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第一章 王国編第一部(初等部)
エピソード68 空白? 思考停止?
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クライヴです。
オレが衣服を乾かしたせいで、鎧の中のインナーとして着ている冒険者用の衣服を着ていました。
おかげでリアナとショーンに勘違いされてしまいました。
クライヴです。
リアナとショーンが走って行って戻って来たと思ったら二人とも冒険者用の衣装に着替えてました。
オレは全くそんなつもりないのに……
クライヴです。
二人が朝から稽古だと言っています。
オレは帰って来たばかりで疲れてるので午前中はゆっくり休みたいです。
クライヴです。
二人が午後から冒険者協会に行こうと言っています。採取依頼を受けようと鼻息が荒いです。
クライヴです。
二人がオレの話を聞いてくれません。
クライヴです。
オレの衣装を見て勘違いしたショーンが、やる気が満ち溢れ出し過ぎてオレの前でシャドーボクシングのような動きを始めました。
クライヴです。
リアナがショーンに負けじとオレの目の前で素振りを始めました。二人とも「フンフン」うるさいです。
クライヴです。
奥の方を見ると先輩達がちょっとオシャレして両手を繋いでニコニコと階段を降りて行きました。
オレも平和なそっちに行きたいです。
クライヴです。
オレも二人に街の散策を提案しましたが、「あの公園で手合わせか?」と全く話が通じないです。
……………………こうしてオレは二人に引きづられて食堂に向かった。
オレ達のテーブルはリアナとショーンのみテンションが高く、オレは朝食の味も覚えていない…………
(いかんいかん、気分が滅入ってる……こんな時は楽しい事を考えよう。楽しく過ごすにはどんな事があるかなぁ? お金で苦労せず生きていくには今のお店がベストかなぁ? アネッサに会えたら何の話をしようかなぁ?)
そして現実逃避を続けたオレは気づいた時には、公園の広場に来ていた…………
ショーンが無理言って武器屋さんから借りて来たらしい訓練用の木の武器が入った皮袋を担いで良い汗かいたぜと言いたそうな、そんな顔をしているショーンの目の前にいつの間にかオレは立っていた。
「今日はクライヴが珍しくやる気があるから、最初はクライヴとショーンで手合わせをしようか? 五分で実戦で致命傷となる有効打を一本与えるルールで行うよ。最初はぼくが審判だね」
「えっ、ちょ、待っ」
オレが現実逃避している間に二人に拉致? じゃなくて連れて来られて武器を選ばされていた。
「ワシは大盾と槍じゃ! クライヴは細剣と小盾じゃろ?」
もうショーンの頭の中には【闘う】か【闘わない】ではない。
【クライブが細剣と小盾で闘う】か【クライブが長剣で闘う】の二つしか選択肢を用意してないようだ。
【やらない】と言う言葉は、現在ショーンの頭の辞書に無いようだ……
オレは渋々と長剣を手に持ち不本意だが、ショーンに準備が出来た事を伝えた。
「それでは始め!」
リアナの掛け声とともにショーンは盾を構えたままオレに真正面から突撃して来た。
「うぉりゃぁぁ! 死に晒せやぁぁ!」
ショーンが大声を上げて向かってくるが、そのやる気が満ち溢れ過ぎて何だかテンションがおかしくなっている…………
オレは相手の左側に回り込もうとサイドステップをしたが、ショーンは足を止めてオレの方へ身体を向けて大盾を地面に刺して、その大盾の陰から槍で牽制をしてきた。
