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第九章 胡蝶の夢
第三話 そして真実に気づく/つのるおそれ
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戦闘鳥籠<バトルケイジ>-20号室。
本戦までまだ一週間ある。
だから戦闘鳥籠<バトルケイジ>は使用許可が出ている。
自分たちはやっと岩永が復帰したこともあり、今日から訓練再開だった。
「大丈夫かなあ」
予定の時間より早く戦闘鳥籠<バトルケイジ>に到着していた流河が、壁にもたれながら呟くように言った。
優衣も時間があったので、一緒に来ていた。
岩永は地下都市に、最後の検診に行く予定があったから、村崎も一緒に行くだろう。
そのあと合流する予定だ。
「なにがや?」
先ほどまで組み手をしていたが、今は休憩中だ。
優衣はしゃがみこんで、スマートフォンをいじっている。
「岩永くん」
「問題ないやろ。もうさすがに」
優衣はスマートフォン画面から目を離さない。
流河が責めるように視線を向けた。
「そうじゃないよ。わかってるでしょ?」
「やからなにが。
記憶もあるし、身体にも異常ないし、問題ない」
流河が怒ったように睨む。
優衣はやはり顔を上げない。
「わかってて言ってるだろ。
本当になにもないわけないだろ。
実際、岩永くんはおかしいんだよ」
「流河、口調」
若干荒れてる、と優衣がスマートフォンを見たまま注意する。
流河が目をつり上げた瞬間、優衣のスマートフォンを操作する指の動きが止まった。
「おい、スマートフォンに力使うなや…。
壊れたらどないしてくれんねん」
優衣のスマートフォンの画面は真っ白な状態で固まっている。
流河の物質変換だ。
「だったら、まともに話をして欲しいね」
「…やから」
優衣はため息を吐いて、スマートフォンを床に置く。
疲れたように浮かせていた腰を地面に落とす。
「心配したかて、どうしようもないやんか。
あいつの様子は確かにおかしいわ。
でも、向こうの岩永みたいなやよ感じやないし、いつもと違うってだけで。
それに、なにが起こんねん。
あいつがいた部屋の監視カメラの映像も見せてもろたけど、なんの異常もなかったんやで?」
「だからって、『なにも異常ないです』みたいなシカトしないでくれる?
傷つくよ」
「お前が、最近やけに神経質なんやろ」
そう返す優衣も実際は冷静ではなかったのだが、本人に自覚はない。
そう言った瞬間、床に置いたスマートフォンが爆発した。
小さな爆発で、全く破片は散らなかったし、戦闘鳥籠<バトルケイジ>内だから怪我をする心配はないが、優衣は流河を睨みあげて立ち上がった。
「おい、ええ加減にせぇや。
マジでお前が導火線短いってだけやろ。
他人のスマートフォン壊すなや。弁償してくれるんやろな」
「ああ、当然するよ。当たり前だ。
それで君が俺の話をまともに取り合うならね」
「お前、ほんまええ加減にせぇや…」
間近で怒りに顔を歪めてすごんでも流河は眉一つ寄せない。
「君は冷たすぎるな。
岩永くんはチームメイトだけど、友達じゃないかい?」
「っ」
思わず流河の胸ぐらを掴みあげた瞬間、優衣と流河の顔の間を通過した物体に、二人とも目を瞑った。
びっくりして、優衣は胸ぐらを掴んだまま、物体が飛んできた方向を見やる。
「穿て」
と、冗談みたいな口調で言って、エアガンを構えているのはいつの間にか見物席にいた夕だ。
「……」
優衣と流河は驚きすぎて、なにも言えない。
「おいおい、なに喧嘩してんの。
らしくない」
夕は軽い口調で咎めると、見物席から飛び降りてきた。
「…お前、なにが魔弾や…。
ただのエアガンやし」
「うん。そこまで飛ばすのに風使ったけどな」
「…びっくりした」
優衣と流河の言葉も勢いがない。
「お互い、嵐のことで不安になりすぎなんだ。
やけどそれで仲間割れはいかん。
俺と当たるまでは生き残ってな」
「…」
優衣と流河は思わず見つめあったが「そんなことはない」と否定もできなくて、視線を逸らした。
優衣は手を離す。
少しホッとした。
