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第九章 胡蝶の夢
第九話 君を愛してる/かくれおに
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「詳しいことを聞かせてもらうぞ」
時波と九生の姿は、白倉からは見えない。
自分の前に立つ吾妻の身体に遮られて。
自分を人質にとれば逃げられるだろうに、それをしない吾妻を、やっぱり優しく思った。
その場に風が吹き荒れる。
時波と九生の超能力の余波だ。
吾妻が一歩踏み出した。
「あっ…」
白倉は思わず手を伸ばす。
「やっぱり駄目だ!」
やっぱり、ただ見ているなんて出来ない。
その声を背後で聞いた吾妻は目を瞠った。
中途半端な位置で手を止めた時波と九生は、全く動かない。
瞬きすらしない。
そういえば、さっきまで身体に当たってきていた強い風がない。
「吾妻! 逃げるぞ!」
「え、ええっ!?」
思わず驚きの声を上げてしまった吾妻の手を掴み、白倉は全速力で階下に繋がる扉に走った。
そのまま階段をくだり、一階まで降りて、廊下を猛スピードで走る。
「し、白倉っ!?」
吾妻の方が大慌てだ。
まさか、ここまでして助けてくれると思わなかった。
時間操作の超能力を使って、NOA一帯の時間を止めてまで。
寮内の時間も止まっている。
誰も動かない。
「白倉! どうしてここまで…!?」
「だって、嫌なんだもん!」
白倉は自分の前を、自分の手を引っ張って走りながら、早口で答えた。
「やっぱり、お前が傷つくのはいやだ!」
「……僕が?」
「そうだ!」
吾妻は半分信じられなかった。
だって、自分はひどい奴だ。
先刻の白倉の言葉だけで、充分すぎるのに、ここまでしてくれて。
でも、自分はまた白倉を傷つけるかもしれない。
「…僕は、いつかあんたを傷つけるよ」
「そうかもしれんな」
白倉は振り返らず、足も止めないままだ。
動揺した様子もない。わかっていたように。
「ならどうして!?」
「だけど、お前は俺を傷つけることを、心苦しく思ってる」
「…っ」
吾妻は息を飲んだ。
「本音では、やりたくない。避けられるなら避けたい。
そう思ってる」
なにも反論できない。
見透かされている。
その通りだ。
「お前が優しいことに変わりない。
それなら、俺だってお前に傷ついて欲しくないわ」
廊下を突っ切って、エントランスに出る。
ちょうど出口の自動ドアが開いた瞬間だったらしく、開いた状態で止まっている。
そのまま通り抜けた。
「俺が…」
吾妻は思わず足を止めた。
白倉が手を引っ張られて、立ち止まる。
少し息が上がった様子で、吾妻を見上げてくる。
まだ、止まったままの時間。
「…俺が、自分の身体でも、そんな思ってくれる…?」
「ああ」
白倉は綺麗に微笑んで肯定した。
傷つけたくない。
心から、この微笑みを消したくないと思ってしまった。
「…俺は、岩永とは違う。
そう思ってたよ」
「…そっちの、嵐?」
白倉の問いに頷く。
「あいつは、この世界の村崎を愛してる。
自分の世界の村崎に重ねて、大事がってる。
僕は、そうじゃなかった」
白倉の包帯の巻かれた手を掴んで、両手で包んだ。
「白倉の代わりはいないって、思ってた。
やから、あんたを代わりにする気はなくて、大事にする気もなかった。
…だけど」
泣きそうに歪んだ吾妻の顔を見上げて、白倉は言葉の続きを待つ。
「やっぱり、僕には出来ない。
…あんたを、傷つけたくない」
「…俺が、『白倉』やから?」
白倉の問いに、吾妻はどうにか答える。
震えた喉に、しゃべるのを邪魔されながら。
「…僕がずっと、夢見てた、白倉の、…笑顔や、声、…心。
全てが同じだった。
…それを見て、思われて…傷つけられるはずがない」
「……お前の白倉は、お前を好きか?」
なにを言ったらわからなくて、白倉は結局そう尋ねた。
吾妻は目を瞠って、それから切なそうに微笑む。
