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弟: セレス編 〜鉄壁ツンデレ魔術師は、おねだりに弱い〜
鉄壁ツンデレ魔術師は、手中に落ちる
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「魔力を体感……? どういう意味だ」
来た来た。こういうつんけんしたタイプは自分のことを聞かれるのは嫌いっつーか警戒心高めるだけだし、基本人の事にも興味はない。ただ、自分が興味のある事については、急にガードが緩くなることがあるんだよな。
今みたいに。
魔力の量から見るに優秀な魔術師っぽいし、魔術、魔力関係の珍しいことなら興味があるかも、そう思った俺の読みは正しかった。俺、偉い!
「あ、お姉さーん! エールふたつ持ってきてー!」
お近づきのしるしにエールを一杯おごってやるつもりで注文してから、俺は再び銀髪美形の耳に顔を寄せ、秘密を打ち明けるように小さな声でこう言った。
「俺ん家、家系的に魔力を体で感じられるんだよ。魔術に変換されてない、素の魔力をね」
「そんなことがあるのか……!」
「あるんだよね。俺の兄貴は触れるだけだから想念の良くない魔力に触れちゃあよく魔力酔いしてたけど、俺は見えるから結構自衛もできる」
「魔力が見える、というヤツは学院にもいたな。本当なのか?」
怪訝そうな目で俺を見るけど、こんなに至近距離でも拒絶反応は示さない。ということは生理的に人との接触がダメなんじゃなくて、精神的に距離をとりたいタイプなんだろうなぁ。
その証拠に、さっきまで真っ青だった魔力の色が、ほんのちょっと緑色になってきてる。黄色が混ざるのは、俺に興味が出てきてる証だ。
「そいつがホントかどうかは知らないけど、俺は少なくともホントだよ。お前の魔力はついさっきまで真っ青でトゲトゲが全方位に出てたから、全力で『他人に興味はない』『寄るな!』って言ってるみたいだった。ちなみに体感的にもめちゃくちゃトゲトゲイガイガで痛かったぞ。もー近づくのも大変」
「まぁ、そうだが。それでわざわざ近づいてくるのはどういう了見なんだ」
眉間の皺が深くなる。
「えっ、強風の時って風に向かって歩きたくならない?」
「は?」
「こう、全力で突き刺して、押し返してくる魔力なんて初めてだもん。逆らってみたくならない?」
「……」
銀髪美形はうっすらと唇を開いたまま絶句した。
「ここまで拒絶の魔力放ってるヤツって珍しいから、興味あるじゃん。話してみたいなぁと思って」
「バカなのか……?」
本気で心配そうな顔をされた。いやでも、難しそうなクエストって、やってみたくなるだろ、普通。
冒険者になったばっかりでこんなにパーティー組むのが難しそうなヤツに会えたのって、もう運命だと思うじゃん。これは一種のクエストだ、絶対攻略してやるって思ったよね。
「ついでに、お前魔術師だろ? 魔力もでかくて有能そうだし、オレとパーティー組まない? オレもさっき冒険者になったばっかなんだけど、最初の討伐は一人じゃダメだって言われたろ?」
「言われたな。一人で魔獣など倒せるというのに不愉快だ」
「あー、ソロ希望なんだ。一緒に戦ってみて嫌なら最初だけでいいからさ」
「……」
胡乱げな表情で凝視されたから、にかっと笑って見せた。至近距離でのアイスブルーの冷たい瞳、子供だったら泣くと思うぞ。でも女の子なら惚れちゃうかもなぁ、なんてアホなことを考えながら、俺はたった今届いたエールを持ち上げる。
「俺、魔法剣士のセレス。魔術は回復系と身体強化系、あと防御系」
「僕は主に攻撃系だ。……バランスはいいな」
ふむ、としばらく考えて、銀髪美形は「いいだろう」と答えてくれた。
「僕も君の体質には少し興味がある。道中で話を聞かせてくれるなら」
「交渉成立! よろしくな、相棒!」
エールを持ち上げて見せると、銀髪美形もしぶしぶジョッキを持ち上げて乾杯してくれた。周囲のどよめきに、内心鼻高々だ。
「そろそろこの腕を離してくれ。……それに、相棒呼びも不愉快だ」
「だって名前知らねぇもん」
「フィンレーだ」
「じゃ、早速クエスト探そうぜ。せっかく二人なんだ。初期クエストで一番難易度高いヤツにしないか? ソロで行こうと思ってたくらいだ、フィンレーも腕には自信があるんだろ」
「もちろんだ」
思い通りに事が運んだことにホッとする。町の近くで薬草ひとつ、なんて依頼だとお互いの実力も分からないし、たかだか三十分程度でパーティー解散、なんてことにもなりかねないもんな。
このクエストだけでサヨナラされるにしても、ギルドで会ったら「よう」って声かけて、一緒に酒を飲めるくらいには仲良くなりたい。なんせ、冒険者になって初のパーティーメンバーなんだし。
そうして会計を済ませる俺より一足先に依頼版を見上げていたフィンレーは、若干苦い顔をしていた。
「いいのがない?」
「いや、難易度Aがひとつだけある。手応えはありそうだが……ちょっと遠いな。行って帰るまでに数日はかかりそうだ」
「ふうん。ま、俺は宿に泊まる金が浮くから野営の準備品くらいは買えそうだし、別に他に予定もないから別にいいけど。フィンレーが嫌なら、もっと軽めのヤツにしたら?」
「逞しいな……だが、冒険者になるということは、そういうことか」
なんだかよく分からない納得の仕方をしたフィンレーは「これにしよう」と、結局は難易度Aの依頼書を手に取った。
***
「ちょ……セ……セ……セレス! なぜ、そんなに離れて歩くんだ!」
5mは離れたところから、フィンレーが叫びながら走ってくる。早速怒られてしまった。
来た来た。こういうつんけんしたタイプは自分のことを聞かれるのは嫌いっつーか警戒心高めるだけだし、基本人の事にも興味はない。ただ、自分が興味のある事については、急にガードが緩くなることがあるんだよな。
今みたいに。
魔力の量から見るに優秀な魔術師っぽいし、魔術、魔力関係の珍しいことなら興味があるかも、そう思った俺の読みは正しかった。俺、偉い!
