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弟: セレス編 〜鉄壁ツンデレ魔術師は、おねだりに弱い〜
鉄壁ツンデレ魔術師は、機嫌が悪い
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約束通りそのままパーティーを組んだ俺たちは、順調にクエストをこなしていて、冒険者としてはすこぶる好調に実績を積んでいく事が出来ていた。
オレは冒険者になる前から兄ちゃんのお陰で魔物と戦った経験もあったし、魔法剣士だから普通の剣士に比べると対応できる魔物が多い。フィンレーは四大属性の魔法をかなり高いレベルで使いこなせる上に魔力量も多い。初心者としてはそもそも頭ひとつ抜けていた。
期間で区切られる最短でランクが上がり最低のEからDを経て、初めてのクエストから半年たった今日、Cランクに上がったところだ。
ギルドでも注目の若手冒険者。このところ一目置かれるようになってきてる。ホント極めて好調。
ところがだ。
クエストで街の外に出てる時はめちゃくちゃ快適なのに、街に戻ると徐々にフィンレーの機嫌が悪くなってくる事が増えてきた。特に他のパーティーの冒険者達と連日呑みに行ったりすると覿面だ。もしかすると寂しいのかな。
でもさ、皆が俺を呑みに誘うのって、フィンレーの事聞きたいからってのもかなり多いんだよな。
フィンレーってホントに俺以外のヤツらに声かけられても無視するか必要最低限の事しか喋らないからさ、皆フィンレーと喋ってみたい、どんなヤツなんだ? ってのが全部俺に回ってくるわけだ。
もちろん単に冒険者同士の情報交換とか、たまたま気があってよく呑むようになったとかもあるから、必然的に街にいる間は呑むことが多くなってくる。
今日もおおいに呑む予定だ。
今日はCランクになったお祝いに、仲良くなった冒険者のおっちゃん達が奢ってくれるっていうからいつもは呑めない高い酒も呑んじゃえるかも知れない。
おっと、でもフィンレーとも祝杯あげたいもんな。意外にも甘いモノが好きなフィンレーのために、今日はアイツの好きな甘い酒とケーキでも買っておこう。そんでキリのいいタイミングで呑みも切り上げて、部屋で改めて二人で祝えばいい。
そう決めてスッキリした俺は、その夜おっちゃん達と楽しく呑みまくっていた。
俺が部屋にすぐに戻りやすいよう、宿屋の下の階にある飲み屋でどんちゃん楽しく呑んでいると、急に周りが騒がしくなった。
「おっ、保護者の登場だ」
「いつ見ても別嬪さんだなぁ」
振り返ったらフィンレーが居た。
うわ、魔力が赤黒い! こりゃあだいぶ怒ってるんじゃ……。全方位に向けてトゲトゲ放たれる魔力は見るだけでもうチクチクする。
「だいぶ酔ってるね」
笑顔なのに、声がめっちゃ冷たい。
さすがにフィンレーの不機嫌を察したらしいおっちゃんの一人が、フィンレーの肩をポンポンと軽く叩く。
「まぁまぁ、今日はCランクに昇格しためでてぇ日だ。そんなおっかない声出すなって」
「触るな」
フィンレーのひと言に、場の空気が凍りついた。オレは慌ててフィンレーにゴメン、のポーズで詫びを入れる。別に何か約束してたわけじゃないけど、オレだってフィンレーと祝おうと思って準備だってしてるんだ、今日は早く切り上げようと思ってたんだし。
「ごめんって。あと半刻! 半刻で戻ってくるからさ」
「……」
ムスッとはしてるけど、こう見えてフィンレーは話がわからないヤツじゃない。重ねてお願いすれば、大体のことは許してくれたりするんだ。
「ね、お願い!」
チラッと見上げたら、フィンレーはしょうがないな、という顔でオレを見下ろしている。ため息をひとつつくとフィンレーはくるっと踵を返した。
「……分かった」
それだけ告げて、あとは何も言わずに二階のオレ達の部屋へと帰っていく。それをポカンとしたまま見送ったおっちゃん達は、扉がバタンと閉まると同時に石化が解けたみたいに笑い出した。
「いやー、おっかねーな」
「完全に尻に敷かれてるじゃねーか」
「まぁあんだけの美人になら睨まれても勃つな!」
ガハハハハ、と豪快な笑いが飛び交って、一気に場が盛り上がる。フィンレーのあんな態度、もっと怒ってもいい筈なのにこんな風に笑い飛ばしてくれる。本当にいいヤツばっかりなんだよな。
きっちり半刻楽しく呑んで、皆よりもひと足早く席を立つ。
あっちからこっちから、からかう声が飛んだ。
「おっ、いいなぁ。これから美人と二人で飲み会かよ」
「混ざりてぇ~」
「大人しく戻ってちゃーんとご機嫌とれよ!」
「Cランク祝いに娼館にでも連れてってやろうかと思ってたんだが、また今度だなぁ」
聞き捨てならない言葉に、オレは全力で振り返った。
「えっ!!!? 今、何て!?」
「ん? ああ、今度娼館に連れてってやるってさ。良かったな」
「行く! 行く、行く、行く!!!!」
思いっきり連呼していた。
だって、娼館なんて行ってみたいに決まってるじゃん!!!
