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癒し系美人騎士団長 + 強面の三十路兵士団長 × 若きエリート騎士団副長
7.騎士団長 + 兵士団長 × 騎士団副長
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王子殿下の『依頼』をどうするか。今後の二人の付き合いをどうするか。
最終的にはモナイとナンディで話し合って、二人ともが納得出来る結論を導き出すのだろう。
当事者であるナンディ本人が言うと言い訳にも聞こえかねないような事をモナイに伝えてやるのが、第三者である自分のすべき事だ。
そして恐らくは。事情を聞けば王子殿下に遠慮してしまいそうなモナイを、上官として、勇気付けてやる事も。
そう考えたキリは、視線をナンディからモナイへと移した。
神妙な面持ちのモナイと眼差しが絡む。
「ヨーナ副長は『振動病』をご存じかな?」
モナイがそれを患っているとは知らないキリだ。
王子殿下の話をする為の取っ掛かりとして軽く口に出したに過ぎない。
だからこそ、モナイが僅かに目を見開いたのも、急に脈絡も無く病名を出した意図が読めないからだろうと判断し。キリは大して気にしなかった。
「………はい。」
一方、現在進行形で振動病への対処をナンディに頼んでいるモナイだ。
ピンポイントでキリが発した病名を聞いて、にわかに嫌な予感が胸中を占める。
話し始める前にジッとナンディを見詰めた事も、その予感を後押しした。
この場に居なくても良さそうなのに、キリがナンディを連れて来ているという事実が更に拍車を掛ける。
むしろ、ここからが『本題』なのではなかろうか。
「現状では病を治療出来る方法が無く、症状を緩和させる為の対症療法しかない。という事も?」
「………はい。」
「症状を緩和させる為の、方法も?」
「………えぇ、もちろん。」
バイハル団長は、私とディーの事を知っているのでは……。
そうであればもっと早く、はっきりと言ってくれれば良いのに。
筋違いだと分かっていながら、モナイは恨めしく考えてしまう。
答えるモナイを、キリはさりげなく観察する。
尻穴の襞が震えるという症状を抑える為に精液を注入する。という事そのものに、少しでもモナイが嫌悪感を持つのかどうか。
観察したが……分からない。
モナイの表情が余りにも乏し過ぎる。いつにも増して表情筋が死んでいる。
余りにも分からなさ過ぎて、キリは直接的に質問する事にした。
これに対するモナイの返答によっては自分はナンディを全くサポートしてやれない。
申し訳ない気持ちを込めてもう一度、ナンディを一瞥してから。
「ヨーナ副長の考えを聞きたいのだが……。振動病を患っている者が、伴侶や恋人でもなく、プロでもない者に……例えば、同じ職場ではなくとも職務上の太い繋がりがあるような相手に、対症療法を依頼する事について。副長はどう思う?」
モナイの表情が明らかに変わった。
困惑を通り越して驚いている。
「そのような依頼などするべきでない、と思うかい? 依頼に応じる者、依頼を即座に断れない者を、汚いと思うかい?」
「いっ、いえ……そのような事は……。」
「そうか、それは良かった。」
倫理観から対症療法への嫌悪感を持つようでなくて良かった。
でも表情を見るからに。一般的な事として頭では分かっているものの、実際に自分の恋人であるマサラー団長が、となれば感情的には別だろうな。珍しく返答の歯切れも悪いし。
不安に思う気持ちは、恋人のいない僕にも何となくは想像出来るよ。
「出来れば僕が明確な言葉で伝えるのは避けたいのだが……。ついさっきまで僕の部屋でマサラー団長と飲みながら、王城での話をしていてね。」
「はい………。」
