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本編3 残念な男
34・隣に来ないか、オレの隣へ @泉州
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オレの風邪は当日中に治った。
自分で言うんだから間違いねぇ。
夜になってカカシャが夕飯を持って来てくれた頃には咳も全然出なくなってたし、それ以外については元から元気だったから何も変わらんってヤツだ。
夕飯を食い終わってカカシャが部屋から出た後は、いつも通り自主練をして寝た。
やっぱりいつも通り、夜中にふと目が覚めちまったが、それでもオレはベッドに寝転がったままでいた。
……部屋の前に佇むなって、ロイズに言われたからだ。
まさかロイズに、すっかりバレてるとはなぁ。
もっと気持ち悪がっても良かったのに流石はロイズ、オレの天使、心が広いぜ。
翌朝は久々に、食堂でのんびりと朝飯を食った。
その内に来るだろうロイズに、オレがちゃんと約束通り、無理してねぇってのを見せる為にだ。
いつもならガガガ~ッてかきこむ所を、煮込んだ野菜を味わいながらスープを啜り、パンも一口大に千切ってから食ってた。
ゆっくり食ってみりゃあ、素朴なスープやパンも案外美味いモンだった。
そうこうしてる内にロイズが食堂に入って来る。
すぐに分かった。
オレが座ってる位置からは、朝から輝くロイズの赤毛が良く見えたんでな。もちろん、それを狙ってこの席に決めたんだが。
「ロイズ、おはよう。」
「げっ、お前っ…」
「今日も可愛いな。朝からロイズに会えるなんて、今日もイイ日になりそうだぜ。」
「食堂で見掛けるのは当たり前だろ。ここに住んでるんだから。」
デレデレするオレに対して、ロイズは今日も冷静だ。通常運転で魅力的だ。
とは言え、昨日の夜、オレを心配してくれたデレロイズの事も忘れてねぇぞ。
配膳カウンターでトレイの上に朝飯を色々と乗せたロイズは、空いてる席を探して食堂の中を見渡した。
もちろんオレは、隣が空いてるぞってアピールするワケだ。
異世界人って事で気ィ遣われてンのか、オレがいる卓はガラガラ状態でな。
それを見てロイズが嫌そうな顔をしたものの、後ろから姿を現したイーシャに誘われる形で、コッチに向かって来た。
もしかしたらって一瞬、期待したんだが。
残念ながらオレの向かいにはイーシャが。イーシャの席から椅子を一つ飛ばした場所にロイズが座った。
欲を言えば、メシを食ってるロイズを真正面から見たかったぜ。
もっと欲を言えば、隣でロイズの温もりを感じながら見守りたかったなぁ。
イーシャめ……。
どうせ誘うなら、そこら辺もロイズに言ってくれりゃ良かったのに。
あぁいや、やっぱりそれは駄目だ。ロイズに無理強いとか、駄目過ぎだろ。
朝から同じ卓に着けただけでもラッキーだって思わねぇとな。
「て言うか……なんで病人のお前が朝っぱらから食堂にいるんだよ。寝てろよ。」
「治った。」
「はぁっ?」
「愛しいロイズが心配してくれたお陰で昨日中に治った。」
「嘘を言うなっ。」
正直に言ったんだが信じて貰えなかったぜ。
まぁ確かに昨日、風邪のひき始めだって言われたばっかりだからなぁ。
そんな奴が翌日に治ったとか言っても、無理してンだろ……って思われるか。
「だが昨日、ロイズが来てくれたお陰でオレは元気になった。それは事実だ。やっぱり愛だな、愛は勝つんだな。」
「そんなワケあるかっ! おれは…っ、別に、心配とか、……してねぇし。ただ……お前が無理してるから、おれ……そういうの、イヤなだけだから。」
「オレはそれが嬉しかったから風邪が治った。嘘じゃねぇ、事実だ。」
「なんで嬉しいんだよ……。お前、何か別なものでも見てるんじゃないか?」
「好きな相手から気に掛けて貰ってよ、嬉しくならんワケがねぇだろ。」
昨夜のロイズの言葉で、オレは自分の間違いに気付いたんだ。
頑張る方向性を誤ってた、ってな。
急いで。無理して。……そういうの、ロイズは嫌いだって、ハッキリ言った。
そう言えばタカロキって司祭の件でも、ロイズは無理するなって言ってたな。
本当はオレがチカラを付けるには、もっと無茶した方が良いのかも知れん。
ロイズの頼み事に応える為、多少の無理をしなきゃならん場合もあるだろう。
だがそれで肝心のロイズから嫌われてンじゃあ、まさに本末転倒ってヤツだ。
だからオレは無理を止めた。
オレにとっては、ロイズの姿を見ねぇ、ロイズに会わねぇ、ロイズに話し掛けねぇって事が一番の『無理』だって事に気付いたんでな。
後悔しねぇよう、好意は言葉で表すんだって改めて決めたんだ。
「………。」
黙り込んだロイズはオレから目を逸らし、無言のまま朝飯を食い始めた。
食いながら時々、思い出したようにオレを見る。
睨み付けてるツモリ、なんだろなぁ。
