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第十章 Butterfly Effect
第四話 それは愛の強い影
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吾妻と岩永の泊まるホテルにやってきて、数時間。
外は夜が更け、雨も更に強くなった。
「そういや、お前さん。
ひとりで来たんか?」
やることがないように、九生は室内の椅子に腰掛け、音楽プレイヤーをいじっている。
向かいに腰掛けていた白倉が顔を上げた。
「…ああ、うん」
「吾妻はどうしたんじゃ」
連れてきたほうが都合よかったじゃろ、と九生は言う。
ちらり、と岩永の傍から離れない巨躯を見やった。
「…う、ん……俺も、そう、思ったけど」
白倉は慎重に言葉を選ぶように、ためらいながら話す。
大きすぎる背中を見つめて、不安げに視線を揺らす。
「……なんか、…困る、気もして。
黙って出てきた」
「……どっちを選んだらええかが?」
「…ていうか、どっちの味方したらいいか…」
思い悩んだ白倉の表情に、九生は眉をしかめた。
「…俺は、吾妻のこと気に入ってないけどな」
「…あ、うん、それは」
九生の瞳が、白倉を真っ直ぐ射る。
「じゃが、あいつよりは」
その瞳が、向こうで岩永の手を握る吾妻の背中を見据えた。
九生はまた、視線を白倉の顔に戻す。
「あの馬鹿犬のほうがマシじゃ」
そう言って、買ってきたペットボトルの蓋を開け、口を付ける。
白倉は苦笑するしかない。
「お前さんはあいつを優しいというが、あいつが今後、お前さんや岩永を傷つけん保証はなか。
なにしろ目的がわからんけんの。
そんな奴のとこに来るなら、お前を絶対守るあの忠犬を連れてくるべきじゃ」
「……だけど」
白倉はむっとして、口を開く。
あの吾妻は、自分を大事にしてくれた。
守ってくれた。
「白倉?
忘れとらんか?」
九生の口調に咎める色が強くなった。
「あの吾妻は、夕と明里を殺しかけた」
「…」
白倉が息を飲む。
「あのアホを傷つけた。
岩永や村崎にも怪我させた。
…ほんの一時優しくされただけで、“ああ、いい奴や”なんて甘い判断するんは、アホぜよ」
「……」
でも。
確かに、いろんな人を傷つけたけど。
でも、彼自身、ひどく苦しんでいるみたいだった。
悩んでいるみたいだった。
ただ憎むだけなら簡単だけど、自分は、彼の中にある孤独を無視出来なくて。
その理由に、触れたくて。
「別にいいよ。
白倉」
ずっと黙って背中を向けていた吾妻が、不意に振り返った。
「九生に意見してまで、僕の味方することはない」
「…吾妻」
吾妻はずっと、厳しい表情をしている。
今も、鋭く、尖った視線でこちらを見た。
「九生の言うとおり、僕は目的のためなら、なんだってする。
あんたを利用することも辞さない。
だから、僕をあまり信用しないこと」
「…」
気圧されて、言葉を見失いそうになる。
それがいやで、顔を引き締めて、吾妻を見つめ返した。
「だから、おかしい」
「なんが?」
「ほんとに俺を利用しようって思ってるんなら、そこで素直に利用するとか言わない。
お前の言い方は、無理矢理俺を突き放して、危険なことから遠ざけようとしてる風だ」
吾妻の表情が一瞬固まった。
息を飲む様子に、九生が眉を寄せる。
「お前がほんとに嫌な、ひどい奴なら、俺だってここまでしない」
「…だから」
吾妻は頭に手をやって、苦々しい顔でため息を吐く。
だが、なにか言う前に、背後からくすくす笑う声が響いた。
聞き慣れた低音の声に、吾妻が弾かれたようにそちらを向く。
寝台の上、さっきまで苦しそうに顔をしかめて眠っていた岩永の瞳が開いて、笑っている。
「ごめんごめん」
わざとらしい口調で謝って、岩永は上体を起こした。
「ちょ、まだ起きないほうが」
寝かせようとする吾妻の手をはねのけて、シーツの中で立てた膝に腕を乗せ、にっこり微笑んだ。
「あまりにアホらしゅうて、笑ってもうたわ」
その言葉に、白倉の眉が寄る。
「なんだって?」
「アホらしいねん。
いかにも俺はお前のことわかっとる。理解者や。お前のことが大事なんや、と言わんばかりの偽善っぷりが、鼻について。
んなこと言っといてお前、いざそっちの吾妻が危険になったら、こいつなんか構わずそっち行くやろ?」
白倉が音を立てて椅子から立ち上がった。
「偽善を焼くほど暇でも善人でもない」
「あ、そう?