「そんな焦らんでもちゃんとそのうち連れてってやるって」
爆笑が巻き起こるがそんなのは気にしていられない。
「今がいい!!!」
オレの叫びにひとしきり笑ったおっちゃん達は、ちょっとだけ困った顔をする。
「いやぁ、でもなぁ。さっきの様子じゃあのかわい子ちゃん、部屋でお前のこと待ってんじゃねぇのか?」
「今日はCランクに上がった日だもんな」
「お前と祝いたいって思ってんじゃねぇのか?」
「だよなぁ、帰ってやった方がいいんじゃねぇか?」
「そ、そうだけど……でも」
オレは冒険者になる前から兄ちゃんのお陰で魔物と戦った経験もあったし、魔法剣士だから普通の剣士に比べると対応できる魔物が多い。フィンレーは四大属性の魔法をかなり高いレベルで使いこなせる上に魔力量も多い。初心者としてはそもそも頭ひとつ抜けていた。
期間で区切られる最短でランクが上がり最低のEからDを経て、初めてのクエストから半年たった今日、Cランクに上がったところだ。
ギルドでも注目の若手冒険者。このところ一目置かれるようになってきてる。ホント極めて好調。
ところがだ。
クエストで街の外に出てる時はめちゃくちゃ快適なのに、街に戻ると徐々にフィンレーの機嫌が悪くなってくる事が増えてきた。特に他のパーティーの冒険者達と連日呑みに行ったりすると覿面だ。もしかすると寂しいのかな。
でもさ、皆が俺を呑みに誘うのって、フィンレーの事聞きたいからってのもかなり多いんだよな。
フィンレーってホントに俺以外のヤツらに声かけられても無視するか必要最低限の事しか喋らないからさ、皆フィンレーと喋ってみたい、どんなヤツなんだ? ってのが全部俺に回ってくるわけだ。
もちろん単に冒険者同士の情報交換とか、たまたま気があってよく呑むようになったとかもあるから、必然的に街にいる間は呑むことが多くなってくる。
今日もおおいに呑む予定だ。
今日はCランクになったお祝いに、仲良くなった冒険者のおっちゃん達が奢ってくれるっていうからいつもは呑めない高い酒も呑んじゃえるかも知れない。
おっと、でもフィンレーとも祝杯あげたいもんな。意外にも甘いモノが好きなフィンレーのために、今日はアイツの好きな甘い酒とケーキでも買っておこう。そんでキリのいいタイミングで呑みも切り上げて、部屋で改めて二人で祝えばいい。
そう決めてスッキリした俺は、その夜おっちゃん達と楽しく呑みまくっていた。
俺が部屋にすぐに戻りやすいよう、宿屋の下の階にある飲み屋でどんちゃん楽しく呑んでいると、急に周りが騒がしくなった。
「おっ、保護者の登場だ」
「いつ見ても別嬪さんだなぁ」
振り返ったらフィンレーが居た。
うわ、魔力が赤黒い! こりゃあだいぶ怒ってるんじゃ……。全方位に向けてトゲトゲ放たれる魔力は見るだけでもうチクチクする。
「だいぶ酔ってるね」
笑顔なのに、声がめっちゃ冷たい。
さすがにフィンレーの不機嫌を察したらしいおっちゃんの一人が、フィンレーの肩をポンポンと軽く叩く。
「まぁまぁ、今日はCランクに昇格しためでてぇ日だ。そんなおっかない声出すなって」
「触るな」
フィンレーのひと言に、場の空気が凍りついた。オレは慌ててフィンレーにゴメン、のポーズで詫びを入れる。別に何か約束してたわけじゃないけど、オレだってフィンレーと祝おうと思って準備だってしてるんだ、今日は早く切り上げようと思ってたんだし。
「ごめんって。あと半刻! 半刻で戻ってくるからさ」
「……」
ムスッとはしてるけど、こう見えてフィンレーは話がわからないヤツじゃない。重ねてお願いすれば、大体のことは許してくれたりするんだ。
「ね、お願い!」
チラッと見上げたら、フィンレーはしょうがないな、という顔でオレを見下ろしている。ため息をひとつつくとフィンレーはくるっと踵を返した。
「……分かった」
それだけ告げて、あとは何も言わずに二階のオレ達の部屋へと帰っていく。それをポカンとしたまま見送ったおっちゃん達は、扉がバタンと閉まると同時に石化が解けたみたいに笑い出した。
「いやー、おっかねーな」
「完全に尻に敷かれてるじゃねーか」
「まぁあんだけの美人になら睨まれても勃つな!」
ガハハハハ、と豪快な笑いが飛び交って、一気に場が盛り上がる。フィンレーのあんな態度、もっと怒ってもいい筈なのにこんな風に笑い飛ばしてくれる。本当にいいヤツばっかりなんだよな。
きっちり半刻楽しく呑んで、皆よりもひと足早く席を立つ。
あっちからこっちから、からかう声が飛んだ。
「おっ、いいなぁ。これから美人と二人で飲み会かよ」
「混ざりてぇ~」
「大人しく戻ってちゃーんとご機嫌とれよ!」
「Cランク祝いに娼館にでも連れてってやろうかと思ってたんだが、また今度だなぁ」
聞き捨てならない言葉に、オレは全力で振り返った。
「えっ!!!? 今、何て!?」
「ん? ああ、今度娼館に連れてってやるってさ。良かったな」
「行く! 行く、行く、行く!!!!」
思いっきり連呼していた。
だって、娼館なんて行ってみたいに決まってるじゃん!!!
「そんな焦らんでもちゃんとそのうち連れてってやるって」
爆笑が巻き起こるがそんなのは気にしていられない。
「今がいい!!!」
オレの叫びにひとしきり笑ったおっちゃん達は、ちょっとだけ困った顔をする。
「いやぁ、でもなぁ。さっきの様子じゃあのかわい子ちゃん、部屋でお前のこと待ってんじゃねぇのか?」
「今日はCランクに上がった日だもんな」
「お前と祝いたいって思ってんじゃねぇのか?」
「だよなぁ、帰ってやった方がいいんじゃねぇか?」
「そ、そうだけど……でも」
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