【完結保証】超能力者学園の転入生は生徒会長を溺愛する

兔世夜美(トヨヤミ)

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第九章 胡蝶の夢

第八話 欲しかったのは/シャッフル

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 自分でもおかしなくらいにショックだった。
 ばれたならばれたで、無理矢理事に及んでも良いつもりだった。
 それが不可能だと途中で気づいた。
 自分は、彼を傷つけられなかった。
「……いつから、…最初から、…気づいてた?」
 白倉が思い違っているだけで、最初の一日くらいはだませていたんじゃないかと思った。
 白倉は少し離れた位置。
 屋上の端っこで、切なそうに笑んだまま答えた。
「四日前。
 俺が嵐のことを聞きに行って、帰ったときには、お前はもう違っただろう」
 思い違っていない。
 自分が彼の身体を乗っ取ったその瞬間から、見抜かれていたのだ。
 なんで、なんて聞けない。
「…僕は、そんなあからさまだったんだね」
「うん」
 今、白倉が言った。
 自分は、彼を通して、別の人間を見ていた、と。
 その視線が、雄弁すぎたのだ。
「…最初はびっくりしたし、どうしようと思った。
 まさか身体を乗っ取る能力があるなんて思わなかったし」
 その言葉に、この身体がこちらの吾妻のものだと白倉が気づいていると知った。
 俺が演じているだけ、と勘違いすらしない。
「…やけど、ほんとは途中から、嬉しくもなった」
「……うれしく?」
 吾妻は目を瞠った。予想外の単語が出てきたことに、驚いた。
「お前は、ほんとに優しかったから」
 自分を真っ直ぐに見つめる白倉の髪を、風が凪ぐ。
 寮の屋上には、目に見えるフェンスはない。
 防護壁のような透明な壁が、周囲をぐるっと覆っているのだ。
 風を通す壁だ。空に近い屋上に吹く風は強い。
「嘘の優しさなら、俺はわかった。
 そこで、お前に言ってた。
 お前は吾妻じゃないって」
 その言葉に、胸がずきりと痛む。
 彼は自分の白倉じゃないのに。
「だけど、お前は…ほんとに俺にどきどきしてた」
 そう言葉を紡いだ白倉の表情に、どきりと胸が鳴った。
 ひどく優しい、暖かい笑顔だった。
「俺の一挙手一投足に慌てて、焦って、…真っ赤になって。
 それで、本気で俺を慰めた」
 柔らかい声だった。
 白倉の気持ちが感じられる声。
「俺を本気で心配してくれた。
 あれは嘘や演技じゃなかった。
 …本気で、俺に接してくれた」
 思いやられている。
 自分に気持ちを割いてくれている。
 そう、自惚れてしまうような、表情と声。
「お前をひどい男だと思ってた。
 けど違った。
 お前は、普通に優しい、普通の男だった。
 …お前が優しい奴だって知った。
 だから、嬉しい」
 口を開いたが、言葉が見つからない。
 なにも出てこない。
 だって、罵倒されるものだと思っていたんだ。
 罵って、睨み付けて、恨んで。
 そういう視線や表情や声をぶつけてくると、思っていた。
「…だって、お前は今、そうやってどうしたらいいかわからん顔しとる。
 俺の言葉を、真剣に考えてる。
 俺の言葉を、きちんと受け取ってくれる。
 …お前は、無情な人間じゃないって知った」
 そんなに、優しい顔と声を向けてくれるなんて思わなかったんだ。
「どうして…?」
 かろうじて、震えた声が口をついた。
「…どうして、そんな……優しい。
 優しいのは、あんただろ。なんで、僕を…」
 憎まない。
 白倉は日差しに照らされて、風に吹かれて、微笑んだ。
 とても美しく。
「俺はお前にもらった気持ちを返してるだけ」
 その言葉に、声を失った。
「これは、お前が俺にくれた気持ち。
 お前が優しいから」
 思わず首を左右に振った。
 違う。
「おかげで、お前を信じてみたいと思えた。
 …お前を知ってみたいと思えた。
 お前の話を聞きたいと思った」
 違う。
 自分はそんな優しくない。立派じゃない。
 でも、否定するには、目の前に差し出された思いは、抗いがたかった。
「ありがとう。――――吾妻」
 俺の名前。
 こちらの俺じゃない、本当の、俺に対する、俺の名前。
 俺のことを、呼んでくれた。
 白倉がびっくりしたように目を瞠った。
 吾妻の瞳から流れ落ちた、一筋の涙に。
「吾妻…」
 驚きに揺れた白倉の声がまた自分を呼ぶ。
 衝動のままに地面を蹴って駆け寄って、手を掴んで力一杯抱きしめた。
「吾妻…」
 だってそれは、俺にはあらがえない。
 ずっと、俺が欲しかったもの。
 あの日、夕日の照らす山で、自分を優しく救ってくれた、手と声。
 それと同じものだった。
 全く同じものだった。
「…白倉」
 ただ泣きたくて、呼びたくてしかたがなかった。
 郷愁に似た、強い思い。
「…ありがとう」
 忘れてなんかいない。
 俺はこんなに、泣きたいほどに君に焦がれている。
 でも、見失いかけたそれを、もう一度掴めた気がする。
「俺はやっぱり、…あんたが好きだ」
 泣きながら、綺麗に微笑んだ吾妻の顔を、白倉は見つめた。
 心が震える。
「優しくしてくれて、ありがとう」
 そう告げて、吾妻は背中を向けた。
「白倉は、巻き込むんじゃないよ」
 吾妻の大きな背中に庇われていてもわかる。
 屋上に自分たち以外の気配。
 馴染んだ、九生と時波の。
「巻き込む気は最初からない」
 時波の声が聞こえた。
「詳しいことを、聞きたいだけじゃ」
 そして九生の。
 思わず手を伸ばして、吾妻の背中の服を掴んでいた。
 吾妻がびっくり顔で自分を振り返る。
「……あ」
 自分自身びっくりした。
 吾妻の瞳と視線が合う。
「……怪我、しないで?」
 その身体が、自分の吾妻の身体だとか、関係なく。
 そう言った。
 伝わっただろうか。
 吾妻は、嬉しそうに笑った。



「あっ」
 一方、ホテルの一室。
 岩永は悔しそうにノートパソコンのキーボードを叩いた。
 画面が一瞬で真っ黒に塗り潰された。
「妨害された…」
 NOAの様子をうかがっていたが、誰かが気づいて妨害してきた。
「…まあ、吾妻ももうことち戻ってくるやろうし、潮時やな」
 あまり慌てずに椅子から立ち上がって、寝台に横たわった吾妻の顔を見下ろす。
 映像の最後で、どうも吾妻の正体がばれた様子だったし、なら吾妻は向こうに長居はしないだろう。
「…ちょお心配やけど」
 なんか、向こうの白倉に感情移入してる風に見えたし。
「おーい、吾妻」
 寝台の側に立って、眠っているような吾妻の額をこづく。
 ほどなく、瞼が震えて開いた。
「よう。
 チェックアウトして移動するぞ」
 それだけ言えば伝わると思ったからそう言った。
 吾妻は寝台の上に上体を起こして、それから自分を見てにっこり微笑む。
「うん。わかった。
 ごめんな」
「ほんまやで。
 ずっとことちに戻ってけぇへんから、変に心配したわ」
「すまん。
 ちょっと深刻な話だったから」
 吾妻は床に足をおろして、岩永の頭を軽く撫でた。
 岩永は嫌がって逃げる。
「すぐ準備するよ。
 あんたはすぐ行ける?」
「ああ、大丈夫や」
 そう答えた通り、岩永の準備はものの数分で済んだ。
 ノートパソコンを片づけて鞄にいれる。彼の支度はそのくらいだ。
 他の準備はもう既に最初から済んでいる。
 いつでも、すぐ出られるように、必要最低限の荷物はまとまっているからだ。
「そん服やめな。
 悪目立ちするよ」
「あー、せやな。
 あとで着替えるわ」
 岩永の服装は黒ずくめで、パンクファッションに近い。
 外見や身長のこともあって、目立つ。
 その顔には相変わらず眼鏡。
 夕陽の落ちてきた街の小道は、人通りが全くない。
「自分かて人のこと言えへんけど」
「仕方ないでしょ。
 僕は身長で目立ってるから、開き直り」
「あ、そうか」
 それもそうやな、と岩永は納得した。
「…右手、どげん?」
 岩永の右手。包帯が巻かれたその手を見やって、吾妻は尋ねた。
「ん?
 別に大したことない。普通に使える」
「使えるじゃないだろ。
 完治するまであんまり動かしたら駄目だから」
「はいはい。相変わらず親じみたこと言うなお前」
「あんたが危なっかしいだけだよ」
 吾妻ははあ、と呆れたようにため息を吐いた。
 いつものことだ。
「それより、白倉はどうやったん?」
「ああ。まあ、さすがにそう簡単じゃなかった」
「お前がヘタレなのもでかかった」
「……」
 指摘すると、吾妻は一瞬黙り込んだ。
 だが、すぐに気を取り直す。
「だけど、進展はあったとよ」
「へえ!
 なになに?」
 岩永は声のトーンを跳ね上げて、興味津々に尋ねる。
 風が吹いて、服をあおった。
 妨害を受けたあとにでもなんかあったのだろうか。
 そう考える岩永を見下ろし、吾妻は笑う。
「鉄壁んガードかと思いきや案外、無防備だよ」
「…まあ、そういうとこもあるやろうな」
「そんだけ大事なんだろ。
 意外と信頼しきっとって、疑わん。
 唯一無二の存在だから?
 失ったら困るって思ってるんか……そこまで全幅の信頼を寄せてるとは思わなかったよ。
 案外かわいいね」
「……?」
 岩永は思わず目を瞠る。
 吾妻の言っていることが理解できなかった。
「敵の手に落ちるとか思いも寄らん?
 そんだけ、“吾妻”はあんたにとって、重要なんだ。
 もっとさばさばしてて、捨て駒に出来るドライな関係って思ってたよ」
「……吾妻?」
 岩永の口から漏れたのは、子どものような疑問の声だった。
 吾妻を見上げて、純粋に不思議がった瞳を向ける。
 それに、吾妻は驚いたようだ。
「ここまで明らかなこと言ってるのに…」
 しょんなか、と呟いた吾妻の手から放たれた炎に、反射で吸収の壁を作って背後に飛んでいた。
 吾妻から離れた位置に着地して、吾妻を見上げた。
 信じられないように、目を見開いて。