俺の知っとる『白倉誠二』はそうやけど」
さらっと、馬鹿にしたような笑みを浮かべて言い切った岩永に、白倉の挙動が止まる。
強気に睨んでいた瞳を瞠って、息を詰めた。
「馬鹿でアホで、優しすぎて、人の心配ばっかして、…………」
間を作って、岩永はため息を吐いた。
呆れたように。
「うんざりする」
「……そっちの、俺って」
訊きたいような、訊きたくないような感じだ。
でも、ここの世界と、ほとんど変わらない世界なんだ、よな?
「それはともかく、無理するんじゃない」
吾妻が岩永の頭を撫でて、嘆息混じりにそう言った。
口調に棘はなく、ただ心配そうだ。
「まだ熱が高いよ」
「…別に、すぐ治る」
「雨に濡れたせいもあるでしょ。
悪化させたら駄目」
「…はいはい」
不承不承頷いた岩永に、吾妻がホッと息を吐く。
その割って入れないような雰囲気に、白倉はたじろいだ。
吾妻は怒りもしなかった。
「白倉が好きだ」と言いながら、岩永の言葉に。
単純に気にしなかったというより、岩永の言葉の本質を理解しているから受け入れたというような雰囲気に、なにも言えなくなった。
「白倉?」
「…ごめん。
トイレ」
九生の問いと視線から逃れるように部屋から出ていった白倉の姿に、九生は立ち上がり、あとを追った。
「まあ、お前たちの問題を全部今話してもらおうなんて思ってない」
時波は壁に背を預けたまま、淡々と言う。
「さすが時波。
わかっとるやん」
「だが、お前の物言いは許せん」
時波の視線が、鋭く岩永を射る。
「白倉は、お前を心配しているんじゃないのか?」
時波の言う「白倉」が、今部屋を出ていった白倉じゃないと気づいた。
岩永の顔から笑みが失せる。
「お前達に帰ってきて欲しいと」
時波の言葉がとぎれた。
時波の顔の真横の壁がえぐれている。
時波の頬には、鋭い爪でひっかいたような傷が二本出来ていた。
岩永の手の周囲を風が渦巻く。
「知ったかぶりはやめろ、て、今言うたんよ。
吾妻のこと知ったような口で語るから」
白倉のことだ。
岩永は寝台から降りて、腕を組む。
「お前もや。
知ったかぶりで文句言うなら、出てけ」
「……その容態のお前をおいて、ここを去ることは不可能だ」
「こんなんいつものことや」
「なら、なおさら放置出来ない」
岩永が眉間に皺を寄せて、再度口を開くが、しゃべる前にせき込んで、身体を折った。
「だから、無茶すんな、て言ったよ」
吾妻の手がその身体を支える。
「……なら、こっちから出てくわ」
口から手を離さないまま、岩永がそう言った。
藍澤が咄嗟に放った炎が、一瞬で鎖に変化して二人に伸びる。
その場から岩永の姿が消えた。
透明に薄れそうになった吾妻の輪郭が、腕に絡んだ鎖のせいで引き戻される。
その場に一人残されてしまった吾妻が、舌打ちをして強引に手で鎖を引きちぎった。
「アホ!
