せっかくBLゲームに転生したのにモブだったけど前向きに生きる!

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第三章 ~改めてゲームを見守ろうとしてから自分の名前を思い出すまで~

オレと出会っても仕方ないだろ

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「……ふぅ。なんか、ゴメンねぇ? 色々、気を遣わせちゃって。」

ホットミルクの入ったカップを両手に抱えて、ヒーローが……。


ヒーローが……!


オレの目の前にいる!




そもそもなんでこ~なってるか。
うん、オレが話し掛けたからなんだけどさ。

リッカとほぼ絡まないままで坂道を下りてくヒーローの後姿を見てたんだけど、なんか、歩き方が変な風に見えたんだ。
ヒーローはオレより頭半分くらい身長が高くて、スラッとしててスタイルがいいんだけど、なんかギクシャクした感じだった。
一応念の為って思って声掛けたら、さっき転んだ拍子に足を痛めちゃってた。

病院に行くのは嫌だって言うし、兵士の詰め所とか教会とかにも行きたくないって言うから。

だからってそのままほっとけない。これからイベントだってあるハズだろうし。

それで……あんまり遠くも無かったから、ヒーローに肩を貸して、家まで連れて来た。
オレんちじゃないけどな。ルサーの家だから。

家に薬箱があるのを知ってたから、ヒーローのケガの手当てをして。
何ももてなし無しってのもナンだから、ミルクを温めて出して。




……そして今、この状況ってワケ。




食卓で向かい合うオレとヒーロー。
いつもはルサーがいる席に、ヒーローが座ってる。


「まぁ、これもナンかの縁だろ。ケガしてるときは、誰かに頼った方がいい。」
「ありがと。すっかり頼っちゃった。」

なんか知らないけど、ヒーローがとってもフレンドリーだ。
一応オレ、ヒーローを助けた扱いになるから、かな。

だけどこういうのは、リッカか、他のネームドキャラ相手にしなきゃダメだろ。
そういや、ハーレムの進捗状況はどうなってんだ?

そうだ。助けたついでに、さり気なく……聞いてみよっかな。


「ところでさ。あの……誰かキミを迎えに来れるような、親しい人っていないか?」

そう、例えば、ハーレムに入れたいと思ってる人とか。


「親しい、人……?」
「教えてくれれば、オレがその人に知らせに行って、キミを迎えに来て貰えるぞ。一人で歩いて帰るのは、ちょっと大変だろ。」

ヒーローはその相手とイチャイチャしながら帰ればいい。
オレはそれをニヤニヤしながら見てればいい。
お互いにウィンウィンだな。

オレは自分が立てた完璧な作戦に、心の中で惜しみない賞賛を送ってた。



「ボクは……。ボクの…名は、フィロウ……。」

急に名乗られた! あーやっぱり、ヒーローと響きが似た名前だな!
どうしよう、オレも名乗るべき? 未だにオレ、名前分かんないけど?


「キミ……ボクの事、知らないのかな。ボクは、」

知ってるぞ! って言ったら気持ち悪がられるんだろな~。

ゲームじゃヒーローは、名も無き山間にある養育所で育てられて、ハーレムを築ける天守さまのシルシが両瞳に出たのを切っ掛けに、このノマルの町に来たんだよな。
正直もう日数的には、目ぼしいキャラと全部出会って、即勝ち狙うならあと数日でライバルキャラとの決着も付いてておかしくないんだけど。


「…期待外れなんだ……。迎え、なんか……。」
「もしかして。上手く行ってないのか?」

コックリと頭を縦に振るフィロウ。

どうりで、名乗り出した割に元気が無かったワケだ。
リッカとも上手く出会えて無さそうだったし。
最初で何か躓いて、それで落ち込んで、ドツボに嵌まっちゃった感じかな。
もしかして、チュートリアルって無かったのか?


「しょうが無いさ。初めてなんだから。……大きなハーレムの天守さまみたいには、最初からはやれないって。」
「……やっぱり、知ってるじゃないか、ボクの事。」

オレを見て、頬を膨らませるフィロウ。
ハーレムゲームの主人公っぽく、そういう子供っぽい表情になっても……はっきり言ってイケメンだ。

ぼんやりしたモブ顔のオレとは違う。
妬ましくはないけど、羨ましいぞ。

これで、向かい合ってるのがオレじゃなかったら、イベントシーン間違いナシなのになぁ。


「知ってる、っていうか……ぼんやり、薄っすらっていうか…」
「ナニソレ?」
「大丈夫だ。いよいよ無理になっても、最悪、二~三年くらい時間を潰しても、結局はどうにかなるから。」

オレの知ってるゲーム知識だと。
序盤でかなり操作ミスするか、敢えてネームドを全員無視して茨の道を歩んでも。
モブ妻を沢山入宮させて、ハーレムが大きくなれば、ネームドが勝手に寄って来るようになるんだ。

「二~三年って、随分と呑気だね。もう……他人事だと思って。」
「でも実際、それくらいの余裕はあるって。大丈夫、大丈夫。」

たぶんフィロウには、なんでオレがそんな風に言えるのか分かんないだろうけど。
慰めの言葉にでもなればいいな、って思った。

本当にイザってときは、アドバイスするからな。



「あ~ぁ、なぁんか馬鹿馬鹿しくなって来た。……これでも結構、悩んでたのに。」


ふっと微笑んだフィロウは、イベントシーンで見た一番の『イイ顔』だった。
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