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オレの明るくない将来
「はい。積極的に社交に加わって、人脈を作ったり嫁ぎ先を見つけたりする派の人と、オレみたいにとりあえず参加してるけど気が合う人と楽しくおしゃべりして美味しいもの食べて帰るだけ派の人がいるんです」
「……!」
アルロード様がびっくりした顔をするから、思わず笑いが漏れる。彼の周囲に集まるのはもちろん人脈や嫁ぎ先を狙うやる気に溢れた人達だから、オレ達みたいなやる気の無いタイプがいる事自体、驚きなんだろう。
「オレは父から何もするな、くれぐれも悪目立ちするなと厳命されてますんで、いつもこんな感じです」
オレが苦笑して見せると、アルロード様は怪訝な顔で首を傾げた。
「君の御父君はなぜそんな事を? せっかく夜会に来ているのにあえて人脈を作らない意味が分からない」
「さぁ。オレはオメガだから、って口癖みたいに言われますけどね」
「君はオメガなのか……!」
「あ、やっぱり気づいてなかったんですね。オレはこの通りベータにしか見えないと思うんですけど、一応オメガなんですよね。とはいえ香りもうっすいし抑制剤もよく効くんで、気づかない人も多いんですけど」
「しかし、君は騎士科だろう。オメガなら危険なんじゃ」
それで、ああ、と思い当たった。
オレが騎士科だったから、アルロード様は気軽にオレに話しかけたんだな。
次男とはいえ公爵家の子息で顔良し頭良し性格良しで騎士としての才能にも恵まれまくって将来性まで二重マルなんだから、女性やオメガに狙われまくってるって言うのに、オメガであるオレにこんなに屈託なく接してくれるの、ちょっと不思議だったんだよね。
「すまない、オメガだと分かったら騎士科から転科するものだとばかり思っていた」
「そういう人が多いみたいですね。でも実際は本人や親の判断に任されてるんです。オレはこの通りどっからどう見てもベータっぽいでしょ。オメガらしい繊細な美貌とかもないし、爵位もたいしたことないから普通の結婚は望めない。だから、護衛もできるってとこをウリにするらしいです」
「は!?」
急にアルロード様の表情が険しくなった。
うわ、アルロード様のこんな厳しい表情、初めて見た。
「なんだその理由は。君の御父君は本気でそんな事を言っているのか!」
初めて聞くアルロード様の険のある声に、オレは慌てた。
「本気みたいですけど。でもオレも身体動かす方が好きだし友達もいっぱいいるし、騎士科にいられるならそのほうがいいから」
きっと結婚したら今みたいに自由になんてできない。
それに、オメガである以上誰かの妻になるんだろうし、オレみたいなハンパなオメガ、どこぞのおっさんの第二夫人とかの可能性が高いだろう。
ウチは裕福な訳でもないし、父さんも相手を探すのに苦労しているに違いない。
「父も多分、オレの事思ってそう言ってくれてると思うんですよね……」
「!?」
思わず漏れた言葉に、アルロード様はこっちがびっくりするくらい驚いた顔をした。
「どういう、事?」
「オレ頭悪いし、ガキの頃から騎士になるのが夢だったから……今更急にオメガだって言われてもどうしたらいいか分からなくて……もう騎士にはなれないけど、オメガだと冒険者や他の職業もなかなか厳しいし」
騎士という職業は、そもそもオメガを採用しない。男だらけの職場だし、管理職にはアルファも多い職場環境はオメガにとって危険すぎるし、三ヶ月ごとにヒートで一週間以上身動きがとれないんだ、遠征に組み込むのが難しい。
オメガになった時点で、オレの夢は完全に潰えたわけだ。
騎士科を卒業して上級貴族の護衛や傭兵、冒険者になるヤツも一定数いるけど、オメガのオレにはそれも難しいだろう。
オメガである以上ヒートは年々キツくなるから、今はさほど苦しくなくても結婚は絶対にした方がいいって医者から説明された。
父さんが結婚相手を探しているのもそのためで、オレみたいな別に美人でもねぇオメガは年をとればとるほど貰い手がいなくなるから、今のうちに相手を探すって言ってた。
急に就職先にも困ってしまったオレには、それを止めることもできない。
うちの家系にオメガが出たのは初めてで、オレも混乱してるけど家族だって充分に混乱してる。そんな中で父さんも母さんもオメガについて聞きかじってきては対策を練ろうとしてくれてるんだと思うんだ。
父さんはあんまり話がうまい方じゃないから、本当は本心はあまり分からない。
オレがオメガだって分かってから、急に「お前はオメガなんだから、夜会では大人しくしていろ」って言われるようになった。「お前はオメガなんだから、俺が結婚相手は探してくる。騎士科にいたければ事故だけは起こすなよ」そんな風に釘をさされる。
今まで放任気味だったのに、急に口うるさくなった父さん。
