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フェア書き下ろし
小さな記憶
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電子書店『どこでも読書』様で開催されました『GWエタニティフェア2013』用に書下ろした短編(2013.5.7より期間限定配信)の再掲載となります。
※出版社より許可を得て掲載しております。
-----------------
ドライブの途中で立ち寄ったサービスエリアには広い公園があった。
ちょっとした渋滞に巻き込まれた後の私たちは、心地よさそうな木陰に惹かれて迷わずそこに置かれたベンチに腰を下ろした。
木々の新緑が目に鮮やかで、吹き抜ける風も瑞々しい。ドライブで凝り固まった体をほぐすにはちょうどいい。高速道路を走り過ぎる車の音を遠くに聞きながら、私は自動販売機で買ったカフェオレを少しずつ飲む。隣に座る和司さんも、私と同じように無言で手にした緑茶を飲んでいる。
「雪乃って、それよく飲んでるよね。好きなの?」
和司さんは唐突にそう言って、私の飲んでいるカフェオレの缶を指さした。
「好きですよ」
だって特別な思い出があるんだもの。でもきっと和司さんはもう忘れてる。私は缶を両手でぎゅっと握りなおした。その横で和司さんは「ふーん」と何でもないことのように相槌を打った。
ほらね。覚えてない。他愛もないことだから覚えてなくても仕方ない。けどちょっと寂しい。そう思うのは我がままかな。
ちらりと和司さんの方を見ようとして驚いた。なんでそんな至近距離で私の顔を覗き込んでいるんですか!? 顔に何かついてる!? 私は慌てて頬に手をやった。
「な、なにか?」
どもりながら尋ねると、彼は楽しげに笑った。
「じゃあ、あれは正解だったわけだ」
あれ? あれってなに? 首を傾げた私に、和司さんは唇を尖らせた。
「覚えてないの? あの時、俺が差し入れしたの『これ』でしょ」
私の手の中の缶を、長い指が弾く。中身がほぼ空だったため、カンと甲高い音が響いた。
差し入れ? もしかして和司さんも覚えていてくれたの!? 驚いていると、急に肩を抱かれた。私は彼の胸にもたれるような体勢になる。
「和司さん!」
「嫌だ。雪乃が思い出すまで離さない」
咎めても素知らぬ顔。
「和司さん! 何度も言ってますけど、人前でこういうのはやめて下さい!」
肩にかかった手を掴んで外そうとしたけど、力で敵わないのは分かってる。ひとしきり引っ張ってどかせなかったので諦めた。ふうっとため息を吐いて彼の手を軽く叩く。
「もー! 和司さんの意地悪」
「雪乃が思い出してくれたら、離れてもいいよ?」
「もう思い出しました! というより、忘れたことなんてありません!」
だから離れてとお願いしたのに、和司さんはますます笑みを深くするだけで離れない。
「じゃあ、あれも覚えてる?」
「へ?」
あれってなに? 今度は思いつかない。
「俺が初めて雪乃に差し入れした物、覚えてる?」
ええ!? 初めて差し入れしてくれたのは、カフェオレじゃないの? 私は必死に記憶をたぐるけど、全然覚えていない。これって和司さんのいたずらなんじゃないのって思うくらい、全く記憶にない。
「やっぱり覚えてないのか」
不満そうにつぶやくので、いたたまれない気持ちになった。
「ごめんなさい」
「ま、あんな些細なこと、覚えてなくても当たり前か。意地悪いってごめん」
しょげる私の頭を、和司さんがぽんぽんと軽く叩いた。
「些細なことって……?」
「うん、だって飴だもんなぁ」
「飴……?」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
机の上の電話が鳴った。俺は作業の手を止め、一呼吸おいて受話器を取った。
「はい、館花です」
『総務の佐々木です』
ん? 今、誰って言った? 聞き覚えのないかすれ声に俺は眉をひそめた。
電話機の液晶モニターを見れば……いつの間にか自然に覚えてしまった番号が表示されている。総務課の佐々木さんの番号だ。――そういえばいま、『佐々木』って聞こえたような?