ロイズがやる事なら何でも大歓迎だって~の。
睨む視線なんか、いくら浴びてもイイモンだろよ。
自分で言うんだから間違いねぇ。
夜になってカカシャが夕飯を持って来てくれた頃には咳も全然出なくなってたし、それ以外については元から元気だったから何も変わらんってヤツだ。
夕飯を食い終わってカカシャが部屋から出た後は、いつも通り自主練をして寝た。
やっぱりいつも通り、夜中にふと目が覚めちまったが、それでもオレはベッドに寝転がったままでいた。
……部屋の前に佇むなって、ロイズに言われたからだ。
まさかロイズに、すっかりバレてるとはなぁ。
もっと気持ち悪がっても良かったのに流石はロイズ、オレの天使、心が広いぜ。
翌朝は久々に、食堂でのんびりと朝飯を食った。
その内に来るだろうロイズに、オレがちゃんと約束通り、無理してねぇってのを見せる為にだ。
いつもならガガガ~ッてかきこむ所を、煮込んだ野菜を味わいながらスープを啜り、パンも一口大に千切ってから食ってた。
ゆっくり食ってみりゃあ、素朴なスープやパンも案外美味いモンだった。
そうこうしてる内にロイズが食堂に入って来る。
すぐに分かった。
オレが座ってる位置からは、朝から輝くロイズの赤毛が良く見えたんでな。もちろん、それを狙ってこの席に決めたんだが。
「ロイズ、おはよう。」
「げっ、お前っ…」
「今日も可愛いな。朝からロイズに会えるなんて、今日もイイ日になりそうだぜ。」
「食堂で見掛けるのは当たり前だろ。ここに住んでるんだから。」
デレデレするオレに対して、ロイズは今日も冷静だ。通常運転で魅力的だ。
とは言え、昨日の夜、オレを心配してくれたデレロイズの事も忘れてねぇぞ。
配膳カウンターでトレイの上に朝飯を色々と乗せたロイズは、空いてる席を探して食堂の中を見渡した。
もちろんオレは、隣が空いてるぞってアピールするワケだ。
異世界人って事で気ィ遣われてンのか、オレがいる卓はガラガラ状態でな。
それを見てロイズが嫌そうな顔をしたものの、後ろから姿を現したイーシャに誘われる形で、コッチに向かって来た。
もしかしたらって一瞬、期待したんだが。
残念ながらオレの向かいにはイーシャが。イーシャの席から椅子を一つ飛ばした場所にロイズが座った。
欲を言えば、メシを食ってるロイズを真正面から見たかったぜ。
もっと欲を言えば、隣でロイズの温もりを感じながら見守りたかったなぁ。
イーシャめ……。
どうせ誘うなら、そこら辺もロイズに言ってくれりゃ良かったのに。
あぁいや、やっぱりそれは駄目だ。ロイズに無理強いとか、駄目過ぎだろ。
朝から同じ卓に着けただけでもラッキーだって思わねぇとな。
「て言うか……なんで病人のお前が朝っぱらから食堂にいるんだよ。寝てろよ。」
「治った。」
「はぁっ?」
「愛しいロイズが心配してくれたお陰で昨日中に治った。」
「嘘を言うなっ。」
正直に言ったんだが信じて貰えなかったぜ。
まぁ確かに昨日、風邪のひき始めだって言われたばっかりだからなぁ。
そんな奴が翌日に治ったとか言っても、無理してンだろ……って思われるか。
「だが昨日、ロイズが来てくれたお陰でオレは元気になった。それは事実だ。やっぱり愛だな、愛は勝つんだな。」
「そんなワケあるかっ! おれは…っ、別に、心配とか、……してねぇし。ただ……お前が無理してるから、おれ……そういうの、イヤなだけだから。」
「オレはそれが嬉しかったから風邪が治った。嘘じゃねぇ、事実だ。」
「なんで嬉しいんだよ……。お前、何か別なものでも見てるんじゃないか?」
「好きな相手から気に掛けて貰ってよ、嬉しくならんワケがねぇだろ。」
昨夜のロイズの言葉で、オレは自分の間違いに気付いたんだ。
頑張る方向性を誤ってた、ってな。
急いで。無理して。……そういうの、ロイズは嫌いだって、ハッキリ言った。
そう言えばタカロキって司祭の件でも、ロイズは無理するなって言ってたな。
本当はオレがチカラを付けるには、もっと無茶した方が良いのかも知れん。
ロイズの頼み事に応える為、多少の無理をしなきゃならん場合もあるだろう。
だがそれで肝心のロイズから嫌われてンじゃあ、まさに本末転倒ってヤツだ。
だからオレは無理を止めた。
オレにとっては、ロイズの姿を見ねぇ、ロイズに会わねぇ、ロイズに話し掛けねぇって事が一番の『無理』だって事に気付いたんでな。
後悔しねぇよう、好意は言葉で表すんだって改めて決めたんだ。
「………。」
黙り込んだロイズはオレから目を逸らし、無言のまま朝飯を食い始めた。
食いながら時々、思い出したようにオレを見る。
睨み付けてるツモリ、なんだろなぁ。
ロイズがやる事なら何でも大歓迎だって~の。
睨む視線なんか、いくら浴びてもイイモンだろよ。
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