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僕が達哉を怒らせてしまって―――というのは聊か早合点かもしれないが、確実に空気は変わって途端に会話は無くなった。家の近くの三叉路でぎこちなく別れを済ませて、僕は帰宅した。僕が生まれる少し前に買ったという中古の一軒家だ。
「ただいま」
「おう、おかえり」
リビングの奥、キッチンに居たらしい父さんはワイシャツの上からエプロンを装着して僕を迎えた。
駐車場に愛車である銀色のセダンがあったから分かっていたことだ。鍵も掛かっていなかったし。
時刻はまだ午後六時を過ぎたころで一般的な会社勤めの大人帰宅するにしては早い時間帯かもしれない。
勿論父さんが定職に就いていないというわけではないが、ここ最近は矢鱈と帰ってくるのが早い。
まさか平日に父さんが料理をしているとは思ってもいなかった。
「……別に疑うわけじゃないんだけど、そんなに早く帰ってきて会社は大丈夫なわけ?」
「いや、そもそも今日は会社無かったわ」
「はぁ?」
今日は平日だ。祝日でもない。当然、会社は営業していると思うのだが。それに僕が学校に行こうと家を出る前には父さんは車に乗って会社に向かっていたはずだ。今日の話なので、流石に記憶違いということはない。
「今日有休取ってる事に家を出てから気づいてな」
「馬鹿じゃないの?」
思わずストレートに言ってしまった僕の言葉に父さんは傷ついたようにしょげた。
「しょ、しょうがないだろ。有休取るなんて久しぶりなんだから」
「それはそれでどうなの? まあいいや。とにかくそれで午前中には家に戻ってきてたわけね」
「まあな。暇でやることなかったから俺が料理でも作ろうかと」
「……まあ、それは良いんだけど。でも何で有休とったの? これまでは全然取ってなかったんでしょ?」
「……あー、最近労務関係が厳しくなってだな。ちゃんと休みを取らなくちゃいけなくなったんだよ」
だからといってここ一月に何度も休みを取るものだろうか。社会に出たことがない僕には父さんが嘘をついているか分からなかったが、きっとそれだけではないという確信に似た何かがあった。
父さんが休みを取り始めたのは『彼』の葬儀が終わった後と丁度リンクする。
……まさか僕が後を追うとでも思っているのだろうか。
過保護だな、と心の中で苦笑する。
ただまあ、父さんの気持ちも分からなくもない。
僕には母親はいない。僕が赤ん坊のころ、物心がつく前に死去した。
父さんとしては、何か感じ入るものがあったのかもしれない。
そそくさと父さんは追及を避けるようにキッチンに逃げていく。僕は一先ず二階の自室に向かって適当な部屋着に着替えて下に降りる。
短い廊下を抜け、横開きの扉を開くとダイニングキッチンが目に入る。そこでは背中を丸めて父さんが包丁を握っていた。そっと近づいて後ろから覗き込むと人参を薄く切っていた。
「昨日作ったカレーがあったでしょ?何作ってるの」
つくりおきしたカレーはまだ十分な量があるし、二日前に作りすぎたポテトサラダもまだ残っているのに、父さんは一体何をつくろうとしているのか。まあ、おおよそ検討はつくけれど。
「ん?カレー食うなら味噌汁がいるだろ」
出た、謎の味噌汁信仰。
「いや、いらないと思う。それに父さん高血圧で医者から注意受けたんでしょ」
「味噌汁には利尿作用があるからいいんだよ」
食事を作ってる時に尿なんて言うのはどうかと思う。
「父さん。何回も言うけどカレーに味噌汁は合わない」
「何言ってるんだ、白米には味噌汁が合うだろう」
「そうだね。でもカレールーがあるから味噌汁はいらないでしょ」
「チェーン店でカレー注文するとついてくる事もあるだろう?」
「……そうなの?」
「父さんが良く行くチェーン店じゃそうなんだ」
「いや、まあ別にいいんだけどさ」
父さんは基本的に料理が出来ない。一時期は料理教室に通ったが、殆ど上達することがなかった。基本的に食事を作るのは僕で、父さんが唯一上手く作れるのが味噌汁だった。そういうわけで父さんは良く味噌汁を作りたがった。僕が止めようとしても結局は作ってしまい、僕に感想を聞いて寸評するまでがよくある一連の流れだ。
さっきの遣り取りも何度目だろう。最近は僕も諦めつつあった。それでも言葉を遣り取りをするのは一種の様式美のようなものだ。
「この間みたいに出汁入れ忘れたりしないでよ?」
「大丈夫。今日使う味噌は出汁入りだ」
「ああ、そう……」
母さんが逝ったのは元々病気だったせいで、父さんに責任はない。しかし父さんにとっては負い目に感じるらしく、義父、つまり僕にとっては母方の祖父達とあまり交流がない。
それに父さんはあまり母さんの事について語りたがらなかったのだ。
何か理由があるのだろうな、と幼い頃から既に感じていた僕はあまり積極的に母親の話を強請ることもなかった。
今まで良く分かっていないのだ。僕の母親がどんな人間なのか。
だから僕は思い切って食事時に聞いてみた。
「そうだなぁ……」
父さんはやっぱりカレーには合わない味噌汁を一度啜り、
「まあ、一言で言えば弱い人だった」
そんな事を口走った。貶しているような言葉だったが、それに反して懐かしむように唇を緩い弧を描いていた。事実、懐かしんでいるのだろう。声も少しだけ弾んでいるように聞こえた。
「それは身体がって事?確か心臓の病気があったんでしょ?」
母親は昔から身体が弱く、。生まれつき心臓が悪かった母親は頻繁に入退院を繰り返して、ろくに学校にも行けなかったらしい。
「身体もそうだな。俺と母さんは高校で同級生だったんだが、学校も休みがちで、体育祭も一年の時までしか出れなかった。それに心も弱かった。よく入院してたからそういう影響もあるんだろうけどな、自傷行為とかはなかったが、発言が一々否定的で。なんというか、この世全てに悲観しているような、そんな女だった。それ以外にもまあ、色々変わってたよ」
色々、というところに含みを感じた。果たしてそれがどういう意味を持つのか僕にはわからない。しかしどうにも魅力的な女性ではないように聞こえる。遺影の写真は美人だったが、一夜限りの関係ならば兎も角、結婚相手としては如何なものだろうか。
「何でそんな人と結婚したのさ」
皮肉でもなんでもなく、純粋な疑問だった。
最近は腹回りの肉が目立ってきたが、顔の作りは悪くない。昔のアルバムを開くと精悍な男性の姿が写っている。
アイドルのような派手な顔だちではないが、身内贔屓を勘定しても決して不細工ではない。
こういう言い方はなんだが、父さんにがもっと選択肢はあったはずだ。
「……まあ、好きだったから?」
父さんは暫く考える素振りをして、首を捻ってそう漏らした。
「え、なんで疑問形なの?」
「母さんの事は愛していたぞ。ちゃんとお付き合いもして恋愛して。でもなんで結婚したかっていうとだな」
父さんは口をもごもごさせて暫く逡巡した後に口を開いた。
「まあ、ぶっちゃけると勢いもあったかな」
「え?いやいや勢いって」
「いや本当。身体が弱いって親族は全員知ったから初めは反対されてな。こう、反骨心が湧いたっていうかな。遅めの反抗期だったんだよ。学生結婚だったし、あの時は本当に考えなしだった」
僕は空いた口が塞がらなかった。基本的には真面目な父さんだから、きっちりとした理由があるものだと思っていた。
「言っておくが母さんと結婚した事に後悔はないぞ。そりゃもう少し長生きしてほしかったし、その所為でお前たちに苦労かけてるののは悪いと思ってるけどな」
話はそれで終わり、とばかりに父さんは再び味噌汁を啜り始めた。
「俺の事はもういいさ。もう終わったことで、過去の事だ。こんだけ時間が経てば折り合いだってつく。受験生のお前は未来に目を向けなさい」
うぐ、と言葉に詰まる。本音を言えばもう少し母親の話を聞きたかったが、受験の事を言われると苦しくなる。
「大学は入っとけよ。拓馬は国立に行っていつの間にか奨学金も自分で借りてったが子供は金の心配はするな」
人生というものを心の底から謳歌している兄は大して迷うことなく、隣接した県にある国立大学を志望してストレートで合格。今は卒業して企業勤めだ。
経済的な理由で大学進学を諦める高校生もいる。だから僕は恵まれているし、それはありがたい言葉なのだろうが、いかんせん大学という言葉にはぴんとこない。むしろ僕のような適当な人間が大学なんてものに行っていいのか、なんて罪悪感まで湧いてくる。
「大学って行かなくちゃ駄目?」
おそるおそる、僕はそう聞いてみた。
「別に?行きたくない理由があるなら行かなくてもいいだろ」
僕の予想に反して、父さんは大学進学に重きを置いているわけではなかった。過保護で何にでも口を出したがる父さんにしては意外だった。
「大学に行かなかったら人生が立ち行かないってわけでもないしな。世界的に有名なアメリカ企業の創始者だって大学を中退してるし、身近な例でいえば父さんの高校時代の後輩も高卒でデザインの世界に飛び込んで第一線で活躍してるよ。でもこれは大学に行かずにやりたいことがあって、大学に行かなくても差し支えの無い才覚があったからだ。お前にはそれがあるのか?」
僕は口を閉口させるしかなかった。誰より抜きんでているようなもの、僕にはない。
「大学に行かない理由がないなら取りあえず行っておけ。そうすれば損はない」
「行く理由もないのに?」
「ああ。父さんだって理由なんて特になかったさ、だが行ってみたら面白かったぞ。あんまり興味がなかった学問もやってみると面白かった。サークルで今でも付き合いのある友人にも巡り合えたしな。……理由なんてな、後からついてくるものなんだよ。それに人生に大層なご題目なんて必要ない。俺も歳食ってようやく分かってきたんだがな。人生になんの目標がなくったって、適当に大学に行ってそこそこのところに就職して。そんなもんで十分幸せっていうのは掴めるんだよ。お前も後十年くらいしたら分かるさ」
父さんは目を細めてそう言った。
「ただいま」
「おう、おかえり」
リビングの奥、キッチンに居たらしい父さんはワイシャツの上からエプロンを装着して僕を迎えた。
駐車場に愛車である銀色のセダンがあったから分かっていたことだ。鍵も掛かっていなかったし。
時刻はまだ午後六時を過ぎたころで一般的な会社勤めの大人帰宅するにしては早い時間帯かもしれない。
勿論父さんが定職に就いていないというわけではないが、ここ最近は矢鱈と帰ってくるのが早い。
まさか平日に父さんが料理をしているとは思ってもいなかった。
「……別に疑うわけじゃないんだけど、そんなに早く帰ってきて会社は大丈夫なわけ?」
「いや、そもそも今日は会社無かったわ」
「はぁ?」
今日は平日だ。祝日でもない。当然、会社は営業していると思うのだが。それに僕が学校に行こうと家を出る前には父さんは車に乗って会社に向かっていたはずだ。今日の話なので、流石に記憶違いということはない。
「今日有休取ってる事に家を出てから気づいてな」
「馬鹿じゃないの?」
思わずストレートに言ってしまった僕の言葉に父さんは傷ついたようにしょげた。
「しょ、しょうがないだろ。有休取るなんて久しぶりなんだから」
「それはそれでどうなの? まあいいや。とにかくそれで午前中には家に戻ってきてたわけね」
「まあな。暇でやることなかったから俺が料理でも作ろうかと」
「……まあ、それは良いんだけど。でも何で有休とったの? これまでは全然取ってなかったんでしょ?」
「……あー、最近労務関係が厳しくなってだな。ちゃんと休みを取らなくちゃいけなくなったんだよ」
だからといってここ一月に何度も休みを取るものだろうか。社会に出たことがない僕には父さんが嘘をついているか分からなかったが、きっとそれだけではないという確信に似た何かがあった。
父さんが休みを取り始めたのは『彼』の葬儀が終わった後と丁度リンクする。
……まさか僕が後を追うとでも思っているのだろうか。
過保護だな、と心の中で苦笑する。
ただまあ、父さんの気持ちも分からなくもない。
僕には母親はいない。僕が赤ん坊のころ、物心がつく前に死去した。
父さんとしては、何か感じ入るものがあったのかもしれない。
そそくさと父さんは追及を避けるようにキッチンに逃げていく。僕は一先ず二階の自室に向かって適当な部屋着に着替えて下に降りる。
短い廊下を抜け、横開きの扉を開くとダイニングキッチンが目に入る。そこでは背中を丸めて父さんが包丁を握っていた。そっと近づいて後ろから覗き込むと人参を薄く切っていた。
「昨日作ったカレーがあったでしょ?何作ってるの」
つくりおきしたカレーはまだ十分な量があるし、二日前に作りすぎたポテトサラダもまだ残っているのに、父さんは一体何をつくろうとしているのか。まあ、おおよそ検討はつくけれど。
「ん?カレー食うなら味噌汁がいるだろ」
出た、謎の味噌汁信仰。
「いや、いらないと思う。それに父さん高血圧で医者から注意受けたんでしょ」
「味噌汁には利尿作用があるからいいんだよ」
食事を作ってる時に尿なんて言うのはどうかと思う。
「父さん。何回も言うけどカレーに味噌汁は合わない」
「何言ってるんだ、白米には味噌汁が合うだろう」
「そうだね。でもカレールーがあるから味噌汁はいらないでしょ」
「チェーン店でカレー注文するとついてくる事もあるだろう?」
「……そうなの?」
「父さんが良く行くチェーン店じゃそうなんだ」
「いや、まあ別にいいんだけどさ」
父さんは基本的に料理が出来ない。一時期は料理教室に通ったが、殆ど上達することがなかった。基本的に食事を作るのは僕で、父さんが唯一上手く作れるのが味噌汁だった。そういうわけで父さんは良く味噌汁を作りたがった。僕が止めようとしても結局は作ってしまい、僕に感想を聞いて寸評するまでがよくある一連の流れだ。
さっきの遣り取りも何度目だろう。最近は僕も諦めつつあった。それでも言葉を遣り取りをするのは一種の様式美のようなものだ。
「この間みたいに出汁入れ忘れたりしないでよ?」
「大丈夫。今日使う味噌は出汁入りだ」
「ああ、そう……」
母さんが逝ったのは元々病気だったせいで、父さんに責任はない。しかし父さんにとっては負い目に感じるらしく、義父、つまり僕にとっては母方の祖父達とあまり交流がない。
それに父さんはあまり母さんの事について語りたがらなかったのだ。
何か理由があるのだろうな、と幼い頃から既に感じていた僕はあまり積極的に母親の話を強請ることもなかった。
今まで良く分かっていないのだ。僕の母親がどんな人間なのか。
だから僕は思い切って食事時に聞いてみた。
「そうだなぁ……」
父さんはやっぱりカレーには合わない味噌汁を一度啜り、
「まあ、一言で言えば弱い人だった」
そんな事を口走った。貶しているような言葉だったが、それに反して懐かしむように唇を緩い弧を描いていた。事実、懐かしんでいるのだろう。声も少しだけ弾んでいるように聞こえた。
「それは身体がって事?確か心臓の病気があったんでしょ?」
母親は昔から身体が弱く、。生まれつき心臓が悪かった母親は頻繁に入退院を繰り返して、ろくに学校にも行けなかったらしい。
「身体もそうだな。俺と母さんは高校で同級生だったんだが、学校も休みがちで、体育祭も一年の時までしか出れなかった。それに心も弱かった。よく入院してたからそういう影響もあるんだろうけどな、自傷行為とかはなかったが、発言が一々否定的で。なんというか、この世全てに悲観しているような、そんな女だった。それ以外にもまあ、色々変わってたよ」
色々、というところに含みを感じた。果たしてそれがどういう意味を持つのか僕にはわからない。しかしどうにも魅力的な女性ではないように聞こえる。遺影の写真は美人だったが、一夜限りの関係ならば兎も角、結婚相手としては如何なものだろうか。
「何でそんな人と結婚したのさ」
皮肉でもなんでもなく、純粋な疑問だった。
最近は腹回りの肉が目立ってきたが、顔の作りは悪くない。昔のアルバムを開くと精悍な男性の姿が写っている。
アイドルのような派手な顔だちではないが、身内贔屓を勘定しても決して不細工ではない。
こういう言い方はなんだが、父さんにがもっと選択肢はあったはずだ。
「……まあ、好きだったから?」
父さんは暫く考える素振りをして、首を捻ってそう漏らした。
「え、なんで疑問形なの?」
「母さんの事は愛していたぞ。ちゃんとお付き合いもして恋愛して。でもなんで結婚したかっていうとだな」
父さんは口をもごもごさせて暫く逡巡した後に口を開いた。
「まあ、ぶっちゃけると勢いもあったかな」
「え?いやいや勢いって」
「いや本当。身体が弱いって親族は全員知ったから初めは反対されてな。こう、反骨心が湧いたっていうかな。遅めの反抗期だったんだよ。学生結婚だったし、あの時は本当に考えなしだった」
僕は空いた口が塞がらなかった。基本的には真面目な父さんだから、きっちりとした理由があるものだと思っていた。
「言っておくが母さんと結婚した事に後悔はないぞ。そりゃもう少し長生きしてほしかったし、その所為でお前たちに苦労かけてるののは悪いと思ってるけどな」
話はそれで終わり、とばかりに父さんは再び味噌汁を啜り始めた。
「俺の事はもういいさ。もう終わったことで、過去の事だ。こんだけ時間が経てば折り合いだってつく。受験生のお前は未来に目を向けなさい」
うぐ、と言葉に詰まる。本音を言えばもう少し母親の話を聞きたかったが、受験の事を言われると苦しくなる。
「大学は入っとけよ。拓馬は国立に行っていつの間にか奨学金も自分で借りてったが子供は金の心配はするな」
人生というものを心の底から謳歌している兄は大して迷うことなく、隣接した県にある国立大学を志望してストレートで合格。今は卒業して企業勤めだ。
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「大学って行かなくちゃ駄目?」
おそるおそる、僕はそう聞いてみた。
「別に?行きたくない理由があるなら行かなくてもいいだろ」
僕の予想に反して、父さんは大学進学に重きを置いているわけではなかった。過保護で何にでも口を出したがる父さんにしては意外だった。
「大学に行かなかったら人生が立ち行かないってわけでもないしな。世界的に有名なアメリカ企業の創始者だって大学を中退してるし、身近な例でいえば父さんの高校時代の後輩も高卒でデザインの世界に飛び込んで第一線で活躍してるよ。でもこれは大学に行かずにやりたいことがあって、大学に行かなくても差し支えの無い才覚があったからだ。お前にはそれがあるのか?」
僕は口を閉口させるしかなかった。誰より抜きんでているようなもの、僕にはない。
「大学に行かない理由がないなら取りあえず行っておけ。そうすれば損はない」
「行く理由もないのに?」
「ああ。父さんだって理由なんて特になかったさ、だが行ってみたら面白かったぞ。あんまり興味がなかった学問もやってみると面白かった。サークルで今でも付き合いのある友人にも巡り合えたしな。……理由なんてな、後からついてくるものなんだよ。それに人生に大層なご題目なんて必要ない。俺も歳食ってようやく分かってきたんだがな。人生になんの目標がなくったって、適当に大学に行ってそこそこのところに就職して。そんなもんで十分幸せっていうのは掴めるんだよ。お前も後十年くらいしたら分かるさ」
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