拾われ仔狼が、聖龍様の唯一になるまで

竜也りく

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可愛らしい感情表現

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光の中から姿を現すと、子供は分かりやすく驚いてくれた。素直な反応がとても愛らしい。

「キラキラしてる! すっごく、キレイ……!」

小さな手をこちらへ伸ばして光を掴もうとするその瞳は、好奇心でキラキラと輝いている。お前の月石のような銀の瞳の方がよほどキレイだよ。

その小さな手をとって私は目が合うくらいに身をかがめた。

「私はこの塔のあるじ、聖龍だ。怖がらずに話を聞いてくれるかな?」

「! セイリューさま!」

ギュッと小さな手に力が入って、銀の瞳がさらに輝きを増した。

「本当に会えた! ねぇセイリューさま、おれを飼ってくれるの!?」

「……今、なんと?」

思いもしない言葉に驚いてつい聞き返してしまったが、要領を得ない子供の話を根気よく聞いていくと、やはりこの子は意図をもってこの塔に捨てられたのだと分かった。

『この塔に入って聖龍様に会えたら飼って貰えるかも知れねぇなぁ、甘いお菓子だって食わせてくれるかも知れねぇぜ』

なんの根拠もないその言葉と共に、行ってこい、と押し出されこの塔に来たのだという。戻したところで養育しては貰えぬだろう。

不憫な。

浄化を施してやれば、薄汚れた体も服も本来の色を取り戻していく。服がボロボロなのも、髪や肌が荒れているのも現時点では仕方がないが、しばらくここでまともな食物を与えてやれば、見違えるように健康になるだろう。

「うわぁ、キラキラが降ってきた……キレイ……」

ふふ、本当に素直で可愛らしい。

けして可愛がられて育ったようには見えないと言うのに、曇りのない銀の瞳が愛しくて、私は知らずその小さな頭を撫でていた。

「笑った……」

子供が、ポカンとした顔で私をじっと凝視する。

「セイリューさま、キレイ……」

私の白銀の髪を物珍しそうに握りしめ、ちょっとだけ引っ張ってから手を離してみては重力に引かれサラサラと落ちゆく髪を目で追っている。何が楽しいのかは分からないが、この子供の気持ちを少しでも慰められたのなら僥倖だ。

「名は何と言う?」

「な?」

「名前だよ。お前をなんと呼べばいい?」

「おれねぇ、ヨギって呼ばれてる」

「そうか。ヨギ、飼うというのとは違うけれど、この塔で暮らしてみるか? お前が望むならば、大きくなって自分で狩りができるようになるまで、お前を守り、養おう」

「いいの!?」

「ああ、この塔には既にお前と同じ獣人の姉弟が暮らしているのだよ。彼らにお前を預けよう。とても優しく元気な子らだ。きっとお前もすぐに好きになるよ」

私がそう言うと、ヨギはとても悲しそうに呟いた。

「おれ、セイリューさまと一緒に居たいなぁ……」

「そんなに悲しそうな顔をしないでおくれ。困ったことに私は世話をされるばかりで、お前のように幼い子を育てられるような力量がないのだ」

幼い子供にこんなに悲しそうな顔をされたのは初めてで、どう扱っていいものやら分からない。頭を撫で、額に軽く口付けたら、ヨギは仔犬のように元気よく飛びついてきた。

「セイリューさま!」

ぎゅうっと私の胸に顔を埋めて、しっぽはぶんぶんと音が立つほどに振られている。撫でられるのが嬉しかったのかと背中をやんわりと撫でてやれば、しっぽはまたちぎれそうで不安になる程勢いよく暴れ始めた。

よく分からないが、どうやらヨギは私を気に入ってくれたようだった。

困ったことにどうして良いのか分からずに、とりあえずヨギが気が済むまで私はただそうしてヨギを抱きしめたまま、その小さな背を撫でるしかなかった。

どれくらいの時間そうしていたのか、ようやくヨギが顔を上げる。その目は、先ほどにも増してキラキラと煌めいていた。

「おれ、セイリューさま大好き!」

「ありがとう」

面食らったが、好意には感謝を、と思い「ありがとう」と微笑んだ。ヨギはそれで満足してくれたようで、とても可愛らしく笑っている。そして、ちょっと心配そうな顔をしてこう尋ねてきた。

「えっと、おれ、おれが、セイリューさまのお世話ができるようになったら、一緒にいられる?」

「……」

唖然とした。

「お前がそんな事を考えなくてもいいのだよ。ヨギはまだ、世話をされるべき年齢なのだから」

真っ黒な髪を撫でてやれば、むぅ、と考え込むような仕草をする。こんなに小さなナリで、それでも自分の望みを叶えるためにはどうすれば良いのかをちゃんと考えたのかと思うと愛おしい。

さすがに世話をされる想像はつかないが、この子なら長じれば自分の道は自分で切り拓いていけるだろう。

「さぁ、では行こうか」

小さな体を抱き上げ、ついでにヨギが倒したフィートラビットも片手に下げて、私は転移の術を使う。三層の宿屋を切り盛りする姉弟に、この小さく輝く命を預けるために。


***


突然現れて驚かせるのもなんだと思い、宿屋の前に転移してスイングドアを押し開ける。

「いらっしゃいませー。って、聖龍様じゃないですか!」

「うわ、可愛い。どうしたんです、その子」

「犬耳! あー、この匂いは狼系の獣人かなぁ」

相変わらず元気のいい姉弟だ。ふわふわ赤毛から飛び出した可愛らしい猫耳も、同じく真っ赤なしっぽも、興味津々だということを表していて微笑ましい。獣人の子らは感情表現がとても豊かだ。
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