涙のにじんだ瞳が、白倉を見た。
「…もちろん」
吾妻はそう答えた。
「…なら、よかった」
白倉はそう言ったが、少し複雑そうな笑顔を浮かべていた。
同じ気持ちだな、と吾妻は思う。
「俺は、…岩永と同じだよね」
あいつと同じだ。
やっぱり重ねずにいられない。
面影を求めずにいられない。
傷つけられない。
同じだ。
「ありがとう。白倉」
白倉の手を、両手で握って、心から告げた。
「全ての世界で、二番目に好きだよ」
「……ありがと」
白倉は一瞬複雑そうな顔をして、それから微笑んだ。
「……それで、どうしようかな?」
「……元の身体に戻ったらいいんじゃない?」
「いや、それが何度も試してるから、無理」
白倉の手を解放し、本題に戻った吾妻の言葉に、白倉は驚いた。
「お前の身体だろ?」
「うん。だけど、戻れないよ。
なんでだろ。こんなこと一回もなかったのに…」
「……違う世界でも、自分自身やからかなあ」
白倉は思わず腕を組んで考え込む。
「そのことだけど、彼の身体の方はどうなってるか、見に行かない?」
話に割って入った声に、白倉と吾妻はびっくりした。
そちらを咄嗟に振り向く。
流河と優衣が笑って佇んでいた。
「いや、ちょっと前から時間凍結解けてたしね?」
「…あ、そっか。五分以上保たないんだ…」
白倉が思いだしたように呟いた。
そんなに長く時間を止めてはおけないらしい。
「で、状況把握は出来てるつもり。
白倉くんは、その吾妻くんを傷つけたくない。
そっちの吾妻くんも、白倉くんを傷つけたくない。
だから、元の身体に戻りたいけどできない。どうかな?」
「…うん、あってる」
「だから、彼の本来の身体の元に行ってみないかい?」
明るく提案する流河と、その隣で普通に頷いている優衣に、吾妻は困惑した。
「あれ?
あんたらも、まさか、ずっと気づいてた…?」
「うん。割と早くにね」
「俺らだけやないと思うけどな」
流河と優衣のあっさりした返答に、吾妻は内心ショックだった。
そんなわかりやすかったのか、自分。
「まあ、君が思うほど、俺らの目は節穴じゃないんだよ」
「あと、お前が大根役者やっただけや」
吾妻は更にショックを受けた。
「大根…」と呟く。
それに白倉が軽く吹き出した。
「まあ、いいじゃない。
おかげで君はなかなかにいい人だと知れたからね。
君がもっと殺伐としていたら、泳がせたりしなかったよ」
「ようは、あまりこちらの吾妻と変わらんヘタレみたいやから、様子見ようって話な」
「…ヘタレ」
またもショックだ。
白倉はまだ笑っている。
「で、話を戻すと、自分自身の身体を乗っ取ったのは初めてなんでしょ?
なら、思いも寄らない事態が起ことてる可能性があるんじゃない?」
「…思いも寄らない?」
「たとえば、君の身体の方を、俺達の知っている吾妻くんが支配していたり、とか。
ようは身体がシャッフルした状態かな」
その言葉に、吾妻と白倉は目を瞠った。
「あいつに僕みたいな力はないだろ?」
「力のあるなしじゃなく、身体や精神の相性かな。
自分自身なら、そりゃあ身体と精神の相性は抜群なわけだ。
で、君はことちに来ているけど、君と君の身体は常に繋がってるはずだ。
その線をたどって、こちらの吾妻くんが君の身体に行ってしまった可能性はなくはない。
そして、彼は君みたいに精神を外に出せない。
そうなると、一度君の身体に入ってしまったら、出られない可能性があるんだよ」
身体と精神の相性が悪いなら弾かれるけど、そうもいかないからね。
そう言う流河の説明に、吾妻と白倉はものすごく納得してしまった。
「なるほど…!
じゃあ、僕の身体に会いに行けばいいんだね?」
「うん。ただ、それでも確実に元に戻れるわけじゃないかもしれないし、これはあくまで憶測で、実際は違う事態かもしれないよ」
「いや、だいぶすっきりしたよ。
じゃあ…」
吾妻は白倉を見下ろして、ためらった。
「……俺も行ったら駄目?
