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第一章 王国編第一部(初等部)
エピソード89 生誕祭ラスト
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時刻は正午、もうそろそろ昼食の時間だが飛び込みはまだまだ続いている。
オレ達は屋台でそれぞれ食べたい物を買ってきて、みんなでシェアをして腹を満たした。
池の飛び込みイベントは夕方まで続くと実況と解説をショーンが行ってくれている。
ショーンはどうやら三歳の頃から池の飛び込みイベントを見てきたそうで、挑戦者一人一人の詳細な情報と技と難易度も教えてくれた。
「クライヴ! 次のアイツは危険じゃ! 毎年閃きが凄いんじゃ!」
ショーンは興奮しているが、オレは別の意味で興奮した…………その挑戦者はオレの知り合いだからだ。
「てゃんでぇい! ふてぇ野郎どもだなぁ。コイツが新作ってぇもんだ!」
そう匠だ! 正直言って各職種の作業着を着ていないと判別つかない。それぐらい匠達の顔は似ており、喋り方も江戸っ子だ…………
匠はマントのような物を羽織り、助走をつけている!
そして飛び込み台ギリギリの所で大きく前方へ飛びながら頭を前にして身体を水平にしようとした。
その時、マントは両手で握り、マントの裾は……何と靴の踵に引っ付いていた。
その姿はまるでムササビ! 高度は低いが、スピードを殺さずに緩やかに水面に向かっていた。
記録は…………何と十一メートルと本日の新記録だった。
「べらんめえ! 一昨日きやがれってんだ!」
観客達のスタンディングオペレーションにも動じず、匠は【まだまだ改良して来年またくるぜ】と背中で語りながら去っていった。
「スゲェ! なんじゃアレ! 今回も見たことねぇ物を使って飛ぶけぇ、アイツのアイデアの量は危険じゃ、やっぱスゲェわ」
ショーンは大盛り上がりだが、何だろう……飛び込みはコレじゃない感は? 前世の水泳の飛び込みとは別もので、これは鳥人間コンテストの方が近いイベントだった。
続いての挑戦者は三人組だが、二人はムキムキだが、一人は細身の男性だった。
「ここからが本番じゃ! まずは昨年の二位からきたんじゃのう」
ショーンは手に汗を握りしめ説明をしてくれた…………
だがオレはそれよりも、十五時という時間帯でオヤツをつまんで、お腹がいっぱいになったので眠たくなってきた…………
そして飛び込みのイベントの方は、どうやらムキムキ二人が飛び込み台のギリギリで向かい合うように片足を木の板につけて、お互いの両手をしっかりと支えるようにしていた。
その二人の手に向かって細身の男性が助走してきて、片足がムキムキ達の手に包まれた瞬間!
ムキムキ達は立ち上がり両手に乗った細身の男性の片足を天高くに突き上げた。
細身の男性はその反動を利用して大きくジャンプした。
しかし角度が上手く合わず、前方よりも上方向への力が強くなり過ぎたのか、あまり飛距離は伸びず九メートルという結果に終わった。
「くそぉ! 何でじゃ! こんなはずじゃなかろう!」
ショーンは頭を抱えて絶叫を上げていたが、オレはそこまで熱くなれず、むしろ人の力を借りていたて飛び込んでいた事に疑問を感じていた。
「ショーン? あの人は人の手を借りて飛んでたぞ。あれはルール違反にはならないのか?」
オレはショーンに説明を求めて聞いてみた。
「クライヴ、何言っとるんじゃ! ルールなんかあるわけなかろう! 飛び込む方法は自由じゃ!」
ショーンは真顔で答えていた。
(いやいや、ルール作れよ! そのうち怪我人出るって!)
オレはショーンのルールが無い発言に衝撃を受けていると、次の挑戦者が来た。
少し大きめな長さのある荷車を持った屈強な衛兵が鎧を脱ぎ捨て、飛び込み台の先に見える池をただ一点だけ見つめており、かなり集中している様子だった。
オレはその荷車が邪魔にならないのか少し疑問に思ったが、何と挑戦者は荷車を前にして押しながら助走をしていた。
「いやいやオカシイだろ! 何のための荷車?」
オレはこの光景に我慢できずツッコミを入れた。
「クライヴ、見てみい! ここからじゃ!」
ショーンは挑戦者の荷車を指差してオレに言った。
すると! どんどん加速する挑戦者はそのまま力一杯荷車を前方へ押した。
(えっ? 意味わからないんですけど、もう人じゃなくて荷車が飛んでいったんですが……)
荷車は飛び込み台を離れて空中で放物線を描いていた……が! なんと荷車の中から隠れていた細身の男性が立ち上がり、タイミングを見計らい荷車が池に落ち込む前に荷車を踏み台にしてジャンプした。
飛距離こそ七メートルだったが、まさかの荷車に人が隠れていたサプライズ演出に会場のボルテージは一気にマックスとなり、歓声で鳴り止まない。
その大きな歓声は会場を包む木々達の葉っぱを揺らし鳥達が空へ羽ばき、空からオレ達のいる飛び込み会場の様子を見ているようだった。
そしてオレはショーンの方へ振り向くと、そこには涙を溜めてガッツポーズをしながら雄叫びを上げているショーンがいた…………
「モーガン、リアナ……オレだけなのかな?
全然感動しなくて、むしろ違和感を感じてツッコミをしてしまうのは…………」
オレはショーンを見てから、すぐにモーガン達の方へ振り向いて質問した。
「ボクはよく分からないけど、笑えて楽しければ良いかなって思うようにしているよ」
モーガンも感動はしないようだった……
「クライヴ、生誕祭だから人それぞれの祝い方があるんだろう。ぼくはこのイベントが貴族のようにパーティーを開いたりドレスを着てダンスをするよりも、楽しくて、挑戦する人も観戦する人もみんなが笑っている姿が素晴らしいと思わないかい?」
リアナは貴族ならではの考え方でオレに伝えくれ、その考え方は少し納得できた。
その後の挑戦者は、たぶんこの飛び込みでは本来一般的な方法であろう走り幅跳びのように飛び込む人が多かったが、匠の十一メートルの記録を破る人はいなかった…………
そしてついに夕方を迎える事、前回のチャンピオンが登場した。
ごく普通の神父様に見えるが、その隣には鉱山作業員一名だけが立っていた。
「クライヴ! 目ぇ逸らすんじゃねぇ! おかしかろうこの二人がチャンピオンなんじゃ! 絶てぇ驚くけえ!」
ショーンは憧れのヒーローを見るように神父様に応援しながら手を振っている。
(そんなに凄いのか? 新譜の跳躍力がずば抜けているのか?)
神父様と作業員が踏み台を歩く度に歓声が大きくなっていくが、神父様は全く表情を変える事なく集中しているようだった。
そして飛び込み台の中心と池の間で立ち止まり、神父様は神に祈りを捧げていた。
会場は静寂に包まれて、神父様の祈りが徐々に大きくなり会場中に響き渡っていた…………別の意味で………………
なんと! 作業員が突然神父様の両脚を掴みジャイアントスイングをしている。神父様は少し顔が強張っているが祈りを捧げている。
しかし声がスイングスピードとともに絶叫に変わっていった……
そして大きく放たれた神父様は、スピードを保ったまま見事な放物線を描いて行き【主よ我を守りたまえアーメン】と声が聞こえた後にかなり鋭角に着水した。
何と……記録は……四十メートル……ぶっちぎりの一位だ!