「え? 佐々木さん? どうしたんですか、その声……」
『あ、はい。佐々木です。聞き苦しい声で申し訳ありません』
謝って欲しいわけじゃない。どうしてそんな声になったのかその理由を聞きたかっただけなんだが……。いや、声が枯れる理由なんてそんなに多いわけじゃない。おおかた風邪でも引いたんだろう。そんな分かりきったことを尋ねて、無駄に彼女に声を出させたくない。とにかく少しでも彼女が声を出さなくて済むようにしたい。
「この前、お願いした物が届いたんですね?」
佐々木さんが用件を告げる前に、そう尋ねる。先日、購入申請を出したばかりだ。それが届いたんだろう。
『はい』
ああ。聞いてる俺の方が辛くなるくらい酷い声だ。
「分かりました。すぐそちらに伺います」
では、と断わりを入れて、俺は彼女の返事も待たずに電話を切った。
そう言えば、昨日一万円札を崩すために適当にのど飴買ったよな? あれはどこにしまった? 無造作に机の引き出しを開けると、一番手前に目的の物が見えた。俺はそれをポケットにしまうと隣の席の同僚に離席する旨を告げて立ち上がった。
総務部のあるフロアは、営業フロアよりも幾分静かだ。
俺は真っ直ぐに佐々木さんの席へ向かう。後姿は普段通りだ。が、近づいてみて分かった。やっぱり風邪のようだ。白いマスクをかけている。
「佐々木さん。お待たせしました」
声をかけると、彼女の肩が小さく跳ねた。驚かせるつもりはなかったんだが、もしかして声が大きすぎただろうか? いや、普段通りのはずだが……。
俺がそんなことを考えている間に、彼女は俺のほうを振り返って立ち上がった。彼女の会釈に俺も軽く会釈を返す。
「荷物はどちらに?――ああ、悪化するといけませんから、声は出さなくて結構ですよ」
佐々木さんが話し出すのを遮って尋ねる。
彼女は一瞬驚いたように目を見張り、それから困った様子で首を傾げ、最終的に俺の後方を指差した。その一連の動作の愛らしさについ見入ってしまった俺は、彼女の指し示す方向に振り返るのをすっかり忘れていた。
なかなか動かない俺を不審に思ったのか、彼女は困ったように眉尻を下げた。俺に意図が通じてないと判断したのだろうか。彼女は腕を下ろした。俺の横をすり抜け、ついて来いと言うように手招きをする。
分かったと頷くと、佐々木さんはにっこりと微笑んだ。マスクで口元が隠れているのが残念だが、それでも目元がふわりと緩んで可愛らしい。
ああ、やっぱり良いなこの子の笑顔。俺はそんなことを思いながら彼女のあとを追った。
彼女に案内されたのはミーティングルームだった。部屋の片隅に大きめの段ボール箱が二つ置かれている。他にそれらしい荷物も見当たらないし、どうやらそれが俺の頼んだ荷物のようだ。
しまった。予想外だ。荷物はひとつだろうと高を括っていた。これは二度に分けて運ぶか、台車を借りるしかないな。なら、台車で運んだ方が楽だよな。
「これは……。一度じゃ運べませんね」
台車を貸して貰えませんか――俺がそう口に出す前に、佐々木さんは小走りで部屋の外へ消えた。
どこへ行ったのか訝しく思う前に、またひょっこり顔を出す。手で台車を押している。
華奢な彼女が無機質なそれを手にしてる姿は、ちぐはぐで不釣り合いなのに、逆に可愛らしくもある。
おそらく、俺が来る前に近くに用意してくれていたのだろう。この部屋の中に置いておかなかったのは、俺が台車持参で取りに来た場合、気まずい思いをしないようにっていう配慮なんじゃないか?
相手が気づかないほど小さな気遣い。それをこの子はさらっとやるんだよな。あんまりさらっとやるから、気づかれにくい。
けれども、確実に彼女の優しさに気づく奴が増えている。俺はそれが面白くない。どう牽制したものか。っていうか、牽制するも何も、まずは彼女と親しくなるのが先決だよな。しかし、どうしたら……?
なんて、俺がもの思いにふけっているうちに、彼女はさっさと段ボールを台車に積もうとする。慌てて彼女を止めた。箱はずっしりと重い。こんな重いものを持たせてたまるか。
それにしても風邪を引いているわりに、ずいぶんと元気そうだ。もしかして、相当無理してるんじゃないのか!?