どのみち、吾妻もそっちにいるなら」
「そうだね。いったん休戦で…」
白倉の不安げな言葉に、吾妻は慌ててそう返す。
ああ、すっかり懐いてる、と流河と優衣は思った。
「ちょっといいー?」
流河が302号室に顔を出したのはそれから数分後。
いきなり寝室まで入ってきたので、村崎は少しびっくりする。
「なんや?」
「今からちょっとあっちの岩永くんに会ってくるからさ。
もし、そこの岩永くんがいきなり怪我したらごめん、と思って」
流河の言葉に、村崎と岩永は驚きのあまり一瞬言葉を失った。
「場所わかったん!?」
岩永が寝台から立ち上がって勢いよく問う。
「多分ね。
ただ、君たちは来ちゃ駄目。
村崎くんは岩永くんを守りなさい」
流河にそう返され、岩永は悔しそうに顔を歪める。
村崎は大きく頷いた。
「なるべく傷つけるなや」
「俺達の手に負えないでしょう彼は。
それに、出来ても俺達は傷つけたりしないよ。
ただ、あっちの岩永くんっておっかないからさ」
万一もあるでしょ、と流河。
ひらりと手を振って出ていこうとした流河の手を、思わず立ち上がった岩永の手が引き留めた。
流河はびっくり顔で振り返る。
「…あ、ごめん」
岩永は本当に思わずだったらしく、我に返って手を離した。
「…お前も怪我すんなや…?」
心配そうな表情でそう言った岩永に、流河はにっこり微笑んで頷く。
「善処するよ」
「――――で、そのあと、ホテルの場所を知っている吾妻くんからスマートフォンで連絡を受けてここに来ました」
「あいつら先に行くって出たんやけど、俺らのほうが早かったな」
岩永の身体を地面に押しつけてのしかかっている吾妻の傍で、事情を説明した流河と優衣に、吾妻は少しおもしろくない。
なんか、白倉と向こうの自分が仲よさげなのが気に入らない。
「…あいつ」
しかし、自分の身体の下で岩永が吐いた低い声に、意識を集中する。
「裏切ったわけじゃないよ。彼は。
ただ、元の身体に戻るまでは休戦すべきって判断なだけ。
無難な対応だと思うよ。
彼の身体から、吾妻くんが出られない限りは」
「…うん、そうだね、ちょっと自力では無理だよ」
吾妻は「なんでこの身体にいるんかも謎だから」と答える。
「どうや? 自分も。
ずっととは言わんし、一時的に休戦したら。
仲間なんやろ?」
見下ろして言った優衣の言葉に、岩永は不愉快そうに眉を寄せた。
「お断りや」
そして、迷う暇なくそう答える。
「俺は俺で好きにさせてもらう」
「なら、今ここで尋問決定だよ」
吾妻は両手首を拘束したまま、にやりと笑む。
だが、岩永の腹に乗っている身体が強烈な風によって唐突に持ち上げられ、反応が遅れた。
意地で手首は離さない。
身体を浮かす干渉を、炎を発生させて相殺しようとした瞬間、眼前を散った鮮血に、一瞬理解出来なかった。
風を使って自分の身体の下から抜け出して、遠く離れた位置に着地した岩永を見やる。
流河と優衣が青ざめている。
岩永の両腕が、ない。
切断された状態で、おびただしい出血が切断面から落ちた。
どうにか地面に踏ん張った吾妻は、自分の手元を見る。
自分の手は、岩永の手首を掴んだままだ。
その手首は、どこにも繋がっていない。
切断された腕。
「…うわあっ!!」
理解した瞬間、身体を襲った怖気に、思わず腕を放してしまう。
腕は地面に落下するより早く風にさらわれ、岩永の傍に集まって、あっという間に岩永の身体に元通り繋がる。
だが、地面に落ちた血や、吾妻の服、岩永の服に付着した大量の血のあとはそのままで、夢や幻じゃないのは明らかだ。
「……と、トカゲの尻尾切り……?」
「人間が…?」
流河と優衣が青い顔のまま呟いた。
「…とんでもないね。あの岩永は…」
吾妻もげんなりしながらそうこぼす。
「…これは、もう一回捕まえるんは骨折れそうだよ…」
「お前が頼りや。頼むで」
心底そう思う。
だが、優衣の言うとおり、今あいつにまともに対抗出来るのは自分しかいない。
「やるだけやってみる!」
気を引き締めて、地面を蹴った。
優衣と流河もその場から散る。
吾妻は灼熱の膜を手や足にまとわせ、まず拳で顔を狙った。
もちろん避けると踏んでだ。
岩永は案の定素早くよけて、吾妻の鳩尾目掛けて足を振り上げる。
それを、咄嗟に放った蹴りで封じた。
岩永も今度は吸収の力をまとわせていたようで、ダメージを負った様子なく飛んで離れる。
その足が地面に沈んだ。
いや、影に。
優衣の力だ。
だが、岩永はあっさり引き抜くと、走り出した。
近くの自販機の影に向かって氷の矢を放つ。
すると、吾妻の影から優衣が飛び出してきた。
どうやら、自販機の影に潜んでいたところを狙われたらしい。
「流河、一瞬でも動き止めて!」
吾妻の言葉に応えたように、岩永の動きが止まる。
岩永は思わず背後を振り返った。
気配は感じなかったのに、片腕を背後から誰かが掴んでいる。
その腕の先を見ると、なにもなかった。
宙に、手だけが浮かんでいる。
足首のほうにも、地面から生えたような手首が、掴んで動きを封じていた。
「……え」
これには岩永も驚いたらしい。反応が遅れた。
しかし、吾妻と優衣もびっくりした。
思わず悲鳴を上げてしまった。
「ここだよ」
流河の声に、そちらを見ると、少し離れた位置に立っている彼の姿。
両手首から先がないが、出血はなく、切れた様子ではない。
「転移と物質変換の応用だよ。
君の知ってる俺はやらなかったかい?」
その問いに、岩永の表情が一瞬凍り付いた。
「せぇのっ!」
それをいぶかしむ前に、流河がかけ声をあげて手を引っ張った。
岩永の姿が手に引っ張られ、空間を飛んだように流河の傍に現れる。
手に掴まれたまま、背負い投げられて地面に背中を打ち付けたが、素早く起きあがって体勢を直す。
それまでに、流河は彼に接近していた。
「んの…っ!」
岩永は流河をきつく睨むと、流河の手を簡単にとらえて、流河の顔目掛けて拳を振りかぶった。
温度操作の力をまとった拳だ。
流河が咄嗟に超能力で防御しても、岩永が手加減なしなら、危ない。
「岩永くん」
だが、岩永の耳に響いた声に、岩永は動きを止める。
懐かしい声。
馴染んだ声。
いつも、聞こえる。
「俺を殺すの?」
すぐ傍で聞こえる。
文字通り凍り付いた岩永の、青ざめた顔に、流河は息を飲む。
「流…河…」
震えた声が、自分の名前を呼んだが、なぜか自分じゃない誰かを呼んでいるようだった。
この場に「流河」は自分しかいないのに。
その隙を狙って、吾妻と優衣が襲いかかるが、手が触れる寸前、岩永の姿は消えてしまった。
「……どうも、転移の力も持っているらしいねえ彼は」
「…やな。
ただ、さっき、なにに驚いとったんか…」
さっきの一瞬の反応はなんだったんだ?
「まあ、もうすぐ白倉たちも来るよ。
それから考えよう」
目眩がして立ち止まる。
夏で、木々が青々と茂った森林公園の中。
もうすっかり日が暮れて、暗い。
「流しすぎた…」
ちょっと、出血しすぎた。
貧血かもしれない。
右手に巻いた包帯も赤く染まっていて、傷口が開いたのは明らかだ。
「…吾妻のアホ」
まさか、あっさり懐柔されるなんて。
そう考えるのも少ししんどい。
「なにが、アホ?」
けれど、公園に響いた、自分と全く同じ声に、視線を険しくした。
公園の向こうから歩いてくるのは、自分と違ってジーンズと黒いシャツの格好の、自分自身。
「……静流に見張られてるはずやないんか?」
「ようそこまでわかるなあ。
逃げてきたに決まっとるやんか」
そう答える自分自身は、薄く笑っている。
「静流がそう簡単に逃がすかいな」
「予想外なことをすれば逃げられる」
自分の間合い一歩手前まで近づいて、彼は立ち止まった。
「今日、流河に触れた時に、一回分奪っただけや」
転移の力のことだろう。
理解して、あざ笑った。
「結局、お前も俺と同類やんか。
相容れんと思っとったけど、そうでもない」
「…そうやな」
彼は不意に無表情になって、肯定する。
「…手段を選ぶ気もなかったから」
「そんで、別れようなんて静流に言ったん?
ほんなら、俺がもらおうかなあ」
彼は無表情のまま、「どうぞ」と無機質に言った。
その表情に、暗い影が差す。
「…出来るもんならな」
「……おもしろい。
俺を倒す気か?」
風が吹いた。
梢の音が鳴る。
「覚悟は、ある」
彼はそう答えた。
時波と九生の姿は、白倉からは見えない。
自分の前に立つ吾妻の身体に遮られて。
自分を人質にとれば逃げられるだろうに、それをしない吾妻を、やっぱり優しく思った。
その場に風が吹き荒れる。
時波と九生の超能力の余波だ。
吾妻が一歩踏み出した。
「あっ…」
白倉は思わず手を伸ばす。
「やっぱり駄目だ!」
やっぱり、ただ見ているなんて出来ない。
その声を背後で聞いた吾妻は目を瞠った。
中途半端な位置で手を止めた時波と九生は、全く動かない。
瞬きすらしない。
そういえば、さっきまで身体に当たってきていた強い風がない。
「吾妻! 逃げるぞ!」
「え、ええっ!?」
思わず驚きの声を上げてしまった吾妻の手を掴み、白倉は全速力で階下に繋がる扉に走った。
そのまま階段をくだり、一階まで降りて、廊下を猛スピードで走る。
「し、白倉っ!?」
吾妻の方が大慌てだ。
まさか、ここまでして助けてくれると思わなかった。
時間操作の超能力を使って、NOA一帯の時間を止めてまで。
寮内の時間も止まっている。
誰も動かない。
「白倉! どうしてここまで…!?」
「だって、嫌なんだもん!」
白倉は自分の前を、自分の手を引っ張って走りながら、早口で答えた。
「やっぱり、お前が傷つくのはいやだ!」
「……僕が?」
「そうだ!」
吾妻は半分信じられなかった。
だって、自分はひどい奴だ。
先刻の白倉の言葉だけで、充分すぎるのに、ここまでしてくれて。
でも、自分はまた白倉を傷つけるかもしれない。
「…僕は、いつかあんたを傷つけるよ」
「そうかもしれんな」
白倉は振り返らず、足も止めないままだ。
動揺した様子もない。わかっていたように。
「ならどうして!?」
「だけど、お前は俺を傷つけることを、心苦しく思ってる」
「…っ」
吾妻は息を飲んだ。
「本音では、やりたくない。避けられるなら避けたい。
そう思ってる」
なにも反論できない。
見透かされている。
その通りだ。
「お前が優しいことに変わりない。
それなら、俺だってお前に傷ついて欲しくないわ」
廊下を突っ切って、エントランスに出る。
ちょうど出口の自動ドアが開いた瞬間だったらしく、開いた状態で止まっている。
そのまま通り抜けた。
「俺が…」
吾妻は思わず足を止めた。
白倉が手を引っ張られて、立ち止まる。
少し息が上がった様子で、吾妻を見上げてくる。
まだ、止まったままの時間。
「…俺が、自分の身体でも、そんな思ってくれる…?」
「ああ」
白倉は綺麗に微笑んで肯定した。
傷つけたくない。
心から、この微笑みを消したくないと思ってしまった。
「…俺は、岩永とは違う。
そう思ってたよ」
「…そっちの、嵐?」
白倉の問いに頷く。
「あいつは、この世界の村崎を愛してる。
自分の世界の村崎に重ねて、大事がってる。
僕は、そうじゃなかった」
白倉の包帯の巻かれた手を掴んで、両手で包んだ。
「白倉の代わりはいないって、思ってた。
やから、あんたを代わりにする気はなくて、大事にする気もなかった。
…だけど」
泣きそうに歪んだ吾妻の顔を見上げて、白倉は言葉の続きを待つ。
「やっぱり、僕には出来ない。
…あんたを、傷つけたくない」
「…俺が、『白倉』やから?」
白倉の問いに、吾妻はどうにか答える。
震えた喉に、しゃべるのを邪魔されながら。
「…僕がずっと、夢見てた、白倉の、…笑顔や、声、…心。
全てが同じだった。
…それを見て、思われて…傷つけられるはずがない」
「……お前の白倉は、お前を好きか?」
なにを言ったらわからなくて、白倉は結局そう尋ねた。
吾妻は目を瞠って、それから切なそうに微笑む。
