臆病者の転生ヒストリア〜神から授かった力を使うには時間が必要です〜

たいらくん

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第一章 王国編第一部(初等部)

エピソード42 初授業

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 人は時に無情だ……
 ここ数日でも周囲の環境も変化している現在進行形で……しかし時間は事情など知る由もなく淡々と時を刻むだけだ。
 自分自身の責任と言われればそれまでの事だが、駆けつけた時には全てが終わっていた………………

「ク、クライヴくん……ど、どうしたのかな?」

 ダン先生は相変わらずの頼りなさだが、ヘレン先生は目が吊り上がっていた。

「クライヴくん! いきなりの遅刻ですか! さぁ理由を聞きましょうか?」

 そんな威圧感を十歳に向けてはダメではないでしょうか? コンプライアンス的には大丈夫でしょうか?
 九時には教室に集まり出席確認をするのをオレは十五分遅れてしまった………………

「実は、今日の事を考えていたらワクワクしてきて眠れませんでした。それで朝起きた時には既に手遅れで、このような有様です。すみませんでした」

 オレは下校後のフライドポテト販売であれこれ考えて夜更かしをしてしまった。そう今日の事を考えてたんだ! 決して嘘はついてない。 
 しかし、夜更かし程度で寝坊するとは……身体は理解できるが、やはり心も前世と現世が融合され十歳に近づいているな……頭だけは前世のままだな。

「こ、今回だけだからね……次回は気をつけようね」

 ダン先生は優しい顔をしてオレを許してくれた。

「もう! ダン先生はいつも甘いんですから!」

 ヘレン先生はまだ納得してない様子で、これからは言動に注意する事をオレは肝に銘じた。

 オレはやっと席に着くと、隣のモーガンが申し訳なさそうに話しかけてきた。

「クライヴ、ゴメンよ」

「何で起こしてくれなかったんだよ」

「いや、その……」
  
 モーガンにしては珍しく歯切れが悪い……

「何があったんだ」

「クライヴ内緒にしてくれよ」

「ああ、わかった」

「実はボクが部屋から出ると、廊下にフィーネとリアナもボク達を起こしにきてくれてたらしいんだ」

「じゃあ、何で起こさなかったんだよ」

 オレは起こしてくれなかった疎外感にイラついてモーガンに対する口調が強くなった。

「クライヴ、落ち着いて。起こそうとしたんだけど、フィーネがアタシに任せてって言ったからボク達はフィーネに任せて朝食に向かったんだ」

「それで中々食堂に来ないし、ボク達も時間に遅れそうだったから、クライヴとフィーネは2人でどこかで朝食を取り、先に行ったのかなって思ったんだ」

「なるほど、真相のカギはフィーネか」

「フィーネもギリギリで駆け込んで来たから、クライヴがいない事にボク達も驚いたんだよ。でもチャイムが鳴ったからフィーネに聞けなくて……」

「ますますフィーネが怪しいな」

 オレはフィーネの背中を見続けた。気づけと念じながら。

 するとフィーネは気づいたのか、一苦笑いを浮かべながらこちらを振り向いて、両手を合わせてゴメンとジェスチャーをした。

 後で真相を聞くからな! フィーネ!

 そして九時三十分に一限目の授業が開始される。ちなみに授業は六十分間で間に十分間の休憩があるから実質五十分間の授業だが……
 次の授業までの間は二十分間の休憩がある。
 午前中二限目まで授業があり、その後に一時間十分のランチタイムとなる。
 そして午後は三限目のみで十四時に終わり、その後、掃除とホームルームで十四時半に下校となる月から金まで学院、土日休みの週休二日制のタイムスケジュールだ。

「今日は読み書きの授業から始めるよ」

 ダン先生が世界中で使われる共通言語共通語の読み書き読み方や書き方を一文字ずつ丁寧に黒板に書いている。やっと先生らしくなった。
 四十六ある文字の中から、今日は最初の十個を読み書きするらしい。
 
 しかし、オレの知識は帝国の時にイーサン兄さんと既に習っている。まぁ帝国に関しては帝国訛りがあるが……
 更にオレは、ドワーフやエルフといった共通言語以外の言語であるドワーフ語、エルフ語に関しても勉強をしていた。ドワーフ語は帝国のドワーフの家庭教師から教えてもらいマスターしているが、エルフ語に関しては、古い書物の情報しかなく読み書きはほんの少しできるだけだ。

 また魔物に関しても共通語を話す魔物がいるらしい……まぁ話せる魔物が存在するかどうかも怪しい。
 実際に見た事ないし、古い書物にしか書いてなかったし……

「ショーンくん。それ間違っているよ」

「ショーンくん。もう少し綺麗に書いてみよう」

「ショーンくん。書き順が違うよ」

「ショーンくん。それは違う読み方だね」

「ショーンくん。これなら何て読むかわかるよね」

………………ショーン、いくら何でも本当に勉強苦手過ぎるだろ!
 みんなは、二、三回で覚えているのをお前は何十回繰り返すんだよ! 
 でもショーンの良いとこも見つけたぜ! 
 全く目が死んでないし、自信満々にドヤ顔で間違えれるメンタルの強さは……オレも負けたぜ……


 そして一限目の授業が終わった。

「クライヴって読み書き出来るんだね。平民にしては珍しいね」

 モーガンがオレの素性を怪しんでいるのか?

「モーガンも読み書き出来るじゃないか?」

 いや、モーガンお前も読み書き出来てるからな十分怪しいよ。

「フフ、そうだね。親が商売人だったから自然と身についたよ」

「ぼくは貴族だったからある程度の事は学んできたが、クライヴとモーガンは本当に平民なのかと思うぐらい不思議な存在だよ」

 リアナも話に入ってきて、オレ達の事を不思議に思っていた。

 しかし、さっきから話に入りたそうにチラ見をしてきているが話に入れない人、いやハーフエルフが一名いる。

(どうしようかな、フィーネから何も言ってこないし……)

「フィーネ。朝のことなんだけど……」

 オレの言葉にフィーネは顔を真っ赤にした。

「ア、アタシはアンタを起こそうとしたんだからね! アンタが起きないのが悪いのよ!」

「いつものフィーネのように叩いたりしてでも起こしてくれてもいいじゃないか!」

 そんな怒らなくても……オレも少しヒートアップしてしまった。

「だ、だって、その、気持ちよさそうに寝てるから! あの、え、えっと…………ね……ねが……ぉ……見て……いた……かった……ら」

 ゴニョるなー、気持ちよさそうに寝てるからの後の言葉が聞こえん! 結局は真相は闇の中ですか……

「おめぇらはええのぉ……ワシは……授業がわからんけぇ……辛すぎるんじゃ」

 ショーン……やっぱり辛かったんだね。
 でも授業中は凄く頑張ってたんだね。
 根は良い奴なんだろうな……

「リアナ、オレ達の中で唯一の貴族だから、教え方も上手いと思うんだ……隣の席なんだし休み時間とかでショーンに授業の復習をサポートするのはどうかな?」

 リアナは渋々ながら引き受けてくれた。

「困っている人を助けるのも騎士道精神だな。ショーン、ぽくが教えてあげるよ。どこがわからないんだい?」

「おめぇは貴族じゃけぇのぉ。そうやって平民を見下すんが楽しかろう。」

 おいおい、せっかくの機会に何ケンカ売ってんだよショーン!

「ぼくは別に構わないが君が困るだけじゃないか」

「おめぇに心配されんでもなんとかなるんじゃ」

 ちょっ……何とかならないからリアナにお願いしたんですけど……

「きみはクライヴの好意を踏み躙るのか!」

 リアナがオレの為に怒ってくれる。最初はオレ嫌われてたのになぁ……素直に嬉しいなぁ…………じゃなくて、これは一触即発な雰囲気だ。

「モ、モーガンも教えるの、と、得意だよな! フィーネも苦手な所あるだろう。だからモーガンはショーンを教えて、リアナはオレとフィーネを教えてくれよ。そ、その復習も兼ねての勉強会だよ」

 オレはアタフタしながら、この雰囲気を何とかしようとした。

「そうだね。ショーンくんは凄く忍耐強いから、苦手としている勉強も克服できるよ。ボク達と一緒に頑張ろうよ」

 モーガンが優しい声でショーンを諭した。

「まぁ、おめぇは貴族じゃねぇけぇ、悪りぃが勉強教えてくれや」

 こういう時はモーガンに任せるのが一番。
 やっぱり男の娘にしか見えないモーガンに話術が加わると無敵だね。たまに悪い顔をや黒いオーラが見えるような気がするけど…………


「キャー! やっぱりモーガンくんは受けなのね」

「違うわ! モーガンくんの可愛い顔でショーンくんをスパルタな指導で屈服させるのも萌えるわよ」

「飴と鞭ね、そんな素晴らしいご褒美があるなんて涎が出そうだわ……でもさっきの授業前のクライヴくんとモーガンくんがコソコソ話してたのも良かったわね。
 ちょっとクライヴくんが少し怒ってて、モーガンくんは謝っていて……もしかしてショーンくんも含めた三角関係でクライヴくんがヤキモチしたとか! 
 もうそれだけでご飯三杯はいけるわ!」

「私は、三角関係は嫌だわ……クライヴくんとモーガンくんが話す時の二人の表情……特別な時間を私達は邪魔出来ないわ! あれは友達以上恋人未満の甘酸っぱい関係で、今の関係を壊したくないから二人は怖がって前に進めないのよ!」

 怖い怖い怖い、奥のカオス達女子三人衆の声がこちらに聞こえてきてますけど……

 オレは青ざめている中、前の席にいたカーンは廊下の窓からずっとオレを睨んでいた…………お前はストーカーか? それともカオス達にモテたいのか?
 よくわからない奴だ。

 そして、もう一人のイェーンは早くも早弁をしようとしていた。
 かなり手慣れているようで、流れるような動きで皮袋からバナナを取り出しながら、取り出した時にはもう既に皮は剥いて口の中に半分ぐらいインされており満足そうな顔で頬張っていた。

 こっちもよくわからない奴だ……
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