寝台を降りる。
「…意地悪」
 しかし、白倉は頬を染めて、吾妻の胸元に顔を寄せる。
 吾妻は内心「ぎゃあ!」と悲鳴を上げた。
「俺に、毎日吾妻に抱かれてる、なんて言わせたい…?
 やらしい…」
 どこか恍惚とした表情に、吾妻は「セーフ!」と叫んだらいいのか悲鳴を上げたらいいのかわからない。
 とりあえず胸に裸の白倉の胸が! 離れて!
「…なあ、吾妻。
 意地悪もうやめて?」
 上目遣いに見上げてきた白倉が、少し身を離したのでやっと思考が働き出した。
「…?」
「いやだ。まだ意地悪すんの?」
 白倉は拗ねたようにそう言って、吾妻の腕に触れる。
「朝の、して…」
 頬を染めて甘くねだられた内容に、吾妻は頭が破裂したんじゃないかという衝撃を受けた。
 して、ってそういう行為?
 いや多分キス。
 で、でもそんな風にねだるのか?
 下手なセックスの誘いより色香たっぷりに?
「…吾妻…」
 桜色に見える唇。
 甘そうなそれを視界に入れた瞬間、目がそらせなくなった。
 どきどき鳴る心臓が口から飛び出しそうだ。
 耳まで赤くして、吾妻は白倉の肩を震える手で掴む。
 必死に顔を近づけて、目を閉じた白倉の唇にそっとくちづけた。
 ちゅ、と軽く触れただけで離れる。
 白倉は嬉しそうに微笑んで、
「今日の吾妻、なんかいじらしい…」
 と呟いた。
 吾妻には聞こえていない。
「…白倉?」
「うん?」
 それよりも気になっていることがあった。
「…白倉、なんで、裸?」
 そう。それだ。
 なんで裸なんだ。正確には下着一枚。
 もっと正確には、左手に包帯もある。
 でもまさかやることやったのか?
「……あ、そうか。
 今日が初めてだったもんな」
 白倉の口から出た「初めて」に心臓がどきんと鳴った。
 本当にやってしまったのか!?
「…俺なあ、ほんとは寝るときパンイチなんだ。
 ずっと吾妻に言うに言えんくて」
 恥じらって告白する白倉の言葉をすぐに理解できなかった。
「…パンイチ?」
「うん」
「……って」
「下着一枚」
 はっきり答えた白倉に、吾妻は安堵のあまりその場に崩れ落ちた。
「吾妻っ!?」
 白倉がびっくりして傍にしゃがみこむ。
「どうした!?」
「…よかった」
「え?」
 ものすごく安心した。
 本当によかった。
「…僕、記憶ない間に白倉のこと抱いてしまったかと…」
 心底そう思って口にすると、白倉はまた赤くなった。
「吾妻……優しい」
 なぜか感動された。
「俺との初めてはちゃんと思い出にしたいなんて、…ほんとに優しい。
 吾妻はかっこええ」
 あ、そういう意味の解釈か。
 妙に納得してしまった。
「大丈夫。
 明日にでもしような?」
「……え?」
 しかし、再び耳を疑った。
 白倉はなにを言った?
「ほら、予選のあとするって約束してたのに、嵐のことがあって延びてたじゃん。
 やから、明日にでも、…しような」
 白倉は恥ずかしそうに囁く。
 吾妻の頭はフリーズした。
「……明日?」
「うん…」
「……キスを?」
「いやだ…」
 今からでも良い。キスだって言って欲しい。
 しかし、白倉は伏し目がちに、頬を染めて、
「…俺も、吾妻に抱かれたい。
 もう、俺も限界…」
 と言った。
 頭を殴られた衝撃。
「な?
 抱いて?」
 もちろん抱擁なんかじゃない。
 そういう意味だ。
「…ちょ、ちょ」
「吾妻、俺、もう覚悟はしとるから…いつでも襲って」
「…」
 この空気で、「出来ません」なんて言えない。
 いぶかしまれる。
 っていうかちょっと待て。
 こちらの俺は一体白倉とどういうつき合いをしているんだ!?
 毎日一緒に寝ていて肉体関係がない?
 朝はキスが当たり前?
 それでなんでつき合って二ヶ月保つんだ?
 どういうつき合いなんだ?
 ていうか、俺は何でこんなにパニック起こしてるんだ?