涙のにじんだ瞳が、白倉を見た。
「…もちろん」
吾妻はそう答えた。
「…なら、よかった」
白倉はそう言ったが、少し複雑そうな笑顔を浮かべていた。
同じ気持ちだな、と吾妻は思う。
「俺は、…岩永と同じだよね」
あいつと同じだ。
やっぱり重ねずにいられない。
面影を求めずにいられない。
傷つけられない。
同じだ。
「ありがとう。白倉」
白倉の手を、両手で握って、心から告げた。
「全ての世界で、二番目に好きだよ」
「……ありがと」
白倉は一瞬複雑そうな顔をして、それから微笑んだ。
「……それで、どうしようかな?」
「……元の身体に戻ったらいいんじゃない?」
「いや、それが何度も試してるから、無理」
白倉の手を解放し、本題に戻った吾妻の言葉に、白倉は驚いた。
「お前の身体だろ?」
「うん。だけど、戻れないよ。
なんでだろ。こんなこと一回もなかったのに…」
「……違う世界でも、自分自身やからかなあ」
白倉は思わず腕を組んで考え込む。
「そのことだけど、彼の身体の方はどうなってるか、見に行かない?」
話に割って入った声に、白倉と吾妻はびっくりした。
そちらを咄嗟に振り向く。
流河と優衣が笑って佇んでいた。
「いや、ちょっと前から時間凍結解けてたしね?」
「…あ、そっか。五分以上保たないんだ…」
白倉が思いだしたように呟いた。
そんなに長く時間を止めてはおけないらしい。
「で、状況把握は出来てるつもり。
白倉くんは、その吾妻くんを傷つけたくない。
そっちの吾妻くんも、白倉くんを傷つけたくない。
だから、元の身体に戻りたいけどできない。どうかな?」
「…うん、あってる」
「だから、彼の本来の身体の元に行ってみないかい?」
明るく提案する流河と、その隣で普通に頷いている優衣に、吾妻は困惑した。
「あれ?
あんたらも、まさか、ずっと気づいてた…?」
「うん。割と早くにね」
「俺らだけやないと思うけどな」
流河と優衣のあっさりした返答に、吾妻は内心ショックだった。
そんなわかりやすかったのか、自分。
「まあ、君が思うほど、俺らの目は節穴じゃないんだよ」
「あと、お前が大根役者やっただけや」
吾妻は更にショックを受けた。
「大根…」と呟く。
それに白倉が軽く吹き出した。
「まあ、いいじゃない。
おかげで君はなかなかにいい人だと知れたからね。
君がもっと殺伐としていたら、泳がせたりしなかったよ」
「ようは、あまりこちらの吾妻と変わらんヘタレみたいやから、様子見ようって話な」
「…ヘタレ」
またもショックだ。
白倉はまだ笑っている。
「で、話を戻すと、自分自身の身体を乗っ取ったのは初めてなんでしょ?
なら、思いも寄らない事態が起ことてる可能性があるんじゃない?」
「…思いも寄らない?」
「たとえば、君の身体の方を、俺達の知っている吾妻くんが支配していたり、とか。
ようは身体がシャッフルした状態かな」
その言葉に、吾妻と白倉は目を瞠った。
「あいつに僕みたいな力はないだろ?」
「力のあるなしじゃなく、身体や精神の相性かな。
自分自身なら、そりゃあ身体と精神の相性は抜群なわけだ。
で、君はことちに来ているけど、君と君の身体は常に繋がってるはずだ。
その線をたどって、こちらの吾妻くんが君の身体に行ってしまった可能性はなくはない。
そして、彼は君みたいに精神を外に出せない。
そうなると、一度君の身体に入ってしまったら、出られない可能性があるんだよ」
身体と精神の相性が悪いなら弾かれるけど、そうもいかないからね。
そう言う流河の説明に、吾妻と白倉はものすごく納得してしまった。
「なるほど…!
じゃあ、僕の身体に会いに行けばいいんだね?」
「うん。ただ、それでも確実に元に戻れるわけじゃないかもしれないし、これはあくまで憶測で、実際は違う事態かもしれないよ」
「いや、だいぶすっきりしたよ。
じゃあ…」
吾妻は白倉を見下ろして、ためらった。
「……俺も行ったら駄目?