いつも心配そうに、可哀相な子を見る目で優しく話しかけてくる母さん。
気まずそうな弟。
オレがオメガなんかになっちゃったせいで、家の空気は随分と重くなってしまった。
面倒な事になった、って思われてるかも知れない。
「……!」
アルロード様がびっくりした顔をするから、思わず笑いが漏れる。彼の周囲に集まるのはもちろん人脈や嫁ぎ先を狙うやる気に溢れた人達だから、オレ達みたいなやる気の無いタイプがいる事自体、驚きなんだろう。
「オレは父から何もするな、くれぐれも悪目立ちするなと厳命されてますんで、いつもこんな感じです」
オレが苦笑して見せると、アルロード様は怪訝な顔で首を傾げた。
「君の御父君はなぜそんな事を? せっかく夜会に来ているのにあえて人脈を作らない意味が分からない」
「さぁ。オレはオメガだから、って口癖みたいに言われますけどね」
「君はオメガなのか……!」
「あ、やっぱり気づいてなかったんですね。オレはこの通りベータにしか見えないと思うんですけど、一応オメガなんですよね。とはいえ香りもうっすいし抑制剤もよく効くんで、気づかない人も多いんですけど」
「しかし、君は騎士科だろう。オメガなら危険なんじゃ」
それで、ああ、と思い当たった。
オレが騎士科だったから、アルロード様は気軽にオレに話しかけたんだな。
次男とはいえ公爵家の子息で顔良し頭良し性格良しで騎士としての才能にも恵まれまくって将来性まで二重マルなんだから、女性やオメガに狙われまくってるって言うのに、オメガであるオレにこんなに屈託なく接してくれるの、ちょっと不思議だったんだよね。
「すまない、オメガだと分かったら騎士科から転科するものだとばかり思っていた」
「そういう人が多いみたいですね。でも実際は本人や親の判断に任されてるんです。オレはこの通りどっからどう見てもベータっぽいでしょ。オメガらしい繊細な美貌とかもないし、爵位もたいしたことないから普通の結婚は望めない。だから、護衛もできるってとこをウリにするらしいです」
「は!?」
急にアルロード様の表情が険しくなった。
うわ、アルロード様のこんな厳しい表情、初めて見た。
「なんだその理由は。君の御父君は本気でそんな事を言っているのか!」
初めて聞くアルロード様の険のある声に、オレは慌てた。
「本気みたいですけど。でもオレも身体動かす方が好きだし友達もいっぱいいるし、騎士科にいられるならそのほうがいいから」
きっと結婚したら今みたいに自由になんてできない。
それに、オメガである以上誰かの妻になるんだろうし、オレみたいなハンパなオメガ、どこぞのおっさんの第二夫人とかの可能性が高いだろう。
ウチは裕福な訳でもないし、父さんも相手を探すのに苦労しているに違いない。
「父も多分、オレの事思ってそう言ってくれてると思うんですよね……」
「!?」
思わず漏れた言葉に、アルロード様はこっちがびっくりするくらい驚いた顔をした。
「どういう、事?」
「オレ頭悪いし、ガキの頃から騎士になるのが夢だったから……今更急にオメガだって言われてもどうしたらいいか分からなくて……もう騎士にはなれないけど、オメガだと冒険者や他の職業もなかなか厳しいし」
騎士という職業は、そもそもオメガを採用しない。男だらけの職場だし、管理職にはアルファも多い職場環境はオメガにとって危険すぎるし、三ヶ月ごとにヒートで一週間以上身動きがとれないんだ、遠征に組み込むのが難しい。
オメガになった時点で、オレの夢は完全に潰えたわけだ。
騎士科を卒業して上級貴族の護衛や傭兵、冒険者になるヤツも一定数いるけど、オメガのオレにはそれも難しいだろう。
オメガである以上ヒートは年々キツくなるから、今はさほど苦しくなくても結婚は絶対にした方がいいって医者から説明された。
父さんが結婚相手を探しているのもそのためで、オレみたいな別に美人でもねぇオメガは年をとればとるほど貰い手がいなくなるから、今のうちに相手を探すって言ってた。
急に就職先にも困ってしまったオレには、それを止めることもできない。
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父さんはあんまり話がうまい方じゃないから、本当は本心はあまり分からない。
オレがオメガだって分かってから、急に「お前はオメガなんだから、夜会では大人しくしていろ」って言われるようになった。「お前はオメガなんだから、俺が結婚相手は探してくる。騎士科にいたければ事故だけは起こすなよ」そんな風に釘をさされる。
今まで放任気味だったのに、急に口うるさくなった父さん。
いつも心配そうに、可哀相な子を見る目で優しく話しかけてくる母さん。
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