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今すぐ!! 人型になって!!!

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僕が居なくてもちゃんと外から帰って来たらお風呂に入るルールを守っているのか、体からはほかほかと湯気が上がり、濡れた髪が色っぽい。

ただその肩にはでっかいホーンラビットが担がれていて、めちゃくちゃワイルドだ。

正直あんまりお近づきにはなりたくない。

記録石の中の獣人ネロは血抜きされたホーンラビットをテーブルの上にドカッと置いて、僕が作って置いておいたご飯をガツガツ食ってから玄関の鍵を閉め、一瞬で狼の姿に戻ったかと思うと、いつもの場所で丸くなる。

これで『いつもの光景』の出来上がりだ。

「なるほどねー、素材や食材はネロが獲ってきてたんだぁ」

「わ、わふ……」

「わふ、じゃない!」

僕が怒ると、ネロの耳がビクゥッ! と揺れる。鼻からピス……と小さい音が聞こえたけど、ここだけは譲れない。

「人型になれるんでしょ!? 今すぐ!! 人型になって!!!」

「……」

しゅんとしたお耳のまま、ネロが体を震わせる。

瞬きするほどの僅かな時間で、僕の目の前には見上げるほど体格のいい美丈夫が姿を表していた。

めっちゃイケメンじゃん……。

記録石で見るよりも、細部までバッチリ見えて思わず言葉を失った。

明るいオレンジ色の瞳が縋るように僕を見てる。見下ろしてるくせに、上目遣いって器用だな全くもう!

「ラスク……その、すまない……」

声、渋っ! 

身体がでっかいからか、重低音の男らしい声だ。いつもわふっ! とか言ってるくせに人型になったとたん落ち着いた声とか詐欺だろう。ちゃんと大人じゃねぇかよ! なんなら色気まで感じるレベルだ。

子供みたいに聞き分けないのが可愛いと思ってたのに、なんなら二十歳をちょっと過ぎた程度の僕よりも、ずっと大人なんじゃないだろうか。詐欺過ぎる。

「どーいう事ですか?」

僕からも常にはないひっくい声が出た。

これはもう致し方ない。だって怒ってるからな!

「け、敬語は嫌だ……」

「じゃあネロ……じゃなくて、とりあえず本名は? なんで僕について来たの。連日置いてる薬草だの肉だのはなんなの! 勝手に増えてるの怖いじゃん!」

「そ、それは宿代と世話代っつうか」

「名前!」

「ディエゴ……」

僕があまりにも矢継ぎ早に質問したせいで、ネロ改めディエゴがポンコツな答えしか返してくれない。でも僕もすっかり気が動転してしまって、内なる叫びが抑えられなかった。

「言ってよ! 僕ずっとただのワンコだと思ってたじゃん!」

「言えるかよ! タマだのケツの穴だの洗い倒されてみろ! 今さら獣人です、って……」

その言葉に、僕は真っ赤になって黙るしかない。

洗ったわ……そりゃもう容赦なく洗ったわ……成人男性が他人に洗われたくない場所のツートップ、ゴリゴリに洗い倒したわ……。
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