「佐々木さん。無理しないで早退したほうが良いのではないですか?」
尋ねると、彼女は否定するように手をぶんぶんと振る。
そこまで具合悪くないってことか? まさか嘘じゃないだろうな?
彼女の様子に嘘がないか探るように見つめる。もちろん彼女にはそれを気取られないように、笑顔を浮かべたまま。
だが、彼女が怯えたような目をして身を固くした。
ん? 何だ? もしかしてバレてるのか?
「あの! 本当に具合が悪いわけじゃないんです。体調はもうすっかり良くなったのに声だけこんなで……その……」
「本当に?」
重ねて問えば、今度は首を縦に振る。おいおいそれじゃ目が回るだろってくらい勢いよく。
「なら良いのですが。早く治るといいですね。――ああ。喋らないでください。治るまで極力声は出さないほうがいいでしょう?」
自分の喉をトントンと指で叩いて笑うと、彼女もつられたように笑った。――本当にマスクが邪魔だな。
佐々木さんは俺に一礼して部屋を出た。ドアを出たところで俺が出るのを待っている。もう用は済んだろうと言われているようで我知らず肩が落ちる。もう少し雑談に付き合ってくれたっていいじゃないかと思うのも、親しくなれたと思ったのも俺だけってことか。俺は気づかれないように落胆のため息をついて部屋を後にした。
彼女はそのまま席に戻るものだと思ったが、予想に反してフロアの出口に向かった。両手がふさがっている俺のためにドアを開け、エレベーターを呼ぶ。
「ありがとうございます。助かりました」
礼を言うと、彼女は赤くなりながら一礼して、迷いなく踵を返した。少し寂しいと思うのはやっぱり俺だけみたいだ。
「佐々木さん、待ってください」
彼女は一瞬固まって、それからゆっくりと振り向く。
「これを」
ポケットから取り出したのど飴を、戸惑う彼女の手の上に置いた。
「早く良くなってくださいね」
そう言ったところで、エレベーターが到着した。
「では、これで」
目を見開いたまま固まる彼女を置いて、俺はエレベーターに乗り込んだ。
「あの、これっ」
ドアが閉まる瞬間、彼女の声が聞こえたが、そのままドアの閉まるに任せた。
本当に早く良くなって。君の声が聞きたい――俺は心の中で彼女にそう語りかけた。それはさっき言いたくても言えなかった言葉だ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「――ってことがあったんだけど」
そう言われてみれば……
「そんなことがあったような?」
なかったような。
「やっぱり覚えてないのか。じゃあ、俺だけの思い出だね。まぁそう言うのがあっても良いよな」
ははは、と笑う和司さん。
「ちょっと待ってください! 今すぐ思い出しますからっ!」
のど飴……のど飴……。無理しなくて良いからと言う和司さんを尻目に、記憶の糸を手繰る。
「もういいって、雪乃」
「そういうわけにはいきません!」
和司さんとの思い出を忘れるだなんてそんな不覚は……
「あ!」
思い出したっ!!
和司さんが不思議そうに首をかしげる。私はそれを無視して、バッグの中をごそごそと探った。確かここに入れたはず。――あった!