夕には、事情を話した。
逃げ切れなかったのと、もう不安を押さえ込めなかったから。
話して、不安を口にしてしまいたかったから。
夕は強いから。
「嵐がおかしいのは事実なんだ。
部屋ではなにも起こってないのも。
なら、嵐の内部でなにかが起こったんだ」
その言葉に、流河の顔が一瞬歪む。
それを恐れていたからこそ、流河はあんな風に不安定だったのだ。
「記憶じゃないとこで、なにかが。
だったら、お前らが支えないと」
「……まあ」
優衣がやっと、ぽつりと声を発した。
「そう、やけど」
「核心に触れるのは、怖いんだろ?」
「……」
夕の言葉に、優衣はしばらく黙っていたがやがて頷いた。小さく。
流河も頷く。
「だけど、お前らが避けたら、誰も気づけない。
この一年間、ずっとあいつを見てきただろう」
「…うん」
流河が小さな声で肯定した。
「静流さんも、がんばっとるじゃないか」
それに、頷いた。
村崎は、とまどい困惑し、うろたえながらも、決して岩永から目を背けない。
同じ過ちを繰り返すまいと懸命だ。
きっと、誰より不安なのに。
「ちゃんと、考えよ」
「…うん」
「はい」
夕が微笑んで言うと、二人はそろって返事をした。
そして、流河は優衣の方を見て、小声で、
「ごめん」
と言った。
優衣は笑って、
「ほな、あとで携帯ショップつき合ってや。
弁償はええから」
と返す。
「いや、そんなわけにはいかないよ。弁償はする」
「ええて。
どのみちそろそろ機種変しよって思っとったし。
悪い思うなら、消えたメモリは全部お前が提供せぇ」
「…消えた待ち受けがあったら言ってね。
それくらいはプレゼントするよ」
「うん」
笑いあって、拳を軽くぶつけあう。
夕が「よし」と頷いた。
「…でも、なにが起こったと思う?
心の中までは、向こうの岩永くんも干渉…できないはず」
「言い切れへんな…」
「うん」
優衣が事情を話したときに、夕も記憶隠蔽は解けている。
腕を組んで、真剣な顔をする。
「嵐にあないな使い方を教えたなら、他人から精神に干渉するような能力は奪っとるかもしれんもんな」
「うん…そうなんだよ」
流河もそう思う、と言う。不安そうだ。
「やけど、地下都市のセキュリティや超能力に対する防御は完璧やで。
さすがに地下都市にまで侵入できひんやろ」
「…あ、そっか」
優衣の言葉に、それもそうだ、と思い直した。
そうだ。場所が地下都市ではさすがのあの岩永もなにも出来ないはず。
「…じゃあ、干渉されたとかではない…?」
「あるいは、略奪の使い方をしたせいで、記憶喪失とは違う影響が起こったとか」
「…そっちの方があり得るね」
二人の向かいで同じく賛同した夕が、難しい顔をした。
「その場合、嵐が俺らや静流さんに『なんもない。大丈夫』って嘘吐いてるってことか?」
「…そうなるな」
「だね。彼は無茶するし」
流河は「あー」と声を伸ばして言い、その場にしゃがみ込む。
「…怖いなあ」
「なにが起こってるかわからんからな」
「…うん」
膝を抱えて、流河は泣きそうに呟く。
「嫌だなあ…」
膝に顔を埋めて、言う。
「……俺、二度は嫌だよ」
流河の言いたいことは、すぐに伝わった。
岩永に、また忘れられるのが、だ。
「…ないやろ」
「でも、怖い」
優衣は否定できなくて、黙り込む。
しかし、唐突に流河が顔を上げる。
「…ちょっと待って。
ねえ優衣くん」
優衣の方を見上げてきたので、優衣は返事をする。
「あっちの岩永くん、神社で村崎くんに『これで三度目』って言ってたよね?」
流河の言葉に、優衣も思い当たって「ああ」と声を上げた。
「言うとったなそういえば…」
「そういや九生くんも言ってた。
どういう意味だろ?」
「…やから、記憶のことで」
優衣は言いかけて、自分に「待った」をかける。
眉を寄せた。
「岩永、記憶を失ったんは、一度やんな?」
「そうだよ」
「……三度目。なら二度あったっちゅうことに…」
優衣は床を睨んで、必死に考える。
「…辻褄が、あわなくはないと思う」
黙っていた夕が不意にそう言った。
「辻褄?」
優衣の問いに頷く。
「静流さんだけ、ずっとお見舞いに行ってただろ?