俺一人残したって意味がない!」
藍澤に怒鳴って、吾妻は素早くベランダに出る。
五階なのも構わず、軽やかに飛び降りた。
その直後、白倉と九生が室内に姿を見せる。
「すまん。
見失った」
時波は謝ると、廊下に飛び出す。
「俺達も追うぞ。
あ、白倉。
村崎、呼んでくれ」
「ああ」
九生の言葉に、白倉は頷いた。
村崎のスマートフォンに着信があったのは、夜中の十二時だった。
白倉からだ。
内容を聞いて、寝付けず横たわっていた寝台から飛び起きる。
スマートフォンだけ持って立ち上がった村崎の手を、一緒にいた岩永の手が掴んだ。
「…なに?」
不安げな顔を見下ろして、村崎はとりつく島もなく言う。
「お前には関係ない」
「…やって、白倉やろ?
なんか、あった…」
すがる手を強引にほどいて、寝台に座らせる。
彼の右腕には、ひどい火傷がある。
先ほどいきなり腕に浮かんだ火傷だ。
もう一人の自分を知らない岩永は、完全に動揺し、混迷していた。
それを、理由を、村崎は言っていない。
包帯に覆われた傷は、痛むはずだ。
「頼むから、…関わるな」
「……」
村崎はずっと苦しそうで、なにかを抱えていて、それは自分には伺い知れない。
村崎が見せてくれないからだ。
「いやや!」
このまま行かせたら、絶対後悔する。
そう思って、村崎の腕に抱きついた。
「俺も行く!」
村崎は腕にしがみつく岩永の姿を見下ろし、悲しそうに瞳を閉じる。
岩永の身体を抱きしめてきた。
安堵する暇なく、首筋にくちづけられる。
「しず」
熱い舌が、首筋から鎖骨に移動して、指がシャツの裾から潜り込んできた。
脇腹を撫でた大きな手に、身体が跳ねる。
「ちょ、静流…や、なに…」
「なにって」
村崎の声は低くて、感情が見えない。
「ここにおって欲しいんやろ?」
顔を上げた村崎の瞳は、自分を見ていたけど、自分を映していなかった。
濁ったような、曇ったような、色をしていた。
腰を強く引き寄せた腕。
ベルトにかかった指に、背筋がぞくりとした。
「や…っ」
嫌だった。
怖かった。
思わず手を振るったら、爪先が村崎の頬をひっかいた。
頬に赤い筋が生まれる。
「…あ」
血の滲んだ頬に手をやって、村崎は岩永から手を離す。
距離を取った。
「…わかったやろ。
こういう男や。儂は」
冷たい目で言って背中を向けた村崎に、違うと強く思った。
でも、足が震えて、動けない。
そのまま部屋から出ていった彼の姿が見えなくなる。
違う、と思う。
なのに、怖い。
その場に座り込んだのは、村崎がいなくなって数分後のことだ。
「……」
違う。
村崎はわざと、あんな風に触れたんだ。
自分を遠ざけたいから。
でも、怖かった。
今の村崎は、自分の言葉を聞いていない。
自分の意見を聞かない。
自分を、見てない。
じゃあ、誰を見ているんだ。
その、もう一人の、俺を?
なんで時間を巻き戻したんだ。
怖かった。
自分の中でふくれあがる不安や、疑心が。
吾妻がいないのは誤算だった。
吾妻も引っ張ってくる予定が、藍澤の邪魔のせいで、狂った。
岩永は一人、雨の降る深夜の街を歩いていた。
薄着で傘もない。
すぐに全身が濡れた。
冷えた身体は、寒気がするし、頭もがんがん痛む。
吐き気は、熱のせいなのか、暴走キャリアのせいなのか、わからない。
「…変やな」
痛む身体を抱くように腕を回しながら、傍の塀に身体を預ける。
もう既にいくつかの能力が暴走キャリア化しているのは、自分も吾妻もよくわかってる。
それでも構わなかった。
吸収の力を内部に向けて使えば、侵食は最低限に押さえられたからだ。
自分の能力が「吸収」であることを、心底よかったと思っている。
でも、普段なら数時間か、長くて一日経てば、症状は収まる。
なのに、今回はなかなか和らがないし、ひどい。
吐血の量もやけに多かった。
とうとう、無茶な使用が祟ったということか?