私はそれを取り出して、和司さんの目の高さに差し出す。
「これですよね! こののど飴!」
「いや、なにしろ適当に買ったから覚えてない」
すまなそうに和司さんが言う。
「これで間違いないですよ。やだ、私なんで忘れてたんだろ?」
自分の記憶力のなさに笑っちゃう。
「昔はね、こののど飴ミントがきつくて苦手だったんですよ。小学生の時に舐めて苦手になっちゃって」
成長してさすがに味覚も変わっただろうと思ってはいたものの、なんとなく大人になっても手を出さずにいた。
けれどあの時、和司さんから貰って「この飴、まだあったんだ」って懐かしく思いながら舐めたら――美味しかった。
苦手じゃなくなった切っ掛けは忘れてしまっていたけれど、のど飴が欲しくなった時はこれを買うのが習慣になっていた。ごくたまに他のも買ってみるけど、やっぱりこれに戻って来ちゃう。
私の話を黙って聞いていた和司さんは、最初くすぐったそうな顔をしていたのに、途中から険しい顔をし始めた。
どうしたんだろう? 嫌なな雲行き。
「ねぇ雪乃。今、さらーっと聞き捨てならないこと言わなかった?」
言った覚えは全くない。
「のど飴が欲しくなった時はこれを買うって言ったよね? あのさ、のど飴が欲しくなるってどういう時?」
あ。彼の言いたいことが分かって来たかも。
「それを持ってるってことは、今が『のど飴の欲しい時』でしょ? 喉が痛い? 風邪ひいた? 体調悪いなら戻るよ!」
「違いますって!」
腰を浮かしかけた和司さんの袖を引っ張る。
「雪乃は体調悪くても、なかなか言ってくれないから信用しない」
袖を引っ張っていた手を彼に取られた。和司さんを座らせるどころか、逆に私が立ち上がる羽目になった。
「もう! ちゃんと話を聞いてくださいってば! 車のエアコンで喉が乾燥するかなと思って持って来ただけですっ」
和司さんにぐいぐい引っ張られて歩きながら、抗議する。
「本当に? 嘘ついてない?」
「こんなことで嘘なんて言いません!」
彼の疑り深さに呆れながら言うと、彼は立ち止って私の顔を覗き込んだ。
「本当に?」
「本当に本当です! ――そこまで疑われると私だって傷つきます」
口を尖らせて睨むと、彼は困ったような顔をして、そっぽを向いた。
「心配なんだから仕方ないだろ」
彼がぽつりとつぶやいた言葉に、胸がきゅっとなった。
「――和司さん。そろそろ出発しましょ?」
彼の顔を覗き込むように見上げて笑う。遠くに投げた視線を私へと移して、和司さんも笑う。
「ああ。そうだな」
「じゃ、行きましょう!」
さっきとは反対に、私が彼の手を取って引っ張った。
「お、おい、雪乃!?」
慌てたような彼の声に幸せを噛みしめながら、私は駐車場へと急ぐ。
ドライブはまだ始まったばかりだもの。たくさん、たくさん楽しまなくちゃ!
※出版社より許可を得て掲載しております。
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ドライブの途中で立ち寄ったサービスエリアには広い公園があった。
ちょっとした渋滞に巻き込まれた後の私たちは、心地よさそうな木陰に惹かれて迷わずそこに置かれたベンチに腰を下ろした。
木々の新緑が目に鮮やかで、吹き抜ける風も瑞々しい。ドライブで凝り固まった体をほぐすにはちょうどいい。高速道路を走り過ぎる車の音を遠くに聞きながら、私は自動販売機で買ったカフェオレを少しずつ飲む。隣に座る和司さんも、私と同じように無言で手にした緑茶を飲んでいる。
「雪乃って、それよく飲んでるよね。好きなの?」
和司さんは唐突にそう言って、私の飲んでいるカフェオレの缶を指さした。
「好きですよ」
だって特別な思い出があるんだもの。でもきっと和司さんはもう忘れてる。私は缶を両手でぎゅっと握りなおした。その横で和司さんは「ふーん」と何でもないことのように相槌を打った。
ほらね。覚えてない。他愛もないことだから覚えてなくても仕方ない。けどちょっと寂しい。そう思うのは我がままかな。
ちらりと和司さんの方を見ようとして驚いた。なんでそんな至近距離で私の顔を覗き込んでいるんですか!? 顔に何かついてる!? 私は慌てて頬に手をやった。
「な、なにか?」
どもりながら尋ねると、彼は楽しげに笑った。
「じゃあ、あれは正解だったわけだ」
あれ? あれってなに? 首を傾げた私に、和司さんは唇を尖らせた。
「覚えてないの? あの時、俺が差し入れしたの『これ』でしょ」
私の手の中の缶を、長い指が弾く。中身がほぼ空だったため、カンと甲高い音が響いた。