暴走のあと」
「ああ」
「もし、静流さんが言わなかっただけで、暴走と同時に嵐は記憶をなくしてたとすれば?」
その内容に、流河と優衣は息を飲む。
「俺らは会ってないし、聞いてないから、一度って思ってるけど。
静流さんが会いに行っとった嵐に記憶はなかったんかもしれん。
で、そのあとまた、嵐が記憶に障害を起こしたなら、それが『二度目』。
辻褄があう」
流河と優衣は顔を見合わせて、茫然とした。
「あの静流さんが忘れられたからって嵐から離れたこと自体ずっと引っかかってたんだ。
だけど、二度も忘れられたなら、辻褄があうかもしれん」
夕の言葉に反論できない。
むしろ納得してしまう。
じゃあ、村崎はずっと黙っていたのか?
記憶を失った岩永に会いに行き続けたことを。
二回も忘れられたことを。
簡単に、その手を離したのではなかったということを。
「…なんてことた…」
流河は思わず呟く。
自分たちはなんて勘違いで、彼を責めていたんだ。
「ごめんな。つき合わせて」
地下都市から帰る通路の途中。
岩永は笑ってそう言う。
「いや、かまへん」
「ありがとう。助かる」
柔らかい笑顔の岩永。
そういえば、ここ最近ずっとそうだ。
目が覚めてからずっと、柔らかく笑っていて、静かで。
感情の起伏が見えない。
「……嵐」
思わず足を止めて、岩永を見下ろした。
彼も立ち止まる。
「…ほんまはなにがあったんや?」
「…いきなりやなあ」
岩永は一瞬驚いたようだが、またすぐ笑い出す。
「こないなとこで。
脈絡ないで」
「人気はない」
「…そういう問題かいな…」
岩永は少し唖然としたようだが、口元は笑ったままだ。
張り付けた仮面みたいだ。
その右手には包帯。
先日、唐突に裂けた傷だ。
おそらくもう一人の岩永の傷が跳ね返ったのだろう。
ただ、疑問なのは、どんな怪我でも治せるはずの彼がなぜ治さないのか。
「…なにがあった?」
「なんもないで?」
にこやかな笑みを浮かべたまま、そう言う岩永。
穏やかで静かで、波の立たない水面のよう。
違う。
自分の知る彼はもっと、感情豊かな人だ。
「嘘や。
なんかあった」
「やって、監視カメラの映像も見たやろ?
