3 / 30
お呼ばれしたんだけど
しおりを挟む
立地最高。ギリギリまで寝れるじゃん。いや、アイツいっつもオレが教室に駆け込むような時間にはすんって座ってるもんなぁ。立地の無駄遣いだわ。
アホな事を考えつつ、佐々木にラインを送る。
〔着いたけどー〕
〔ロック解除したから中に入って〕
わーお。まさかこれ、アイツの家までラインで誘導されるパターン? って思ったら本当にそのまさかだった。
言われた通りにエレベーターに乗って、11階の……えーと、1106号室ね。
ていうかマンションの中までって、どんだけオレと一緒のとこ人に見られたくないんだよ。若干微妙な気持ちになりつつ、玄関前のインターホンを押したら、ガチャって扉が開いて佐々木が出迎えてくれた。
「いらっしゃい!」
声でか。限界、とか言ってた割には満面の笑顔だな、オイ。
「元気だなぁ。限界じゃなかったのかよ」
「はは、ごめん。宮下が来てくれた嬉しさの方が勝ったみたい」
キラキラしい笑顔に毒気を抜かれる。イケメン王子はどんな時もイケメンだった。
リビングに通されて、オレはポカンと口を開ける。でっかい窓から街がめちゃくちゃ見渡せた。さすがタワマン。
「すごっ!!! 景色良っ!!!」
思わずダッシュで窓まで走って、へばりついて下を覗き込む。いやだって、この景色は堪能しないとバチがあたるだろ。
見下ろしたら、一本向こうの通り、商店街になってる所をうちの制服を着た生徒たちがゾロゾロと歩いていた。ありんこみたいだが、いつもだったらオレもあのありんこの一匹なんだろう。なんか感慨深い。
「皆ぞろぞろ帰ってんなー。帰宅部の同志たちが」
「だいたいこれくらいの時間が一番多いみたいだよ。ちょっと話したりしてから帰る人が多いのかな」
「わ、あっちの時計台あるの、あれ駅かな。すげー、こんなに家があるのかぁ」
「ははは、俺もこの家に越してきた頃、毎日そんな感じで窓にくっついてたな。なんか懐かしい」
「あ、オレの家も見える」
「えっ!!? どれ?」
佐々木がわざわざ窓まで駆け寄ってきて、オレの視線の先を追う。もう見飽きた景色だろうに興味を示してくれるあたり、気ぃ遣いまくって生きてる佐々木らしい。
「あっち。あの川の側にスーパー『まるお』ってあるじゃん。川とスーパーの真ん中あたりにある赤い屋根がオレん家」
「一軒家なんだ。すごいな」
「ボロ屋だぞ。どう考えてもタワマンの方がすげーわ」
「そうかなぁ、庭も結構広いじゃん。木があるのすごい。庭付き一戸建ての方が断然すごいと思うけど。でも意外と近いんだな。あのスーパーなら歩いてもここから10分くらいなんじゃない?」
「だろうな。オレ学校まで20分近くかかるしな」
オレの言葉に、佐々木は窓下を見渡して「確かに」と頷いた。佐々木ん家から見るとオレの家と学校はちょうど真反対にあるようだった。
話の流れで学校の方に目をやると、邪魔な建物もなくて綺麗にグラウンドまで見えている。
「おー、学校まる見えじゃん。運動会とかここから観覧できそう」
「俺の父さんと一緒の事言ってる」
笑われてしまってちょっと恥ずかしい。だがしかし、こんなタワマンに住める程の財力を持つお父様と同じ思考回路ならむしろ誇っていいのでは。
「なんか地上から30mくらいあるって聞いたけど、かなり遠くまで見えるよね」
「ふわー、それが日常とかエグいわ。つーか、モダンな家だな」
やっと家の中を見渡す余裕が出てきた。白と黒を基調にしたおしゃれな内装。ソファとか絨毯もなんかこうスマートだ。観葉植物なんか置いてあって、モデルルームかなんかなの? ってくらいすっきりと片付いている。アイランドキッチンにはバスケットに入った色とりどりの果物まであるとか……家までシュッとしたイケメンってどういう事なの。
「物があんまりないからそう見えるんじゃないかな。片付けるのが面倒だから、モノは最小限にするって母さんが言ってた」
佐々木、知ってるか? 一般的には「片付けるのが面倒」なヤツの家は散らかってるんだ。オレん家みたいに、それはもうめちゃくちゃに。
リビングだけで散々びっくりしたオレは、佐々木の部屋に入ってさらに驚愕する。
なんっっっにも! ねぇ!!!