「僕個人としては、構わないと考えている。治療が出来ないのだから仕方ないだろう。……ただ、一つ、理解しておくべき事がある。上下関係のある『依頼』であれば尚更、だ。対症療法となる行為をしても、そこに愛情は無い。愛情による、せ…っ、性行為とは全く違う。」
「………!」
「一般的に考えれば、だが。身体を重ねられるのだから嫌悪感は無いだろう。友愛の情や、親しみ、義理、忠義、ある程度の好意、同情……そうしたものも、あるかも知れない。何度も行為をしていれば、その内に愛情も沸くかも知れない。そう見えるようになるかも知れない。それでも実際は恋人同士ではないのだから、そこで行われるのは必要最小限のものになるはずだ。……なるべきだ。」
王子殿下への返答を、マサラー団長は「検討中だ」と言っていたから。もしかすると彼は悩みに悩んだ上で、忠義を優先して、王子殿下を抱くのかも知れない。
そう選択したとしても、その所為で二人に拗れて欲しくはない。もっと言えばヨーナ副長に悲しい思いや辛さを味わって欲しくはない。
こう見えて部下は可愛いのだ。日頃の接触が多い副長なら、尚更。
だからこそキリは。
もしナンディが「殿下の身体に触れるのは単なる仕事だから浮気じゃない」と説明しても、かなりの『言い訳』になるであろうから。
第三者である自分が。
飽くまでも忠義の為。人助け。そこに恋愛感情は無い。裏切っているのではない。……それを伝える為に雄弁に語るのだ。
ちなみに、キリとしては『依頼』の説明は終えたつもりでいる。
王子殿下と定期的に会う話。振動病の話。対症療法の話。これらを統合して考えれば自ずと、振動病の対症療法を依頼された、という結論に達するだろうから。患者が王子殿下だという事までは確信が持てなくとも、頼まれて誰かしらを抱く話なのだと。
そう予想を付けられるだろうと、キリは考えていた。
振動病を患った王子殿下の尻穴内に精液を注ぐ。と、ズバッと言う事はどうしても出来なかった。
王子殿下を抱ける自信が無いからでもあるが、単純にキリは性的な事を話すのが苦手だった。心の中では淫らな事を想像したり願ったりも出来るが、実際に声に出しては「セックス」と言う事すら恥ずかしいのだ。
最終的にはモナイとナンディで話し合って、二人ともが納得出来る結論を導き出すのだろう。
当事者であるナンディ本人が言うと言い訳にも聞こえかねないような事をモナイに伝えてやるのが、第三者である自分のすべき事だ。
そして恐らくは。事情を聞けば王子殿下に遠慮してしまいそうなモナイを、上官として、勇気付けてやる事も。
そう考えたキリは、視線をナンディからモナイへと移した。
神妙な面持ちのモナイと眼差しが絡む。
「ヨーナ副長は『振動病』をご存じかな?」
モナイがそれを患っているとは知らないキリだ。
王子殿下の話をする為の取っ掛かりとして軽く口に出したに過ぎない。
だからこそ、モナイが僅かに目を見開いたのも、急に脈絡も無く病名を出した意図が読めないからだろうと判断し。キリは大して気にしなかった。
「………はい。」
一方、現在進行形で振動病への対処をナンディに頼んでいるモナイだ。
ピンポイントでキリが発した病名を聞いて、にわかに嫌な予感が胸中を占める。
話し始める前にジッとナンディを見詰めた事も、その予感を後押しした。
この場に居なくても良さそうなのに、キリがナンディを連れて来ているという事実が更に拍車を掛ける。
むしろ、ここからが『本題』なのではなかろうか。
「現状では病を治療出来る方法が無く、症状を緩和させる為の対症療法しかない。という事も?」
「………はい。」
「症状を緩和させる為の、方法も?」
「………えぇ、もちろん。」
バイハル団長は、私とディーの事を知っているのでは……。
そうであればもっと早く、はっきりと言ってくれれば良いのに。
筋違いだと分かっていながら、モナイは恨めしく考えてしまう。
答えるモナイを、キリはさりげなく観察する。