あいつらはあの部屋から出ていっただろうか。
あの部屋には荷物が置きっぱなしだ。
だから、ほとぼりを見て戻る気だった。
吾妻とはぐれたのが痛い。
身体を無理に動かすと、軋むように痛んだ。
すぐせき込んでしまい、その場に膝を突いた。
苦しい。
苦しいのか気持ちが悪いのか、痛いのか寒いのか、もうわからない。
不意に目の前に影が差した。
吾妻かと思ったが、違う。
「あれ、この前のお兄さんじゃん」
見覚えのない顔の男が二人。
「どうしたの?
随分具合悪そうだけど」
「手貸そうか?」
親切な言葉を吐くが、見え透いた嘘なのはわかった。
どうも、以前なにかあったらしい。
覚えてないが。
こちらの世界の自分ってことはないな。
あいつは、いかにも善人だから。
「ありがたいけど、いらんわ」
痛む身体に堪えて、立ち上がろうとするが、すぐ倒れ込んでしまう。
身体を折って、何度もせき込む。
「無茶しないほうがいいよ。
いかにも病人じゃん」
「そうそう」
男の一人が、近くに停めてあった車を指さす。
「病院まで連れてってあげるから」
嘘だ。
どうせ、そのまま人気のない場所に連れて行って私刑ってとこだろう。
そんな嘘に引っかかる馬鹿じゃない。
が、どうにも身体が言うことを訊かない。
「ほら」
男の手が、肩に触れた。
ぞわっと鳥肌が立つ。
「触んなっ!」
叫んで振り払った手から、風を生み出し男達に向ける。
男達が慌てて飛び退いた。
「殺されたなかったらどっか行け」
手に風をまとわせて、壁に手を突いて立ち上がる。
だがすぐに視界が歪んで、地面に崩れ落ちた。
駄目だ。
全く力が入らないし、あちこち痛くて苦しくて、全く制御がうまくいかない。
自分が全く戦えない状態だと見て取って、男達が近寄ってきた。
瞬間、その場に降り注いだ石飛礫が、男達に襲いかかる。
「うわっ!」
男達は自分の頭を庇って、背後に下がる。
どうにか上体を起こした岩永は、後ろを振り返って息を飲んだ。
こちらに足早に近づいてきたのは、村崎だ。
険しい顔をして、岩永を背後に庇う。
「ケンカなら、儂が相手になるが」
村崎の身体から出ている殺気と、威圧感。
その見るからに「強い」と訴える外見に、男達は怯んで走り去った。
車に乗り込んで、逃げていく。
村崎が微かに息を吐く。
「…静流」
驚いた。
助けてくれるなんて。
村崎は岩永を振り返ると、険しい視線を向けてきた。
「…静流が助けてくれた」
岩永が嬉しそうに笑ってみせると、眉を寄せる。
「勘違いすんな」
今まで訊いたことがないような、冷たく刺々しい声が聞こえた。
「お前に死なれたら困るだけや。
お前を助けたいわけやない」
「……」
少しびっくりした。
そんな風に、憎悪や嫌悪を直に、そこまではっきり自分に向けたことはなかった。
彼は結局甘かったから。
「傷が跳ね返らんなら、ほっといたわ」
「……うん」
まあ、それにも限界があるよな、と思った。
笑みが浮かぶ。
「傷が跳ね返らんなら、…儂が殺した」
「……ああ」
心底憎らしく思った声に、岩永は瞳を瞠って、それから、微笑んだ。
「……それ、ええな」
どこか嬉しそうに、それでいて泣き出しそうな顔で笑った。
「…そうしてくれたら、うれしい」
「…………」
村崎が言葉を失って、立ちつくす。
だが、岩永がせき込んで、倒れ込みそうになったので、しゃがみこんで岩永の身体を抱き寄せる。
そのまま横抱きに抱え上げて、歩き出した。
「吾妻は?」
「……」
甘い、と思う。
ああ言ったくせに。
自分を助けるのは、自分のためじゃなくても、甘い。
「…おい」
答えない岩永をいぶかしんで見下ろすと、既に意識がなかった。
しかたない。
ひとまず、白倉に訊いた場所のホテルに連れて行こう、と地面を蹴った。
外は夜が更け、雨も更に強くなった。
「そういや、お前さん。
ひとりで来たんか?」
やることがないように、九生は室内の椅子に腰掛け、音楽プレイヤーをいじっている。
