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第三章 ~改めてゲームを見守ろうとしてから自分の名前を思い出すまで~

年下相手と●●●2 $ルサー$

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ここらにある養育所の出身じゃない奴で、最近この町に来た、元・兵士の若い男。
探し人の特徴はこんだけだ。

だがそれっぽっちの情報でも。定食屋の若旦那や兵士仲間のお陰で、三人の候補が見付かった。
何でもやってみるモンだな。




候補の一人目は、案外と近くにいた。
俺のちょい年下の同僚に、カシュって奴がいてな。ソイツのオトコだった。

「んっ、い~よぉ? ヴィルに言ってぇ、明日にでも見て貰おっかぁ~?」

アイツの記憶が戻るかも知れねぇって俺の話を、カシュは信じ、更に快諾した。
普通なら、タチの恋人を他のネコと関わらせたくねぇ、って思うだろうに。


俺もカシュも……いや、兵士連中は大概が……ネコだ。
人数比で圧倒的にネコが多いってのもあるが、そもそもタチは大事にされるからな。敢えて生命の危険が伴う兵士になんぞ、なる奴が少ねぇ。
いや、まず、いない。もしいたら……取り合いで大変な事になンのは間違いねぇだろうよ。


あっけらかんとした言葉通り、早速カシュは恋人ヴィルに頼んだらしい。

その翌朝。
俺を詰め所まで送り届けたアイツの姿を、恋人が確認したようだ。
結果は残念ながら「全く見覚えが無い」だったがな。
……カシュにはその内、何か奢ってやらねぇと。






候補の二人目は娼夫だった。
この町じゃ一番デカい娼館の新人タチ娼夫で、元・兵士で、リオって呼ばれてる若い男。

怪我による退役じゃなけりゃの話だが。
ビルメリオが兵士を辞めたのは……自分がタチ出来るって分かったから。の可能性もあるな。
もっと稼げる娼夫になった。ってのもアリだろよ。



娼館のカウンターで、リオを呼び出して貰うよう伝えると、受付は微妙な顔をした。

「リオが……何かしましたか?」

どうも誤解させたようだ。
今日はサックリ仕事を上がれたから、そのまま店に来たんだが……兵士っぽ過ぎたか。

「いや、ちょっと話をしたいだけだ。……あぁもちろん料金は払う。」
「そうでしたか。……そちらでお待ちください。」

手続きを済ませ。言われた通り、受付から離れた壁際で待つ。

ただ待ってる時間ってのは、意外に長く感じるモンだな。
その間に客が来て、娼夫を買ったり予約したり。しながら、壁際に立つ俺をチラチラ気にしてんのが分かる。
これから抱いて貰おうって時に、いかにも兵士っぽく見える男が、見張るように突っ立ってりゃ気になるだろ。

かく言う俺の方も……なかなかに居心地が悪くて仕方がねぇな。



「今晩は、リオです。ご指名有難う……でも無いのかな?」
「……ルサー、だ。時間を取らせて済まないな。」

声を掛けて来たのは確かに若い男だった。
本当にタチ娼夫なのかと思うような美人だが、随分と笑顔が硬い。

「話をするだけなら、酒場のボックス席でもいい?」
「あぁ。それでいい。」

口元に微笑を貼り付けたまま。娼館に併設された酒場に、リオは黙って俺を案内する。
俺達の後ろから、恐らく店員らしい男が付いて来た。



俺とリオは、テーブルを挟んで向かい合う。
付いて来た男は同席せず、ちょっと離れた一人席に着いた。

席に着くなり、リオが口を開く。

「それで……話って、何?」
「ちょっと聞きたいんだが……お前さん、この辺りの養育所出身じゃないそうだな?」
「そうだけど。……それが?」
「あぁいや、お前さんがどうってんじゃなくてな。」

俺の方を見た瞳に、僅かにだが警戒の色が出た。
何か厄介事にでも巻き込まれるんじゃねぇかって、怪しんだのかも知れねぇな。

無意識の内に、俺の聞き方は兵士の尋問臭い感じになってたんだろう。
テーブル席にいる男も、こっちに注意を向けてるようだ。


「自分の名前が分からねぇ男がいるんだが……。」
「記憶が無いって事か。……それで?」

ちょっと考えたが、一部を隠して話す事にした。


山賊に襲われた所為で自分の名前を忘れた男がいる事。
他にも色々と名前を忘れてる所為で、元いた場所に帰れねぇでいる事。
俺がソイツを預かってる事。
ソイツの記憶にある男が、元・兵士で、最近この町に来たんじゃないかと思って探してる事。


「お前さんが、ソイツやビルメリオと知り合いかどうかは分からねぇ。ただ、もし知り合いだったら、ソイツに名前を教えてやって欲しい。そうじゃなくても、何かの拍子で思い出すかも知れねぇから……ソイツが訪ねて来たら、出来れば会ってやって欲しいんだが……。」

お前がビルメリオなのか、とは敢えて聞かなかった。
目の前にいるリオがビルメリオ本人だとしても、何らかの事情で名前を隠してるかも知れねぇからな。

特に根拠は無ぇ。
ただ、テーブル席から監視してるみてぇな男が視界に入った時に、なんとなくそう思っただけだ。


「ソイツって……。」
「ぅん?」
「……何でもない。まぁ一応、考えとく。」
「悪いな。ちゃんと料金は払う。」

仮にも娼夫に時間を取らせるんだからよ。そこはハッキリさせておかねぇとな。

その方が安心だろうと思ったんだが。
それに対するリオの反応は、割と興味無さそうに頷いただけだった。






三人目も娼夫だったが、その日は休んでるとかで会えなかった。
流石に家を聞き出してまで押し掛ける気は無ぇ。

いい加減、もう夜だしよ。




二軒目の娼館を出て。
今日はそろそろ帰ろうかと思った時だ。



「ルサーっ!」


こんな所で聞こえるハズの無ぇ声が、俺の名前を呼んだ。


まさかと思って振り返ったが……アイツだった。
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