それとも先生らが映像に細工したとでも?」
「…そうやない」
岩永はのんびりとした口調で「ほななに?」と言う。
他人事みたい。
「お前が…」
身体の脇におろしていた腕を持ち上げる。
岩永の頬に触れる。
「…お前が、そうやって」
頬をくすぐっても、ゆっくりと瞬きをして、自分を見つめている。
驚いたり、過剰に反応したりしない。
「…まるで、儂のことも……感じてへんみたいに」
他人事みたいに、そこにいるから。
無感情に、自分を見ているみたいだから。
「…いつもみたいに、赤なったりせぇへん」
「…慣れただけやって」
「違う」
村崎は首を左右に振る。
「…なにを、見とるんや」
両手を伸ばして、岩永の顔に触れる。
頬を包むように、両手で。
「…儂が見えとるか?」
「変な村崎」
岩永は笑う。
「俺はそこまで視力悪ないで」
やっぱり、どこか第三者のように。
違う。
包んだままの頬。
強く固定して、強引に引っ張った。
顔を近づける。
数センチの距離まで近づいた唇に、岩永は目を瞠ったが、そのまま瞼をおろした。
村崎からのキスを素直に待つ。
村崎はそのまま、唇を重ねられずに、顔を離した。
「……なんで」
いつもの彼なら吹っ飛ばす。
咄嗟に驚いて、超能力で。
記憶を失う前もそうだった。
なのに。
岩永の肩を掴んで、そのまま抱きしめた。
彼の肩口に顔を埋める。
怖い。
記憶はあるのに、いつもと違うから。
なにか、自分の知らないところで異常が起ことている気がして。
怖い。
彼を失うことが。
「…村崎」
岩永は村崎を呼んで、自分に抱きついたままの村崎の腕に手を伸ばした。
「ほんまのことを知らなければ、俺とはつきあえへん?」
頭上から聞こえた声に、思わず顔を上げた。
彼の顔を見た。
「…嘘を吐いたままでは、傍におってくれへん?」
笑った口元。少し歪んでる。
少しだけ、不安そうな顔。
「……隠し事、しとるんやな?」
そう確認すると、岩永はただ寂しそうに笑う。
肯定みたいに。
「…儂には言えんか?」
岩永はなにも言わない。
「儂では、力になれへんか?」
その言葉には首を横に振った。
「儂では…一緒に背負えへんか…?」
その言葉には目を瞠った。
「…一緒に背負いたい。
お前の記憶がないことも、なにもかも。
一緒に生きていくって、そういうことや」
必死にそう告げた。
岩永は少し驚いたような顔をして、また笑う。
今度は悲しそうに。
「…ごめん」
そう謝った。
「俺は、一緒に背負わせたない」
「なんでや!?」
「…一緒にはおりたい。好きやねん。
やけど、村崎をこれ以上苦しめたない。
俺のせいでまた傷つけるなら、俺は」
岩永の言葉を遮るように、きつく抱きしめた。
彼が息を飲む。
しゃべれないくらいきつく抱いた。
嫌だった。
なにを言う気かわかったから。
「儂は別れへん」
わかったから、そう言った。
「もう二度と、お前を離さへん。
ずっと、なにがあっても」
言わないで欲しかった。
そんな悲しい言葉。
「絶対に、お前を一人にせぇへん」
離れないで欲しい。
自分から。
「…好きや」
全身全霊で願った。
「好きや。
やから、傍にいてくれ…!」
一緒にいて欲しい。
来年こそは、誕生日を祝わせてくれ。
祝いたいって約束したから。
そして自分の誕生日も祝ってくれると、言ったじゃないか。
「…村崎は」
ずっと腕の中で黙っていた岩永が、口を開いた。
「俺が…好き?」
「ああ」
はっきりと強く頷く。
「…俺が」
「好きや」
「…」
岩永が少し迷う気配がした。
「今の俺が好きって言うた…」
「ああ」
「…“今”の俺も?」
その、不安そうな問いに、一瞬息を止めてしまった。
彼の顔を見下ろす。
「…“今”の俺も、…好き?」
もう笑っていない唇。
泣きそうな顔。
「当たり前や」
泣いて欲しくないから、必死にそう言った。
「どんなお前でもええ。
お前が、好きや…」
そう告げると、岩永は俯いてしまって、自分の胸に抱きついた。
震えてない肩が、震えている気がして強く抱く。
それしかできない。
自分はいつもそれしか出来ない。
