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第十章 Butterfly Effect
第六話 月を喰む狼
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雨が降っている。
止まない空は暗い。
寮内の廊下を走っていた流河は、曲がり角で人とぶつかりそうになって、慌てて背後にさがった。
「あ、優衣くん…」
誰かと思ったら、岩永を探しに先に部屋を出た優衣だった。
ひどく焦った顔をしている。
「…見つかって、ないの?」
「…ああ」
優衣の傍には誰もいない。
優衣は流河の背後を見て、舌打ちをした。
「上から下まで見に行ったんやけど、おかしいわ」
「こんな大雨の中、外に出るとは考えにくいんだけどね」
しかし、そう言い切れない。
村崎が出かけたからだ。
後を追う可能性は充分ある。
「…学校」
流河が呟くように言った。
「学校は?
先生たちは誰かしらいるはずだし、学校から地下都市に行ける」
「地下都市に行ったってか?」
「…だって」
流河は一瞬、言葉を止める。
「村崎くんの場所、俺達ですら知らないんだよ?」
「…やんな」
岩永があとを追おうとしたって、居場所がわからない。
それなのにこの悪天候の夜の中、外に出る岩永じゃない。
「…地下都市か。
それなら厄介やな」
「ああ、迷路だもんね。あそこ」
地下都市に行ったなら、探すのは至難の業だ。
「一応、学校行ってみるか」
「そうだね」
頷きあって、一階に向かう。
傘を差して、外に出ると、校舎は淡く白光していた。
NOA校舎は夜間、教員がいる間は、壁面がかすかに白光している。
それ故、傍は明るい。
校舎の中に入ると、優衣は流河に傘を預ける。
「ちょお、奥の手使うから、話しかけんといて」
「ああ」
優衣がやろうとしていることがわかって、流河は頷いた。
優衣は瞳を閉じる。
暗い廊下には、非常用の緑のランプが点灯しているだけだ。
数分後、優衣が瞳を開けて、大きく息を吐いた。
「おらんな」
「いない?」
「ああ」
校舎内にはいない、と優衣は断定する。
「じゃあ、やっぱり」
「それが、監視カメラの映像にあいつ、映ってへんねん」
「…え」
優衣の能力は影だ。
影のある場所なら、干渉出来る能力がある。
校舎内全ての影のある場所の様子を透視することも可能だ。
寮でも最終的にはそうやって探したのだろう。
監視カメラをのぞき見ることも、不可能ではない。
「…じゃ、ここじゃない…?」
流河は眉をひそめる。
「まさか、本気で街に出たの…?」
「普段のあいつなら、そないな短気はせぇへんが、状態が状態やからな」
居ても立ってもいられなくなった可能性はなくはない。
流河は難しい顔をして、足下を睨んだ。
「……敷地内で、ほかに行きそうな場所…」
その呟きに、優衣が不意に手を打った。
「礼拝堂は?」
一人になるに打ってつけの場所や、と言う。
流河が弾かれたように顔を上げる。
「行ってみよう!」
流河から傘を受け取り、優衣は外に飛び出す。
二人とも、雨でズボンが濡れるのも構わず、礼拝堂に向かって走った。
だが、礼拝堂は真っ暗で、人気もない。
「…隠れとるわけやないな」
影で隅々まで調べて、優衣が嘆息を吐いた。
「ああ、もう!
どこ行ったんだよ!」
流河が頭を押さえて、近くの椅子に音を立てて腰を下ろす。
「…」
優衣は無言で礼拝堂の外に出て、周囲を見回した。
人の姿は、影でもとらえられないし、雨の音以外に音はない。
無駄足か、と思った時、不意に足になにかが触れた。
「…空き缶?」
足下には紅茶の缶が転がっている。
拾い上げてみると、まだ中身が少し残っていた。
岩永が好んで飲む紅茶だ。
缶はどう見ても新しい。
捨てられたばかりだ。
いや、捨てられたというより、飲みかけを持っていたところを、落とした?