「アホっか!」
 開口一番怒鳴られた。
 吾妻は返す言葉がない。
 あのあと意識のない自分の身体をホテルまで連れ帰ってくれた岩永は、すっごく呆れている。
 ホテルの一室。
 自分は、こちらの吾妻の身体を拝借しているだけなので、自分の身体に意識を戻す気ならすぐに戻せる。
「なんでカモがネギしょって来てんのに猟師が逃げてんねん!
 お前それが目的で身体乗っ取ったんちゃうんか!」
 全く岩永の言うとおりだ。
「ば、だけど、白倉むちゃくちゃ柔らかいし、いい匂いするし、かわいいし、ていうか初めてだよ」
「知るか。
 普通につっこめばええやろが!」
「ば、だけど、白倉が可愛いから…」
 岩永が寝台から立ち上がって枕を投げつけてきた。
 顔面にヒットする。
「こんのヘッタッレが!
 ドヘタレ!
 自分の白倉は一人だけとか言っとったやろが!」
 雑言にもなにも反論できない。
「うん。そうだよ。
 一人だけだよ。
 あの白倉は僕の白倉じゃない」
「ほな、さっさと泣かせて来い」
「だけど、同じ顔してるし、声同じだし、どきどきしてしまうから!
 肌が綺麗だし、触れただけで気が遠く…」
 今度は岩永の足に顎を蹴り飛ばされた。
 うめいて背後にぶっ倒れる。
「アホ! ヘタレ!
 根性なし! 意気地なしの童貞が!
 お前いっぺん歌舞伎町に放り込んでやろうか!」
「…や、童貞ではない…」
「ならさっさとやれ」
 どうにか身を起こした自分の前に九生立ちする岩永を見上げて、吾妻は切に尋ねた。
「……岩永」
「は?」
「…どうしよう。
 どうやってしばらく待ってって言ったらいい?」
 今度は頬を爪で引っかかれた。
「お前、もう死ね!」
 相変わらず岩永は機嫌が最悪だが、今日ばっかりは反論できなかった。



「…はあ」
 結局、こちらの吾妻の身体に戻ってからも落ち着かず、白倉から逃げてきた。
 どうしよう。
 明日。
 白倉はノリノリだし、岩永は全く当てにならないし、どうしよう。
 考えすぎて頭痛くなってきた。
「…ん?」
 不意に顔を上げて、足を止める。
 視界の先の自販機。
 その前にいるのは、こちらの世界の村崎と岩永だ。
 なんとなく会話に耳を澄ませてしまう。
「大丈夫やって」
 岩永は笑って、心配そうな村崎を振り返った。
「もうすっかりやし。
 平気。
 そない過保護にならんでや」
「…わかっとる」
 村崎は頷いたが、いまいち浮かない顔だ。
「…もう。
 俺は平気やって言うてるのに」
「…ああ」
「記憶もちゃんとあるし」
「…」
 村崎は思わず黙ってしまう。
「ほんまに…なんでそない怖がっとんの?
 記憶あるって」
「…わかっとる」
 村崎はものすごく不安そうだ。
 気持ちは分からないでもない。
 彼の前で笑う岩永は、別に自分の知る岩永に似てはいない。
 少し前、雰囲気が酷似した時があったがほんの一時期だ。
 やはり彼と自分の知る岩永は相容れない。
 決定的に違う。
 だが、今までの彼とも、また雰囲気が違う気がする。
 遠目に見てきただけでほとんど会話したこともない自分ですらそう感じるのだ。
 傍にいた村崎は余計だろう。
「村崎。
 手」
 岩永は笑って、手を差し出した。
 村崎が目を瞠る。
「繋ごう。
 少しは安心するんとちゃう?」
「……」
 村崎はうろたえた。
「…やっぱり、おかしい」
「なにが」
「…やって」
 村崎はなにか言いかけて、手を伸ばす。
 差し出されていた手を掴んで引っ張り、腕の中に岩永を抱きしめた。
 岩永は素直に腕の中に収まって、目を閉じる。
 そして、再び開いて、自分から村崎の胸元に頬をすり寄せた。
 猫のような仕草に、村崎はひどくうろたえて、身体を離した。
 自分の肩に乗ったままの村崎の手を、岩永は見やる。
「変や」
「やから、なにが?」
「…やって」
 言うに言えない。
 そんな様子の村崎の手をそっと握って、自分の方に引き寄せる。
 軽く指先にくちづけると、村崎は思わず手を引っ込めた。
 岩永はそれを見て、おかしそうに笑う。
「変なのは村崎」
 からかうように言って、村崎に背中を向けて歩き出してしまった。
 村崎は追えずに、取り残される。
 うん。おかしいと思う。
 自分もそう思う。
 記憶を失ってからは、抱擁すら赤面して逃げるくらいの純情じゃなかったか?
 なにさらっとすり寄って手にキスしてるんだ?
 記憶は確かになくなっていないらしいが、なにかおかしい。
 変貌。
 そう見える。
「まるで、僕みたい…」
 そう呟いた。
 まるで自分みたく、誰かが乗っ取ってるみたい。
 そんなはずないけど。
 吾妻は頭を掻いてから、その場から遠ざかって、そしてはたとなる。
 ポケットのスマートフォンが鳴ったからだ。
 スマートフォンにはメール一件。

「吾妻。
 はやく帰ってきて。ぎゅーってして」

 白倉からのおねだりメールに、目眩を起こしてその場にしゃがみこむ。
 ああ、本当に、どうしよう。

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