どのみち、吾妻もそっちにいるなら」
「そうだね。いったん休戦で…」
白倉の不安げな言葉に、吾妻は慌ててそう返す。
ああ、すっかり懐いてる、と流河と優衣は思った。
「ちょっといいー?」
流河が302号室に顔を出したのはそれから数分後。
いきなり寝室まで入ってきたので、村崎は少しびっくりする。
「なんや?」
「今からちょっとあっちの岩永くんに会ってくるからさ。
もし、そこの岩永くんがいきなり怪我したらごめん、と思って」
流河の言葉に、村崎と岩永は驚きのあまり一瞬言葉を失った。
「場所わかったん!?」
岩永が寝台から立ち上がって勢いよく問う。
「多分ね。
ただ、君たちは来ちゃ駄目。
村崎くんは岩永くんを守りなさい」
流河にそう返され、岩永は悔しそうに顔を歪める。
村崎は大きく頷いた。
「なるべく傷つけるなや」
「俺達の手に負えないでしょう彼は。
それに、出来ても俺達は傷つけたりしないよ。
ただ、あっちの岩永くんっておっかないからさ」
万一もあるでしょ、と流河。
ひらりと手を振って出ていこうとした流河の手を、思わず立ち上がった岩永の手が引き留めた。
流河はびっくり顔で振り返る。
「…あ、ごめん」
岩永は本当に思わずだったらしく、我に返って手を離した。
「…お前も怪我すんなや…?」
心配そうな表情でそう言った岩永に、流河はにっこり微笑んで頷く。
「善処するよ」
「――――で、そのあと、ホテルの場所を知っている吾妻くんからスマートフォンで連絡を受けてここに来ました」
「あいつら先に行くって出たんやけど、俺らのほうが早かったな」
岩永の身体を地面に押しつけてのしかかっている吾妻の傍で、事情を説明した流河と優衣に、吾妻は少しおもしろくない。
なんか、白倉と向こうの自分が仲よさげなのが気に入らない。
「…あいつ」
しかし、自分の身体の下で岩永が吐いた低い声に、意識を集中する。
「裏切ったわけじゃないよ。彼は。
ただ、元の身体に戻るまでは休戦すべきって判断なだけ。
無難な対応だと思うよ。
彼の身体から、吾妻くんが出られない限りは」
「…うん、そうだね、ちょっと自力では無理だよ」
吾妻は「なんでこの身体にいるんかも謎だから」と答える。
「どうや? 自分も。
ずっととは言わんし、一時的に休戦したら。
仲間なんやろ?」
見下ろして言った優衣の言葉に、岩永は不愉快そうに眉を寄せた。
「お断りや」
そして、迷う暇なくそう答える。
「俺は俺で好きにさせてもらう」
「なら、今ここで尋問決定だよ」
吾妻は両手首を拘束したまま、にやりと笑む。
だが、岩永の腹に乗っている身体が強烈な風によって唐突に持ち上げられ、反応が遅れた。
意地で手首は離さない。
身体を浮かす干渉を、炎を発生させて相殺しようとした瞬間、眼前を散った鮮血に、一瞬理解出来なかった。
風を使って自分の身体の下から抜け出して、遠く離れた位置に着地した岩永を見やる。
流河と優衣が青ざめている。
岩永の両腕が、ない。
切断された状態で、おびただしい出血が切断面から落ちた。
どうにか地面に踏ん張った吾妻は、自分の手元を見る。
自分の手は、岩永の手首を掴んだままだ。
その手首は、どこにも繋がっていない。
切断された腕。
「…うわあっ!!」
理解した瞬間、身体を襲った怖気に、思わず腕を放してしまう。
腕は地面に落下するより早く風にさらわれ、岩永の傍に集まって、あっという間に岩永の身体に元通り繋がる。
だが、地面に落ちた血や、吾妻の服、岩永の服に付着した大量の血のあとはそのままで、夢や幻じゃないのは明らかだ。
「……と、トカゲの尻尾切り……?」
「人間が…?」
流河と優衣が青い顔のまま呟いた。
「…とんでもないね。あの岩永は…」
吾妻もげんなりしながらそうこぼす。
「…これは、もう一回捕まえるんは骨折れそうだよ…」
「お前が頼りや。頼むで」
心底そう思う。
だが、優衣の言うとおり、今あいつにまともに対抗出来るのは自分しかいない。
「やるだけやってみる!」
気を引き締めて、地面を蹴った。
優衣と流河もその場から散る。
吾妻は灼熱の膜を手や足にまとわせ、まず拳で顔を狙った。
もちろん避けると踏んでだ。