「流河!」
NOA敷地内を影で検索したが、全く引っかからない。
急いで礼拝堂に戻った。
「どうしたの?」
「これ、外に落ちとった。
敷地内に岩永はおらん」
流河は差し出された缶を持ってみて、中身がまだ残っていると知る。
「……持っていたところを、誰かに連れていかれた…?」
「俺もそうやないかって。
ただ、もう一人のあいつらは、今動けへんって、白倉から訊いたで」
誰が連れて行くというのだろう。
いや、そもそもこの缶だって全く違う誰かの落とし物という可能性も低くない。
わからない。
「…村崎くんに言う?」
「なんもわかっとらんのに、教えたら心配かけるだけや」
それに、と優衣は言いかけ、ため息を吐く。
「……あっちの岩永らに知られたらあかんしな」
「…そうだよね」
どうも動けない状態らしいが、向こうの詳しい事情を知らない。
迂闊に教えられない。
「外を闇雲に探すよか、誰かに知恵借りたほうがええな」
「そうだね」
この街は広い。
村崎の居場所だって、自分たちはわからないのだ。
「…借りるっていったら、限られるよ?」
一応これでも、流河と優衣は学園の情報通。
そして、頭はかなり切れるほうだ。
自分たちが頼るとしたら、
「……天辺にいる神様しかいないよねえ」
「やな……」
最上の100号室の住人しかいない。
良くも悪くも、情報を握っていそうだ。
「ただ、俺らに教えてくれるかだよね」
「そうやな…」
場合によっては教えてくれない気がする。
流河は優衣の後を追い、寮に戻りながら、気づけば足元ばかりを見ている自分に気づく。
見つからないから、不安が増す。
「……どないした?」
エントランスホールで、優衣が不意に振り返り、首を傾げる。
「…いや、」
なんでもないと言おうとして、口を閉じる。
今言わなかったら、状況が好転するわけじゃない。
避けられない。
「……あのさ」
流河は意を決して、優衣の顔を見つめた。
「…おう」
ただならぬ雰囲気を感じて、優衣は背筋を伸ばす。
「…岩永くんの身長が伸びてた」
「……は?」
一瞬、意味がわからなかった。
間抜けな声を上げてしまう。
「巻き戻した当初、俺達より十センチくらい低かったじゃない。
それが、さっき見たら、俺と同じかちょっと上だったんだ」
「………、いや、ちょお待てや」
かすれた声が出た。
あり得ないだろう。
「身長がそないすぐ伸びるかいな。
まだ一日やで」
「だからおかしいんだよ」
「さっきって、立ったときやろ?
見間違い…」
見間違いじゃないのか、と言おうとして、優衣は言葉を切った。
流河が複雑そうに笑う。
「飛んでくる物ならまだしも、背の高さを誤認すると思う?」
「…そうやった」
そうだ。
それに、流河の動体視力は秀でている。
彼が誤認するはずはない。
「…ほな、なんや?
いきなり身長が伸びるわけ…」
言いかけ、優衣は息を飲んだ。
流河と同じ結論に至ったように。
「…もしかしたら、白倉くんの超能力は、不完全なのかも」
雨の音が響いている。
まだ、止む気配はない。
ホテルの一室は静かだ。
雨の音しか聞こえない。
村崎は壁により寄りかかったまましゃべらないし、時波と九生、藍澤も無言だ。
違う世界からやってきた吾妻は、心配そうに寝台の岩永を見ている。
そして、吾妻は白倉の傍で無言。
「……病院、ほんと行かんでいいんかな…」
白倉が思わず呟いた。
岩永の容態は一刻を争うような状態だ。
なのに、岩永の傍らの彼は連れて行かないと頑なだ。
「あんた、いい加減にしたらどうだよ?」
吾妻がしびれを切らしたように彼に話しかけた。
「なにが?
それ」
「病院くらい連れてくべきだ。
命の方が重い」
彼は眉を寄せる。
「…約束したからね」
「だから、約束と命とどっちが重い!」
叫んで立ち上がった吾妻の腕を、白倉は引っ張って座らせる。
「お前らが言い争ったって意味ない」
「…だけど、白倉…」
吾妻は納得がいかないように、白倉の服の袖を引く。
椅子に腰掛けていた九生が、不意にスマートフォンを取りだし、画面を開く。
ちょうど背後にいた時波の位置からも、画面が見えた。
メールの送信者は流河。
内容は『岩永くんがいなくなった』という一文だけ。
「誰から?」
離れた位置にいた藍澤の問いに、九生は顔を上げて立ち上がる。
「山居」
そう嘘を答えて、部屋の出口に向かった。
「俺は一旦、NOAに戻るわ」
「え」
白倉が驚きの声を上げる。
「ここに医学の素人が雁首そろえとったって、どうにもならんじゃろ」
「…連絡するのは、なしだよ」
寝台脇にいた彼が立ち上がり、九生を睨む。
だが、その瞳は不安に揺れ、表情も覇気がない。
その顔を振り返って、九生は首を横に振った。
「言わん。
お前らと違って約束は守るけんの」
「…」
吾妻はなにか言いたげな顔をしたが、なにも言わない。
「ただ、暴走キャリアを一時的にでも沈静させる方法くらいはある。
そん方法を調べてくるんじゃ」
九生の言葉に、白倉も吾妻もハッとした。
そうだ。九生は方舟。
自分たちが触れられない学園の深部の書物も見れるはずだ。
「…九生」
白倉は九生を見上げて、すがるように名前を呼んだ。
「頼む」
「ああ、任せんしゃい」
白倉に向かって笑みを見せ、九生は部屋の外に出た。
「藍澤」
時波が藍澤に呼びかけ、部屋の外を指さす。
「ついていってやってくれ」
「…俺じゃなんの足しにもならないぞ?」
俺自身暴走キャリアだし、と藍澤は驚いている。
「いや、服を持ってきて欲しいんだ。
いつまでもあいつらの服を借りているわけにいかない」
「…ああ、そうか」
この豪雨の中、外を探し回っていたので、着てきた服はずぶぬれだ。
瀬生くまでの間、この部屋を借りている二人の着替えを拝借しているのだが、確かに時波の言うとおりだ。
「わかった。
適当に見繕ってくるよ」
「頼んだ」
藍澤は微笑んで、九生の後を追う。
「…お前は行かへんのか?」
ずっと黙っていた村崎が、不意に重苦しい声のまま尋ねた。
時波は真顔で、
「俺がいなくなったら、なにかあったときその場を納める奴がいないからな」
と答える。
「白倉は吾妻二人には効果があるが、場合によっては火に油だし、吾妻二人を当てにするほうが間違っているし、お前は岩永にしか効かない。
妥当な判断だろう?」
そう言われれば、村崎は反論できない。
「そうか」とだけ返した。
「……まあ、九生がなにか持ってきてくれたら助かる」
「ああ、なにか打開策が見つかれば…」
白倉と吾妻はそう呟き、不安を紛らわそうとしたが、やはり不安が勝る。
「…まあ、目を覚ましてくれな困るがな」
村崎が腕を組んだまま、不意にそう言った。
「“岩永”のため?」
彼がかすかにきつい視線で、村崎を見上げる。
「ああ」
村崎はためらいなく頷いた。
「跳ね返らんなら、死んでもかまわんがな」
「…おい」
村崎が続けて言った物騒な言葉に、彼が眉を寄せる。
白倉と吾妻も、村崎の言葉の内容と、滲んだ憎悪に瞳を瞠った。
つい最近まで、どうしたらいいかわからず戸惑っていたのに。
「なんで、儂がそいつを大事にせなあかんのや?
人を不幸にしようとしとるような奴を。
そいつがおらんかったら、どれだけよかったか」
村崎の声は心底そう思っている風だった。
白倉と吾妻にはなにも言えない。
実際、それだけのことを彼らはしたのだ。
「…強いて言うなら、訊きたいことがあるから、それまでは生きとって欲しいがな」
「…あんた」
彼が憤りを滲ませ、立ち上がる。
村崎は全く怯まない。
「…訊きたいことって」
白倉がおそるおそる口にした。
「…嵐がなんで、あないな真似をしたか、その理由。
そいつはさすがに知っとるやろ」
村崎は寝台の上で苦しそうに眉を寄せている岩永の寝顔を見た。
白倉と吾妻はハッとする。
確かに、一理ある。
「その前に、こいつが助かるかどうかだ」
「変やな。
儂をひどいと責めるなら、まず病院に連れてってやらん自分を責めたらどうや?」
真っ向から彼をにらみ返した村崎の言葉に、彼は言葉を失って黙り込む。
「そんなに、その約束が重いんか」
咎めるようなきつい声だ。
彼は悲しげに表情を歪めて、椅子に腰掛けた。
「…そんな、あんたにはわからん」
泣きそうな声。
「…あんたらには、絶対」
「わかりとうないわ。
人でなしの作り方なんぞ」
「…」
村崎はどこまでも厳しかった。
彼はうなだれて、自分の足下を見下ろす。
「…いい加減にしないか。
そんなことを言っている場合じゃない」
時波がため息混じりにそう言ったが、誰もなにも言わない。
最初は重苦しい空気のせいかと思ったが、不意に気づいた。
誰も瞬きをしていない。
「…白倉?」
思わず、白倉の名前を呼んだ。
「おい…」
時波は戸惑って、吾妻の肩を叩く。
頬をつねっても無反応だ。
口の前に手を差し出す。
息をしているなら、呼吸が手に触れるはずだが、なにも触れない。
「…なんだこれは」
まるで、白倉の時間凍結。
だが、その白倉自身も、止まっている。
岩永の顔を見たが、眠ったまま。
さっきまで荒く吐いていた呼吸も止まっている。
不意にベランダの戸が開いて、驚いた。
弾かれたようにそちらを向いて、時波は息を止めた。
ありえないと思った。
ベランダの戸に手をかけ、立っているのは岩永だ。
反射的に寝台の上を見る。
彼は眠ったままだ。
その彼より若干幼い顔。
間違いなく、この世界の岩永。
「ごめん。
時波以外はぶいたんよ。
話進みそうにないメンバーやったから」
岩永は明るい口調で言う。
「…お前」
かすれた声が出た。
「これはいったい…」
時間を止める能力なんか、岩永にはない。
あったとしても、それは白倉から奪った力だ。
「まあ、多めに見てや。
まず、そいつを助けな」
岩永が柔らかく微笑んで言った台詞を疑った。
「お前、…岩永、…か?」
今、気づいた。
岩永の背丈は、確か巻き戻したせいで、自分より十センチは低かった。
なのに、今、同じくらいだ。
それに、もう一人の自分を嫌っているはずなのに、優しい顔で助けると言う。
本当に、彼は岩永なのか?
室内に入ってきた岩永の服はどこも濡れていない。
靴も、デニムも。
この豪雨。
傘を差しても、全く濡れないのは不可能。
でも、時間をずっと止めたまま、移動するのはもっと不可能。
元祖の白倉ですら、時間凍結はもって五分。
岩永はにっこり微笑む。
岩永の顔なのに、一瞬別人に見えた。
「…まあ、黙って見逃してや」
唇に人差し指を当てて、岩永は言う。
「自分に損はないから」
秘め事のように、内緒話のように。
無邪気な子どものような笑顔で。
止まない空は暗い。
寮内の廊下を走っていた流河は、曲がり角で人とぶつかりそうになって、慌てて背後にさがった。
「あ、優衣くん…」
誰かと思ったら、岩永を探しに先に部屋を出た優衣だった。
ひどく焦った顔をしている。
「…見つかって、ないの?」
「…ああ」
優衣の傍には誰もいない。
優衣は流河の背後を見て、舌打ちをした。
「上から下まで見に行ったんやけど、おかしいわ」
「こんな大雨の中、外に出るとは考えにくいんだけどね」
しかし、そう言い切れない。
村崎が出かけたからだ。
後を追う可能性は充分ある。
「…学校」
流河が呟くように言った。
「学校は?
先生たちは誰かしらいるはずだし、学校から地下都市に行ける」
「地下都市に行ったってか?」
「…だって」
流河は一瞬、言葉を止める。
「村崎くんの場所、俺達ですら知らないんだよ?」
「…やんな」
岩永があとを追おうとしたって、居場所がわからない。
それなのにこの悪天候の夜の中、外に出る岩永じゃない。
「…地下都市か。
それなら厄介やな」
「ああ、迷路だもんね。あそこ」
地下都市に行ったなら、探すのは至難の業だ。
「一応、学校行ってみるか」
「そうだね」
頷きあって、一階に向かう。
傘を差して、外に出ると、校舎は淡く白光していた。
NOA校舎は夜間、教員がいる間は、壁面がかすかに白光している。
それ故、傍は明るい。
校舎の中に入ると、優衣は流河に傘を預ける。
「ちょお、奥の手使うから、話しかけんといて」
「ああ」
優衣がやろうとしていることがわかって、流河は頷いた。
優衣は瞳を閉じる。
暗い廊下には、非常用の緑のランプが点灯しているだけだ。
数分後、優衣が瞳を開けて、大きく息を吐いた。
「おらんな」
「いない?」
「ああ」
校舎内にはいない、と優衣は断定する。
「じゃあ、やっぱり」
「それが、監視カメラの映像にあいつ、映ってへんねん」
「…え」
優衣の能力は影だ。
影のある場所なら、干渉出来る能力がある。
校舎内全ての影のある場所の様子を透視することも可能だ。
寮でも最終的にはそうやって探したのだろう。
監視カメラをのぞき見ることも、不可能ではない。
「…じゃ、ここじゃない…?」
流河は眉をひそめる。
「まさか、本気で街に出たの…?」
「普段のあいつなら、そないな短気はせぇへんが、状態が状態やからな」
居ても立ってもいられなくなった可能性はなくはない。
流河は難しい顔をして、足下を睨んだ。
「……敷地内で、ほかに行きそうな場所…」
その呟きに、優衣が不意に手を打った。
「礼拝堂は?」
一人になるに打ってつけの場所や、と言う。
流河が弾かれたように顔を上げる。
「行ってみよう!」
流河から傘を受け取り、優衣は外に飛び出す。
二人とも、雨でズボンが濡れるのも構わず、礼拝堂に向かって走った。
だが、礼拝堂は真っ暗で、人気もない。
「…隠れとるわけやないな」
影で隅々まで調べて、優衣が嘆息を吐いた。
「ああ、もう!