向かいに腰掛けていた白倉が顔を上げた。
「…ああ、うん」
「吾妻はどうしたんじゃ」
連れてきたほうが都合よかったじゃろ、と九生は言う。
ちらり、と岩永の傍から離れない巨躯を見やった。
「…う、ん……俺も、そう、思ったけど」
白倉は慎重に言葉を選ぶように、ためらいながら話す。
大きすぎる背中を見つめて、不安げに視線を揺らす。
「……なんか、…困る、気もして。
黙って出てきた」
「……どっちを選んだらええかが?」
「…ていうか、どっちの味方したらいいか…」
思い悩んだ白倉の表情に、九生は眉をしかめた。
「…俺は、吾妻のこと気に入ってないけどな」
「…あ、うん、それは」
九生の瞳が、白倉を真っ直ぐ射る。
「じゃが、あいつよりは」
その瞳が、向こうで岩永の手を握る吾妻の背中を見据えた。
九生はまた、視線を白倉の顔に戻す。
「あの馬鹿犬のほうがマシじゃ」
そう言って、買ってきたペットボトルの蓋を開け、口を付ける。
白倉は苦笑するしかない。
「お前さんはあいつを優しいというが、あいつが今後、お前さんや岩永を傷つけん保証はなか。
なにしろ目的がわからんけんの。
そんな奴のとこに来るなら、お前を絶対守るあの忠犬を連れてくるべきじゃ」
「……だけど」
白倉はむっとして、口を開く。
あの吾妻は、自分を大事にしてくれた。
守ってくれた。
「白倉?
忘れとらんか?」
九生の口調に咎める色が強くなった。
「あの吾妻は、夕と明里を殺しかけた」
「…」
白倉が息を飲む。
「あのアホを傷つけた。
岩永や村崎にも怪我させた。
…ほんの一時優しくされただけで、“ああ、いい奴や”なんて甘い判断するんは、アホぜよ」
「……」
でも。
確かに、いろんな人を傷つけたけど。
でも、彼自身、ひどく苦しんでいるみたいだった。
悩んでいるみたいだった。
ただ憎むだけなら簡単だけど、自分は、彼の中にある孤独を無視出来なくて。
その理由に、触れたくて。
「別にいいよ。
白倉」
ずっと黙って背中を向けていた吾妻が、不意に振り返った。
「九生に意見してまで、僕の味方することはない」
「…吾妻」
吾妻はずっと、厳しい表情をしている。
今も、鋭く、尖った視線でこちらを見た。
「九生の言うとおり、僕は目的のためなら、なんだってする。
あんたを利用することも辞さない。
だから、僕をあまり信用しないこと」
「…」
気圧されて、言葉を見失いそうになる。
それがいやで、顔を引き締めて、吾妻を見つめ返した。
「だから、おかしい」
「なんが?」
「ほんとに俺を利用しようって思ってるんなら、そこで素直に利用するとか言わない。
お前の言い方は、無理矢理俺を突き放して、危険なことから遠ざけようとしてる風だ」
吾妻の表情が一瞬固まった。
息を飲む様子に、九生が眉を寄せる。
「お前がほんとに嫌な、ひどい奴なら、俺だってここまでしない」
「…だから」
吾妻は頭に手をやって、苦々しい顔でため息を吐く。
だが、なにか言う前に、背後からくすくす笑う声が響いた。
聞き慣れた低音の声に、吾妻が弾かれたようにそちらを向く。
寝台の上、さっきまで苦しそうに顔をしかめて眠っていた岩永の瞳が開いて、笑っている。
「ごめんごめん」
わざとらしい口調で謝って、岩永は上体を起こした。
「ちょ、まだ起きないほうが」
寝かせようとする吾妻の手をはねのけて、シーツの中で立てた膝に腕を乗せ、にっこり微笑んだ。
「あまりにアホらしゅうて、笑ってもうたわ」
その言葉に、白倉の眉が寄る。
「なんだって?」
「アホらしいねん。
いかにも俺はお前のことわかっとる。理解者や。お前のことが大事なんや、と言わんばかりの偽善っぷりが、鼻について。
んなこと言っといてお前、いざそっちの吾妻が危険になったら、こいつなんか構わずそっち行くやろ?」
白倉が音を立てて椅子から立ち上がった。
「偽善を焼くほど暇でも善人でもない」
「あ、そう?