「甘いのぉクライヴ」
オレは一旦槍のリーチ外に離れショーンの様子を伺った。
(いくらザックに鍛えられても短期間では、どこかに隙ができるだろう)
「うぉりゃああぁ」
ショーンが同じように大盾を構えてオレに近づき同じ戦法をしてきた。
大盾の陰から槍で足元を狙い突きを放ったが、オレはサイドステップで右に躱した。
するとショーンは大盾から身体を出して、ニヤッと笑みを浮かべてオレの右腕に突きを放った。
「二段突きか!」
オレは剣でやや横に角度を付けた右下方向への左袈裟斬りで槍を右に弾いた。
「クライヴ、ひっかかったな!」
ショーンは勝ちを確信して、弾かれた反動で横方向に身体を回転させて槍を薙ぎ払い、オレの胴体を捉えた……
(ごめんショーン……さすがにコレ喰らうのは痛いから……悪いな)
「【クロノス】」
オレだけの一秒半の奇跡、百分の一の世界。
時間の概念を無視した神秘的な空間。
オレはショーンとの間合いを詰めて、槍の柄の辺りを剣の柄で防ぎながら首筋に剣を軽く当てた。
「うぉぉ何じゃ!」
ショーンは幻を見たかのようにとても驚き、尻もちをついた。
「勝負あり! クライヴの勝ち」
「ちょ、今のは驚いただけじゃ!」
ショーンは納得しておらず、リアナが説明をした。
「ショーン! 君の攻撃は槍の根本、いや柄の部分、しかもクライブの柄に防がれている。実戦で柄での攻撃を直撃とはいかずに胴体に当たったとしても致命傷とは言えない。
対するクライヴはショーンに密接して槍での攻撃の威力を下げるだけでなく、首に剣を当てている。これが実戦ならショーン……君は致命傷どころでなく命を失っているはずだ」
リアナに言われて、ショーンは目に涙を溜めながら悔しがっていた。
オレは【クロノス】の反動で息を切らしながら何度も心の中でショーンに謝っていた…………
(あまりにも強烈な一撃だったからズルしてゴメン)
「今回は絶てぇ勝てると思うてたんじゃけどなぁ。まさかあの攻撃を避けられるとは普通ありえまあ……ザック先生に鍛えてもろうたのに……」
余程の自信があったのかショーンはまだ立ち直れず尻もちの姿勢から後ろに大の字で寝転がった。
オレは息を整えてからショーンの近くでしゃがみ込み、芝生上に胡座をかいて少し後に両手をついた。
「まさか、あの素人のショーンがここまで上達しているとは驚いたよ。次は負けるかも知れないし、それぐらいの僅差だと思うよオレは」
オレは笑い顔を浮かべながらも真っ直ぐとショーンの目を見て、慰めではなく真実を述べた。
ショーンもそんなオレの言葉に対して照れ臭そうな表情をしていた。
「わかっとるわぁ! 次はワシが勝つんじゃ!」
(よし! 拳で語り合う熱き友情的な良い感じで締めたぞ。さぁ帰ろうか)
そんな事を考えていたオレに、身体をプルプルと振るわせる人がいた………………そうリアナだ。
「ありがとう。忘れかけていた騎士道精神を気付かせてくれて……ぼくは二人の正々堂々の闘いに感動したよ」
リアナの表情は喜びで満ち溢れていた。
志望校に合格したような、好きな人に告られたような? とにかくこんなに嬉しそうなリアナは珍しかった………………だがオレは【クロノス】というある意味チートな力で正々堂々とは言えなかったので、心がグサッと痛かった……
(それと一つだけリアナに言いたい貴女の騎士道精神とは一体何なんだ? 忘れたり、急に言葉に出したり……そもそも最初は弱気者を守るとか、その為勇気を出して立ち向かうとか、そんな感じな事言ってなかったっけ?)
