せっかくBLゲームに転生したのにモブだったけど前向きに生きる!

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第五章 ~ゲームに無かった展開だから遠慮しないで歯向かう~

読んでくれって頼んだら厳しい家庭教師が爆誕した

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※「≪台詞≫」は旧帝国語での会話です。




フィロウと二人で、馬車でビリーを迎えに行った。
流石は馬車。メチャ早い。

十五分かそこらでビリーの家に着いた。



気を遣ったフィロウが「馬車で待ってる」って言うから、行くのはオレ一人。
小洒落たアパートメントの三階、玄関の呼出ベルを鳴らした。

もしかしたら居なかったりして、って思いながらノンビリ待ってたら。
何の気配もしなかったのに、急に玄関扉が開いた。


「……どう、したの?」

珍しく自宅で寛ぐパリピ、みたいな風貌のビリーが出て来た。
袖が無くて首元が大きく開いた薄手のシャツ。
ゴールドのダブルチェーンは前に見たのと同じ物っぽい。

……まぁそれは置いといて。


「ビリーって確か、旧帝国語は得意だよな?」
「うん……? ……一通り、なら。専門書、は……ちょっと。」
「ちなみに今の台詞を旧帝国語で?」
「……≪一通りの会話と読み書きは出来ると思ってる。専門用語が出て来る専門書だったら、完全に読めるかは微妙。それでもちょっとは読めると思う。≫」

ぐはっ。サラッと言われたぞ。
聞いてるのがオレだから、ちょっとゆっくりめで喋ってくれたけど。それでもオレはどうにかこうにか聞き取れたレベルだ。

ところで旧帝国語になった途端、ビリーの口数が増えたように思うかも知れないけど。実際にビリーが発音した台詞の長さは、この六割くらいしか無い。
同じ台詞を言ったとしたら、共通語より旧帝国語の方がかなり短いんだよ。
その分、単語の置き場所の前後や、語尾の伸ばし方、跳ね方、強弱とかに注意しなきゃいけないんだけどさ。全く違う感じの文章になっちゃうから。


「……それ、で?」
「ビリーに読んで欲しい本があるんだ。」
「ぅん、……いいよ。どれ? あ……、入って?」

家の中に招き入れてくれようとしたビリーを止めて説明する。

本がフィロウの家にあること。
ハーレム法の条解本だってこと。
フィロウと二人で読んだけど自信が無いこと。
ビリーに読んで欲しくて馬車で迎えに来たこと。


聞き終わったビリーは何故か不思議そうな顔をする。

オレはともかく、フィロウも旧帝国語が苦手、ってのが腑に落ちないんだろうか?
それとも、もしかしたら。フィロウって誰? ……って感じか?
途中でオレが帰った後、カシュも含めて三人でデザート食べたんじゃなかったっけ? そこでの会話の内容は、カシュから聞いた限りだと凄く微妙な感じだけどさ。
名前、言わなかったっけ? その辺りは忘れちゃったな。


「え~と、フィロウは…」
「…知ってる……。」
「そうか、それならいいんだけど。……でさ、ビリー。今からいいかな?」
「……。」

無言で玄関から出たビリーは、建物の共用廊下の窓から外を覗いた。
フィロウが中で待ってるハズの馬車が見える。

「……行って、いい……かな?」
「あぁ、フィロウもいいってさ。」
「……そう。……支度して、来る。」


玄関に入ったビリーはオレの方に振り向いて。
養育所にいた頃の、模擬戦闘前のようなゾクッてする笑顔になった。

「……≪もう一度会いたいって思ってた所だから、ちょうど良かった。わざわざ招いてくれるって言うなら、俺が尻尾を巻いて逃げる理由は無い。≫」


一気に長文過ぎて殆ど聞き取れなかったぞ。
もう一度会う、とか。招かれる、くらいしか分かんなかった。




   *   *   *




玄関で待つこと数分。着替えたビリーが出て来た。
ツルツル手触りのブラウスに、ボタンが無いタイプのゆったりした前開き上着を羽織って。髪は耳から上を縛るハーフアップで纏めてる。

「……お待たせ。」
「ビリー、その服可愛いな。」
「っあ……あり、がと……。」

小さく笑顔を浮かべるビリー。
懐かしさもあって、オレもちょっと笑った。




フィロウは馬車の外で待ってた。


「フィロウ、お待たせっ。」

こっちを振り向いて微笑む顔はビックリするくらい格好良い。
まさに高貴な人って感じの、堂々とした微笑み。
恋愛ゲームに居たら、二次創作で絶対『腹黒』とか『ヤンデレ』とかに改変されるやつだ。
フィロウは普段から顔面が王子様だから、格好良いのは当たり前なんだけど。メッチャ気合が入ってる感じがするのはオレの気の所為かな。

……なんだろう、ビリーがいるからか? オレのライバルになるのか?


一方、ビリーは。って思って見たら。

そこには、チャラ系な王子様が、メッチャ凛々しい顔で立ってた。
微笑手前みたいな感じで、実に涼しい表情でフィロウを見てる。
恋愛ゲームに絶対いる、イベントを進めたら真剣な表情とか見せて来るキャラだ。
実は凛々しい系統の顔なんだなって、再会した店でも思ってたけど。ジ~ッと窺うような視線って、なんかキメ顔みたいだな。


……なんだろう。二人が見つめ合ってるの、なんか寂しいぞ。



「≪旧帝国語の長文はあまり得意じゃないって聞いたけど、会話は……聞き取りと発音はどれくらい出来る?≫」

合流後、ビリーの第一声が旧帝国語。
虚を突かれてポカーンって顔になるフィロウ。


ビリーはその表情を見て、もう一度、同じ言葉を繰り返す。


「えと……ぃ、今のはどうにか…」

共通語で返事したフィロウに、ビリーは首を振る。
旧帝国語で言い返せ、ってワケだ。


フィロウが助けを求めるようにオレを見た。
オレが力強く頷いて見せたら、フィロウは裏切り者の出現に驚愕した顔になる。

「ぇ、嘘ぉ……。」

その反応にも首を振るビリー。
観念したフィロウがボソッと喋った。

「≪聞いたのは沢山。微かに話す。≫」

オレもとやかく言えないけど。フィロウの会話、微妙だなぁ。
たぶん「大体は」って言いたかったんだろな。


「≪発音はかなり心許ないけど、聞き取りはそれなり、か。……よし、これからの説明は旧帝国語を主体にして、必要に応じて共通語で補足する。≫」
「 「 はぁっ? 」 」
「≪条文と比べて、条解部分は比較的簡単に書かれてるはず。その読み取りに自信が無いって事は、旧帝国語の基本部分が身に付いてないって証拠。良い機会だから学び直したらいい。≫」
「 「 えぇっ? 」 」

オレとフィロウの声が揃った。驚き過ぎて裏返るかと思った。
フィロウが「なんでっ?」って目でオレを見るけど、オレも聞きたい。

なんで旧帝国語を『勉強する』流れになってるんだ?


「≪短時間だけどみっちり教えてあげる。≫」

ビリーはまた、模擬戦闘前のような笑顔になる。
敵前逃亡は出来なさそうだ。
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