あやかしの花嫁~白の執心~

永久(時永)めぐる

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7.蛇の執心 ◆

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「君の中、暖かくて、柔らかくて気持ちいい……ねぇ、君も分かるかな、僕の指を健気にキュウキュウ締め付けてるの……もっと欲しいってお強請りしてるみたい」

 夏々地の上機嫌な声は、鈴花を羞恥で居たたまれなくする。なのに、彼の指を飲み込んでいる場所は気持ちと裏腹に透明な蜜を流す。

「……っあ……、言わ、な……で……」

 懇願しても、夏々地やめるどころか、逆にわざとらしく水音を響かせた。

「……ふふっ……そんなに気持ちいい? 蕩けた顔しちゃって」

 頬は桃色に染まり、潤んだ目は視点が定まらず、しっとりと汗で濡れた胸は荒い息に大きく上下している。

「ねぇ……指、増やしていいかな」
「だ、だめぇ……っあああ!?」

 反射的に嫌がれば、既に見つけられてしまった性感帯を刺激された。
 ポタポタと秘泉から蜜がこぼれ落ちる。 

「――駄目? 駄目じゃないでしょう? ここをこんなにしておいて、なに言ってるの」
「ちが……、……んあっ」

 くちゅり、と淫猥な音がして、圧迫感が強まった。
 鈴花は眉根をやや寄せたものの、苦痛は感じていないようで甘い声を漏らす。

「ほら、すんなり入ったよ……すごい。君の中から蜜がどんどん溢れてくる。ああ、またたくさん出てきた」
「あ……ああ……んっ……」

 時を追うごとに強くなていく快感に呑まれて、鈴花はもう意味をなさない嬌声を上げるだけ。
 その嬌声も徐々に切羽詰まった色を帯びていく。

「……締め付けが……きつくなってきた。僕の指、もっと奥まで欲しいって。――もう、イきそう? 我慢しないでいいよ……ほら、見せてよ、君がイく顔」
「あ……や……やあ……っ……あ、あああっ!」

 激しくなった指使いに翻弄されて、鈴花は何が何なのか分らないまま上り詰めた。
 爪先までぴんと強ばり、ビクビクと跳ねる。
 見開かれたまなじりから、涙がひと筋零れて乱れた髪を濡らした。

「……かわいいなぁ……嫌だって言いながら、こんなに気持ちよくなっちゃって……」

 嬉々とした忍び笑いは、酷薄さを孕んでいる。

「ねぇ、見てよ。僕の手。手首まで濡れてる……目を逸らさないで。これは全部、君が感じた証しでしょ? ちゃんと見て、僕が舐めるところ」

 夏々地は視線を鈴花に固定したまま、見せつけるように濡れた手に舌を這わせる。

「ん、美味しい。君の蜜からは……あやかしを狂わせる匂いがする。それに……すごく、甘くて……酔いそう、だ」
「や……だ……」

 淫靡な光景から目を逸らしたいのに逸らせなくて、鈴花は泣きそうに顔を歪めた。夏々地はその様を堪能すると、鈴花の太腿に手をかける。

「もっと……飲ませて」

 鈴花が言葉の意味を理解するより早く、夏々地は彼女のあわいに顔を寄せた。
 身をよじってみたものの、太腿を押さえられていて隠すこともできず、わずかにずり上がってもすぐに引き戻されてしまう。
 僅かな抵抗は逆に夏々地の嗜虐心を煽ってしまったようだった。

「は……、君のここ、すごい。濡れそぼって……てらてらと光って……僕を誘ってるみたい。イヤらしくて……とても美しいね」

 彼の口から淫猥な言葉が次々と零れる。

「や……見ないで……」
「見るなって言われても無理。――溢れた蜜は全部……僕が舐め取ってあげる」
「ふあ……ん……んっ」

 夏々地の舌が、亀裂に沿って動く。
 人ではあり得ない長さ、二股に分かれた舌先が隠れた赤い真珠に絡んだ。
 同時に隘路へも彼の指が侵入し、粘着質な水音を立てて蠢いている。

「ひっ……く……あ、ああ……!」

 過ぎた快感が鈴花の全身を駆け抜け、胸元に浮いた汗が滑り落ちた。

「ん……は……っ……ああ……たまら、ない……」
「や……かが、ち、さ……」
「君の中に入ったら、どんなに気持ちいいだろう? ああ……早く入れたい……」

 夏々地の独り言から余裕が消えている。

「本当は何回かイかせてあげたかったんだけど、僕ももう我慢できない。――好きだよ、鈴花。僕のものになって」

 鈴花の秘所に、硬いものが宛がわれた。
 ぐちゅ、と小さな音を立てて、夏々地の昂ぶりが隘路を押し広げる。

 「あ……くっ……ぁあ……」

 チリチリと焼けるような痛みが下半身を襲う。
 思わず逃げを打つ腰を、夏々地が掴んで引き戻した。
 その衝撃で、隘路の中の昂ぶりがズッ、と奥に進む。

「痛いよね、ごめん。でも、やめられない」

 夏々地が鈴花に覆い被さり、裸の胸が彼の胸と重なった。
 乱れてはいるが、夏々地は着衣のままだ。
 敏感になった鈴花の胸が、生地に擦れて淡い快感を生む。

「……っ……くぅ……あ、はぁ……すごい、きつい、ね……、も、少し……だから……」
「んあ……っふ……」

 切なげな夏々地の吐息が、苦しげな鈴花の嬌声と混じりあう。
 二人は身体を繋げながら、鈴花の苦痛を和らげるように何度も何度も口づけをした。

「力、抜いて……そう……、ちゃんと息を……して……ああぁ……全部、入った……はぁ……っく! ……ははっ、ちょっとでも気を抜くと……、出ちゃいそう、だ……」

 夏々地は頬を上気させて、深々とため息をついた。
 ひそめられた眉が官能的で、鈴花の身体の奥がきゅんと疼いた。

「っ! ……ダメだよ、中をがヒクヒクさせたら……こんなふうにされたら……っは……たまら、ないっ……動く、よっ」
「ん……動い、て」

 じんじんと熱い痛みは続いているものの、堪えられないほどではない。
 鈴花が切れ切れに答えると、夏々地はゆっくりと腰を動かし始めた。
 はじめはゆっくりと……だが、鈴花が動きに慣れて僅かながらも快感を覚え始めると、その動きは激しくなった。
 あたりには淫猥な水音と、肌がぶつかる音が響く。

「ん……、あ……はぁ、ん……っあ、かが……ち、さ……」
「あぁ……気持ち、いっ……っ……はぁ……君も……気持ち、いい?」

 鈴花が答えられないと知りながら、それでも夏々地は問いかける。

「いい、よね? ……はっ……こんな、グチョグチョに濡らして……キュウキュウ締め付けて……っく……良い声で啼いて……、っ……気持ちよくないわけが……ない……っ……ん……」
「んあ……、やあ……!」

 一番奥を穿たれると胎の奥に重たくて熱い快感がたまっていく。
 それをどうにかしたくて鈴花は無意識に、夏々地の背に爪を立てた。
 彼はその痛みも快感だとばかりに笑い、鈴花の耳許で囁く。

「奥、当たってる……ね……。こうやって、奥を……こねられるの、イイ? あと、ここも……っ、好きでしょ? この、一番奥からちょっと手前の……ここッ……あはっ……ほら、すごい締め付け……っん……」

 そう言いながら、鈴花の官能を引きずり出す場所ばかりを攻める。

「ん……あ、やぁ……だめぇ……」

 快楽に堪えきれず、鈴花はすすり泣きのような嬌声を上げる。
 見開いた目からは涙が零れ、開きっぱなしの口からは唾液がひと筋流れている。

「……嫌? 嘘だ……もっと、素直に……っ……なりなよ……」

 夏々地の荒い息が、耳朶を掠める。
 ゾクゾクした快感が湧き起こり、さらに鈴花を苛んだ。

「あ……本当にもう……だめ……おかしく……なっちゃ……」
「いいよ……おかしく、なって。君が……おかしくなるところ、見せて……?」

 抽送がますます勢いを増す。

「や……怖いっ……のぉ……」
「怖くない、から……もっと、乱れてよ。僕に、身体の奥まで突かれてっ……、淫らな声……上げながら……、イって? っは……僕が、全部見ててあげる……っく……」

 夏々地の言葉が聞こえているのか、いないのか、鈴花はうわ言のような喘ぎを漏らす。

「僕も、もう……もたない。――一緒に、イこう? 君がイったら、僕も出す、から……好きにイって、いい」
「ああっ……んぁ……ああああっ」

 長くあとを引く嬌声とともに、鈴花の身体がぴんと強ばった。
 爪先が丸まり、身体がビクビクと何度も痙攣を繰り返す。

「あ……、ああ……すごい……持っていかれそう、ッ……は……ぁ……、僕も……イくっ……っ……く……は……ぅ……」

 夏々地は鈴花の最奥を穿ちながら、白濁した欲望の証をほとばしらせた。
 ドクドクと注がれる熱い飛沫を感じて、鈴花は力の抜けた身体をふるふると震わせた。
 獣欲を吐き出した夏々地は、荒い息の下から忍び笑いを漏らした。
 それは徐々に大きくなっていく。

「これで、君は僕のつがい。……大事にするよ、僕の可愛い花嫁。――これからは、いつも君が傍にいてくれると思うと、嬉しくて仕方ないよ」

 楽しげな笑い声だというのに、そこには仄暗さが混じっている。

「毎日、たくさん話をして、こうやって身体を重ねて、いつか家族が増えて。想像するだけで頬が緩むよ。――……、早くこのお腹に、僕の子を宿して」

 言うと彼は鈴花のお腹に口づけた。
 彼が何を言っているのか、何をしているのか、ぼんやりしたままの鈴花には分からず、ただ敏感になった肌に口づけられたくすぐったさで身をよじった。

「んん……」

 甘えるような鼻にかかった声が出たのは無意識だ。
 なのに……。

「いけない子だね。甘い声を聞かせられたら……もっと啼かせたくなるだろう?」

 まるで鈴花が誘ったのだと言わんばかりだ。

「やっぱり一回じゃ足りない……君の中があんまり気持ちいいから、また硬くなっちゃった……、もう少し付き合ってくれるよね? 今度はゆっくり、時間をかけて、気持ちよくしてあげる」
「も、もう無理です……!」
「無理? 冗談。もっとイけるでしょ? ほらっ……」

 言うが早いか、彼は鈴花の中で力を取り戻した昂ぶりをギリギリまで引き抜いて、一気の奥を突き上げた。

「あっ! ああああっ!?」

 一度絶頂を迎えた余韻で敏感になっている身体は、簡単に快楽を拾ってしまう。

「ああ、いい声」

 うっとりとした声で囁くと、夏々地は再び鈴花を貪り始めた。

「君が力尽きて、気を失うまででも……こうして奥まで突いて、中をかき混ぜて……君を堪能したい……だから、好きなだけ……イくといい」

 宣言通り散々啼かされた末、鈴花が意識を途切れさせたのは、いつの間にか雨が止み、雲の切れ間から夕日が差す頃だった。
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