せっかくBLゲームに転生したのにモブだったけど前向きに生きる!

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第五章 ~ゲームに無かった展開だから遠慮しないで歯向かう~

もう忘れてもいいじゃない・2 $リオ$

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ノックした誰かは部屋に入って来ない。
無言でドアの向こう側にいる。


だ、誰だ……?
病室のドアに鍵なんか付いてない。
看護師さんならノックした後すぐ、何か声を掛けながら入って来るだろ。
今朝もそうだった。



コンコン、コンっ。


また、ノック。

どうしよう。
ただ扉を叩くだけの音が、ワケも無く怖い。
返事が出来ない。


どうするか決められないまま、震える足を床に下ろそうとした時。
ドア越しに声が聞こえた。

「リオ……?」

ドキンって、心臓から音がしたみたい。
ずっと頭の中にあった、あの声が聞こえるなんて。


「寝てる、のか……?」

気の所為じゃない、その声に引き摺られたみたいに。
おれは慌ててベッドから下りた。飛び降りるような勢いで。
ウッカリして思いっ切り床を踏みしめちゃって、足の痛さでその場に蹲る。
急いでドアを開けなきゃ、イグゥが帰っちゃうかも知れないのに。


「リオ? 大丈夫か? ぇと、オレ……イグザだけど、開けていいか?」

どうにか返事した瞬間、開いたドア。
立ち上がろうとジタバタしてるおれを見て、イグゥは駆け寄って来てくれた。


それだけで嬉しくなるなんて、おれってやっぱりチョロいな。
何日か前に来てくれたばっかりなのに、また来てくれたんだ。



「だっ、抱き上げるなら、こ…声ぐらい掛けろよ。ビックリするだろ……もう。」
「ゴメン、ゴメン。抱き上げるぞ。」
「もう遅いっての。」

舞い上がるぐらい嬉しかったのに、おれの反応はちっとも可愛くなかった。

だって恥ずかしいしっ。変な声とか出ちゃうトコだった……半分出ちゃったしっ。
あぁそれに、油断してて髪型も纏めてないし、来てるのも入院着だし。
やだな、急に色々気になって来ちゃうだろ。
汗とか匂いとか、大丈夫だったかな……?


「また来てくれたんだね、イグゥ。ありがと。」

胸がドキドキするのを抑えたくて頑張って『いつもの感じ』で喋った。
好きって気持ちを受け入れてくれたイグゥと、初めて二人きりになるって状況に、少しでも慣れたくて。
イグゥが「大事な話がある」って言うから、ちゃんと聞くツモリで、おれなりに気を引き締めた。



だけどさ……。


大事な話が『ハーレム』だなんて……全然……思ってもみなかった。



イグゥの身体に天守のシルシがあるって聞いた瞬間、おれは取り乱した。
みっともない声を上げて驚いて。
おれはちょっと呆然として、それでも口は勝手にイグゥと話してた。


凄く丁寧にイグゥが説明してくれる。
段々分かって来た。
天守のシルシが見付かったイグゥがハーレムを作るって事。
おれを妻にしたいって、イグゥが思ってくれてる事。
タチでも関係無くハーレムの妻になれるって事。

その話をおれ、どんな顔して聞いたらいいかも分からなくなってた。
喋らなくなったおれを、イグゥが気遣ってくれる。
おれにハーレムに入って欲しいけど、踏ん切りが付かないならしばらく『恋人』で過ごしてもいい、って。


普通に考えたらおれが嫌がるワケないんだ。
好きな人が天守で、自分の妻になって欲しいって言ってるんだぞ。
現におれ、嫌じゃない。ホントだってば。


なのに答えられない……イグゥの言葉に頷けない。


頭がボンヤリしてるみたい。
……んん? ……あぁ、違うな、これ……思い出さないようにしてるんだ。
身体や心が。あの痛みは二度とご免だって、麻痺してる。そんな感じ。

だから、せっかくイグゥからプロポーズみたいな言葉を貰ったのに。
全然おれの中に染み込んで来ない。


「…………考え、させて。」

気付いたらそう言ってた。
俯いた視界に入るベッドがシンプルで助かった。これなら絶対に、宮殿の豪華なベッドとは間違えないから。




イグゥの顔さえ見れないおれに、イグゥは凄く優しかった。
すぐに返事が出来なかった事を許してくれたし。凄く穏やかに、明るめに、慰めてくれる。
実はガッカリしてるって気持ちも正直に伝えてくれた上で、「返事は今日じゃなくていい」って言ってくれた。
今はハーレムの事を考えなくてもいいって思ったら、おれもちょっと気持ちが軽くなって来て。二人で手を繋いで、他の妻の話とかもした。
イグゥは妻にした人を愛してくれる。そう分かってホッとしたりも、したのに。

ハーレム宮殿の話になって。
宮殿に住む未来を想像して。


おれはゾッとした。

過去にあった事を思い出して、じゃない。
おれがイグゥの妻になって、宮殿に住むような未来が……無いって事に気付いて。



おれが隠してる事。言えない事。それを考えたら。
妻になんかなれっこない。
その前に嫌いになるだろ。

言えない……。


知られるのが、怖い……。
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