俺の知っとる『白倉誠二』はそうやけど」
さらっと、馬鹿にしたような笑みを浮かべて言い切った岩永に、白倉の挙動が止まる。
強気に睨んでいた瞳を瞠って、息を詰めた。
「馬鹿でアホで、優しすぎて、人の心配ばっかして、…………」
間を作って、岩永はため息を吐いた。
呆れたように。
「うんざりする」
「……そっちの、俺って」
訊きたいような、訊きたくないような感じだ。
でも、ここの世界と、ほとんど変わらない世界なんだ、よな?
「それはともかく、無理するんじゃない」
吾妻が岩永の頭を撫でて、嘆息混じりにそう言った。
口調に棘はなく、ただ心配そうだ。
「まだ熱が高いよ」
「…別に、すぐ治る」
「雨に濡れたせいもあるでしょ。
悪化させたら駄目」
「…はいはい」
不承不承頷いた岩永に、吾妻がホッと息を吐く。
その割って入れないような雰囲気に、白倉はたじろいだ。
吾妻は怒りもしなかった。
「白倉が好きだ」と言いながら、岩永の言葉に。
単純に気にしなかったというより、岩永の言葉の本質を理解しているから受け入れたというような雰囲気に、なにも言えなくなった。
「白倉?」
「…ごめん。
トイレ」
九生の問いと視線から逃れるように部屋から出ていった白倉の姿に、九生は立ち上がり、あとを追った。
「まあ、お前たちの問題を全部今話してもらおうなんて思ってない」
時波は壁に背を預けたまま、淡々と言う。
「さすが時波。
わかっとるやん」
「だが、お前の物言いは許せん」
時波の視線が、鋭く岩永を射る。
「白倉は、お前を心配しているんじゃないのか?」
時波の言う「白倉」が、今部屋を出ていった白倉じゃないと気づいた。
岩永の顔から笑みが失せる。
「お前達に帰ってきて欲しいと」
時波の言葉がとぎれた。
時波の顔の真横の壁がえぐれている。
時波の頬には、鋭い爪でひっかいたような傷が二本出来ていた。
岩永の手の周囲を風が渦巻く。
「知ったかぶりはやめろ、て、今言うたんよ。
吾妻のこと知ったような口で語るから」
白倉のことだ。
岩永は寝台から降りて、腕を組む。
「お前もや。
知ったかぶりで文句言うなら、出てけ」
「……その容態のお前をおいて、ここを去ることは不可能だ」
「こんなんいつものことや」
「なら、なおさら放置出来ない」
岩永が眉間に皺を寄せて、再度口を開くが、しゃべる前にせき込んで、身体を折った。
「だから、無茶すんな、て言ったよ」
吾妻の手がその身体を支える。
「……なら、こっちから出てくわ」
口から手を離さないまま、岩永がそう言った。
藍澤が咄嗟に放った炎が、一瞬で鎖に変化して二人に伸びる。
その場から岩永の姿が消えた。
透明に薄れそうになった吾妻の輪郭が、腕に絡んだ鎖のせいで引き戻される。
その場に一人残されてしまった吾妻が、舌打ちをして強引に手で鎖を引きちぎった。
「アホ!
俺一人残したって意味がない!」
藍澤に怒鳴って、吾妻は素早くベランダに出る。
五階なのも構わず、軽やかに飛び降りた。
その直後、白倉と九生が室内に姿を見せる。
「すまん。
見失った」
時波は謝ると、廊下に飛び出す。
「俺達も追うぞ。
あ、白倉。
村崎、呼んでくれ」
「ああ」
九生の言葉に、白倉は頷いた。
村崎のスマートフォンに着信があったのは、夜中の十二時だった。
白倉からだ。
内容を聞いて、寝付けず横たわっていた寝台から飛び起きる。
スマートフォンだけ持って立ち上がった村崎の手を、一緒にいた岩永の手が掴んだ。
「…なに?」
不安げな顔を見下ろして、村崎はとりつく島もなく言う。
「お前には関係ない」
「…やって、白倉やろ?
なんか、あった…」
すがる手を強引にほどいて、寝台に座らせる。
彼の右腕には、ひどい火傷がある。
先ほどいきなり腕に浮かんだ火傷だ。
もう一人の自分を知らない岩永は、完全に動揺し、混迷していた。
それを、理由を、村崎は言っていない。
包帯に覆われた傷は、痛むはずだ。
「頼むから、…関わるな」
「……」
村崎はずっと苦しそうで、なにかを抱えていて、それは自分には伺い知れない。
村崎が見せてくれないからだ。
「いやや!」
このまま行かせたら、絶対後悔する。
そう思って、村崎の腕に抱きついた。
「俺も行く!」
村崎は腕にしがみつく岩永の姿を見下ろし、悲しそうに瞳を閉じる。
岩永の身体を抱きしめてきた。
安堵する暇なく、首筋にくちづけられる。
「しず」
熱い舌が、首筋から鎖骨に移動して、指がシャツの裾から潜り込んできた。
脇腹を撫でた大きな手に、身体が跳ねる。
「ちょ、静流…や、なに…」
「なにって」
村崎の声は低くて、感情が見えない。
「ここにおって欲しいんやろ?」
顔を上げた村崎の瞳は、自分を見ていたけど、自分を映していなかった。
濁ったような、曇ったような、色をしていた。
腰を強く引き寄せた腕。
ベルトにかかった指に、背筋がぞくりとした。
「や…っ」
嫌だった。
怖かった。
思わず手を振るったら、爪先が村崎の頬をひっかいた。
頬に赤い筋が生まれる。
「…あ」
血の滲んだ頬に手をやって、村崎は岩永から手を離す。
距離を取った。
「…わかったやろ。
こういう男や。儂は」
冷たい目で言って背中を向けた村崎に、違うと強く思った。
でも、足が震えて、動けない。
そのまま部屋から出ていった彼の姿が見えなくなる。
違う、と思う。
なのに、怖い。
その場に座り込んだのは、村崎がいなくなって数分後のことだ。
「……」
違う。
村崎はわざと、あんな風に触れたんだ。
自分を遠ざけたいから。
でも、怖かった。
今の村崎は、自分の言葉を聞いていない。
自分の意見を聞かない。
自分を、見てない。
じゃあ、誰を見ているんだ。
その、もう一人の、俺を?
なんで時間を巻き戻したんだ。
怖かった。
自分の中でふくれあがる不安や、疑心が。
吾妻がいないのは誤算だった。
吾妻も引っ張ってくる予定が、藍澤の邪魔のせいで、狂った。
岩永は一人、雨の降る深夜の街を歩いていた。
薄着で傘もない。
すぐに全身が濡れた。
冷えた身体は、寒気がするし、頭もがんがん痛む。
吐き気は、熱のせいなのか、暴走キャリアのせいなのか、わからない。
「…変やな」
痛む身体を抱くように腕を回しながら、傍の塀に身体を預ける。
もう既にいくつかの能力が暴走キャリア化しているのは、自分も吾妻もよくわかってる。
それでも構わなかった。
吸収の力を内部に向けて使えば、侵食は最低限に押さえられたからだ。
自分の能力が「吸収」であることを、心底よかったと思っている。
でも、普段なら数時間か、長くて一日経てば、症状は収まる。
なのに、今回はなかなか和らがないし、ひどい。
吐血の量もやけに多かった。
とうとう、無茶な使用が祟ったということか?
あいつらはあの部屋から出ていっただろうか。
あの部屋には荷物が置きっぱなしだ。
だから、ほとぼりを見て戻る気だった。
吾妻とはぐれたのが痛い。
身体を無理に動かすと、軋むように痛んだ。
すぐせき込んでしまい、その場に膝を突いた。
苦しい。
苦しいのか気持ちが悪いのか、痛いのか寒いのか、もうわからない。
不意に目の前に影が差した。
吾妻かと思ったが、違う。
「あれ、この前のお兄さんじゃん」
見覚えのない顔の男が二人。
「どうしたの?
随分具合悪そうだけど」
「手貸そうか?」
親切な言葉を吐くが、見え透いた嘘なのはわかった。
どうも、以前なにかあったらしい。
覚えてないが。
こちらの世界の自分ってことはないな。
あいつは、いかにも善人だから。
「ありがたいけど、いらんわ」
痛む身体に堪えて、立ち上がろうとするが、すぐ倒れ込んでしまう。
身体を折って、何度もせき込む。
「無茶しないほうがいいよ。
いかにも病人じゃん」
「そうそう」
男の一人が、近くに停めてあった車を指さす。
「病院まで連れてってあげるから」
嘘だ。
どうせ、そのまま人気のない場所に連れて行って私刑ってとこだろう。
そんな嘘に引っかかる馬鹿じゃない。
が、どうにも身体が言うことを訊かない。
「ほら」
男の手が、肩に触れた。
ぞわっと鳥肌が立つ。
「触んなっ!」
叫んで振り払った手から、風を生み出し男達に向ける。
男達が慌てて飛び退いた。
「殺されたなかったらどっか行け」
手に風をまとわせて、壁に手を突いて立ち上がる。
だがすぐに視界が歪んで、地面に崩れ落ちた。
駄目だ。
全く力が入らないし、あちこち痛くて苦しくて、全く制御がうまくいかない。
自分が全く戦えない状態だと見て取って、男達が近寄ってきた。
瞬間、その場に降り注いだ石飛礫が、男達に襲いかかる。
「うわっ!」
男達は自分の頭を庇って、背後に下がる。
どうにか上体を起こした岩永は、後ろを振り返って息を飲んだ。
こちらに足早に近づいてきたのは、村崎だ。
険しい顔をして、岩永を背後に庇う。
「ケンカなら、儂が相手になるが」
村崎の身体から出ている殺気と、威圧感。
その見るからに「強い」と訴える外見に、男達は怯んで走り去った。
車に乗り込んで、逃げていく。
村崎が微かに息を吐く。
「…静流」
驚いた。
助けてくれるなんて。
村崎は岩永を振り返ると、険しい視線を向けてきた。
「…静流が助けてくれた」
岩永が嬉しそうに笑ってみせると、眉を寄せる。
「勘違いすんな」
今まで訊いたことがないような、冷たく刺々しい声が聞こえた。
「お前に死なれたら困るだけや。
お前を助けたいわけやない」
「……」
少しびっくりした。
そんな風に、憎悪や嫌悪を直に、そこまではっきり自分に向けたことはなかった。
彼は結局甘かったから。
「傷が跳ね返らんなら、ほっといたわ」
「……うん」
まあ、それにも限界があるよな、と思った。
笑みが浮かぶ。
「傷が跳ね返らんなら、…儂が殺した」
「……ああ」
心底憎らしく思った声に、岩永は瞳を瞠って、それから、微笑んだ。
「……それ、ええな」
どこか嬉しそうに、それでいて泣き出しそうな顔で笑った。
「…そうしてくれたら、うれしい」
「…………」
村崎が言葉を失って、立ちつくす。
だが、岩永がせき込んで、倒れ込みそうになったので、しゃがみこんで岩永の身体を抱き寄せる。
そのまま横抱きに抱え上げて、歩き出した。
「吾妻は?」
「……」
甘い、と思う。
ああ言ったくせに。
自分を助けるのは、自分のためじゃなくても、甘い。
「…おい」
答えない岩永をいぶかしんで見下ろすと、既に意識がなかった。
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