記憶を失う前も。
あの二人きりの部屋でも。
それでも抱きしめた。
それしか出来ないなら、せめてそれだけはしてやりたかった。
自分が、彼を抱いていたかった。
本戦までまだ一週間ある。
だから戦闘鳥籠<バトルケイジ>は使用許可が出ている。
自分たちはやっと岩永が復帰したこともあり、今日から訓練再開だった。
「大丈夫かなあ」
予定の時間より早く戦闘鳥籠<バトルケイジ>に到着していた流河が、壁にもたれながら呟くように言った。
優衣も時間があったので、一緒に来ていた。
岩永は地下都市に、最後の検診に行く予定があったから、村崎も一緒に行くだろう。
そのあと合流する予定だ。
「なにがや?」
先ほどまで組み手をしていたが、今は休憩中だ。
優衣はしゃがみこんで、スマートフォンをいじっている。
「岩永くん」
「問題ないやろ。もうさすがに」
優衣はスマートフォン画面から目を離さない。
流河が責めるように視線を向けた。
「そうじゃないよ。わかってるでしょ?」
「やからなにが。
記憶もあるし、身体にも異常ないし、問題ない」
流河が怒ったように睨む。
優衣はやはり顔を上げない。
「わかってて言ってるだろ。
本当になにもないわけないだろ。
実際、岩永くんはおかしいんだよ」
「流河、口調」
若干荒れてる、と優衣がスマートフォンを見たまま注意する。
流河が目をつり上げた瞬間、優衣のスマートフォンを操作する指の動きが止まった。
「おい、スマートフォンに力使うなや…。
壊れたらどないしてくれんねん」
優衣のスマートフォンの画面は真っ白な状態で固まっている。
流河の物質変換だ。
「だったら、まともに話をして欲しいね」
「…やから」
優衣はため息を吐いて、スマートフォンを床に置く。
疲れたように浮かせていた腰を地面に落とす。
「心配したかて、どうしようもないやんか。
あいつの様子は確かにおかしいわ。
でも、向こうの岩永みたいなやよ感じやないし、いつもと違うってだけで。
それに、なにが起こんねん。
あいつがいた部屋の監視カメラの映像も見せてもろたけど、なんの異常もなかったんやで?」
「だからって、『なにも異常ないです』みたいなシカトしないでくれる?
傷つくよ」
「お前が、最近やけに神経質なんやろ」
そう返す優衣も実際は冷静ではなかったのだが、本人に自覚はない。
そう言った瞬間、床に置いたスマートフォンが爆発した。
小さな爆発で、全く破片は散らなかったし、戦闘鳥籠<バトルケイジ>内だから怪我をする心配はないが、優衣は流河を睨みあげて立ち上がった。
「おい、ええ加減にせぇや。
マジでお前が導火線短いってだけやろ。
他人のスマートフォン壊すなや。弁償してくれるんやろな」
「ああ、当然するよ。当たり前だ。
それで君が俺の話をまともに取り合うならね」
「お前、ほんまええ加減にせぇや…」
間近で怒りに顔を歪めてすごんでも流河は眉一つ寄せない。
「君は冷たすぎるな。
岩永くんはチームメイトだけど、友達じゃないかい?」
「っ」
思わず流河の胸ぐらを掴みあげた瞬間、優衣と流河の顔の間を通過した物体に、二人とも目を瞑った。
びっくりして、優衣は胸ぐらを掴んだまま、物体が飛んできた方向を見やる。
「穿て」
と、冗談みたいな口調で言って、エアガンを構えているのはいつの間にか見物席にいた夕だ。
「……」
優衣と流河は驚きすぎて、なにも言えない。
「おいおい、なに喧嘩してんの。
らしくない」
夕は軽い口調で咎めると、見物席から飛び降りてきた。
「…お前、なにが魔弾や…。
ただのエアガンやし」
「うん。そこまで飛ばすのに風使ったけどな」
「…びっくりした」
優衣と流河の言葉も勢いがない。
「お互い、嵐のことで不安になりすぎなんだ。
やけどそれで仲間割れはいかん。
俺と当たるまでは生き残ってな」
「…」
優衣と流河は思わず見つめあったが「そんなことはない」と否定もできなくて、視線を逸らした。
優衣は手を離す。
少しホッとした。
夕には、事情を話した。
逃げ切れなかったのと、もう不安を押さえ込めなかったから。
