尻穴がバイブレーションしちゃう職業病が成人病として広まってしまった世界

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癒し系美人騎士団長 + 強面の三十路兵士団長 × 若きエリート騎士団副長

8.騎士団長 + 兵士団長 × 騎士団副長

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残念ながらモナイは、キリの思惑に気付けてはいなかった。
平常時であれば考え付いていただろう。だが、キリが話している内容が自分とナンディを指しているのだと、モナイはそう思ってしまったから。

黙って聞いているモナイは内心、顔から火が出る思いだった。


私がディーに精液を貰っている事は二人だけの秘密だ。誰にも話していない。外での言動には当然、お互いに注意を払っている。
なのにバイハル団長には知られている。
団長の部屋は、私の上階。

もしや……団長に、聞こえているのでは。
つ……、つまり、その……。ディーと、シテいる時の……私の声、とかが……。それで団長に気付かれて……。
とすると、これは……。
私の嬌声がうるさいという、バイハル団長からの……苦情! あるいは、恋人同士のセックスではないのだからあまり激しくするな、という忠告!
あぁどちらにせよ、恥ずかしい……!
きっとディーも、ここに来る前にバイハル団長から何か言われたに違いない。


モナイがちらりと窺えば、ナンディは不機嫌そうな表情だった。
黙ってモナイとキリを見たまま、グラスを傾ける素振りも無い。
無言でいるナンディは、本人にその気が無くても機嫌が悪そうに見えてしまいがち。という事を、最近になって分かって来たモナイだから。今もそうなのだろうと判断した。
モナイがはしたなく喘ぐ所為で第二騎士団長に叱られたからと言って、それで怒るようなナンディではないと、思っているから。




推測を裏切ってナンディはすこぶる不機嫌だった。
キリの言動に苛立ち、モナイの反応に焦っている。


キリの部屋でナンディと二人で話していた時は。キリは余裕たっぷりな雰囲気で、王子殿下からの依頼には応じるのが当然だと考えているように見えた。検討中だと答えたナンディに対しては若干、呆れている様子すらあった。
ところが、ナンディをモナイの部屋に案内する時には。キリの表情は、まるで逆鱗に触れられたかのような、激怒を堪えた微笑みに豹変していた。
モナイの部屋に着いてからのキリのは。簡潔に伝えた説明は、肝心の部分を伏せた不十分なものだった。定期的に王子殿下と会う理由を明かさないのだから、それを聞かされたモナイも副長としては不満に感じただろうに。

恐らくキリはモナイに、王子殿下と寝る事を知らせたくなかったのだろう。
一つ一つの事柄を全て通して考えた結果。その理由についても含めて。
今、ナンディは理解した。


成程な。……そりゃあ確かに、王子殿下の依頼を話したくねぇよな。
どうやらバイハル団長はモナを……しかも意外と、本気で惚れてるんじゃねぇか? あの『微笑の君』で『鬼畜攻め』がすっかり真顔になって、あんだけ焦って捲し立てるとか。微笑む余裕すら無くしてるとは驚いた。


王子殿下の依頼を受ける気でいる。
それはそれとして、王子殿下とセックスはするが決して愛しているわけじゃない。

今のキリはそう言い訳しているように見えた。


聞いているモナイは若干戸惑った風だが、その反応はどこか、満更でもないように見える。
そもそもモナイにとってキリは同じ第二騎士団の、尊敬出来る団長だ。しかもキリは外見が飛び抜けて良い。立ち振る舞いも良い。実家の爵位も良い。
これ程までの優良物件に本気で口説かれたら。大抵の人は嬉しいだろうし、気持ちに応じるだろう。憎からず思っている相手から好かれていると知れば、モナイだって心が動く可能性は有り得る。
自分でも気付かない内にナンディは焦っていた。


対症療法の相手として申し分ねぇ。じゃあ今度からバイハル団長が、モナを……、あ……いや、何を言ってんだ、オレは。
相手は誰でもいい、ってモナが考えてたのは、オレを誘う前の話じゃねぇか。しかも実際やる時には「誰でも良くない、貴方がいい」と、そう言ってくれただろが。
あぁクソ、落ち着かねぇ。これはアレだろ、惚れてるだろ。オレも。




「僕の言いたい事が分かるかな?」
「分かります……。……マサラー団長との事、ですね。」
「ははっ、凄いね、流石はヨーナ副長だ。理解して貰えたようで嬉しいよ。」

モナイの返答にキリは笑顔を見せた。
自分でも何を言っているのか意味不明に感じて来た所だから、モナイに伝わったらしい事で嬉しくなる。

「マサラー団長に頼り切り、でした。……しっかりしなくては。」
「それは素敵な決意だ。でもヨーナ副長はむしろ、もっと頼るべきだな。例えば……僕に、とか。」
「……はい?」
「いつでも僕の部屋を訪れると良い。何時間でも気が済むまで付き合おう。」
「はぃ……?」

取り戻した微笑を見せ付けるキリに、モナイは小首を傾げた。
自分をアピールするような発言を聞き、ただでさえ苛立っていたナンディは眉間の皺を深くする。


モナイとナンディが恋人同士だと認識しているキリは、今後はどんな些細な事でも相談に乗ろう、という気持ちから言ったのだ。
万が一にでもナンディが王子殿下の依頼を受けるようなら、モナイが胸を痛める場面も増えよう。そうでなくとも恋愛に悩み事は付き物だと言う。
恐らくは立場を気にして周囲に秘密にしているだろうモナイには、恋人の事を話せる者がいた方が良いだろう。



キリは意味有り気な視線をナンディに向ける。
反射的にナンディが何かを言うより、キリが喋る方が早かった。

「恋人であるマサラー団長には言い難い話もあるだろう?」
「はいっ?」
「……ハ?」
「可愛い副長が一人で苦しむ姿を見るぐらいなら、恋人への愚痴でも文句でも聞いてやりたいと考えていた。出来れば惚気の方が良いとは思うがね。」

はい、としか返事が出来ていない事に、モナイは気付く余裕も無い。
目を見開いたナンディの眉間の皺は一瞬でどこかへと飛んで行った。


口元に鮮やかな弧を描くキリはすっかり心が軽くなっている。
これを機会に二人がどんどん惚気話でも聞かせてくれれば良い、と思っている事が影響してか。モナイとナンディを温かく見守る眼差しは、嘗てない程に興奮した『鬼畜攻め』が獲物を狙う、それのようだった。
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