せっかくBLゲームに転生したのにモブだったけど前向きに生きる!

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第五章 ~ゲームに無かった展開だから遠慮しないで歯向かう~

誰か一緒にオレの長所を探してくれ

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脱衣所でパパッと全裸になって素早く浴室に入った。
あんまり時間が無いからお風呂には浸かれない。シャワーだけだ。
作業の流れとしては、上から順に。頭を洗う。身体を洗う。後はシャワー上がりに風邪をひかないよう、全身にお湯を浴びれば終了。
何にも考えなくても出来る作業だ。

だからだと思うんだけど。

泡立てたシャンプーで髪をワシャワシャしながら、オレは。


忘れるハズの夢の内容について考えちゃってた。




あの夢にはオレの記憶と違う情報が幾つかあった。
日本人ゲーマーだった頃の記憶を全部覚えてるワケでもないし、そもそも夢に整合性を求めるのもナンセンスなんだろうけどさ。


記憶にある限りじゃ、相手が妻でも、まだ妻候補でも。デートをすっぽかしてメッセージが届いた、なんて覚えは無い。
そこまで親切設計なシステムじゃなかったと思うし。どうせなら約束を破る前に、例えば朝とかに「今日は約束があります」ってメッセージが届くシステムにしてくれれば良かった、って思うぞ。

あと、妻から手紙が届いた記憶も無い。
そんなシステムだったら、もっと大勢の妻達からガンガン、不平不満やお強請りが寄せられてるハズだ。

いやいや、待ってくれ。
根本的なトコだけど、なんで手紙がウェネットからなんだ?
あんなに作業感満載になってたんだから、もう何年も経過してるんだろ? なんでウェネットがまだ生きてるんだ? それとも一~二年で、あの作業感なのか?



……マズいぞ。
なんだか無性に腹が立って来た。


「まぁ……い~や。……そうだ、顔も洗わないと。」

自分の頬っぺたと目の下がガビガビになってたのを忘れてた。
石鹸をゴリゴリ撫でながら鏡越しに自分の顔を見る。
目が赤くなってるのは自分でもビックリしたけど、鏡に映ったのは、いつも通りのモブ顔なオレだ。
特に格好良いワケでもない自分の顔を見て、妙に安心した。


……ほら、オレだ。今世のオレは、イグザで……ウェネットじゃ、ない。
体格が多少良いだけのモブ顔なオレには、切ない思い出なんか無いんだから。


ホッとしてる。
だけどそれと同時に、実はちょっと悔しい。

今のオレは日本人ゲーマーじゃない。
ゲームをしてた記憶は蘇ったけど、あの頃の容姿とか……個人情報的な部分はすっかり記憶に無かった。って言うか、思い出したけど気を向けなかった、って感じだ。
でもさっきの夢で、真っ暗画面のモニターに、日本人の顔が反射して映ってて。
あの顔を思い出したら。
ゲームを思い出したオレが自分を『モブ』って表現したのもシックリ来た。


メチャメチャ格好良かったんだよ、日本人時代のオレ。……オレじゃないけど。

顔面の造形は男らしく整ってて、でも粗野じゃなくて、頭も良さそうな……なんて言うか、ちょうどいいハンサムって感じで。
身長も今のオレよりちょっと高かった。百九十センチ超えてたぞ。当たり前のように、太っても痩せてもいない、ちゃんと鍛えて絞った身体だったし。
あの容姿をこの世界で完璧に再現したら、間違いなく『格好良い』分類に入る。
あ~、色々思い出して来た。
職業も割と、エリート系だった。便利って理由で駅直結のホテルに住んでた。



「す、ぺっくが……、に、日本人ゲーマーのスペックが、おかしい……っ!」

鏡の向こうで、泡だらけのモブ顔が凄いショックを受けてる。
にわかにオロオロしだす。


ど、どど、どうしよう。
今まではオレ、そんなに深刻な意味合いじゃなく「オレはモブ」、「モブ顔」って思ってたけど。これは本当に、もっと、正真正銘の『ド真ん中なモブ』じゃないか。自分で言ってて意味が分かんないぞ。
現状のイグザに出来ること……炊事、洗濯、掃除……は日本人にも出来ることだ。
何か一つでも。オレに。
天守として自信になるような、好かれる理由として納得出来る、何か、長所は。


急に湧き上がって来た、この焦り。
ウェネットのときの比じゃない。


「きゅっ、旧帝国語の会話と読み書きが出来る…」

日本人も外国語イケたな。
仕事で海外に長期滞在してたぞ。


「本を読むのが早い…」

速読は日本人時代からの特技だ。
むしろ今のオレは、その恩恵に与ってる立場。


「そっ……そこそこ、明るいのが…」

初めてルサーにアピールした、オレの地味な長所。
今この瞬間は、それも微妙な感じだ。


「……日本人は友達少ないじゃん。腐男子仲間はいるけど。」

イグザの方が友達少ないだろ。幼馴染みはいるけど。


「ああぁ~~、もおぉっ! ヒトの短所を挙げるとか、酷いな、オレっ!」

ぶばしゃあッ!

自分の長所を挙げようとしてたのに悪い部分を見付けちゃう感じで。
シャワーヘッドを顔面に向け、勢い良くお湯を噴射した。


ちょっと落ち着けオレっ。
仕方ない、探しても大して見付からなかったんだから、もう仕方ないんだ。
これと言って特筆すべき長所が無かったとしても、そんなオレでも「好きだ」って言ってくれる人がいるんだから、それでいいじゃないか。


「ルサーはオレのどこが……。……ん? あれ?」

無意識で、ポロッて言葉が出て。
オレは気付いた。
もう今のオレには自分の長所が分かんない。
だけどルサーはオレが好きだから、何かしら長所を見付けてくれるんじゃないか。


「帰って来たらルサーに聞いてみよう、うん。」


単純なオレの機嫌はあっという間に直ってた。
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