「あ、お姉さーん! エールふたつ持ってきてー!」
お近づきのしるしにエールを一杯おごってやるつもりで注文してから、俺は再び銀髪美形の耳に顔を寄せ、秘密を打ち明けるように小さな声でこう言った。
「俺ん家、家系的に魔力を体で感じられるんだよ。魔術に変換されてない、素の魔力をね」
「そんなことがあるのか……!」
「あるんだよね。俺の兄貴は触れるだけだから想念の良くない魔力に触れちゃあよく魔力酔いしてたけど、俺は見えるから結構自衛もできる」
「魔力が見える、というヤツは学院にもいたな。本当なのか?」
怪訝そうな目で俺を見るけど、こんなに至近距離でも拒絶反応は示さない。ということは生理的に人との接触がダメなんじゃなくて、精神的に距離をとりたいタイプなんだろうなぁ。
その証拠に、さっきまで真っ青だった魔力の色が、ほんのちょっと緑色になってきてる。黄色が混ざるのは、俺に興味が出てきてる証だ。
「そいつがホントかどうかは知らないけど、俺は少なくともホントだよ。お前の魔力はついさっきまで真っ青でトゲトゲが全方位に出てたから、全力で『他人に興味はない』『寄るな!』って言ってるみたいだった。ちなみに体感的にもめちゃくちゃトゲトゲイガイガで痛かったぞ。もー近づくのも大変」
「まぁ、そうだが。それでわざわざ近づいてくるのはどういう了見なんだ」
眉間の皺が深くなる。
「えっ、強風の時って風に向かって歩きたくならない?」
「は?」
「こう、全力で突き刺して、押し返してくる魔力なんて初めてだもん。逆らってみたくならない?」
「……」
銀髪美形はうっすらと唇を開いたまま絶句した。
「ここまで拒絶の魔力放ってるヤツって珍しいから、興味あるじゃん。話してみたいなぁと思って」
「バカなのか……?」
本気で心配そうな顔をされた。いやでも、難しそうなクエストって、やってみたくなるだろ、普通。
冒険者になったばっかりでこんなにパーティー組むのが難しそうなヤツに会えたのって、もう運命だと思うじゃん。これは一種のクエストだ、絶対攻略してやるって思ったよね。
「ついでに、お前魔術師だろ? 魔力もでかくて有能そうだし、オレとパーティー組まない? オレもさっき冒険者になったばっかなんだけど、最初の討伐は一人じゃダメだって言われたろ?」
「言われたな。一人で魔獣など倒せるというのに不愉快だ」
「あー、ソロ希望なんだ。一緒に戦ってみて嫌なら最初だけでいいからさ」
「……」
胡乱げな表情で凝視されたから、にかっと笑って見せた。至近距離でのアイスブルーの冷たい瞳、子供だったら泣くと思うぞ。でも女の子なら惚れちゃうかもなぁ、なんてアホなことを考えながら、俺はたった今届いたエールを持ち上げる。
「俺、魔法剣士のセレス。魔術は回復系と身体強化系、あと防御系」
「僕は主に攻撃系だ。……バランスはいいな」
ふむ、としばらく考えて、銀髪美形は「いいだろう」と答えてくれた。
「僕も君の体質には少し興味がある。道中で話を聞かせてくれるなら」
「交渉成立! よろしくな、相棒!」
エールを持ち上げて見せると、銀髪美形もしぶしぶジョッキを持ち上げて乾杯してくれた。周囲のどよめきに、内心鼻高々だ。
「そろそろこの腕を離してくれ。……それに、相棒呼びも不愉快だ」
「だって名前知らねぇもん」
「フィンレーだ」
「じゃ、早速クエスト探そうぜ。せっかく二人なんだ。初期クエストで一番難易度高いヤツにしないか? ソロで行こうと思ってたくらいだ、フィンレーも腕には自信があるんだろ」
「もちろんだ」
思い通りに事が運んだことにホッとする。町の近くで薬草ひとつ、なんて依頼だとお互いの実力も分からないし、たかだか三十分程度でパーティー解散、なんてことにもなりかねないもんな。
このクエストだけでサヨナラされるにしても、ギルドで会ったら「よう」って声かけて、一緒に酒を飲めるくらいには仲良くなりたい。なんせ、冒険者になって初のパーティーメンバーなんだし。
そうして会計を済ませる俺より一足先に依頼版を見上げていたフィンレーは、若干苦い顔をしていた。
「いいのがない?」
「いや、難易度Aがひとつだけある。手応えはありそうだが……ちょっと遠いな。行って帰るまでに数日はかかりそうだ」
「ふうん。ま、俺は宿に泊まる金が浮くから野営の準備品くらいは買えそうだし、別に他に予定もないから別にいいけど。フィンレーが嫌なら、もっと軽めのヤツにしたら?」
「逞しいな……だが、冒険者になるということは、そういうことか」
なんだかよく分からない納得の仕方をしたフィンレーは「これにしよう」と、結局は難易度Aの依頼書を手に取った。
***
「ちょ……セ……セ……セレス! なぜ、そんなに離れて歩くんだ!」
5mは離れたところから、フィンレーが叫びながら走ってくる。早速怒られてしまった。
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