33 / 49
【アルロード視点】気持ち悪いだろうか
しおりを挟む
気がついたら、叫んで飛び出していた。
ルキノの背中を狙う狼のような魔物を両断し、ルキノを守るように背中合わせに立って剣を構えた。
だが、これ以上魔物は群れていなかったようで、静寂を取り戻した森の中で、僕はようやく息をついた。
「……アルロード様? え、なんで?」
ポツンと落とされた声にハッとする。
しまった、ルキノに見つからないように今日までこっそり見守ってきたというのに、ルキノのピンチにいてもたってもいられず、しゃしゃりでてしまった。
恐る恐るルキノの方を見ると、目をまんまるにして僕を見ている。
「その……無事で良かった」
「あ! ありがとうございます! 危ないところでした」
なんで、と問われても何とも答えがたい状況な上に、ルキノが無事だっただけでとにかく安堵した僕の口からでたのは「無事で良かった」という答えにも何にもなってない言葉だったけれど、素直なルキノはお礼を言ってくれる。
可愛い。
「うん、間に合って良かった」
「でもアルロード様、どうしてこんなところに?」
う、と答えに詰まる。やっぱりそこは追求されてしまうのか……と観念した。
「ごめんね。ルキノの事が心配で、つい着いてきてしまった。見守るだけにしようと思っていたんだけれど、あまりにも危険だったから」
「見守るって……え? まさかオレを!?」
「うん、ごめん。ルキノは嫌がると思ったんだけれど、どうしても心配で」
正直に話したら、ルキノは目と口を大きく開けて固まってしまった。言葉を失ったようなその様子に、僕の胸はズキンと痛む。
ルキノに嫌われるのだけは嫌だ、と心が悲鳴を上げていた。
「……やっぱり、気持ち悪いだろうか」
「気持ち悪い? アルロード様が? そんなわけないでしょう!」
すごい勢いで否定してくれる。ルキノはいつも僕の事を優しいと褒めてくれるけれど、優しいのはルキノだと思う。
「アルロード様、オレを見守ってくれてたのって今日だけですか? まさか……」
心配そうな顔のルキノを見て、おもわずごまかしてしまいたくなるけれど、ルキノを騙すのはさすがに気が引ける。僕はルキノに本当の事を言おうと覚悟を決めた。
「ごめん、ルキノが討伐に行く日はほとんど一緒に来ていたんだ」
「ほとんどって……オレ、ほぼ毎日魔物の討伐に来てるけど」
こく、と頷く事しかできない。なんせルキノが冒険者になったという話を聞いたあの日からほぼ毎日、僕はルキノを見守っている。
自分でもおかしいと思うけれど、僕が知らないところでルキノが危ない目に遭って、重篤なケガを負うのだけは無理だと思った。
僕が頷いたのを見て、ルキノの顔がサッと青ざめた。
「え、待って。いつから……」
涙目。震えた小さな声。青くなった顔色。
完全に嫌われた……。
もうルキノの楽しそうな顔を見ることができなくなるかもしれない。
目をキラキラさせて『あのお方』の事を話してくれる時のあの幸せそうな声も聞けなくなるのかもしれない。いやそれどころか、もう話しかけても答えてくれなくなるかもしれない。
そう考えると、心臓が握りつぶされているように痛い。
でも、これまで密かにルキノを監視するようなマネをしていたことが罪悪感がないわけじゃなかった僕は、ルキノに全てを話す決意を固めていた。
勇気を出して口を開く。
「……ルキノが冒険者になったって話を聞いた日からは、ほぼ毎日」
どうしても外せない予定があるとき以外は本当に毎日だ。必ず冒険者ギルドに立ち寄ってから討伐に向かうことを知って、休日も早めにギルドに行って、ルキノが来るのを待った。
もちろん自分も冒険者カードを作ったし、ルキノが討伐に行かないと分かっている日に軽く討伐をこなして冒険者としての体裁を整える。人とは違う変則的な動きをする魔物との戦いはある意味鍛錬になるから、僕にとっては一石二鳥だった。
ただ、ルキノにとっては晴天の霹靂なワケで、ますます大きく目が見開かれた。
「話を聞いた日からって……もう何ヶ月も前の」
またコク、と頷く。そう、それからずっと僕はルキノの冒険者活動を見守っていた。
ルキノはいつもソロで、他の冒険者仲間とも情報のやりとりは普通に行うけれど近すぎる距離感になることもない。
討伐も強すぎる相手を選ぶこともなく、むしろ慎重すぎるほど格下の相手を選んでいた。ソロである以上無理はできない。僕にはルキノのそういう慎重さも好ましかった。
「なんでそんな……っ」
頭を抱えてルキノがしゃがみ込む。よほどショックだったらしい。
申し訳なくて、ルキノの傍に立ち尽くしたままルキノがぶつぶつと呟く声を懺悔のような気持ちで聞いていたのだけれど。
「オレごときのせいでアルロード様の貴重なお時間をそんなに無駄にしていたなんて……」
あれ?
「許すまじ……! オレが冒険者をやめればいいのか?」
思っていたのと違うというか、僕のせいでルキノが冒険者の道を諦めようとしてる!!???
「いや、生ぬるい! いっそ、父さんに結婚の話をなんとか頑張って貰うしか」
待って!!! 待ってくれ!!!
あれ以来ずっと冒険者としての活動はあっても、見合いの話なんか無かったから安心していたのに、なぜ急にそんな。
そこまで考えてふと疑問に思った。
ルキノの背中を狙う狼のような魔物を両断し、ルキノを守るように背中合わせに立って剣を構えた。
だが、これ以上魔物は群れていなかったようで、静寂を取り戻した森の中で、僕はようやく息をついた。
「……アルロード様? え、なんで?」
ポツンと落とされた声にハッとする。
しまった、ルキノに見つからないように今日までこっそり見守ってきたというのに、ルキノのピンチにいてもたってもいられず、しゃしゃりでてしまった。
恐る恐るルキノの方を見ると、目をまんまるにして僕を見ている。
「その……無事で良かった」
「あ! ありがとうございます! 危ないところでした」
なんで、と問われても何とも答えがたい状況な上に、ルキノが無事だっただけでとにかく安堵した僕の口からでたのは「無事で良かった」という答えにも何にもなってない言葉だったけれど、素直なルキノはお礼を言ってくれる。
可愛い。
「うん、間に合って良かった」
「でもアルロード様、どうしてこんなところに?」
う、と答えに詰まる。やっぱりそこは追求されてしまうのか……と観念した。
「ごめんね。ルキノの事が心配で、つい着いてきてしまった。見守るだけにしようと思っていたんだけれど、あまりにも危険だったから」
「見守るって……え? まさかオレを!?」
「うん、ごめん。ルキノは嫌がると思ったんだけれど、どうしても心配で」
正直に話したら、ルキノは目と口を大きく開けて固まってしまった。言葉を失ったようなその様子に、僕の胸はズキンと痛む。
ルキノに嫌われるのだけは嫌だ、と心が悲鳴を上げていた。
「……やっぱり、気持ち悪いだろうか」
「気持ち悪い? アルロード様が? そんなわけないでしょう!」
すごい勢いで否定してくれる。ルキノはいつも僕の事を優しいと褒めてくれるけれど、優しいのはルキノだと思う。
「アルロード様、オレを見守ってくれてたのって今日だけですか? まさか……」
心配そうな顔のルキノを見て、おもわずごまかしてしまいたくなるけれど、ルキノを騙すのはさすがに気が引ける。僕はルキノに本当の事を言おうと覚悟を決めた。
「ごめん、ルキノが討伐に行く日はほとんど一緒に来ていたんだ」
「ほとんどって……オレ、ほぼ毎日魔物の討伐に来てるけど」
こく、と頷く事しかできない。なんせルキノが冒険者になったという話を聞いたあの日からほぼ毎日、僕はルキノを見守っている。
自分でもおかしいと思うけれど、僕が知らないところでルキノが危ない目に遭って、重篤なケガを負うのだけは無理だと思った。
僕が頷いたのを見て、ルキノの顔がサッと青ざめた。
「え、待って。いつから……」
涙目。震えた小さな声。青くなった顔色。
完全に嫌われた……。
もうルキノの楽しそうな顔を見ることができなくなるかもしれない。
目をキラキラさせて『あのお方』の事を話してくれる時のあの幸せそうな声も聞けなくなるのかもしれない。いやそれどころか、もう話しかけても答えてくれなくなるかもしれない。
そう考えると、心臓が握りつぶされているように痛い。
でも、これまで密かにルキノを監視するようなマネをしていたことが罪悪感がないわけじゃなかった僕は、ルキノに全てを話す決意を固めていた。
勇気を出して口を開く。
「……ルキノが冒険者になったって話を聞いた日からは、ほぼ毎日」
どうしても外せない予定があるとき以外は本当に毎日だ。必ず冒険者ギルドに立ち寄ってから討伐に向かうことを知って、休日も早めにギルドに行って、ルキノが来るのを待った。
もちろん自分も冒険者カードを作ったし、ルキノが討伐に行かないと分かっている日に軽く討伐をこなして冒険者としての体裁を整える。人とは違う変則的な動きをする魔物との戦いはある意味鍛錬になるから、僕にとっては一石二鳥だった。
ただ、ルキノにとっては晴天の霹靂なワケで、ますます大きく目が見開かれた。
「話を聞いた日からって……もう何ヶ月も前の」
またコク、と頷く。そう、それからずっと僕はルキノの冒険者活動を見守っていた。
ルキノはいつもソロで、他の冒険者仲間とも情報のやりとりは普通に行うけれど近すぎる距離感になることもない。
討伐も強すぎる相手を選ぶこともなく、むしろ慎重すぎるほど格下の相手を選んでいた。ソロである以上無理はできない。僕にはルキノのそういう慎重さも好ましかった。
「なんでそんな……っ」
頭を抱えてルキノがしゃがみ込む。よほどショックだったらしい。
申し訳なくて、ルキノの傍に立ち尽くしたままルキノがぶつぶつと呟く声を懺悔のような気持ちで聞いていたのだけれど。
「オレごときのせいでアルロード様の貴重なお時間をそんなに無駄にしていたなんて……」
あれ?