話して、不安を口にしてしまいたかったから。
夕は強いから。
「嵐がおかしいのは事実なんだ。
部屋ではなにも起こってないのも。
なら、嵐の内部でなにかが起こったんだ」
その言葉に、流河の顔が一瞬歪む。
それを恐れていたからこそ、流河はあんな風に不安定だったのだ。
「記憶じゃないとこで、なにかが。
だったら、お前らが支えないと」
「……まあ」
優衣がやっと、ぽつりと声を発した。
「そう、やけど」
「核心に触れるのは、怖いんだろ?」
「……」
夕の言葉に、優衣はしばらく黙っていたがやがて頷いた。小さく。
流河も頷く。
「だけど、お前らが避けたら、誰も気づけない。
この一年間、ずっとあいつを見てきただろう」
「…うん」
流河が小さな声で肯定した。
「静流さんも、がんばっとるじゃないか」
それに、頷いた。
村崎は、とまどい困惑し、うろたえながらも、決して岩永から目を背けない。
同じ過ちを繰り返すまいと懸命だ。
きっと、誰より不安なのに。
「ちゃんと、考えよ」
「…うん」
「はい」
夕が微笑んで言うと、二人はそろって返事をした。
そして、流河は優衣の方を見て、小声で、
「ごめん」
と言った。
優衣は笑って、
「ほな、あとで携帯ショップつき合ってや。
弁償はええから」
と返す。
「いや、そんなわけにはいかないよ。弁償はする」
「ええて。
どのみちそろそろ機種変しよって思っとったし。
悪い思うなら、消えたメモリは全部お前が提供せぇ」
「…消えた待ち受けがあったら言ってね。
それくらいはプレゼントするよ」
「うん」
笑いあって、拳を軽くぶつけあう。
夕が「よし」と頷いた。
「…でも、なにが起こったと思う?
心の中までは、向こうの岩永くんも干渉…できないはず」
「言い切れへんな…」
「うん」
優衣が事情を話したときに、夕も記憶隠蔽は解けている。
腕を組んで、真剣な顔をする。
「嵐にあないな使い方を教えたなら、他人から精神に干渉するような能力は奪っとるかもしれんもんな」
「うん…そうなんだよ」
流河もそう思う、と言う。不安そうだ。
「やけど、地下都市のセキュリティや超能力に対する防御は完璧やで。
さすがに地下都市にまで侵入できひんやろ」
「…あ、そっか」
優衣の言葉に、それもそうだ、と思い直した。
そうだ。場所が地下都市ではさすがのあの岩永もなにも出来ないはず。
「…じゃあ、干渉されたとかではない…?」
「あるいは、略奪の使い方をしたせいで、記憶喪失とは違う影響が起こったとか」
「…そっちの方があり得るね」
二人の向かいで同じく賛同した夕が、難しい顔をした。
「その場合、嵐が俺らや静流さんに『なんもない。大丈夫』って嘘吐いてるってことか?」
「…そうなるな」
「だね。彼は無茶するし」
流河は「あー」と声を伸ばして言い、その場にしゃがみ込む。
「…怖いなあ」
「なにが起こってるかわからんからな」
「…うん」
膝を抱えて、流河は泣きそうに呟く。
「嫌だなあ…」
膝に顔を埋めて、言う。
「……俺、二度は嫌だよ」
流河の言いたいことは、すぐに伝わった。
岩永に、また忘れられるのが、だ。
「…ないやろ」
「でも、怖い」
優衣は否定できなくて、黙り込む。
しかし、唐突に流河が顔を上げる。
「…ちょっと待って。
ねえ優衣くん」
優衣の方を見上げてきたので、優衣は返事をする。
「あっちの岩永くん、神社で村崎くんに『これで三度目』って言ってたよね?」
流河の言葉に、優衣も思い当たって「ああ」と声を上げた。
「言うとったなそういえば…」
「そういや九生くんも言ってた。
どういう意味だろ?」
「…やから、記憶のことで」
優衣は言いかけて、自分に「待った」をかける。
眉を寄せた。
「岩永、記憶を失ったんは、一度やんな?」
「そうだよ」
「……三度目。なら二度あったっちゅうことに…」
優衣は床を睨んで、必死に考える。
「…辻褄が、あわなくはないと思う」
黙っていた夕が不意にそう言った。
「辻褄?」
優衣の問いに頷く。
「静流さんだけ、ずっとお見舞いに行ってただろ?
