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第一章 王国編第一部(初等部)
エピソード82 君の影を追って
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この数日間生誕祭の盛り上がりにも慣れて、外の騒がしさも気にせず朝ゆっくり目覚める事ができた。
生誕祭も残り半分だが、正直オレはもう飽きていた……後は最終日の池飛び込みだけしか興味がない。
オレは今日一日何をしようか考えながら着替えていると、扉を強くノックする音が聞こえた。
オレは急いで着替えているのだが、ノックの音は鳴り止まない……むしろどんどん速くなり、もはや両手で連打しているぐらいのノックスピードだ。
こんな事をする人間は、いやハーフエルフは一名しか知らない……
「どうぞ」
オレの返事とともに勢いよく扉は開かれた。
「ちょっとアンタ! 遅いわよ! さっきからノックしているでしょ!」
今日のフィーネさんは朝からご機嫌斜めらしい……
(まぁ、でも勝手に部屋に入って来なかっただけでも進歩してるかな……)
「どうしたフィーネ? 何かあった?」
「…………ね…………のよ」
フィーネは俯いてボソボソ何かを言っていた。
「えっ? フィーネ聞こえないんだけど」
オレが聞き返すと顔を上げて泣きたいのか怒ってるのかわからない表情をしていた。
「もうお金が無いのよ! 買い物ができないのよ!」
(それって八つ当たりでは無いでしょうか?)
「うーん…………それじゃ、一度みんなに聞いてからだけど、生誕祭にハッピースマイルポテイトンを開店する?」
オレも退屈していたし、フィーネの所持金も気になっていたので働く方が気が紛れるかも知れない。
そして、食堂にみんなが集まった時に相談した。
「せっかくの生誕祭だからハッピースマイルポテイトンを再開して、多くの人に知ってもらおうと思うんだけど、みんなの都合はどうかな?」
オレの提案にショーンが反応した。
「すまんクライヴ。ワシは池の土台作りの手伝いがあるけぇ」
ショーンは最終日まで予定が埋まっているとの事だった。
「ボクは特に予定も無いから大丈夫だよ」
「ぼくも昨日フィーネと用事も済ませたから問題ないよ」
モーガンとリアナは協力できると言ってくれた。
後は、もう一人聞いとかないと…………
「という事でショパンさん。どうでしょうか?」
オレ達は朝食後にショッパーニ商会に行き、ショッパーニさんにショパンさんと話をしたい旨を伝えて、ショパンさんに生誕祭でハッピースマイルポテイトンを多くの人に知ってもらう為にお店を開ける事を説明した。
生誕祭というショッパーニ商会も大忙しの中で申し訳ないが、ショッパーニさんは快くショパンさんを送り出した。
「クライヴ殿、私の事は遠慮せずにショパンを馬車馬の様に働かせても大丈夫ですよ。ハッハッハ」
ショッパーニさんは笑っているが、オレは苦笑いを浮かべた。
(ブラック企業じゃないから……)
そして、時刻は九時半。
「クライヴ殿! 準備は整っています」
ショパンさんの日頃の手入れによって、準備はスムーズに行えた。
「それでは、今回はショーンがいないので、モーガンは表で宣伝係で、ショパンさんは会計お願いします。リアナはモーガンとショパンさんの補助で、フィーネは新しくなったガーデンエリアの所とオレの補助でいきます。
目標タイムは三時間目指しましょう! ランチ時間には終わりたいから」
「「「了解」」」
「わかりました」
約二週間振りの開店で、客足が気になるが……
やはり最初は侯爵家の馬車が停まった……
(どこで情報を仕入れてるんだ? 気づくの早すぎだろ!)
大量のテイクアウトの注文により、さっそくフィーネに補助に入ってもらった。
(もうね、嬉しい悲鳴ですがアレですよ。ジャガイモを揚げる油の匂いで胸焼けです…………)
やっと大量注文を終えると、やはりアリア様とその護衛達のイートイン用の注文がすかさず入る!
(ヒャッホウ! オレに休みはないぜ! コンチクショー)
あまりにも大量にジャガイモの皮剥きと揚げる作業で集中するあまり、オレは変なゾーンに入ってしまった。
そしてショパンさんの元へ届けるようフィーネに言付けて、オレはまだまだゾーン状態なので、ポテト作りの全工程を一人で行っていた…………
「アレ? 何でオレこんなに作ってんだ?」
ゾーンが解けると目の前には紙袋に入ったフライドポテトが五十個あった……
取り敢えずオレはフィーネを呼びに行こうとキッチンの部屋から出て店舗内を見渡すと、テラス席でアリア様と仲良く談笑をしているフィーネを見つけた。
(さすがに戻って来いとは言えないなぁ……)
オレはフィーネに頼るのを諦めて、リアナに事情を説明して販売を催促して欲しいと伝えて、リアナはすぐにモーガンの所に向かい事情を説明してくれて二手に分かれて宣伝をしてくれた。
モーガンとリアナの頑張りが五分後に反映されて、沢山お客さんが流れてきた。
全てジャガイモを揚げ終えたオレもショパンさんの会計の補助に入り、お客さんを捌いていた……その時!
店舗内でオレより少し歳上の女学生の二人組の話にオレは動揺した。
「さっき大通りにいた黒髪のボブヘアーの子ってさぁ。あんた男の子と思って話しかけたじゃん。男装した女の子だったから私も凄く恥ずかしかったわよ」
ドクン! 本当に胸の鼓動が大きく聞こえるような錯覚に陥った。オレは居ても立っても居られず、本能の赴くまま店を飛び出していた。
(アネッサがいる! この王都に!)
「クライヴ殿!」
ショパンさんの驚き声に、フィーネが気づき店外に出て行こうとするオレを呼び止めた。
「クライヴ! どうしたの?」
フィーネも初めて見るオレの突然の行動に驚いていた。そして、フィーネの後を追うようにアリア様もフィーネの元へ駆けつけていた。
「フィーネ悪い。急用ができた。ショパンさんが困っていたらフォロー頼む」
オレはそれだけ伝えて大通りに向かって走った。
「一体なんなのよ!」
後ろから聞こえるフィーネの声に振り向く事なく、ひたすら走り続けた。
大通りに着いたオレは息切れをしながらも色々なお店に入り、店員さんにアネッサの特徴を伝えたが、手がかりを得る事は出来なかった。
(残る場所は公園か……)
屋台の人にもアネッサの特徴を伝えたが、やはり手がかりを得る事が出来なかった…………
(冷静に考えろアネッサとは限らない……もしかしたら人違いかもしれない…………)
オレは走り続けた疲労と期待していた分なかなか見つからない焦りや悲しみに足が止まってしまった。
そして、広場から少し離れたショーンにハントチェンジを試した場所に大の字で寝転がってやり場のないこの気持ちを鎮めてから、みんなの元に帰ろうと思った。
もし王都で会えたら、お互い今までの出来事を語り合ったり、一緒にお店を回ったりと考えていた…………
「何やってんだオレは…………」
オレの心とは裏腹に雲一つない透き通った青空に向かって呟いた。
(みんなに迷惑かけたし、そろそろ戻らないと……)
そう思い起きあがろうとした時、大の字で青空を見ていたオレは黒いボブヘアーの影に青空を遮られた。
顔がハッキリと見えないが、オレは無意識で言葉を発した。
「アネッサ? アネッサなのか? オレだよスコットだよ!」
生誕祭も残り半分だが、正直オレはもう飽きていた……後は最終日の池飛び込みだけしか興味がない。
オレは今日一日何をしようか考えながら着替えていると、扉を強くノックする音が聞こえた。
オレは急いで着替えているのだが、ノックの音は鳴り止まない……むしろどんどん速くなり、もはや両手で連打しているぐらいのノックスピードだ。
こんな事をする人間は、いやハーフエルフは一名しか知らない……
「どうぞ」
オレの返事とともに勢いよく扉は開かれた。
「ちょっとアンタ! 遅いわよ! さっきからノックしているでしょ!」
今日のフィーネさんは朝からご機嫌斜めらしい……
(まぁ、でも勝手に部屋に入って来なかっただけでも進歩してるかな……)
「どうしたフィーネ? 何かあった?」
「…………ね…………のよ」
フィーネは俯いてボソボソ何かを言っていた。
「えっ? フィーネ聞こえないんだけど」
オレが聞き返すと顔を上げて泣きたいのか怒ってるのかわからない表情をしていた。
「もうお金が無いのよ! 買い物ができないのよ!」
(それって八つ当たりでは無いでしょうか?)
