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期待の新人
しおりを挟む「は、はい!」
目線を合わせたソウタは、男の子にあまり興味がないメグでも惚れてしまうほどのイケメンだ。思わず後ろに引いてしまうメグをよそにソウタはさらに近づく。
「だったら、来年中学だよね??オレは松田 颯太今は桜中学の一年生。メグちゃんの一個上なんだ。よろしくね!」
「ソウタ、距離近いわよ…」
「ごめんごめん。」
看護師さんが呆れながらそういうとソウタは笑いながら立ち上がった。
「ほら、レンも。」
といってあの子の方を向く。
「俺、あいつの兄ちゃんなの、まあ詳しく言うと一番上の兄ちゃん。」
「ソウタは長男、次男挟んでレンが三男」
「いっぱいいるんですね…!」
「全員で5人いるよ!男3の女が2!」
話を聞いていた看護師さんが口を挟む。松田家は大家族構成のようだ。
いつまで経っても本人がこちらにこないのをみて
「お~い、レンく~ん。」
と茶化しながらソウタがレンを呼びに行く。
「お前が最初に言い出したんだろーが。大丈夫。メグちゃん優しい子だよ、声掛けてみなきゃわからんだろ。」
ナースステーションのそとでソウタが説得する声が聞こえる。
その様子をみながら看護師さんがいった。
「昔はね、あんな子じゃなかったのよ、まあソウタとかよりは控えめだったかもしれないけど。なにも喋らないし、私達も手が付けられないのよ、年齢の問題かもしれないわね。」
喋らなくなった原因はまさしく昨日ワカナがいっていた、あの事件のことなのだろう。
しばらくして説得し疲れたソウタがやれやれと戻ってきた。
「どう??」
「ぜんっぜん。もう聞く耳も持ってねえ。全無視だよ。どっかいったし。」
そういってソウタはため息をついた。
それを聞いた看護師さんもやれやれといった様子だ。
「中学デビューだけは失敗させたくねえなあ」
ぼんやりと窓の外をみつめてソウタが呟く。ふとメグのほうを向いた。
「あのさ、メグちゃん。」
「はい…?」
「レンと、友達になってあげてくれないか??」
「レンくんと??」
「うん、きっとあいつのことだし、多分自分からは話しかけねえ。それに、たぶんすぐにはなってくれないとおもう。でも、俺もうあいつの暗い顔みたくなくて。」
悲しそうな顔をしてソウタが呟く。ほっとけないんだ、そんな風に聞こえた。
「わかりました、私でよければ。」
メグの反応にソウタは目を見開いた。
「ほんと?!」
「…はい。自信ないですけれど。」
ゆっくりでいいからね、なんなら、中学からでいいから。そんなソウタの優しい言葉に背中を押され、レンと友達になることを決意したメグであった。
とはいったものの、なにも接点がない上、自分から話すことをしない相手とどう友達になるべきなのだろうか。
一つ、いいことがある。
どうやら松田家はこの病院に隣接した家らしい。看護師さんともすっかり仲良くなったメグは、母親ついでに病院に出向くようになった。
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