逆ざまぁされ要員な僕でもいつか平穏に暮らせますか?

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第二章 入学試験を受ける前まで戻って

50 動き出す

 


   ◇   ◇   ◇ 



期末テストが終わった翌日から2日間は、授業がお休みで。

アルファルファ様と初めて会って。何かとんでもない誤解をされてしまったような、あの会話から3日後。


休み明けの、授業が全て終わった後のホームルームが終わる頃になって。

クラス担任の先生が教室に、1人の少年を連れて来た。


学園の制服を着てない少年は、幼い印象の顔立ちをしてる。……どちらかと言えば童顔な僕が言うのもナンだけど。

ガラス面が細いタイプの眼鏡を掛けてて、濃い栗色の長髪は無造作に、うなじの辺りで一纏めに括ってあるだけ。

それでも明らかに貴族令息だと分かる、身なりの良い、賢くて気が強そうな少年だ。


もしかしたら途中で編入して来た新しい同級生かな、って。

一瞬、思ったんだけど……。



「セルゲイ・ランバルトです。自己紹介は割愛します。」


少年……ランバルト侯爵令息が話し出す声を聞いて。

僕が最初に感じた、幼いってイメージは間違いだと分かった。


何って言えばいいか……威圧感? って言うのもちょっと違ってる。

僕達がいるよりは少し床が高い位置にある教壇から、簡潔過ぎる自己紹介がとても堂々としてて。

愛想とか親しみとか、そんなものは要らないって。自信に満ち溢れた感じ。


あぁ、凄いな。

……って思うのと同時に。ちょっと怖い。


だってセルゲイ・ランバルト様は、宰相閣下のご子息なんだ。

これまでの人生での経験で、僕でもこの国の宰相がランバルト侯爵だと知ってる。

きっとジェニ様とリュエヌ様が話してた、宰相の次男……だと思う。


だけど、僕が彼を見るのは初めてだ。

こんなに存在感のある人を、今までの人生で知らなかったのは。

もしかしたら今回の人生での "特別な人" は、目の前にいるランバルト様なんじゃないか、って。

ジェニ様と出会った時と同じように、僕は怯えてしまう。



「本来なら新入生なので、皆さんと同級生になる予定でしたが……ちょっと事情が変わって、2年生クラスに入る事になりました。」

ランバルト様の言葉に、クラスメイト達は少しざわついた。

恐くて、不安で、考え込みそうになってた僕も、ちょっと不思議に思う。


……えっ? 同じクラスだから、挨拶しに来たんじゃないの?

違うクラスどころか、学年が違うなら、クラス教室があるフロアも違うのに。


「ところで、先生? ホームルームはもう終わりで……いいですよね?」

僕達の反応を気にする素振りもなく、ランバルト様は先生に確認する。

先生が頷くのを待ってから、改めて僕達の方を振り返った。


「では……今から名前を呼ぶ人には話があるので、時間を少し貰います。」


ざわっ、ざわざわ……。


教室の中が、色々な感情でざわめいたみたい。


突然の呼び出しに、凄く驚いてるクラスメイト達。

戸惑ってる人や、不快に思ってるような表情の人もいる。


一体、何なんだろう?

呼ばれたら、どうしよう……。


ドキドキしたけど、僕の名前が呼ばれることは無かった。

まず最初に呼ばれたのは伯爵令息。

その後も何人かの名前が呼ばれるけど、貴族令息ばっかりだ。



1人目、2人目で呼ばれた人は、とても不満そうだった。

だけど3人目、4人目の名前が呼ばれるのを聞いて。呼ばれた人の方を見て。何故かソワソワと、落ち着かない様子になりだす。

後から呼ばれた人達の様子はもっと、明らかに動揺してる感じ。

自分以外の、呼ばれた人達の顔をチラチラ見て。顔色も悪くなってる。


何だか凄く気になるけど、聞いてもいいのかな?

でもたぶん、教えてくれないよね。

呼ばれない僕は帰ってもいいのかって、それを聞いていいのかも分からない。



「クロード・ダンセル。……以上です。別室を用意してあるので、呼ばれた人は速やかに、ぼくと一緒に移動しましょう。荷物は各自で持参するように。」

不満や戸惑いに、恐れみたいな様子も混じって、教室内は妙な雰囲気。

ランバルト様だけが、そんなことはちっとも気にならないって態度だ。


そんな中で、最後に指名されたクロード様が、スッと片手を挙げる。


「スイマセン、話って……何ですかね? ここじゃ駄目です?」

子爵令息のクロード様は、敬意を払って敬語を使ってる。

だけど正面から、他の令息達が聞き難そうにしてることを尋ねた。


「何って、王城で起こった事についての話です。呼ばれた人の顔ぶれで予想は付くでしょう? 他にどんな話があるんです? もし、あるんなら、ぼくの用事が終わった後に話してもいいですよ。」

「いや~、ただの確認です。……じゃ、さっさと移動しますかっ。」

クロード様を見て、ランバルト様は少し不思議そうな顔をしてる。

どうしてそんなことを聞くのか理解できない、って感じで。


クロード様は軽く流して、移動する準備を始めた。

ランバルト様が気を悪くした感じじゃなくて良かった。



僕はこっそり心配になる。

あんまり、クロード様らしくない強気な態度だったから。


クロード様は何だかんだ、僕に忠告してくれたり、情報を教えてくれたり。実は何かと気を配ってくれる人なんだ。

今も……もしかしたら、単なる偶然かも知れないけど。

ランバルト様の、聞きたい話って。きっとジェニ様が起こした、って言われてるらしい、王城での事件についての話なんだろうなって。

そんな情報を僕に、聞かせてくれた。


今の遣り取りで何か、クロード様が咎められたりしませんように……。



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