4 / 12
短編集
Snow Angels
しおりを挟む「う、わー!」
窓にかかったカーテンを開けた途端、目に飛び込んできたのは真っ白な雪、雪、雪。
「ねぇ、ねぇ、和司さん!! 雪!! 雪がっ」
「……朝っぱらからテンション高いなぁ」
いかにも眠たげな返事が返ってきた。和司さんは大きく伸びをひとつして、それで少し目が覚めたのかスッキリした顔で笑った。
「雪がどうかした? 雪なんてここじゃ珍しくないだろ」
彼は手にしていたコーヒーをテーブルに置くと、窓の外の景色に浮かれている私の傍へやってきた。
あまり興味なさそうな眼差しで窓の外を見やった彼は、次の瞬間眩しそうに目を細めた。それを下から見上げつつ、私は内心してやったりな気分だ。
「わ、確かにこれは……凄いね」
「でしょう!? もうビックリしちゃって!」
「一晩でこんなに積もるもんなんだな」
窓に張り付くように立っている私を、和司さんは背後から包むように抱きしめた。軽い抱擁の、その穏やかさが心地好い。
「寒くない?」
「はい!」
窓辺にいればどうしてもひんやりした冷気で体が冷える。けど……
「和司さんがぎゅってしてくれてますから」
だからとても暖かい。
「ん。そっか」
素っ気ないくらい短い返事はどこか嬉しそうで、くすぐったい。
温かい沈黙が流れて、
「朝ご飯食べたら、お庭に出ても良いですか?」
彼の胸に体を預けながら見上げれば、彼の優しい視線と絡む。
「良いけど、大丈夫?」
「何がですか?」
和司さんの言わんとすることが分からなくて聞き返したら、意地悪な笑顔が返ってきた。
「うん。尻もちとかね、色々心配かなって」
「なっ!?」
真っ白な雪原に、くっきりはっきり凹んだ尻もち跡。そんな光景を想像して私は耳まで熱くなった。それはものすごく恥ずかしいかもしれない。
――いや、待って。何で私が尻もちをつくのが大前提なの!?
「大丈夫ですってば!」
子どもじゃないんだし、慎重に歩くもの!
「どうだかね」
「和司さん!!」
ムキになって声を荒げれば、彼は楽しそうな笑い声を上げて飛び退いた。
「ごめん、ごめん。ほら、機嫌なおして。午前中の予定が決まったわけだし、急いで朝ごはんを食べないとね」
「きゃ!?」
急に腕を引っ張るから私は彼の胸へ倒れ込んだ。驚く私の頬に、額に、キスの雨が降ってくる。それだけで、からかわれたことも腹を立てたことも、全部どうでも良くなってしまう。
ひとしきり降り続けたキスが止んで、視線が絡む。そのまま見つめあっていたい気もしたけれど、私は少し目を伏せた。
ゆっくりと彼の顔が近づき唇が重なる。最初は軽く、短く。それからだんだん深く、長くなっていく。
早くご飯の支度をしなきゃ、とか、カーテン開けっ放しで誰かに見られちゃったらどうしよう、とか。そんな現実的な心配が頭をよぎるけれど、それは片っ端から淡雪のように消えていく。
和司さんと私は有給休暇を利用して、昨日から館花家の別荘へ来ている。
正確に言えば、館花家が所有する別荘のうちのひとつへ、だ。別荘があるだけでも庶民の私には驚くべきことなのに、複数あると言われたらもう凄すぎて意味が分かりません!
避暑のために作られた別荘だそうで、建てた当初は『深い雪に閉ざされる冬はほとんど利用しないだろう』と思っていたらしい。
けど、実際には冬の休暇を静かに過ごすにちょうど具合が良かったということで、夏も冬もよく利用するそうだ。
別荘の管理人さんから聞いた話によれば、今年は雪が少ないらしい。言われてみれば確かに昨日は広い庭のあちこちから黒い地面が露出していた。
けどそれは昨日まで、だ。
一体何センチ積もったんだろう? 計ってみないと正確なところは分からないけど、三十センチぐらいはありそうだ。
高気密で暖かく、そして防音も完璧な家の中にいては、外が吹雪いていても気が付かない。私たちが昨夜のんびりと過ごしたその間に、どれほど酷く天候が荒れたんだろう?
私たちだけが世界から隔絶されていたような気がして少し怖い反面、嬉しかったりもする。
「待たせてごめん」
玄関先でぼうっと考え事をしていた私の背に和司さんの声がかかった。
「もういいんですか?」
「ああ。――まったく、兄貴にも困ったもんだ。急ぎでもなんでもない用事でかけてきやがって。いまどき小学生でもあんなわざとらしい嫌がらせなんてしないっつうの!」
忌々しそうに顔を歪める彼に、私はちょっと噴き出した。
相変わらず館花専務は和司さんをからかって遊ぶのが好きらしい。
朝ごはんを食べ終え、外に出るための準備をしていたら和司さんの携帯が鳴った。液晶画面を見た瞬間ものすごく嫌そうな顔をしたから、『もしかして専務?』と思ったのだけれど……
一瞬迷ったあと通話を開始した和司さんが
「もしもし? 何だよ兄貴、朝っぱらから。急ぎの用なのか?」
と切り出したことから、私の予想は正解だと知れた。
私は会話の邪魔にならないようにその場を離れて、先にこうして外へ出て彼を待っていたのだ。
快適な温度に保たれている屋内から出たのだからさすがに寒いけれど、でも防寒対策もばっちりだし、日差しもあるので耐えられないと言うほどではない。
陽光にキラキラ光る雪は夢のように綺麗だ。
時折、遠くで枝から雪が落ちる音なんかも聞こえて、どこか懐かしいような気分になってくる。
だから和司さんを待つ時間は全然苦じゃなかった。
「和司さんのことが心配で仕方ないんじゃないですか?」
「よしてくれよ!」
と嫌がるけど、和司さんと専務は少し歳が離れてるし、専務にとっては可愛い弟なんだと思うけどな。――なんて言ったら和司さんがますます拗ねそうなので、心の中にしまっておく。
「兄貴のことなんて、どうでもいい。話題にするだけ不吉だ! やめやめ!」
酷い言い様だ。専務が可哀想になったけど、でもきっと専務は面と向かって悪態を吐かれたって動じたりしない。それどころかふふんって鼻で笑たり、火に油を注ぐようなことを言ってからかうんだろうなぁ。その光景がありありと脳裏に浮かぶ。
「――で、雪乃。これからどうしたい?」
和司さんの声で慌てて我に返った。
目線を上げた途端、目の前に彼の端正な顔があって少し驚いた。私の顔を覗き込むように身を屈めていたようだ。
だいぶ慣れたつもりだけど、でも今みたいな不意打ちにはまだ弱い。胸の内を見透かすような不思議な色の瞳に見惚れてしまう。
「雪乃?」
「あ、いえ、何でもないです!」
慌てて取り繕う私の頭をくしゃりと撫でる。ニット帽と手袋越しに感じる彼の手は大きくて安心できるけど、でもやっぱり直に触って貰ったほうが心地いいかな、なんて思っちゃう。
「実は一回やってみたかったことがあるんです!」
管理人さんから今年は雪が少ないって言われてたから諦めてたんだけど。でも、この積雪なら絶対出来る!
ちょっと怖いけど、でも思い切って!!
私は目を瞑って仰向けに倒れた。
「なっ! 雪乃!?」
慌てたような和司さんの声が聞こえた次の瞬間、ばさりと言う音と共に私は雪の上に仰向けに寝転んでいた。視界の端に雪が、そして目の前には青い空。頬に落ちた雪が冷たいけれど、予想以上に気持ちいい。
雪って結構重いから上手くいくか分からないけど……
私は大の字に投げだした腕と足をばたつかせた。腕を動かすたびに服と手袋の境から雪が入り込んで冷たい。
「やっぱ冷たーい!」
「冷たーいじゃないだろ! いきなり倒れたら危ないだろ!!」
「だって、一度やってみたかったんですもん。スノーエンジェル!!」
初めてやってみたから、ちゃんとエンジェルになってるかどうか分からないけど、やり方は間違ってないんだからきっとそれらしい形にはなってるはず。起き上がって確かめてみなきゃ。
……とそこまで考えて気が付いた。
エンジェルの形を崩さないように起き上がるにはどうしたら良いんだろう。腹筋を使って上半身を起こす。結構疲れそうだけど、そこまではまあ出来なくはない。けど、そこからどうやって立てばいいの!?
とりあえず上半身を起こしてみたものの。やっぱり綺麗に発ち上がる方法が思いつかない。足を曲げて立ち上がれば確かに立てるけど、エンジェルのスカート部分に足跡が残っちゃう。
「ごめんなさい、ちょっと手を貸してくだ――」
「嫌だね。自分で寝転がったんだから、自分で起きなよ」
怒ったような顔、冷たい言葉が返ってきた。
「和司さん……」
「なーんてね。嘘。ほら、つかまって。でも危ないのは本当だから、次からはあんなに勢いよく倒れちゃダメだよ」
一瞬前の怖い顔が嘘みたいな優しい口調に、私はほっと胸をなで下ろした。
「はい。次からは気をつけます!」
「よろしい」
苦笑いと一緒に差し伸べられた手につかまった。和司さんの手に力が入ったその瞬間。
どさどさどさーっと大きな音がした。多分、屋根に積もった雪が大量に落ちた音だったのだと思う。
和司さんも私も一瞬、その音に気を取られた。それがいけなかったんだと思う。和司さんがバランスを崩した。
「わっ!?」
「きゃ!」
繋いだ手が離れて私は雪の上に尻もちをつき、私の上に転ぶまいと和司さんは体を捻って避け、すぐ横に倒れ込んだ。ぼすりという音と共に雪煙が舞う。
「和司さん!? 大丈夫ですか!! 怪我は?」
「あー……びっくりした」
慌てふためく私をよそに、和司さんはのんびりしたものだ。
「和司さん!」
「ああ、大丈夫だよ。どこも何ともないからさ」
答えがないことに焦れて名前を呼んだらやっと返事が返ってきた。怪我がないと聞いてほっと胸をなで下ろす。
「しかし、こうやって空を眺めるのはなかなか気持ちがいいね」
「ですよね! ちょっと冷たいですけど」
「ああ」
少しの間、並んで空を見上げる。何も喋らなかったけど、それでも暖かい時間が流れた。
「ついでだから俺もやってみるかな」
沈黙を破った彼はそう言うなり、さっき私がやったみたいに手足をばたつかせた。雪が飛び散るほど凄い勢いでばたつかせるから、ついつい声を上げて笑ってしまった。
どうにかこうにか立ち上がって、ふたり並んで自分たちが作ったスノーエンジェルを眺めた。
私のも和司さんのもちゃんと形になっていた。
けれど。
私のはお尻の部分がくっきり凹んでいて――さっき和司さんが転んだ時に尻もちをついたし、その後も座ったまま空を見ていたから――、和司さんのは大きすぎて何だか……
「可愛って言うより……」
「なにが?」
「和司さんのエンジェル」
身長が高いから可愛い天使ではなく、スタイルの良い天使になっちゃってる!
スノーエンジェルは子ども体型のほうが可愛い、と確信した。和司さんが可愛い天使を作るなら頭も左右に振って、頭部を大きくしないとね。
「可愛くなくて悪かったな!」
「え? きゃーーー!!!」
悪く言うつもりはなかったんだけど、思い返せば圧倒的に言葉が足りなかった。拗ねた和司さんに頭から雪を被せられて悲鳴を上げた。
「つめたっ!」
首筋からマフラーの間へ雪が滑り込む。
「誤解です! そう言う意味じゃなくて!」
「じゃあどういう意味だよ!」
今度はふわふわの雪玉が飛んできたけど、体には当たらなかった。
和司さんは私のことを責めるような事を言っているのに、楽しそうに笑っている。私が言いたかったこととか、言い忘れたこととか全部お見通しで、その上でからかってるんだ。
「スタイルが良すぎるから、可愛い天使っていうより、格好いい天使になっちゃってるって意味ですー!」
私は足元の雪を拾って、彼に向かって放り投げた。雪玉みたいに握っていないから、私の投げた雪は彼に届く前に落ちて消えた。
そこから先はもうただの雪合戦で。そろそろ疲れたから家に戻ろうってなった頃にはお互い雪まみれで、おまけに隙間から侵入した雪のせいで服も靴下も手袋の内側もびっしょりになっていた。
「早く家に戻ろう。これじゃ俺はともかく雪乃が風邪ひきそうだ」
動いている間は暑かったけど、止まってしまうと途端に体が冷えはじめた。私は和司さんに手を引かれながら家へと戻る。
さっきまでは誰も踏み荒らしていない綺麗な雪原だったのに、今はあちこちに足跡や雪玉を作った跡が残っている。
たまには童心にかえってはしゃぐのも悪くない。少年みたいな笑顔で笑う和司さんを沢山見られて嬉しかった。彼の背中を見ながら、溢れてくる幸せを噛みしめた。
「雪乃、大丈夫? 寒い?」
何も言わない私を心配してか、和司さんが振り返った。私は違うと答えて首を振った。
「家を出る前にお風呂沸かしておいたんで、すぐ入れますよ」
「やった!」
嬉しそうに笑う和司さんは、陽光に光る雪よりも眩しくて、冬の青空より爽やかだ。
「で、当然、一緒に入るんだよね?」
「えっ?」
「だって、そうしないと後になった人が風邪引いちゃうじゃん」
「一階と二階のお風呂両方沸かしてき――」
「いやー、雪乃と一緒に風呂! 楽しみだ。って言うかもう待てないから急ごう!!」
「ちょ、和司さん!」
人の話はちゃんと聞いてよ! 同時に入れるように二つのお風呂沸かしてきたって言ってるのに!! もしかして聞いてないふりですか? 聞こえてないふりですか? わざとですか!!!
「人の話はちゃんと聞いてくださいっ!」
私の叫びは白い雪に消えて、和司さんには届いていないようだ。
前言撤回。彼の笑顔は眩しくて爽やかじゃなくて、眩しくて爽やかを装った何か黒っぽいものでした!!!
-----------------
2016.8.29 再掲載にあたり加筆修正を加えました。
初出:2014.2.14
0
あなたにおすすめの小説
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
記憶をなくしても君は忘れない
水城ひさぎ
恋愛
本田光莉(ほんだひかり)、アメリカ・ロサンゼルス在住フォトグラファー、28歳。光莉には、松村理乃(まつむらりの)という同い年の異母姉がいる。行方不明になった理乃を探すため、日本へやってきた光莉は、高校時代の元カレ、月島拓海(つきしまたくみ)と再会する。しかし、彼は高校時代以降の記憶を喪失していた……。
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる
若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ!
数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。
跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。
両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。
――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう!
エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。
彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。
――結婚の約束、しただろう?
昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。
(わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?)
記憶がない。記憶にない。
姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない!
都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。
若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。
後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。
(そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?)
ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。
エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。
だから。
この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し?
弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに?
ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる