尻穴がバイブレーションしちゃう職業病が成人病として広まってしまった世界

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癒し系美人騎士団長 + 強面の三十路兵士団長 × 若きエリート騎士団副長

9.騎士団長 + 兵士団長 × 騎士団副長

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「団っ……、ぃえ、バイハル団長っ。いきなり何をっ。」

いつもの癖でキリを団長、と呼びそうになり、モナイは慌てて言い直す。
この場には団長と呼ばれる男が二人いるからだ。

「僕の事はいつも通り、団長と呼ぶので構わないよ、ヨーナ副長?」
「いいえ、マサラー団長もいらっしゃるので、そういうわけには。」
「そちらもいつも通り、名の方で呼び合って構わないが。」
「え゛……っ。」
「今さら敬称で呼び合う間柄でもないだろう?」

声を詰まらせたモナイをキリが優しげに追い詰める。
いや、キリ本人には追い詰めている気は無いのだが、すっかり復活した『鬼畜攻め』の微笑がそんな風に見せていた。


オロオロしたモナイが助けを求めるような瞳をナンディに向け。
はぁ……っと溜息交じりのナンディは、ここに来て初めてまともに口を開く。

「あー、バイハル団長? 済まんが、その、恋人ってのは…」
「違っただろうか?」
「いや、違う……と言うか……。なんで、そう思っ…」
「身体の関係から始まった恋人同士なのだろう? そのように広まっているぞ?」
「なんっ……!」


なんでっ、そんな噂が……っ、未だに広まってんだぁっ! んな馬鹿げた話を、どこのどいつが広めてやがるっ! ソイツをここにっ、連れて来いいっっ!


と、キリを怒鳴り付けなかっただけ、ナンディの理性は褒められるべきだろう。
同じ兵士団の部下ではなく、別な組織である第二騎士団の団長という立場であった事を、キリは感謝すべきだろう。

怒りと羞恥とで若干赤らみを帯びたナンディの顔、完全に赤くなったモナイの顔を交互に見て、キリは頼もしそうに頷いて見せた。
自分は応援するぞ、という気持ちを込めたつもりだった。キリが思っているよりも口元や瞳が笑っている所為で、状況を楽しんでいるように見える、とも知らずに。



大きな掌で額を押さえたナンディが呻く。

「た、確かに一時期は、そんな妙な噂が流れてたようだが……すぐに消えたハズだ。それがなんで、ぃ…今さら……。」


ありゃあ確か……モナと名前で呼び合うようになった頃だったか? オレとモナが急に親しくなった、とかナントカ。本当にそれだけ。チラッと噂が流れたっぽいが、よ。あっという間に聞かなくなったろぉが。
それがなんで……ほんっとに、なんで。今さら、恋人だって話になってんだ? そんな誤解……あ、いや、身体の関係ってのは全くの間違いってワケじゃねぇが。
とにかく、そんな噂が流れてるなんて聞かされて、モナがどう思うか……。もしかして、オレとヤルのをしばらく控えよう、とか思うんじゃねぇか? まさかそのまま、今後は治療術師に対応して貰う事にするとか、考えたりしねぇよな?
…………嫌だ。冗談じゃねぇ。
例え相手が治療術師だろうとも、オレの役目を他の誰かに譲りたくねぇ。どこの誰とも知らねぇ治療術師にも、親切そうに振る舞ってるバイハル団長にも。
モナに触るのはオレだけだ。


ナンディが密かに想いを込めた視線をやれば、モナイは赤くなった顔を両手で押さえていた。珍しく明らかに恥ずかしそうだ。
その姿に機嫌を良くしかけたナンディだったが、視界に入るキリも満足そうに微笑んでいる事は少々気に入らなかった。



キリにとってはナンディが不思議がる事が、逆に不思議だった。

「心当たりが全く無いのかい? 本気で?」


マサラー団長は何故に。自分とヨーナ副長が周囲から恋人同士だと認識されない、と思っていたのだろうか。
こう言ってはなんだが貴方達、割と頻繁にイチャ付いているよな?
宿舎の近くで『偶然』出会えば用事も無いのに、あるいは小さな用事を作り出して、短い時間でもお喋りしているじゃないか。その回数だって、恐らく恋人になったであろう時期の前後を比べてみたら、著しく増えているに違いない。
周囲に人が居るから会話の内容は当たり障りの無いものだが、二人とも随分と嬉しそうな表情をしていたのが印象深かった。何より一番雄弁なのは、会話中に何度も絡み合わせる視線だがね。そう言えば、王城の控室でもそうだったかな。羨ましい、けしからん。
全く……これで何故、二人の関係が誰にもバレないと思えるのだろう。


両手で顔を挟み込んでいるモナイは、心当たりを必死に思い出そうとしているように見えた。という事はモナイも、これまでに行っていたイチャ付きは無意識だったというわけだ。
視界の端では、ナンディが睨んで来る。見た目は凄く怖いが十中八九、照れているだけだろう。
見守るような気分でキリは目を細めた。



モナイの心中は、羞恥と反省とで埋められていた。

「……心当たり……。無い、事も…ない、ような……。」

すみません……、バイハル団長、ご免なさい!
温厚な団長がここまで言うとは、余程うるさかったのだろうな。ディーと名で呼び合っている事まで知られているのだから、恐らくはかなり鮮明に聞こえていたのに違いない。
ぁれ、待て……上階の団長にそこまで聞こえる、という事は……。下階の部隊長達の部屋にも、それなりに……。あっ、あ……ああぁぁ、もうっ、……恥ずかしいっ! どうしてこれまで無遠慮に、大声を出してヨガってしまったのか!
穴があったら入りたい……。……通常は入れられる側だが。
そうだ、明日にでも。猿轡を、買いに行こう……。


斜め上か下かも判別付け難い決意を固めながら、モナイは真っ赤になった顔に当てた手の、指の隙間からナンディとキリとを盗み見る。
第二騎士団の『鉄の人形』という渾名が影も形も無い、小動物っぷりだった。
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