「許すまじ……! オレが冒険者をやめればいいのか?」
思っていたのと違うというか、僕のせいでルキノが冒険者の道を諦めようとしてる!!???
「いや、生ぬるい! いっそ、父さんに結婚の話をなんとか頑張って貰うしか」
待って!!! 待ってくれ!!!
あれ以来ずっと冒険者としての活動はあっても、見合いの話なんか無かったから安心していたのに、なぜ急にそんな。
そこまで考えてふと疑問に思った。
125
あなたにおすすめの小説
ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために
ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話
※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」
身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。
死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。
カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。
「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」
献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。
これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
胎児の頃から執着されていたらしい
夜鳥すぱり
BL
好きでも嫌いでもない幼馴染みの鉄堅(てっけん)は、葉月(はづき)と結婚してツガイになりたいらしい。しかし、どうしても鉄堅のねばつくような想いを受け入れられない葉月は、しつこく求愛してくる鉄堅から逃げる事にした。オメガバース執着です。
◆完結済みです。いつもながら読んで下さった皆様に感謝です。
◆表紙絵を、花々緒さんが描いて下さいました(*^^*)。葉月を常に守りたい一途な鉄堅と、ひたすら逃げたい意地っぱりな葉月。
【完結】異世界に召喚された賢者は、勇者に捕まった!
華抹茶
BL
日本の一般的なサラリーマンである竹内颯太は、会社へ出勤する途中で異世界に召喚されてしまう。
「勇者様! どうかこの世界をお救いください!」
なんと颯太は『勇者』として、この世界に誕生してしまった魔王を倒してほしいと言われたのだ。
始めは勝手に召喚されたことに腹を立て、お前たちで解決しろと突っぱねるも、王太子であるフェリクスに平伏までされ助力を請われる。渋々ではあったが、結局魔王討伐を了承することに。
魔王討伐も無事に成功し、颯太は元の世界へと戻ることになった。
「ソウタ、私の気持ちを受け取ってくれないか? 私はあなたがいてくれるなら、どんなことだってやれる。あなたを幸せにすると誓う。だからどうか、どうか私の気持ちを受け取ってください」
「ごめん。俺はお前の気持ちを受け取れない」
元の世界へ帰る前日、フェリクスに告白される颯太。だが颯太はそれを断り、ひとり元の世界へと戻った。のだが――
「なんでまた召喚されてんだよぉぉぉぉぉ!!」
『勇者』となった王太子×『勇者』として異世界召喚されたが『賢者』となったサラリーマン
●最終話まで執筆済み。全30話。
●10話まで1日2話更新(12時と19時)。その後は1日1話更新(19時)
●Rシーンには※印が付いています。
救世の神子として異世界に召喚されたと思ったら呪い解除の回復アイテムだった上にイケメン竜騎士のツガイにされてしまいました。
篠崎笙
BL
剣崎勝利の家は古武道で名を馳せていた。ある日突然異世界に召喚される。勇者としてではなく、竜騎士たちの呪いを解く道具として。竜騎士ゲオルギオスは、勝利をツガイにして、その体液で呪いを解いた。勝利と竜騎士たちは悪神討伐の旅へ向かったが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる