深刻にならないのが取り柄なオレが異世界をちょっとだけ救う物語

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37:父性は案外簡単に芽生えるもんですか

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ジ~ッと我が子を見ること、数秒くらい。

……ヤバいな。見れば見るほど、自分の子として可愛がろうって気が失せる。
いや、別にな? 憎たらしくも思わないんだぞ?
ただ……ただ、なぁ。
何処をどう見ても、ツタの先端に生えてる若芽……だからなぁ。


「ホラ、ホラぁ。撫でてあげて?」
「ぉ……おぅ。」

美青年からせっつかれて、仕方なくオレは若芽に手を伸ばした。
一応優しくって言われてるから、そっと指の腹で触れてみる。

……うん。分からん。
小さい上に柔らかすぎて、何の触感も無い。
もうね、触れてるかどうかも微妙な感じだ。
こんなに弱々しいのは、生まれる前だからか?

「可愛いデショ?」
「あぁ、そうだな、可愛いな。」

嘘だ。
美青年よ、スマン。
赤ちゃんが生まれたら可愛がってやる、って約束は果たせそうにないぜ。

……とは言え、だ。
口約束でも約束したのには変わりなし。
とりあえず可愛いと思ってるフリくらいはするか。


「あぁ可愛い、可愛い。」

美青年から言われた、撫でろってオーダーを叶えるべく、指の腹で円を描く。
撫でてる感触がちっとも無い。

だからこそ、注意すべきだったんだ。
オレは油断してた。

どうやら、力加減か触る位置を間違えたらしい。


ぽろっ……。

ツタの先端から、若芽が、取れて。


ぽと……っ。

取れた若芽は、力無い感じで、地面に落ちた。


「あっ。」
「ぁ、うわあああぁぁぁっ!」

美青年の声を掻き消すような、オレの叫び声が森に響く。


「ぉ、落ちたあぁぁ、うわあぁぁっ、ヤッちまったあぁぁっっ!」

オレはメチャクチャ焦って、転げ落ちた若芽を両手で掬い取る。
手の平にチョコンと乗った若芽の小ささに、手が震えて来た。


おい、嘘だろ、なんで落ちるんだよ。
まさか、そんな、こんなに呆気なく取れちゃうとは思わなかったんだ。
まだ生まれる前なんだから、もっとしっかり、根っこ張れよ、植物だろ。
いくら可愛いって思えないからって、生まれる前からもぎ落とす気は無かったんだ。
植物にしか見えなくても、赤ちゃんだったんだろ。
美青年の……オレの、赤ちゃんが……死…


「生まれたぁ~。」
「そう…生まれ……、……え?」

能天気な声に驚いてオレは、素の声で美青年を振り返った。
美青年はにこやかな表情で、我が子の悲劇を悲しむ感じじゃない。

慌ててオレは、手の中の我が子を確認する。
じぃ……っと見ても、特に動きが無い。
生まれたって言ってたけど、本当にそうなのか、実に不安な状態だ。


「まだ寝てるみたい。」

オレだけがオロオロする中。
美青年は1本のツタを振り上げて、オレの手の平に押し付けた。

「っちょ……おいっ!」
「赤ちゃん、起きて?」

美青年のツタがオレの手の平を擦る。
起きるどころか永眠すんじゃないかって勢いだ。
その力強さで、オレの腕がガックンガックン上下左右に揺れるくらい。
揉みくちゃになってるだろう我が子の姿は、全く見えなくなってる。

一応、美青年が産みの親だから、大丈夫なはずだ……大丈夫か?


オレが更に不安を感じてると、美青年はツタを退かした。
ようやく手の平の我が子の姿が見えた。

ペッタリと倒れてた若芽が、プルプル震えてる。

「ぃ……生きて、る。」
「? うん、生まれたばっかりだモン、生きてるよ?」

さっきまでは動いてなかったけど、震えてるってことは生きてるってことだろ。
良かった、生きてた、本当に出産だった。てっきり死んだかと思ったぞ。
すっごいビビリまくってから、安心したお陰で、ちょっと父性が目覚めたかも。


ホッとするオレの目の前で、我が子は震えながら立ち上がった。
心なしか我が子は、さっきまでよりも色付きが濃くなった気がする。

我が子は生まれたての華奢な身体を、風にそよそよ揺らしながら。

「…パパぁ。」
「我が子よ!」

喋った、我が子が喋った。
オレは慎重に、決して潰さないように、我が子を両手で抱き締める。

可愛らしい声で、オレへの信頼を全面に出して、「パパ」って呼ばれてみぃ?
そんなん、父性なんかナンボでも湧き出てくるっつ~の。
あぁそうだ、名前……。

「我が子の名前、決めなきゃな?」
「名前?」

オレの言葉に美青年は小首を傾げる。
ひょっとして植物モンスターには、個体に名前を付ける風習が無いのかも知れん。
だったらオレが考えてやらないとな、って思ったとき。


「…ろぉーっ!」

何か遠くから、声が聞こえたぞ。

……あっ、ヤバい。


「何処にいる、返事をしろっ、ヒロぉーっ!」
「ヒロさぁ~ん、大丈夫っ? 返事して~!」

あの声は、ディルと……たぶん、妊娠してない警ら隊メンバーのセインだな。
さっきオレ、凄い大声出したからな。
心配して探しに来てくれたんだろうな。


一瞬、どっかに隠れようかと思ったけど。
森の中でエルフ族を相手に、隠れきる自信が無い。
目の前にいる美青年は、早くも表情が険しくなってる。

……本当にヤバいな。この状況、どうすっかな~。

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