ベッドと机だけ!
「マンガもゲームも食いもんもエロ本もねぇ……佐々木、どうやって生活してんだ」
思わず口から出た。いや、エロ本は持ってても隠すだろうけど。
「持ってないなぁ。子供の頃親があんまりそういうの買ってくれなかったから、あんまり興味も湧かなくて」
マジかぁ! 佐々木のお父さん! お母さん! マンガやゲームは必要です! 子供同士のコミュニケーションツールなんだからぁ!
あまりにも殺風景な佐々木の部屋に衝撃を受けてたら、佐々木は「あ、でもお菓子くらいならあるかも」って部屋を出て行った。数分後戻ってきた佐々木の手には紅茶とポテチがあってちょっと安心した。
生活の常識が違い過ぎてちょっとビビったもんな。いや、ここでコーラじゃなくて紅茶なとこが佐々木らしいっちゃ佐々木らしいかもしれん。
アホな事を考えつつ、佐々木にラインを送る。
〔着いたけどー〕
〔ロック解除したから中に入って〕
わーお。まさかこれ、アイツの家までラインで誘導されるパターン? って思ったら本当にそのまさかだった。
言われた通りにエレベーターに乗って、11階の……えーと、1106号室ね。
ていうかマンションの中までって、どんだけオレと一緒のとこ人に見られたくないんだよ。若干微妙な気持ちになりつつ、玄関前のインターホンを押したら、ガチャって扉が開いて佐々木が出迎えてくれた。
「いらっしゃい!」
声でか。限界、とか言ってた割には満面の笑顔だな、オイ。
「元気だなぁ。限界じゃなかったのかよ」
「はは、ごめん。宮下が来てくれた嬉しさの方が勝ったみたい」
キラキラしい笑顔に毒気を抜かれる。イケメン王子はどんな時もイケメンだった。
リビングに通されて、オレはポカンと口を開ける。でっかい窓から街がめちゃくちゃ見渡せた。さすがタワマン。
「すごっ!!! 景色良っ!!!」
思わずダッシュで窓まで走って、へばりついて下を覗き込む。いやだって、この景色は堪能しないとバチがあたるだろ。
見下ろしたら、一本向こうの通り、商店街になってる所をうちの制服を着た生徒たちがゾロゾロと歩いていた。ありんこみたいだが、いつもだったらオレもあのありんこの一匹なんだろう。なんか感慨深い。
「皆ぞろぞろ帰ってんなー。帰宅部の同志たちが」
「だいたいこれくらいの時間が一番多いみたいだよ。ちょっと話したりしてから帰る人が多いのかな」
「わ、あっちの時計台あるの、あれ駅かな。すげー、こんなに家があるのかぁ」
「ははは、俺もこの家に越してきた頃、毎日そんな感じで窓にくっついてたな。なんか懐かしい」
「あ、オレの家も見える」
「えっ!!? どれ?」
佐々木がわざわざ窓まで駆け寄ってきて、オレの視線の先を追う。もう見飽きた景色だろうに興味を示してくれるあたり、気ぃ遣いまくって生きてる佐々木らしい。
「あっち。あの川の側にスーパー『まるお』ってあるじゃん。川とスーパーの真ん中あたりにある赤い屋根がオレん家」
「一軒家なんだ。すごいな」
「ボロ屋だぞ。どう考えてもタワマンの方がすげーわ」
「そうかなぁ、庭も結構広いじゃん。木があるのすごい。庭付き一戸建ての方が断然すごいと思うけど。でも意外と近いんだな。あのスーパーなら歩いてもここから10分くらいなんじゃない?」
「だろうな。オレ学校まで20分近くかかるしな」
オレの言葉に、佐々木は窓下を見渡して「確かに」と頷いた。佐々木ん家から見るとオレの家と学校はちょうど真反対にあるようだった。
話の流れで学校の方に目をやると、邪魔な建物もなくて綺麗にグラウンドまで見えている。
「おー、学校まる見えじゃん。運動会とかここから観覧できそう」
「俺の父さんと一緒の事言ってる」
笑われてしまってちょっと恥ずかしい。だがしかし、こんなタワマンに住める程の財力を持つお父様と同じ思考回路ならむしろ誇っていいのでは。
「なんか地上から30mくらいあるって聞いたけど、かなり遠くまで見えるよね」
「ふわー、それが日常とかエグいわ。つーか、モダンな家だな」