「吾妻…?
 おい、なんの冗談や!」
 珍しく本気で動揺した岩永の表情と声に、吾妻はおかしそうに笑う。
「うーん。まだ信じきれない?
 攻撃までしてるのに…。
 …そこまで、あんたにとって、この身体の持ち主は重要だったんだね」
 吾妻は自身の胸を指した。
 岩永は凍り付いたように見つめたあと、息を飲む。
「やっとわかった?
 もっと冷酷に切り捨てる、って思ってたから、あんた案外人間らしい」
「……なんで」
 かすれた声が口から漏れた。
「なんでや…?
 お前に、その能力はないはず!」
「そうだね。そんな能力、俺にはない。
 だけど、あいつが僕の身体を使ってるから、僕が自分の身体を使おうとしても弾かれる。
 だから、空いてるこいつの身体に精神が入った、って感じ。
 まあ、元々同じ人間だからね。
 僕が身体を使っても、問題はないらしい」
 岩永は驚きすぎて、なにも言えない。
 だって、まさか、彼が吾妻の身体を扱えるなんて。
 こちらの世界の吾妻。彼が、自分の知る吾妻の身体に入れるなんて。
 あり得なかった。
 だから、疑わなかった。
「…だけど、これはなかなかいい機会だよ」
 吾妻は悠然と笑う。
「これは僕の身体じゃないから、超能力のレベルはあんたとほぼ同じ。
 今なら、僕はあんたに対抗出来る」
「っ…」
 そうだ。
 今なら、その身体なら自分たちは拮抗した実力だ。
 苦戦を強いられる。
「この機会に、洗いざらい吐いてもらうよ」
 不敵に言った吾妻が地面を蹴る。
 岩永は咄嗟に構えて、温度操作の力で炎を生み出した。
 岩永のランクはSSに匹敵する。
 空を覆い隠すほどの巨大な業火は、火の粉をまき散らしながら吾妻に襲いかかった。
 だが、吾妻が自分の周囲に発動させた炎の壁に、あっけなく散ってしまう。
「…あんた、やっぱ、こいつが大事だろ?」
 吾妻はにやりと笑んで問う。
「全然、本気の攻撃じゃないもん」
 楽しそうですらある吾妻を見上げて、岩永は悔しそうに唇を噛んだ。
 岩永が全力で攻撃すれば、いくらこの身体でもただでは済まない。
 なのに、岩永の攻撃は笑えるほどに加減されていた。
「ほら!」
 吾妻が腕を一閃する。
 その軌跡を、波のように生み出された灼熱の力が走った。
 岩永は屈んで避け、吾妻の懐に飛び込む。
 足の速さも、吾妻の知る岩永の比ではない。
 一瞬、反応が遅れたがすぐに構える。
 岩永が自分に向かって振り上げた拳を、素早く掴んだ。
 素手で、だ。
 案の定、全く手は痛まない。
「超能力ばまとわせてれば、勝てたのに…。
 なんで素手で来るかねぇ…」
 拳に温度操作の力でもまとっていれば、簡単にはじき飛ばせただろうに。
 岩永の拳は、素手のままだ。
「やっぱり、あんたはこいつに、…依存してる?」
 その言葉に岩永が目をつり上げた瞬間、吾妻は胸ぐらを掴みあげて、地面に投げ飛ばしていた。
 したたかに背中を打って顔を歪めた岩永の両手首をまとめてつかみ、頭上で拘束して、腹の上に乗る。
「これで、チェックメイト、だよ」
「……っ」
「超能力ば使えば、逃げられるかもしれんけど、あんたはしないよ。
 こいつを傷つけられん」
 岩永は吾妻を睨みあげて、悔しそうに唇を歪めた。
「さて、詳しかこと聞こうかね」
 悠然と言った吾妻の傍で、靴音が響いた。
「それなら、手を貸そうか?
 君はあまりそちら方面に長けていないだろ?」
「そうそう。
 吾妻は墓穴堀りやすいもんな」
 吾妻にとっては聞き馴染んだ、仲間の声。
 顔を上げて、吾妻は微笑む。
「やあ。
 白倉くんから詳しい事情聞いてきたよ。
 とりあえず、君が無事でよかった」
 オレンジ色の髪の、一見軽い男と、野暮ったい黒髪の眼鏡の男。
 流河と優衣。
「ああ、助かるよ。
 頼んだ」
 吾妻は岩永を押さえ込んだまま、そう返した。

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