「うーん…………それじゃ、一度みんなに聞いてからだけど、生誕祭にハッピースマイルポテイトンを開店する?」
オレも退屈していたし、フィーネの所持金も気になっていたので働く方が気が紛れるかも知れない。
そして、食堂にみんなが集まった時に相談した。
「せっかくの生誕祭だからハッピースマイルポテイトンを再開して、多くの人に知ってもらおうと思うんだけど、みんなの都合はどうかな?」
オレの提案にショーンが反応した。
「すまんクライヴ。ワシは池の土台作りの手伝いがあるけぇ」
ショーンは最終日まで予定が埋まっているとの事だった。
「ボクは特に予定も無いから大丈夫だよ」
「ぼくも昨日フィーネと用事も済ませたから問題ないよ」
モーガンとリアナは協力できると言ってくれた。
後は、もう一人聞いとかないと…………
「という事でショパンさん。どうでしょうか?」
オレ達は朝食後にショッパーニ商会に行き、ショッパーニさんにショパンさんと話をしたい旨を伝えて、ショパンさんに生誕祭でハッピースマイルポテイトンを多くの人に知ってもらう為にお店を開ける事を説明した。
生誕祭というショッパーニ商会も大忙しの中で申し訳ないが、ショッパーニさんは快くショパンさんを送り出した。
「クライヴ殿、私の事は遠慮せずにショパンを馬車馬の様に働かせても大丈夫ですよ。ハッハッハ」
ショッパーニさんは笑っているが、オレは苦笑いを浮かべた。
(ブラック企業じゃないから……)
そして、時刻は九時半。
「クライヴ殿! 準備は整っています」
ショパンさんの日頃の手入れによって、準備はスムーズに行えた。
「それでは、今回はショーンがいないので、モーガンは表で宣伝係で、ショパンさんは会計お願いします。リアナはモーガンとショパンさんの補助で、フィーネは新しくなったガーデンエリアの所とオレの補助でいきます。
目標タイムは三時間目指しましょう! ランチ時間には終わりたいから」
「「「了解」」」
「わかりました」
約二週間振りの開店で、客足が気になるが……
やはり最初は侯爵家の馬車が停まった……
(どこで情報を仕入れてるんだ? 気づくの早すぎだろ!)
大量のテイクアウトの注文により、さっそくフィーネに補助に入ってもらった。
(もうね、嬉しい悲鳴ですがアレですよ。ジャガイモを揚げる油の匂いで胸焼けです…………)
やっと大量注文を終えると、やはりアリア様とその護衛達のイートイン用の注文がすかさず入る!
(ヒャッホウ! オレに休みはないぜ! コンチクショー)
あまりにも大量にジャガイモの皮剥きと揚げる作業で集中するあまり、オレは変なゾーンに入ってしまった。
そしてショパンさんの元へ届けるようフィーネに言付けて、オレはまだまだゾーン状態なので、ポテト作りの全工程を一人で行っていた…………
「アレ? 何でオレこんなに作ってんだ?」
ゾーンが解けると目の前には紙袋に入ったフライドポテトが五十個あった……
取り敢えずオレはフィーネを呼びに行こうとキッチンの部屋から出て店舗内を見渡すと、テラス席でアリア様と仲良く談笑をしているフィーネを見つけた。
(さすがに戻って来いとは言えないなぁ……)
オレはフィーネに頼るのを諦めて、リアナに事情を説明して販売を催促して欲しいと伝えて、リアナはすぐにモーガンの所に向かい事情を説明してくれて二手に分かれて宣伝をしてくれた。
モーガンとリアナの頑張りが五分後に反映されて、沢山お客さんが流れてきた。
全てジャガイモを揚げ終えたオレもショパンさんの会計の補助に入り、お客さんを捌いていた……その時!
店舗内でオレより少し歳上の女学生の二人組の話にオレは動揺した。
「さっき大通りにいた黒髪のボブヘアーの子ってさぁ。あんた男の子と思って話しかけたじゃん。男装した女の子だったから私も凄く恥ずかしかったわよ」
ドクン! 本当に胸の鼓動が大きく聞こえるような錯覚に陥った。オレは居ても立っても居られず、本能の赴くまま店を飛び出していた。
(アネッサがいる! この王都に!)
「クライヴ殿!」
ショパンさんの驚き声に、フィーネが気づき店外に出て行こうとするオレを呼び止めた。
「クライヴ! どうしたの?」
フィーネも初めて見るオレの突然の行動に驚いていた。そして、フィーネの後を追うようにアリア様もフィーネの元へ駆けつけていた。
「フィーネ悪い。急用ができた。ショパンさんが困っていたらフォロー頼む」
オレはそれだけ伝えて大通りに向かって走った。
「一体なんなのよ!」
後ろから聞こえるフィーネの声に振り向く事なく、ひたすら走り続けた。
大通りに着いたオレは息切れをしながらも色々なお店に入り、店員さんにアネッサの特徴を伝えたが、手がかりを得る事は出来なかった。
(残る場所は公園か……)
屋台の人にもアネッサの特徴を伝えたが、やはり手がかりを得る事が出来なかった…………
(冷静に考えろアネッサとは限らない……もしかしたら人違いかもしれない…………)
オレは走り続けた疲労と期待していた分なかなか見つからない焦りや悲しみに足が止まってしまった。
そして、広場から少し離れたショーンにハントチェンジを試した場所に大の字で寝転がってやり場のないこの気持ちを鎮めてから、みんなの元に帰ろうと思った。
もし王都で会えたら、お互い今までの出来事を語り合ったり、一緒にお店を回ったりと考えていた…………
「何やってんだオレは…………」
オレの心とは裏腹に雲一つない透き通った青空に向かって呟いた。
(みんなに迷惑かけたし、そろそろ戻らないと……)
そう思い起きあがろうとした時、大の字で青空を見ていたオレは黒いボブヘアーの影に青空を遮られた。
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