どこ行ったんだよ!」
流河が頭を押さえて、近くの椅子に音を立てて腰を下ろす。
「…」
優衣は無言で礼拝堂の外に出て、周囲を見回した。
人の姿は、影でもとらえられないし、雨の音以外に音はない。
無駄足か、と思った時、不意に足になにかが触れた。
「…空き缶?」
足下には紅茶の缶が転がっている。
拾い上げてみると、まだ中身が少し残っていた。
岩永が好んで飲む紅茶だ。
缶はどう見ても新しい。
捨てられたばかりだ。
いや、捨てられたというより、飲みかけを持っていたところを、落とした?
「流河!」
NOA敷地内を影で検索したが、全く引っかからない。
急いで礼拝堂に戻った。
「どうしたの?」
「これ、外に落ちとった。
敷地内に岩永はおらん」
流河は差し出された缶を持ってみて、中身がまだ残っていると知る。
「……持っていたところを、誰かに連れていかれた…?」
「俺もそうやないかって。
ただ、もう一人のあいつらは、今動けへんって、白倉から訊いたで」
誰が連れて行くというのだろう。
いや、そもそもこの缶だって全く違う誰かの落とし物という可能性も低くない。
わからない。
「…村崎くんに言う?」
「なんもわかっとらんのに、教えたら心配かけるだけや」
それに、と優衣は言いかけ、ため息を吐く。
「……あっちの岩永らに知られたらあかんしな」
「…そうだよね」
どうも動けない状態らしいが、向こうの詳しい事情を知らない。
迂闊に教えられない。
「外を闇雲に探すよか、誰かに知恵借りたほうがええな」
「そうだね」
この街は広い。
村崎の居場所だって、自分たちはわからないのだ。
「…借りるっていったら、限られるよ?」
一応これでも、流河と優衣は学園の情報通。
そして、頭はかなり切れるほうだ。
自分たちが頼るとしたら、
「……天辺にいる神様しかいないよねえ」
「やな……」
最上の100号室の住人しかいない。
良くも悪くも、情報を握っていそうだ。
「ただ、俺らに教えてくれるかだよね」
「そうやな…」
場合によっては教えてくれない気がする。
流河は優衣の後を追い、寮に戻りながら、気づけば足元ばかりを見ている自分に気づく。
見つからないから、不安が増す。
「……どないした?」
エントランスホールで、優衣が不意に振り返り、首を傾げる。
「…いや、」
なんでもないと言おうとして、口を閉じる。
今言わなかったら、状況が好転するわけじゃない。
避けられない。
「……あのさ」
流河は意を決して、優衣の顔を見つめた。
「…おう」
ただならぬ雰囲気を感じて、優衣は背筋を伸ばす。
「…岩永くんの身長が伸びてた」
「……は?」
一瞬、意味がわからなかった。
間抜けな声を上げてしまう。
「巻き戻した当初、俺達より十センチくらい低かったじゃない。
それが、さっき見たら、俺と同じかちょっと上だったんだ」
「………、いや、ちょお待てや」
かすれた声が出た。
あり得ないだろう。
「身長がそないすぐ伸びるかいな。
まだ一日やで」
「だからおかしいんだよ」
「さっきって、立ったときやろ?
見間違い…」
見間違いじゃないのか、と言おうとして、優衣は言葉を切った。
流河が複雑そうに笑う。
「飛んでくる物ならまだしも、背の高さを誤認すると思う?」
「…そうやった」
そうだ。
それに、流河の動体視力は秀でている。
彼が誤認するはずはない。
「…ほな、なんや?
いきなり身長が伸びるわけ…」
言いかけ、優衣は息を飲んだ。
流河と同じ結論に至ったように。
「…もしかしたら、白倉くんの超能力は、不完全なのかも」
雨の音が響いている。
まだ、止む気配はない。
ホテルの一室は静かだ。
雨の音しか聞こえない。
村崎は壁により寄りかかったまましゃべらないし、時波と九生、藍澤も無言だ。
違う世界からやってきた吾妻は、心配そうに寝台の岩永を見ている。
そして、吾妻は白倉の傍で無言。
「……病院、ほんと行かんでいいんかな…」
白倉が思わず呟いた。
岩永の容態は一刻を争うような状態だ。
なのに、岩永の傍らの彼は連れて行かないと頑なだ。
「あんた、いい加減にしたらどうだよ?」
吾妻がしびれを切らしたように彼に話しかけた。
「なにが?
それ」
「病院くらい連れてくべきだ。
命の方が重い」
彼は眉を寄せる。
「…約束したからね」
「だから、約束と命とどっちが重い!」
叫んで立ち上がった吾妻の腕を、白倉は引っ張って座らせる。
「お前らが言い争ったって意味ない」
「…だけど、白倉…」
吾妻は納得がいかないように、白倉の服の袖を引く。
椅子に腰掛けていた九生が、不意にスマートフォンを取りだし、画面を開く。
ちょうど背後にいた時波の位置からも、画面が見えた。
メールの送信者は流河。
内容は『岩永くんがいなくなった』という一文だけ。
「誰から?」
離れた位置にいた藍澤の問いに、九生は顔を上げて立ち上がる。
「山居」
そう嘘を答えて、部屋の出口に向かった。
「俺は一旦、NOAに戻るわ」
「え」
白倉が驚きの声を上げる。
「ここに医学の素人が雁首そろえとったって、どうにもならんじゃろ」
「…連絡するのは、なしだよ」
寝台脇にいた彼が立ち上がり、九生を睨む。
だが、その瞳は不安に揺れ、表情も覇気がない。
その顔を振り返って、九生は首を横に振った。
「言わん。
お前らと違って約束は守るけんの」
「…」
吾妻はなにか言いたげな顔をしたが、なにも言わない。
「ただ、暴走キャリアを一時的にでも沈静させる方法くらいはある。
そん方法を調べてくるんじゃ」
九生の言葉に、白倉も吾妻もハッとした。
そうだ。九生は方舟。
自分たちが触れられない学園の深部の書物も見れるはずだ。
「…九生」
白倉は九生を見上げて、すがるように名前を呼んだ。
「頼む」
「ああ、任せんしゃい」
白倉に向かって笑みを見せ、九生は部屋の外に出た。
「藍澤」
時波が藍澤に呼びかけ、部屋の外を指さす。
「ついていってやってくれ」
「…俺じゃなんの足しにもならないぞ?」
俺自身暴走キャリアだし、と藍澤は驚いている。
「いや、服を持ってきて欲しいんだ。
いつまでもあいつらの服を借りているわけにいかない」
「…ああ、そうか」
この豪雨の中、外を探し回っていたので、着てきた服はずぶぬれだ。
瀬生くまでの間、この部屋を借りている二人の着替えを拝借しているのだが、確かに時波の言うとおりだ。
「わかった。
適当に見繕ってくるよ」
「頼んだ」
藍澤は微笑んで、九生の後を追う。
「…お前は行かへんのか?」
ずっと黙っていた村崎が、不意に重苦しい声のまま尋ねた。
時波は真顔で、
「俺がいなくなったら、なにかあったときその場を納める奴がいないからな」
と答える。
「白倉は吾妻二人には効果があるが、場合によっては火に油だし、吾妻二人を当てにするほうが間違っているし、お前は岩永にしか効かない。
妥当な判断だろう?」
そう言われれば、村崎は反論できない。
「そうか」とだけ返した。
「……まあ、九生がなにか持ってきてくれたら助かる」
「ああ、なにか打開策が見つかれば…」
白倉と吾妻はそう呟き、不安を紛らわそうとしたが、やはり不安が勝る。
「…まあ、目を覚ましてくれな困るがな」
村崎が腕を組んだまま、不意にそう言った。
「“岩永”のため?」
彼がかすかにきつい視線で、村崎を見上げる。
「ああ」
村崎はためらいなく頷いた。
「跳ね返らんなら、死んでもかまわんがな」
「…おい」
村崎が続けて言った物騒な言葉に、彼が眉を寄せる。
白倉と吾妻も、村崎の言葉の内容と、滲んだ憎悪に瞳を瞠った。
つい最近まで、どうしたらいいかわからず戸惑っていたのに。
「なんで、儂がそいつを大事にせなあかんのや?
人を不幸にしようとしとるような奴を。
そいつがおらんかったら、どれだけよかったか」
村崎の声は心底そう思っている風だった。
白倉と吾妻にはなにも言えない。
実際、それだけのことを彼らはしたのだ。
「…強いて言うなら、訊きたいことがあるから、それまでは生きとって欲しいがな」
「…あんた」
彼が憤りを滲ませ、立ち上がる。
村崎は全く怯まない。
「…訊きたいことって」
白倉がおそるおそる口にした。
「…嵐がなんで、あないな真似をしたか、その理由。
そいつはさすがに知っとるやろ」
村崎は寝台の上で苦しそうに眉を寄せている岩永の寝顔を見た。
白倉と吾妻はハッとする。
確かに、一理ある。
「その前に、こいつが助かるかどうかだ」
「変やな。
儂をひどいと責めるなら、まず病院に連れてってやらん自分を責めたらどうや?」
真っ向から彼をにらみ返した村崎の言葉に、彼は言葉を失って黙り込む。
「そんなに、その約束が重いんか」
咎めるようなきつい声だ。
彼は悲しげに表情を歪めて、椅子に腰掛けた。
「…そんな、あんたにはわからん」
泣きそうな声。
「…あんたらには、絶対」
「わかりとうないわ。
人でなしの作り方なんぞ」
「…」
村崎はどこまでも厳しかった。
彼はうなだれて、自分の足下を見下ろす。
「…いい加減にしないか。
そんなことを言っている場合じゃない」
時波がため息混じりにそう言ったが、誰もなにも言わない。
最初は重苦しい空気のせいかと思ったが、不意に気づいた。
誰も瞬きをしていない。
「…白倉?」
思わず、白倉の名前を呼んだ。
「おい…」
時波は戸惑って、吾妻の肩を叩く。
頬をつねっても無反応だ。
口の前に手を差し出す。
息をしているなら、呼吸が手に触れるはずだが、なにも触れない。
「…なんだこれは」
まるで、白倉の時間凍結。
だが、その白倉自身も、止まっている。
岩永の顔を見たが、眠ったまま。
さっきまで荒く吐いていた呼吸も止まっている。
不意にベランダの戸が開いて、驚いた。
弾かれたようにそちらを向いて、時波は息を止めた。
ありえないと思った。
ベランダの戸に手をかけ、立っているのは岩永だ。
反射的に寝台の上を見る。
彼は眠ったままだ。
その彼より若干幼い顔。
間違いなく、この世界の岩永。
「ごめん。
時波以外はぶいたんよ。
話進みそうにないメンバーやったから」
岩永は明るい口調で言う。
「…お前」
かすれた声が出た。
「これはいったい…」
時間を止める能力なんか、岩永にはない。
あったとしても、それは白倉から奪った力だ。
「まあ、多めに見てや。
まず、そいつを助けな」
岩永が柔らかく微笑んで言った台詞を疑った。
「お前、…岩永、…か?」
今、気づいた。
岩永の背丈は、確か巻き戻したせいで、自分より十センチは低かった。
なのに、今、同じくらいだ。
それに、もう一人の自分を嫌っているはずなのに、優しい顔で助けると言う。
本当に、彼は岩永なのか?
室内に入ってきた岩永の服はどこも濡れていない。
靴も、デニムも。
この豪雨。
傘を差しても、全く濡れないのは不可能。
でも、時間をずっと止めたまま、移動するのはもっと不可能。
元祖の白倉ですら、時間凍結はもって五分。
岩永はにっこり微笑む。
岩永の顔なのに、一瞬別人に見えた。
「…まあ、黙って見逃してや」
唇に人差し指を当てて、岩永は言う。
「自分に損はないから」
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