暴走のあと」
「ああ」
「もし、静流さんが言わなかっただけで、暴走と同時に嵐は記憶をなくしてたとすれば?」
その内容に、流河と優衣は息を飲む。
「俺らは会ってないし、聞いてないから、一度って思ってるけど。
静流さんが会いに行っとった嵐に記憶はなかったんかもしれん。
で、そのあとまた、嵐が記憶に障害を起こしたなら、それが『二度目』。
辻褄があう」
流河と優衣は顔を見合わせて、茫然とした。
「あの静流さんが忘れられたからって嵐から離れたこと自体ずっと引っかかってたんだ。
だけど、二度も忘れられたなら、辻褄があうかもしれん」
夕の言葉に反論できない。
むしろ納得してしまう。
じゃあ、村崎はずっと黙っていたのか?
記憶を失った岩永に会いに行き続けたことを。
二回も忘れられたことを。
簡単に、その手を離したのではなかったということを。
「…なんてことた…」
流河は思わず呟く。
自分たちはなんて勘違いで、彼を責めていたんだ。
「ごめんな。つき合わせて」
地下都市から帰る通路の途中。
岩永は笑ってそう言う。
「いや、かまへん」
「ありがとう。助かる」
柔らかい笑顔の岩永。
そういえば、ここ最近ずっとそうだ。
目が覚めてからずっと、柔らかく笑っていて、静かで。
感情の起伏が見えない。
「……嵐」
思わず足を止めて、岩永を見下ろした。
彼も立ち止まる。
「…ほんまはなにがあったんや?」
「…いきなりやなあ」
岩永は一瞬驚いたようだが、またすぐ笑い出す。
「こないなとこで。
脈絡ないで」
「人気はない」
「…そういう問題かいな…」
岩永は少し唖然としたようだが、口元は笑ったままだ。
張り付けた仮面みたいだ。
その右手には包帯。
先日、唐突に裂けた傷だ。
おそらくもう一人の岩永の傷が跳ね返ったのだろう。
ただ、疑問なのは、どんな怪我でも治せるはずの彼がなぜ治さないのか。
「…なにがあった?」
「なんもないで?」
にこやかな笑みを浮かべたまま、そう言う岩永。
穏やかで静かで、波の立たない水面のよう。
違う。
自分の知る彼はもっと、感情豊かな人だ。
「嘘や。
なんかあった」
「やって、監視カメラの映像も見たやろ?
それとも先生らが映像に細工したとでも?」
「…そうやない」
岩永はのんびりとした口調で「ほななに?」と言う。
他人事みたい。
「お前が…」
身体の脇におろしていた腕を持ち上げる。
岩永の頬に触れる。
「…お前が、そうやって」
頬をくすぐっても、ゆっくりと瞬きをして、自分を見つめている。
驚いたり、過剰に反応したりしない。
「…まるで、儂のことも……感じてへんみたいに」
他人事みたいに、そこにいるから。
無感情に、自分を見ているみたいだから。
「…いつもみたいに、赤なったりせぇへん」
「…慣れただけやって」
「違う」
村崎は首を左右に振る。
「…なにを、見とるんや」
両手を伸ばして、岩永の顔に触れる。
頬を包むように、両手で。
「…儂が見えとるか?」
「変な村崎」
岩永は笑う。
「俺はそこまで視力悪ないで」
やっぱり、どこか第三者のように。
違う。
包んだままの頬。
強く固定して、強引に引っ張った。
顔を近づける。
数センチの距離まで近づいた唇に、岩永は目を瞠ったが、そのまま瞼をおろした。
村崎からのキスを素直に待つ。
村崎はそのまま、唇を重ねられずに、顔を離した。
「……なんで」
いつもの彼なら吹っ飛ばす。
咄嗟に驚いて、超能力で。
記憶を失う前もそうだった。
なのに。
岩永の肩を掴んで、そのまま抱きしめた。
彼の肩口に顔を埋める。
怖い。
記憶はあるのに、いつもと違うから。
なにか、自分の知らないところで異常が起ことている気がして。
怖い。
彼を失うことが。
「…村崎」
岩永は村崎を呼んで、自分に抱きついたままの村崎の腕に手を伸ばした。
「ほんまのことを知らなければ、俺とはつきあえへん?」
頭上から聞こえた声に、思わず顔を上げた。
彼の顔を見た。
「…嘘を吐いたままでは、傍におってくれへん?」
笑った口元。少し歪んでる。
少しだけ、不安そうな顔。
「……隠し事、しとるんやな?」
そう確認すると、岩永はただ寂しそうに笑う。
肯定みたいに。
「…儂には言えんか?」
岩永はなにも言わない。
「儂では、力になれへんか?」
その言葉には首を横に振った。
「儂では…一緒に背負えへんか…?」
その言葉には目を瞠った。
「…一緒に背負いたい。
お前の記憶がないことも、なにもかも。
一緒に生きていくって、そういうことや」
必死にそう告げた。
岩永は少し驚いたような顔をして、また笑う。
今度は悲しそうに。
「…ごめん」
そう謝った。
「俺は、一緒に背負わせたない」
「なんでや!?」
「…一緒にはおりたい。好きやねん。
やけど、村崎をこれ以上苦しめたない。
俺のせいでまた傷つけるなら、俺は」
岩永の言葉を遮るように、きつく抱きしめた。
彼が息を飲む。
しゃべれないくらいきつく抱いた。
嫌だった。
なにを言う気かわかったから。
「儂は別れへん」
わかったから、そう言った。
「もう二度と、お前を離さへん。
ずっと、なにがあっても」
言わないで欲しかった。
そんな悲しい言葉。
「絶対に、お前を一人にせぇへん」
離れないで欲しい。
自分から。
「…好きや」
全身全霊で願った。
「好きや。
やから、傍にいてくれ…!」
一緒にいて欲しい。
来年こそは、誕生日を祝わせてくれ。
祝いたいって約束したから。
そして自分の誕生日も祝ってくれると、言ったじゃないか。
「…村崎は」
ずっと腕の中で黙っていた岩永が、口を開いた。
「俺が…好き?」
「ああ」
はっきりと強く頷く。
「…俺が」
「好きや」
「…」
岩永が少し迷う気配がした。
「今の俺が好きって言うた…」
「ああ」
「…“今”の俺も?」
その、不安そうな問いに、一瞬息を止めてしまった。
彼の顔を見下ろす。
「…“今”の俺も、…好き?」
もう笑っていない唇。
泣きそうな顔。
「当たり前や」
泣いて欲しくないから、必死にそう言った。
「どんなお前でもええ。
お前が、好きや…」
そう告げると、岩永は俯いてしまって、自分の胸に抱きついた。
震えてない肩が、震えている気がして強く抱く。
それしかできない。
自分はいつもそれしか出来ない。
記憶を失う前も。
あの二人きりの部屋でも。
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それしか出来ないなら、せめてそれだけはしてやりたかった。
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