差し入れ? もしかして和司さんも覚えていてくれたの!? 驚いていると、急に肩を抱かれた。私は彼の胸にもたれるような体勢になる。
「和司さん!」
「嫌だ。雪乃が思い出すまで離さない」
咎めても素知らぬ顔。
「和司さん! 何度も言ってますけど、人前でこういうのはやめて下さい!」
肩にかかった手を掴んで外そうとしたけど、力で敵わないのは分かってる。ひとしきり引っ張ってどかせなかったので諦めた。ふうっとため息を吐いて彼の手を軽く叩く。
「もー! 和司さんの意地悪」
「雪乃が思い出してくれたら、離れてもいいよ?」
「もう思い出しました! というより、忘れたことなんてありません!」
だから離れてとお願いしたのに、和司さんはますます笑みを深くするだけで離れない。
「じゃあ、あれも覚えてる?」
「へ?」
あれってなに? 今度は思いつかない。
「俺が初めて雪乃に差し入れした物、覚えてる?」
ええ!? 初めて差し入れしてくれたのは、カフェオレじゃないの? 私は必死に記憶をたぐるけど、全然覚えていない。これって和司さんのいたずらなんじゃないのって思うくらい、全く記憶にない。
「やっぱり覚えてないのか」
不満そうにつぶやくので、いたたまれない気持ちになった。
「ごめんなさい」
「ま、あんな些細なこと、覚えてなくても当たり前か。意地悪いってごめん」
しょげる私の頭を、和司さんがぽんぽんと軽く叩いた。
「些細なことって……?」
「うん、だって飴だもんなぁ」
「飴……?」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
机の上の電話が鳴った。俺は作業の手を止め、一呼吸おいて受話器を取った。
「はい、館花です」
『総務の佐々木です』
ん? 今、誰って言った? 聞き覚えのないかすれ声に俺は眉をひそめた。
電話機の液晶モニターを見れば……いつの間にか自然に覚えてしまった番号が表示されている。総務課の佐々木さんの番号だ。――そういえばいま、『佐々木』って聞こえたような?
「え? 佐々木さん? どうしたんですか、その声……」
『あ、はい。佐々木です。聞き苦しい声で申し訳ありません』
謝って欲しいわけじゃない。どうしてそんな声になったのかその理由を聞きたかっただけなんだが……。いや、声が枯れる理由なんてそんなに多いわけじゃない。おおかた風邪でも引いたんだろう。そんな分かりきったことを尋ねて、無駄に彼女に声を出させたくない。とにかく少しでも彼女が声を出さなくて済むようにしたい。
「この前、お願いした物が届いたんですね?」
佐々木さんが用件を告げる前に、そう尋ねる。先日、購入申請を出したばかりだ。それが届いたんだろう。
『はい』
ああ。聞いてる俺の方が辛くなるくらい酷い声だ。
「分かりました。すぐそちらに伺います」
では、と断わりを入れて、俺は彼女の返事も待たずに電話を切った。
そう言えば、昨日一万円札を崩すために適当にのど飴買ったよな? あれはどこにしまった? 無造作に机の引き出しを開けると、一番手前に目的の物が見えた。俺はそれをポケットにしまうと隣の席の同僚に離席する旨を告げて立ち上がった。
総務部のあるフロアは、営業フロアよりも幾分静かだ。
俺は真っ直ぐに佐々木さんの席へ向かう。後姿は普段通りだ。が、近づいてみて分かった。やっぱり風邪のようだ。白いマスクをかけている。
「佐々木さん。お待たせしました」
声をかけると、彼女の肩が小さく跳ねた。驚かせるつもりはなかったんだが、もしかして声が大きすぎただろうか? いや、普段通りのはずだが……。
俺がそんなことを考えている間に、彼女は俺のほうを振り返って立ち上がった。彼女の会釈に俺も軽く会釈を返す。
「荷物はどちらに?――ああ、悪化するといけませんから、声は出さなくて結構ですよ」
佐々木さんが話し出すのを遮って尋ねる。
彼女は一瞬驚いたように目を見張り、それから困った様子で首を傾げ、最終的に俺の後方を指差した。その一連の動作の愛らしさについ見入ってしまった俺は、彼女の指し示す方向に振り返るのをすっかり忘れていた。
なかなか動かない俺を不審に思ったのか、彼女は困ったように眉尻を下げた。俺に意図が通じてないと判断したのだろうか。彼女は腕を下ろした。俺の横をすり抜け、ついて来いと言うように手招きをする。
分かったと頷くと、佐々木さんはにっこりと微笑んだ。マスクで口元が隠れているのが残念だが、それでも目元がふわりと緩んで可愛らしい。
ああ、やっぱり良いなこの子の笑顔。俺はそんなことを思いながら彼女のあとを追った。
彼女に案内されたのはミーティングルームだった。部屋の片隅に大きめの段ボール箱が二つ置かれている。他にそれらしい荷物も見当たらないし、どうやらそれが俺の頼んだ荷物のようだ。
しまった。予想外だ。荷物はひとつだろうと高を括っていた。これは二度に分けて運ぶか、台車を借りるしかないな。なら、台車で運んだ方が楽だよな。
「これは……。一度じゃ運べませんね」
台車を貸して貰えませんか――俺がそう口に出す前に、佐々木さんは小走りで部屋の外へ消えた。
どこへ行ったのか訝しく思う前に、またひょっこり顔を出す。手で台車を押している。
華奢な彼女が無機質なそれを手にしてる姿は、ちぐはぐで不釣り合いなのに、逆に可愛らしくもある。
おそらく、俺が来る前に近くに用意してくれていたのだろう。この部屋の中に置いておかなかったのは、俺が台車持参で取りに来た場合、気まずい思いをしないようにっていう配慮なんじゃないか?
相手が気づかないほど小さな気遣い。それをこの子はさらっとやるんだよな。あんまりさらっとやるから、気づかれにくい。
けれども、確実に彼女の優しさに気づく奴が増えている。俺はそれが面白くない。どう牽制したものか。っていうか、牽制するも何も、まずは彼女と親しくなるのが先決だよな。しかし、どうしたら……?
なんて、俺がもの思いにふけっているうちに、彼女はさっさと段ボールを台車に積もうとする。慌てて彼女を止めた。箱はずっしりと重い。こんな重いものを持たせてたまるか。
それにしても風邪を引いているわりに、ずいぶんと元気そうだ。もしかして、相当無理してるんじゃないのか!?
「佐々木さん。無理しないで早退したほうが良いのではないですか?」
尋ねると、彼女は否定するように手をぶんぶんと振る。
そこまで具合悪くないってことか? まさか嘘じゃないだろうな?
彼女の様子に嘘がないか探るように見つめる。もちろん彼女にはそれを気取られないように、笑顔を浮かべたまま。
だが、彼女が怯えたような目をして身を固くした。
ん? 何だ? もしかしてバレてるのか?
「あの! 本当に具合が悪いわけじゃないんです。体調はもうすっかり良くなったのに声だけこんなで……その……」
「本当に?」
重ねて問えば、今度は首を縦に振る。おいおいそれじゃ目が回るだろってくらい勢いよく。
「なら良いのですが。早く治るといいですね。――ああ。喋らないでください。治るまで極力声は出さないほうがいいでしょう?」
自分の喉をトントンと指で叩いて笑うと、彼女もつられたように笑った。――本当にマスクが邪魔だな。
佐々木さんは俺に一礼して部屋を出た。ドアを出たところで俺が出るのを待っている。もう用は済んだろうと言われているようで我知らず肩が落ちる。もう少し雑談に付き合ってくれたっていいじゃないかと思うのも、親しくなれたと思ったのも俺だけってことか。俺は気づかれないように落胆のため息をついて部屋を後にした。
彼女はそのまま席に戻るものだと思ったが、予想に反してフロアの出口に向かった。両手がふさがっている俺のためにドアを開け、エレベーターを呼ぶ。
「ありがとうございます。助かりました」
礼を言うと、彼女は赤くなりながら一礼して、迷いなく踵を返した。少し寂しいと思うのはやっぱり俺だけみたいだ。
「佐々木さん、待ってください」
彼女は一瞬固まって、それからゆっくりと振り向く。
「これを」
ポケットから取り出したのど飴を、戸惑う彼女の手の上に置いた。
「早く良くなってくださいね」
そう言ったところで、エレベーターが到着した。
「では、これで」
目を見開いたまま固まる彼女を置いて、俺はエレベーターに乗り込んだ。
「あの、これっ」
ドアが閉まる瞬間、彼女の声が聞こえたが、そのままドアの閉まるに任せた。
本当に早く良くなって。君の声が聞きたい――俺は心の中で彼女にそう語りかけた。それはさっき言いたくても言えなかった言葉だ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「――ってことがあったんだけど」
そう言われてみれば……
「そんなことがあったような?」
なかったような。
「やっぱり覚えてないのか。じゃあ、俺だけの思い出だね。まぁそう言うのがあっても良いよな」
ははは、と笑う和司さん。
「ちょっと待ってください! 今すぐ思い出しますからっ!」
のど飴……のど飴……。無理しなくて良いからと言う和司さんを尻目に、記憶の糸を手繰る。
「もういいって、雪乃」
「そういうわけにはいきません!」
和司さんとの思い出を忘れるだなんてそんな不覚は……
「あ!」
思い出したっ!!
和司さんが不思議そうに首をかしげる。私はそれを無視して、バッグの中をごそごそと探った。確かここに入れたはず。――あった!
私はそれを取り出して、和司さんの目の高さに差し出す。
「これですよね! こののど飴!」
「いや、なにしろ適当に買ったから覚えてない」
すまなそうに和司さんが言う。
「これで間違いないですよ。やだ、私なんで忘れてたんだろ?」
自分の記憶力のなさに笑っちゃう。
「昔はね、こののど飴ミントがきつくて苦手だったんですよ。小学生の時に舐めて苦手になっちゃって」
成長してさすがに味覚も変わっただろうと思ってはいたものの、なんとなく大人になっても手を出さずにいた。
けれどあの時、和司さんから貰って「この飴、まだあったんだ」って懐かしく思いながら舐めたら――美味しかった。
苦手じゃなくなった切っ掛けは忘れてしまっていたけれど、のど飴が欲しくなった時はこれを買うのが習慣になっていた。ごくたまに他のも買ってみるけど、やっぱりこれに戻って来ちゃう。
私の話を黙って聞いていた和司さんは、最初くすぐったそうな顔をしていたのに、途中から険しい顔をし始めた。
どうしたんだろう? 嫌なな雲行き。
「ねぇ雪乃。今、さらーっと聞き捨てならないこと言わなかった?」
言った覚えは全くない。
「のど飴が欲しくなった時はこれを買うって言ったよね? あのさ、のど飴が欲しくなるってどういう時?」
あ。彼の言いたいことが分かって来たかも。
「それを持ってるってことは、今が『のど飴の欲しい時』でしょ? 喉が痛い? 風邪ひいた? 体調悪いなら戻るよ!」
「違いますって!」
腰を浮かしかけた和司さんの袖を引っ張る。
「雪乃は体調悪くても、なかなか言ってくれないから信用しない」
袖を引っ張っていた手を彼に取られた。和司さんを座らせるどころか、逆に私が立ち上がる羽目になった。
「もう! ちゃんと話を聞いてくださいってば! 車のエアコンで喉が乾燥するかなと思って持って来ただけですっ」
和司さんにぐいぐい引っ張られて歩きながら、抗議する。
「本当に? 嘘ついてない?」
「こんなことで嘘なんて言いません!」
彼の疑り深さに呆れながら言うと、彼は立ち止って私の顔を覗き込んだ。
「本当に?」
「本当に本当です! ――そこまで疑われると私だって傷つきます」
口を尖らせて睨むと、彼は困ったような顔をして、そっぽを向いた。
「心配なんだから仕方ないだろ」
彼がぽつりとつぶやいた言葉に、胸がきゅっとなった。
「――和司さん。そろそろ出発しましょ?」
彼の顔を覗き込むように見上げて笑う。遠くに投げた視線を私へと移して、和司さんも笑う。
「ああ。そうだな」
「じゃ、行きましょう!」
さっきとは反対に、私が彼の手を取って引っ張った。
「お、おい、雪乃!?」
慌てたような彼の声に幸せを噛みしめながら、私は駐車場へと急ぐ。
ドライブはまだ始まったばかりだもの。たくさん、たくさん楽しまなくちゃ!
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