やっと家の中を見渡す余裕が出てきた。白と黒を基調にしたおしゃれな内装。ソファとか絨毯もなんかこうスマートだ。観葉植物なんか置いてあって、モデルルームかなんかなの? ってくらいすっきりと片付いている。アイランドキッチンにはバスケットに入った色とりどりの果物まであるとか……家までシュッとしたイケメンってどういう事なの。
「物があんまりないからそう見えるんじゃないかな。片付けるのが面倒だから、モノは最小限にするって母さんが言ってた」
佐々木、知ってるか? 一般的には「片付けるのが面倒」なヤツの家は散らかってるんだ。オレん家みたいに、それはもうめちゃくちゃに。
リビングだけで散々びっくりしたオレは、佐々木の部屋に入ってさらに驚愕する。
なんっっっにも! ねぇ!!!
ベッドと机だけ!
「マンガもゲームも食いもんもエロ本もねぇ……佐々木、どうやって生活してんだ」
思わず口から出た。いや、エロ本は持ってても隠すだろうけど。
「持ってないなぁ。子供の頃親があんまりそういうの買ってくれなかったから、あんまり興味も湧かなくて」
マジかぁ! 佐々木のお父さん! お母さん! マンガやゲームは必要です! 子供同士のコミュニケーションツールなんだからぁ!
あまりにも殺風景な佐々木の部屋に衝撃を受けてたら、佐々木は「あ、でもお菓子くらいならあるかも」って部屋を出て行った。数分後戻ってきた佐々木の手には紅茶とポテチがあってちょっと安心した。
生活の常識が違い過ぎてちょっとビビったもんな。いや、ここでコーラじゃなくて紅茶なとこが佐々木らしいっちゃ佐々木らしいかもしれん。
155
あなたにおすすめの小説
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
気づいたらスパダリの部屋で繭になってた話
米山のら
BL
鎌倉で静かにリモート生活を送る俺は、極度のあがり症。
子どものころ高い声をからかわれたトラウマが原因で、人と話すのが苦手だ。
そんな俺が、月に一度の出社日に出会ったのは、仕事も見た目も完璧なのに、なぜか異常に距離が近い謎のスパダリ。
気づけば荷物ごとドナドナされて、たどり着いたのは最上階の部屋。
「おいで」
……その優しさ、むしろ怖いんですけど!?
これは、殻に閉じこもっていた俺が、“繭”という名の執着にじわじわと絡め取られていく話。
人気俳優に拾われてペットにされた件
米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。
そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。
「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。
「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。
これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
人気アイドルになった美形幼馴染みに溺愛されています
ミヅハ
BL
主人公の陽向(ひなた)には現在、アイドルとして活躍している二つ年上の幼馴染みがいる。
生まれた時から一緒にいる彼―真那(まな)はまるで王子様のような見た目をしているが、その実無気力無表情で陽向以外のほとんどの人は彼の笑顔を見た事がない。
デビューして一気に人気が出た真那といきなり疎遠になり、寂しさを感じた陽向は思わずその気持ちを吐露してしまったのだが、優しい真那は陽向の為に時間さえあれば会いに来てくれるようになった。
そんなある日、いつものように家に来てくれた真那からキスをされ「俺だけのヒナでいてよ」と言われてしまい───。
ダウナー系美形アイドル幼馴染み(攻)×しっかり者の一般人(受)
基本受視点でたまに攻や他キャラ視点あり。
※印は性的描写ありです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる