せっかくBLゲームに転生したのにモブだったけど前向きに生きる!

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第五章 ~ゲームに無かった展開だから遠慮しないで歯向かう~

せっかく用意してくれた媚薬を食べる

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瞳にある天守のシルシや、今後のハーレム作りをどうしたいのか。
フィロウの考えを確認しときたかったんだ。

もしもフィロウに、天守になる気が無いなら。ハーレムを作る気が無いなら。
オレが一歩踏み出してもいいんじゃないか。


「オレは、フィロウがずっと気になってた。」
「……えっ?」

ビックリし過ぎたフィロウ。
何度か瞬きした瞳から水滴がポロッと落ちたけど、目蓋の中に溜まってた分が零れ出ただけっぽい。もう涙は止まってるみたいだ。

「そっ、そんな……嘘…」
「初めて会った日とか、オレはちゃんと覚えてるんだぞ? フィロウはすぐに居なくなっちゃったけど。」
「だ……だって、そんな……。ちっとも、そんな感じじゃなかったじゃない。」

フィロウは不安気味な表情だ。
やっぱり急には信用出来ないんだろう。
そう感じるのは、これまでのオレの態度が原因なんだし、フィロウが納得行くまでちゃんと話すツモリだ。
オレが『ちゃんと』話せるかどうかは微妙に自信が無いけどな。

「フィロウがハーレムを作るなら、誰かと出会ったりするのを邪魔したくなかったんだ。巧く行かないなりに頑張ってるフィロウを応援するツモリでいた。」
「え、……え、そうな、の……?」
「これでも一応、遠慮してたんだ。本当だぞ? だけど……フィロウのこと、格好良いなって思ったし、また会いたいとも思ってた。」


オレはフィロウを、ゲームの主人公だと思ってたから。主人公がネームドキャラと出会ったり交流するのを、邪魔する気は無かった。モブな自分が邪魔出来ない、とも思ってた。
だけど、フィロウと出会ってから暫くの間は。
どうやってモブ妻にして貰おうか。オレはそれを考えてたんだぞ。
何ならノマルの町にどうにか滞在しようと思ったのだって、フィロウを見掛けたからだ。

……まぁ、ゲーム云々の話はしないけどな。



「そんなの全然、分かんなかったよ。イグゥの事、結構……見てたツモリなのに。」
「じゃあ、お互い、上手く隠したもんだな?」

フィロウを揶揄うように、ニヤリと笑って見せた。
青白かったフィロウの顔色にちょっとずつ赤みが出て来る。
乾く唇を舐めて。
何か、言う台詞を考えてる。


「フィロウがハーレムを作らないなら、オレは遠慮しなくていいか? ……フィロウが好きだ。」
「そんな……っ、……嘘。」
「嘘じゃない。フィロウが好きだぞ。……手を出してもいい?」
「ぁ……あぅ……。」

フィロウの瞳がオロオロしてる。
だけど瞳孔に、薄っすらとシルシが浮かんで来た。

「お互い、シルシを持つ者同士だけど。オレと、そういう仲になってくれ。」
「でも……本当に? いいの?」
「天守同士が深い仲になっても、法律上は問題無いぞ?」
「違っ、そうじゃなくて……。あ、いや……それも、あるけど。」

ふるふる。
フィロウは首を振って続ける。

「イグゥに。あんな事、したボクで……いいの?」
「いい。さっきも言ったけど、怒ってないぞ?」
「シルシ……あるのに?」
「あぁ、構わない。」

フィロウは何とも言えない微妙な表情になる。
どうやったって、気になる事柄が完全に消えないんだ。


それは仕方ないよな。
法律上は問題無くても、社会通念上の問題ってのは重たいもんだ。

でも、それが完全に消えるまで紳士的に待つ気は、オレには無い。


「まぁ確かに……オレもフィロウも、シルシがある。オレ達が深い仲になるのを良く思わない……ハッキリ言えば、罵倒や非難して来る人は、たぶんいる。」
「……うん。」
「非難される謂われは無い、って思うけど、非難される要素はあるもんな。」

握ってたフィロウの手をゆっくり離した。
行き場の無い感じで、フィロウは自分の手をグーにして。太腿に置いた。

「それにオレは、ハーレムを作ろうと思ってる。つまり、フィロウ以外にも妻がいる、って話で…」
「一緒に住んでる人、いるもんね?」
「あぁ、いや。その人以外にも。」

そっと脳内で数えてみる。
ルサーはもちろん。まだ説明してないけど、リオ、リッカ。承諾を得たユーグ。それからビリーも。


「オレとくっ付いたら、フィロウも嫌な言葉を聞くかも知れない。それに、天守になれば何人もの妻が自分だけを愛してくれるけど。妻になったらそうも行かない。」

さっき離したばかりの手を、フィロウの目の前に差し出した。
フィロウに選んで欲しいから、離しといたんだ。


「オレは、こんなのだけど。それでも良かったら、オレの妻になってくれ。」

その手をジッと見詰めるフィロウ。
固唾を呑んで見守るオレ。


やがてフィロウは。


長い指先を、ちょこんって。
オレの掌の上に乗せた。


「ぁの……よろしく?」
「クスッ、……なんで疑問形なんだよ?」

ぎこちない返事が可愛くて、つい笑っちゃったぞ。



フィロウの背後。
テーブルに乗ったままのケーキが見える。

事故と言えば事故だし……ある意味、結果オーライだったな。


「フィロウ、明日の予定は? 朝早い?」
「ぅううん? 別に何も。」
「それは良かった。……じゃあ、ちょっと食べても?」

小首を傾げるフィロウの横を過ぎるように、テーブルへと手を伸ばして。
行儀悪いけど、ケーキを指で摘まんだ。手掴みだ。
口に入れて噛んでみたら、燻したような甘さが舌の上から咥内全体に広がった。


フィロウが目を丸くして慌てる。

「イグゥ、大丈夫なのっ?」
「一口二口なら問題無さそうだな。」

即効性なのかどうかは知らないけど。

なんとなく口角が上がってるっぽいのが自分でも分かる。
今のオレ、きっと凄いニヤけてるに違いない。


「そうじゃなくて、なんで食べちゃったの?」
「せっかくフィロウが用意してくれたから、だな。……ダメだったか?」
「……? ……っ!」

意味を分かってくれたらしい。

フィロウの頬が真っ赤に染まって。
黒い瞳に、シルシの紋様が鮮やかに輝いた。
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