尻穴の襞が震えるという症状を抑える為に精液を注入する。という事そのものに、少しでもモナイが嫌悪感を持つのかどうか。
観察したが……分からない。
モナイの表情が余りにも乏し過ぎる。いつにも増して表情筋が死んでいる。
余りにも分からなさ過ぎて、キリは直接的に質問する事にした。
これに対するモナイの返答によっては自分はナンディを全くサポートしてやれない。
申し訳ない気持ちを込めてもう一度、ナンディを一瞥してから。
「ヨーナ副長の考えを聞きたいのだが……。振動病を患っている者が、伴侶や恋人でもなく、プロでもない者に……例えば、同じ職場ではなくとも職務上の太い繋がりがあるような相手に、対症療法を依頼する事について。副長はどう思う?」
モナイの表情が明らかに変わった。
困惑を通り越して驚いている。
「そのような依頼などするべきでない、と思うかい? 依頼に応じる者、依頼を即座に断れない者を、汚いと思うかい?」
「いっ、いえ……そのような事は……。」
「そうか、それは良かった。」
倫理観から対症療法への嫌悪感を持つようでなくて良かった。
でも表情を見るからに。一般的な事として頭では分かっているものの、実際に自分の恋人であるマサラー団長が、となれば感情的には別だろうな。珍しく返答の歯切れも悪いし。
不安に思う気持ちは、恋人のいない僕にも何となくは想像出来るよ。
「出来れば僕が明確な言葉で伝えるのは避けたいのだが……。ついさっきまで僕の部屋でマサラー団長と飲みながら、王城での話をしていてね。」
「はい………。」
「僕個人としては、構わないと考えている。治療が出来ないのだから仕方ないだろう。……ただ、一つ、理解しておくべき事がある。上下関係のある『依頼』であれば尚更、だ。対症療法となる行為をしても、そこに愛情は無い。愛情による、せ…っ、性行為とは全く違う。」
「………!」
「一般的に考えれば、だが。身体を重ねられるのだから嫌悪感は無いだろう。友愛の情や、親しみ、義理、忠義、ある程度の好意、同情……そうしたものも、あるかも知れない。何度も行為をしていれば、その内に愛情も沸くかも知れない。そう見えるようになるかも知れない。それでも実際は恋人同士ではないのだから、そこで行われるのは必要最小限のものになるはずだ。……なるべきだ。」
王子殿下への返答を、マサラー団長は「検討中だ」と言っていたから。もしかすると彼は悩みに悩んだ上で、忠義を優先して、王子殿下を抱くのかも知れない。
そう選択したとしても、その所為で二人に拗れて欲しくはない。もっと言えばヨーナ副長に悲しい思いや辛さを味わって欲しくはない。
こう見えて部下は可愛いのだ。日頃の接触が多い副長なら、尚更。
だからこそキリは。
もしナンディが「殿下の身体に触れるのは単なる仕事だから浮気じゃない」と説明しても、かなりの『言い訳』になるであろうから。
第三者である自分が。
飽くまでも忠義の為。人助け。そこに恋愛感情は無い。裏切っているのではない。……それを伝える為に雄弁に語るのだ。
ちなみに、キリとしては『依頼』の説明は終えたつもりでいる。
王子殿下と定期的に会う話。振動病の話。対症療法の話。これらを統合して考えれば自ずと、振動病の対症療法を依頼された、という結論に達するだろうから。患者が王子殿下だという事までは確信が持てなくとも、頼まれて誰かしらを抱く話なのだと。
そう予想を付けられるだろうと、キリは考えていた。
振動病を患った王子殿下の尻穴内に精液を注ぐ。と、ズバッと言う事はどうしても出来なかった。
王子殿下を抱ける自信が無いからでもあるが、単純にキリは性的な事を話すのが苦手だった。心の中では淫らな事を想像したり願ったりも出来るが、実際に声に出しては「セックス」と言う事すら恥ずかしいのだ。
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