逆ざまぁされ要員な僕でもいつか平穏に暮らせますか?

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第二章 入学試験を受ける前まで戻って

52 学園のパーティー前

 


   ◇   ◇   ◇ 



嵐のようにランバルト様がやって来てから、4日後の、朝のホームルーム。

教室には久しぶりにクラスメイト達の顔ぶれが揃ってた。



あの日、名前を呼ばれた令息達は、翌日から授業を休んでたんだ。

翌日だけお休みした人。その次の日も休んだ人。昨日まで来なかった人。

人によって期間は違うけど、休まなかったのはクロード様1人だけ。

休んだ人達がランバルト様とのお話でよっぽど疲れたのか、何かショックを受けるような話だったのか、それは僕には分からないけど。


意外とクロード様って、タフなのかも知れないね。

そう言えば……、ランバルト様に名前を呼ばれた人達の中で、子爵令息はクロード様しかいなかったなぁ。

クラスには子爵家のご子息が何人もいるのに。

王城でのパーティーに出席したのがクロード様だけ、なのかな。

もしかしてクロード様の家って、子爵家の中でもちょっと別格だったりする?




ホームルームが終わってすぐ、教室内はわいわいとした賑やかさ。

それ自体はいつものことだけど、今日は特に、皆がソワソワしてる。

だって今日は、午前中で授業が終わり。

そして午後からは、学園全体でのパーティーが開かれるから。

昨日まで休んでた人達が登校して来たのも、これがお目当てだ。


この学園で行われるパーティーは、年に4回ある。

12月、1月、4月、7月。

今回は入学してから初めてのパーティーだから、新入生は楽しみで仕方ない。


社交界でのパーティと、学園でのパーティーが大きく違うのは、ダンスホールでの振る舞いについて……だよね。

学園でのダンスは無礼講。身分に差があっても、初対面でも、誰でも誰にでもダンスを申し込んで構わない。


僕は隣国出身の新入生だから普通なら知らないはずだけど、この国では当たり前の常識みたいで。

これまでの人生でも、前もって僕に教えてくれた人は誰もいなかった。

何回も繰り返した人生の中で、自分の目で見て、尋ねて、覚えたんだ。


……あの頃はまるで、意地悪されてるみたいに感じてたけど。

今なら分かる。

昔の僕は、いつでも王子殿下が中心で。お喋りするのは王子殿下や、その周りにいる人ばっかりだった。

だから同じクラスなのに、お互いに相手のことを知らなくって。僕が話し掛けることも話し掛けられることも無かった、ただそれだけなんだ。



「パーティー、楽しみ。あ~ぁ、授業、早く終わんないかなぁ~。」

「ほんと、ほんと。午前中から休みにしてくれればいいのにさっ。」

「全くだ。着替える為に一旦、寮へ戻るのが面倒で仕方がないぞ。」

僕と近い席の同級生が、慣れた感じで椅子を寄せてお喋りを始める。

子爵令息に、裕福な豪商の息子に、男爵令息。

最初の授業の支度をしながら、僕もうんうんって頷いた。


「なんだかんだ言って結局、儀礼服で参加かぁ~。ユアは?」

「僕も儀礼服にしたよ。」

「あっ、俺もっ。」

「やっぱりそうなるよな。自分もだ。」

笑顔で答える僕に、同級生達は同意の表情。

学園での行事だから制服で……普段の授業で着るのとは別に用意する、儀礼服で参加するので構わない。って、今回の僕は教えて貰えたんだ。

それを知らない人生での僕は、パーティーに着て行く服が無いって。凄く焦って。


「社交界でもないのに、金なんか掛けられないっつ~のっ。……ねっ?」

「ウチは貧乏貴族だからさぁ、綺麗な服を買うにも限界あってなぁ~。」

「おやおや、子爵令息ともあろう者が、随分と弱気な発言じゃないか。」

ランバルト様に呼ばれなかった3人はいつもと変わらない様子。

あの日、呼ばれてた人達は、まだどこか笑顔もぎこちなく見えるけど。

今の僕だって、ちゃんと笑えてるかは自信が無い。


実は一昨日の夕方、凄く戸惑うことがあったんだ。

学生寮の、僕の部屋に贈り物が届いた。

とても豪華で綺麗なドレススーツ。

オーダーメイドのようにピッタリじゃなくても、ほぼ僕の体格に合ったサイズ。

送り主は……エドゥアルド王子殿下だった。


今までの僕だったらきっと、それ以前と同じように喜んで受け取ってたよね。

でも今回は丁寧に、丁寧にお断りして。受け取らなかった。


僕達はまだ出会ってないんだから。

リュエヌ様から僕の話を聞いてたみたいだけど、そんなの理由にならないよ。

嬉しく思うどころか、少し悲しい気持ちも感じたくらいだった。

僕に好意を持ってなくても、王子殿下はこうやって、勘違いさせるような優しさを見せられるんだな……って。

それとも……もう、リュエヌ様がいなくなった、から?

こんな風に考えちゃう僕って……嫌だな。嫌になっちゃう。



「あ、チャイムだぁ~。」

鐘の音が聞こえて、それぞれが自分の席に着く。

きちんと椅子に座り直しながら、僕の視線は何気なくクロード様に向いた。



一昨日。他の人に聞かれないよう、こっそり教えてくれた話を思い出す。


リュエヌ様が亡くなったこと。葬儀はもう終わった、って。

それから……ジェニ様がアルファルファ様の義弟を突き落とすのを見た、って証言する人が。ランバルト様と話した後は1人もいなくなった、って。

だけど、ジェニ様が学園に戻って来られるかどうかは、別な話なんだって。



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