せっかくBLゲームに転生したのにモブだったけど前向きに生きる!

左側

文字の大きさ
285 / 364
第五章 ~ゲームに無かった展開だから遠慮しないで歯向かう~

もう忘れてもいいじゃない・3 $リオ$

しおりを挟む
 

   *   *   *



ベッドの上でおれは一人、また膝を抱えてた。

もう何回この部屋で、この体勢になったか数え切れない。
腕にも肩にも背中にも、身体の色んなトコに残ってる。
抱き締めてくれたイグゥの熱さ、腕の強さ。
言ってくれた言葉だって。


―――― 「どんなに話してもリオの中にある『何か』が邪魔するんじゃないか? なぁリオ……何が心配なんだ? 何が怖いんだ?」


「イグゥ……。」


ずっとイグゥの腕の中にいたかったのに。
イグゥはおれの心にある不安や怯えを、分かってくれようとしたのに。

イグゥが居なくなったのは、おれの弱さと狡さの所為。
自分が汚れてるのを知られたくなくて黙ってる。知った後のイグゥがどうするか、信じきれない弱さ。
このまま黙ってればいい。嫌がってればイグゥは無理矢理聞き出したりしないって、そう考えてる狡さ。

絶対おれを好きになって貰う、とか。
イグゥがいいなって思える男に成長する、とか。
そんな発言してた強気なおれは、どこに行っちゃったんだろう?


―――― 「リオ、オレのこと好きだろ?」


「好き、……イグゥっ……。」

それは本当。ホント、だから……。


好きなイグゥに嘘は吐けない。だからおれは口をつぐんだ。
何度も「何を言っても大丈夫だ」って、イグゥは言ってたのに。
涙が止まらなくて、しゃくり上げるばっかりで。それにやっぱり怖くて「言えない」を繰り返す、駄々を捏ねるだけのおれ。
そうやってる内に心の中で、勝手に自分を追い詰めた。


森の奥の、崖っぷちにある田舎の村でチヤホヤされてたぐらいで、調子に乗って王都に出て来て。
全く知らない男に声掛けられて、何とも思ってない男のハーレムに入ろうとして。
結果はただ身体を汚した……何人もの男に汚された証拠を身体に付けられただけで。
それまで関わり合いの無かった妻を抱かされて、タチだって確定して。
挙句の果てには結構な額の借金持ちになって。

兵士になって大勢のネコから無理矢理、身体を繋がされた事。
飲食店で接客してても客や同僚に身体を触られてた事。
タチ娼夫としてもう何人もの相手と寝てる事。

自分もタチなクセして、いかにもなタチが怖い事……。


こんなの、イグゥに話せない。言える事なんか何も無い。
秘密だらけの自分が、凄く汚いものに思えた。
妻にして貰うならどれも内緒になんかしちゃダメな事なのに。
どれ一つ言えないおれが妻なんて……無理、じゃん。



「っふ……ぅ、ひック……。」

最悪。自分が悪いのに泣く、とか。
イグゥがいないのは、おれの所為なのに。
いつまでもグズグズして取り乱すから、イグゥはおれを落ち着かせる為に病室を出たのに。
おれは寂しくて、イグゥはもう来ないんじゃないかって不安で、堪らなかった。




   *   *   *




昼食の後も、おれは相変わらず膝を抱えてる。
せっかくのグレードの高い食事なのに、どんなだったか覚えてない。
泣いて赤くなった目は、看護師さんが冷たいタオルを渡してくれたりして、どうにかなった。
本格的に泣き散らかす前に看護師さんが昼食を運んで来たから、みっともなく腫らさなくて済んだトコ。


もう泣いてないけど、後悔してる。
なんでイグゥに「一人にして」なんて言っちゃったんだろう。
一人で居たってちっとも落ち着かない。

言えば良かった? 何を? どこまで? どう言えばいい? 言わなきゃダメ? 言えば……ツラくなくなる?
そんな風にグルグル考えて、ワケ分かんなくなって。

いっそ全部、ぶちまけちゃえば? 曝け出して、捨てて貰って、何も無かった事にして、知り合う前に戻れば……もう何も怖がる必要無い。店も辞めたし。もうちょっと傷が治ったらいっそ町を出れば?
そんな風にも思うのに、きっとおれは出来ない。




コン、コンコン。


「……どうぞ?」

たぶん看護師さん。タオルを回収しに来たんだろう。
ノックの音にそう思ったおれは、簡単に返事した。


でも、ドアを開けたのは。


「イグゥ……、どうして…」
「もう来ないなんて言ってないぞ?」
「……イグゥっ!」

もう来ないんじゃないかって思ってたイグゥだった。
手を伸ばすおれに駆け寄ったイグゥに抱き締められる。おれも抱き付く。
自分が追い出したクセにとか、気まずいとか、そんなのもう考えられなかった。


「ご免な、イグゥ……。」

謝る事が多過ぎてどれを謝ってるのか、自分でも分からないけど。
きっと全部だから。本当にご免。



「おれの事、怒ってないのか? ……おれ、何にも言わないで。」
「怒ってないぞ。話しては欲しい、けど……。」

おれが一方的に悪いのに。
優しく髪を撫でる、その手が気持ち良くて。
あんな酷い態度を取ったおれなのに、それでもイグゥは見放さなくて。
こんなに愛してくれてるんだから…

「なぁ、ちょっと……聞いてもいい?」

イグゥの望みを叶えたいって思った。話してあげたい、って。
だからもう一度、ハーレムの事を聞いた。
おれの事を話す切っ掛けにしたくて。
ハーレムの妻になる事と、タチ・ネコの属性は関係無い。清らかかどうかも関係無いって。力強く断言してくれたイグゥを見て、おれの不安が一つ消えたような気がした。


「おれさ……。イグゥの事、好き…だよ……。」
「オレもリオが好きだ。リオに何があっても……妻にしたいって、思ってる。」

おれはイグゥが好き。
イグゥはおれが好き。

言えないからって、黙って離れるなんて出来ない。


「イグゥ、ぁの……あのさ…」

それがハッキリ分かったから。
イグゥに話すって決めて、おれは不格好に口を開いた。




「俺はお薦めしないな。価値が低すぎる。」
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

泥酔している間に愛人契約されていたんだが

暮田呉子
BL
泥酔していた夜、目を覚ましたら――【愛人契約書】にサインしていた。 黒髪の青年公爵レナード・フォン・ディアセント。 かつて嫡外子として疎まれ、戦場に送られた彼は、己の命を救った傭兵グレイを「女避けの盾」として雇う。 だが、片腕を失ったその男こそ、レナードの心を動かした唯一の存在だった。 元部下の冷徹な公爵と、酒に溺れる片腕の傭兵。 交わした契約の中で、二人の距離は少しずつ近づいていくが――。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

処理中です...