「さぁクライヴ、次はぼくの番だね?」
「えっ? 何で? 痛いのは嫌だから止めようよ」
オレはリアナの言葉に理解が追いつかず脊髄反射レベルで手合わせを断っていた。
「フフフッ面白い冗談だね。ぼくでは相手にならないと……そう捉えて良いのかな?」
リアナは大きな勘違いをしていた。
オレは本当に闘いたくないだけで、そう心に思っていたのが言葉に出ただけの事を、リアナは実力不足と言われたと思ったのか、より一層リアナの表情が引き締まり、精神統一なのか剣を構え呼吸を整えていた。
(これ絶対、闘うしか選択肢が無いじゃん。いつも考え方の違いでケンカばかりしてるくせに何でこんな時だけこの二人は考えがピタリと合うんだよ)
オレは、またため息を吐いて長剣を構えた……
オレが衣服を乾かしたせいで、鎧の中のインナーとして着ている冒険者用の衣服を着ていました。
おかげでリアナとショーンに勘違いされてしまいました。
クライヴです。
リアナとショーンが走って行って戻って来たと思ったら二人とも冒険者用の衣装に着替えてました。
オレは全くそんなつもりないのに……
クライヴです。
二人が朝から稽古だと言っています。
オレは帰って来たばかりで疲れてるので午前中はゆっくり休みたいです。
クライヴです。
二人が午後から冒険者協会に行こうと言っています。採取依頼を受けようと鼻息が荒いです。
クライヴです。
二人がオレの話を聞いてくれません。
クライヴです。
オレの衣装を見て勘違いしたショーンが、やる気が満ち溢れ出し過ぎてオレの前でシャドーボクシングのような動きを始めました。
クライヴです。
リアナがショーンに負けじとオレの目の前で素振りを始めました。二人とも「フンフン」うるさいです。
クライヴです。
奥の方を見ると先輩達がちょっとオシャレして両手を繋いでニコニコと階段を降りて行きました。
オレも平和なそっちに行きたいです。
クライヴです。
オレも二人に街の散策を提案しましたが、「あの公園で手合わせか?」と全く話が通じないです。
……………………こうしてオレは二人に引きづられて食堂に向かった。
オレ達のテーブルはリアナとショーンのみテンションが高く、オレは朝食の味も覚えていない…………
(いかんいかん、気分が滅入ってる……こんな時は楽しい事を考えよう。楽しく過ごすにはどんな事があるかなぁ? お金で苦労せず生きていくには今のお店がベストかなぁ? アネッサに会えたら何の話をしようかなぁ?)
そして現実逃避を続けたオレは気づいた時には、公園の広場に来ていた…………
ショーンが無理言って武器屋さんから借りて来たらしい訓練用の木の武器が入った皮袋を担いで良い汗かいたぜと言いたそうな、そんな顔をしているショーンの目の前にいつの間にかオレは立っていた。
「今日はクライヴが珍しくやる気があるから、最初はクライヴとショーンで手合わせをしようか? 五分で実戦で致命傷となる有効打を一本与えるルールで行うよ。最初はぼくが審判だね」
「えっ、ちょ、待っ」
オレが現実逃避している間に二人に拉致? じゃなくて連れて来られて武器を選ばされていた。
「ワシは大盾と槍じゃ! クライヴは細剣と小盾じゃろ?」
もうショーンの頭の中には【闘う】か【闘わない】ではない。
【クライブが細剣と小盾で闘う】か【クライブが長剣で闘う】の二つしか選択肢を用意してないようだ。
【やらない】と言う言葉は、現在ショーンの頭の辞書に無いようだ……
オレは渋々と長剣を手に持ち不本意だが、ショーンに準備が出来た事を伝えた。
「それでは始め!」
リアナの掛け声とともにショーンは盾を構えたままオレに真正面から突撃して来た。
「うぉりゃぁぁ! 死に晒せやぁぁ!」
ショーンが大声を上げて向かってくるが、そのやる気が満ち溢れ過ぎて何だかテンションがおかしくなっている…………
オレは相手の左側に回り込もうとサイドステップをしたが、ショーンは足を止めてオレの方へ身体を向けて大盾を地面に刺して、その大盾の陰から槍で牽制をしてきた。
「甘いのぉクライヴ」
オレは一旦槍のリーチ外に離れショーンの様子を伺った。
(いくらザックに鍛えられても短期間では、どこかに隙ができるだろう)
「うぉりゃああぁ」
ショーンが同じように大盾を構えてオレに近づき同じ戦法をしてきた。
大盾の陰から槍で足元を狙い突きを放ったが、オレはサイドステップで右に躱した。
するとショーンは大盾から身体を出して、ニヤッと笑みを浮かべてオレの右腕に突きを放った。
「二段突きか!」
オレは剣でやや横に角度を付けた右下方向への左袈裟斬りで槍を右に弾いた。
「クライヴ、ひっかかったな!」
ショーンは勝ちを確信して、弾かれた反動で横方向に身体を回転させて槍を薙ぎ払い、オレの胴体を捉えた……
(ごめんショーン……さすがにコレ喰らうのは痛いから……悪いな)
「【クロノス】」
オレだけの一秒半の奇跡、百分の一の世界。
時間の概念を無視した神秘的な空間。
オレはショーンとの間合いを詰めて、槍の柄の辺りを剣の柄で防ぎながら首筋に剣を軽く当てた。
「うぉぉ何じゃ!」
ショーンは幻を見たかのようにとても驚き、尻もちをついた。
「勝負あり! クライヴの勝ち」
「ちょ、今のは驚いただけじゃ!」
ショーンは納得しておらず、リアナが説明をした。
「ショーン! 君の攻撃は槍の根本、いや柄の部分、しかもクライブの柄に防がれている。実戦で柄での攻撃を直撃とはいかずに胴体に当たったとしても致命傷とは言えない。
対するクライヴはショーンに密接して槍での攻撃の威力を下げるだけでなく、首に剣を当てている。これが実戦ならショーン……君は致命傷どころでなく命を失っているはずだ」
リアナに言われて、ショーンは目に涙を溜めながら悔しがっていた。
オレは【クロノス】の反動で息を切らしながら何度も心の中でショーンに謝っていた…………
(あまりにも強烈な一撃だったからズルしてゴメン)
「今回は絶てぇ勝てると思うてたんじゃけどなぁ。まさかあの攻撃を避けられるとは普通ありえまあ……ザック先生に鍛えてもろうたのに……」
余程の自信があったのかショーンはまだ立ち直れず尻もちの姿勢から後ろに大の字で寝転がった。
オレは息を整えてからショーンの近くでしゃがみ込み、芝生上に胡座をかいて少し後に両手をついた。
「まさか、あの素人のショーンがここまで上達しているとは驚いたよ。次は負けるかも知れないし、それぐらいの僅差だと思うよオレは」
オレは笑い顔を浮かべながらも真っ直ぐとショーンの目を見て、慰めではなく真実を述べた。
ショーンもそんなオレの言葉に対して照れ臭そうな表情をしていた。
「わかっとるわぁ! 次はワシが勝つんじゃ!」
(よし! 拳で語り合う熱き友情的な良い感じで締めたぞ。さぁ帰ろうか)
そんな事を考えていたオレに、身体をプルプルと振るわせる人がいた………………そうリアナだ。
「ありがとう。忘れかけていた騎士道精神を気付かせてくれて……ぼくは二人の正々堂々の闘いに感動したよ」
リアナの表情は喜びで満ち溢れていた。
志望校に合格したような、好きな人に告られたような? とにかくこんなに嬉しそうなリアナは珍しかった………………だがオレは【クロノス】というある意味チートな力で正々堂々とは言えなかったので、心がグサッと痛かった……
(それと一つだけリアナに言いたい貴女の騎士道精神とは一体何なんだ? 忘れたり、急に言葉に出したり……そもそも最初は弱気者を守るとか、その為勇気を出して立ち向かうとか、そんな感じな事言ってなかったっけ?)
「さぁクライヴ、次はぼくの番だね?」
「えっ? 何で? 痛いのは嫌だから止めようよ」
オレはリアナの言葉に理解が追いつかず脊髄反射レベルで手合わせを断っていた。
「フフフッ面白い冗談だね。ぼくでは相手にならないと……そう捉えて良いのかな?」
リアナは大きな勘違いをしていた。
オレは本当に闘いたくないだけで、そう心に思っていたのが言葉に出ただけの事を、リアナは実力不足と言われたと思ったのか、より一層リアナの表情が引き締まり、精神統一なのか剣を構え呼吸を整えていた。
(これ絶対、闘うしか選択肢が無いじゃん。いつも考え方の違いでケンカばかりしてるくせに何でこんな時だけこの二人は考えがピタリと合うんだよ)
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