岩永は案の定素早くよけて、吾妻の鳩尾目掛けて足を振り上げる。
それを、咄嗟に放った蹴りで封じた。
岩永も今度は吸収の力をまとわせていたようで、ダメージを負った様子なく飛んで離れる。
その足が地面に沈んだ。
いや、影に。
優衣の力だ。
だが、岩永はあっさり引き抜くと、走り出した。
近くの自販機の影に向かって氷の矢を放つ。
すると、吾妻の影から優衣が飛び出してきた。
どうやら、自販機の影に潜んでいたところを狙われたらしい。
「流河、一瞬でも動き止めて!」
吾妻の言葉に応えたように、岩永の動きが止まる。
岩永は思わず背後を振り返った。
気配は感じなかったのに、片腕を背後から誰かが掴んでいる。
その腕の先を見ると、なにもなかった。
宙に、手だけが浮かんでいる。
足首のほうにも、地面から生えたような手首が、掴んで動きを封じていた。
「……え」
これには岩永も驚いたらしい。反応が遅れた。
しかし、吾妻と優衣もびっくりした。
思わず悲鳴を上げてしまった。
「ここだよ」
流河の声に、そちらを見ると、少し離れた位置に立っている彼の姿。
両手首から先がないが、出血はなく、切れた様子ではない。
「転移と物質変換の応用だよ。
君の知ってる俺はやらなかったかい?」
その問いに、岩永の表情が一瞬凍り付いた。
「せぇのっ!」
それをいぶかしむ前に、流河がかけ声をあげて手を引っ張った。
岩永の姿が手に引っ張られ、空間を飛んだように流河の傍に現れる。
手に掴まれたまま、背負い投げられて地面に背中を打ち付けたが、素早く起きあがって体勢を直す。
それまでに、流河は彼に接近していた。
「んの…っ!」
岩永は流河をきつく睨むと、流河の手を簡単にとらえて、流河の顔目掛けて拳を振りかぶった。
温度操作の力をまとった拳だ。
流河が咄嗟に超能力で防御しても、岩永が手加減なしなら、危ない。
「岩永くん」
だが、岩永の耳に響いた声に、岩永は動きを止める。
懐かしい声。
馴染んだ声。
いつも、聞こえる。
「俺を殺すの?」
すぐ傍で聞こえる。
文字通り凍り付いた岩永の、青ざめた顔に、流河は息を飲む。
「流…河…」
震えた声が、自分の名前を呼んだが、なぜか自分じゃない誰かを呼んでいるようだった。
この場に「流河」は自分しかいないのに。
その隙を狙って、吾妻と優衣が襲いかかるが、手が触れる寸前、岩永の姿は消えてしまった。
「……どうも、転移の力も持っているらしいねえ彼は」
「…やな。
ただ、さっき、なにに驚いとったんか…」
さっきの一瞬の反応はなんだったんだ?
「まあ、もうすぐ白倉たちも来るよ。
それから考えよう」
目眩がして立ち止まる。
夏で、木々が青々と茂った森林公園の中。
もうすっかり日が暮れて、暗い。
「流しすぎた…」
ちょっと、出血しすぎた。
貧血かもしれない。
右手に巻いた包帯も赤く染まっていて、傷口が開いたのは明らかだ。
「…吾妻のアホ」
まさか、あっさり懐柔されるなんて。
そう考えるのも少ししんどい。
「なにが、アホ?」
けれど、公園に響いた、自分と全く同じ声に、視線を険しくした。
公園の向こうから歩いてくるのは、自分と違ってジーンズと黒いシャツの格好の、自分自身。
「……静流に見張られてるはずやないんか?」
「ようそこまでわかるなあ。
逃げてきたに決まっとるやんか」
そう答える自分自身は、薄く笑っている。
「静流がそう簡単に逃がすかいな」
「予想外なことをすれば逃げられる」
自分の間合い一歩手前まで近づいて、彼は立ち止まった。
「今日、流河に触れた時に、一回分奪っただけや」
転移の力のことだろう。
理解して、あざ笑った。
「結局、お前も俺と同類やんか。
相容れんと思っとったけど、そうでもない」
「…そうやな」
彼は不意に無表情になって、肯定する。
「…手段を選ぶ気もなかったから」
「そんで、別れようなんて静流に言ったん?
ほんなら、俺がもらおうかなあ」
彼は無表情のまま、「どうぞ」と無機質に言った。
その表情に、暗い影が差す。
「…出来るもんならな」
「……おもしろい。
俺を倒す気か?」
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