神父様は気絶しているのか池に浮かんだままだが、会場は大盛り上がりで、何故か観戦者も池に飛び込んでいる……側転しながらとか、バク転してながらとか、二回捻りを加えてとか………………
オレは観客達の方が華麗に飛び込みしているぞ……と思いながら、この光景をただただ眺めていた…………
オレ達は屋台でそれぞれ食べたい物を買ってきて、みんなでシェアをして腹を満たした。
池の飛び込みイベントは夕方まで続くと実況と解説をショーンが行ってくれている。
ショーンはどうやら三歳の頃から池の飛び込みイベントを見てきたそうで、挑戦者一人一人の詳細な情報と技と難易度も教えてくれた。
「クライヴ! 次のアイツは危険じゃ! 毎年閃きが凄いんじゃ!」
ショーンは興奮しているが、オレは別の意味で興奮した…………その挑戦者はオレの知り合いだからだ。
「てゃんでぇい! ふてぇ野郎どもだなぁ。コイツが新作ってぇもんだ!」
そう匠だ! 正直言って各職種の作業着を着ていないと判別つかない。それぐらい匠達の顔は似ており、喋り方も江戸っ子だ…………
匠はマントのような物を羽織り、助走をつけている!
そして飛び込み台ギリギリの所で大きく前方へ飛びながら頭を前にして身体を水平にしようとした。
その時、マントは両手で握り、マントの裾は……何と靴の踵に引っ付いていた。
その姿はまるでムササビ! 高度は低いが、スピードを殺さずに緩やかに水面に向かっていた。
記録は…………何と十一メートルと本日の新記録だった。
「べらんめえ! 一昨日きやがれってんだ!」
観客達のスタンディングオペレーションにも動じず、匠は【まだまだ改良して来年またくるぜ】と背中で語りながら去っていった。
「スゲェ! なんじゃアレ! 今回も見たことねぇ物を使って飛ぶけぇ、アイツのアイデアの量は危険じゃ、やっぱスゲェわ」
ショーンは大盛り上がりだが、何だろう……飛び込みはコレじゃない感は? 前世の水泳の飛び込みとは別もので、これは鳥人間コンテストの方が近いイベントだった。
続いての挑戦者は三人組だが、二人はムキムキだが、一人は細身の男性だった。
「ここからが本番じゃ! まずは昨年の二位からきたんじゃのう」
ショーンは手に汗を握りしめ説明をしてくれた…………
だがオレはそれよりも、十五時という時間帯でオヤツをつまんで、お腹がいっぱいになったので眠たくなってきた…………
そして飛び込みのイベントの方は、どうやらムキムキ二人が飛び込み台のギリギリで向かい合うように片足を木の板につけて、お互いの両手をしっかりと支えるようにしていた。
その二人の手に向かって細身の男性が助走してきて、片足がムキムキ達の手に包まれた瞬間!
ムキムキ達は立ち上がり両手に乗った細身の男性の片足を天高くに突き上げた。
細身の男性はその反動を利用して大きくジャンプした。
しかし角度が上手く合わず、前方よりも上方向への力が強くなり過ぎたのか、あまり飛距離は伸びず九メートルという結果に終わった。
「くそぉ! 何でじゃ! こんなはずじゃなかろう!」
ショーンは頭を抱えて絶叫を上げていたが、オレはそこまで熱くなれず、むしろ人の力を借りていたて飛び込んでいた事に疑問を感じていた。
「ショーン? あの人は人の手を借りて飛んでたぞ。あれはルール違反にはならないのか?」
オレはショーンに説明を求めて聞いてみた。
「クライヴ、何言っとるんじゃ! ルールなんかあるわけなかろう! 飛び込む方法は自由じゃ!」
ショーンは真顔で答えていた。
(いやいや、ルール作れよ! そのうち怪我人出るって!)
オレはショーンのルールが無い発言に衝撃を受けていると、次の挑戦者が来た。
少し大きめな長さのある荷車を持った屈強な衛兵が鎧を脱ぎ捨て、飛び込み台の先に見える池をただ一点だけ見つめており、かなり集中している様子だった。
オレはその荷車が邪魔にならないのか少し疑問に思ったが、何と挑戦者は荷車を前にして押しながら助走をしていた。
「いやいやオカシイだろ! 何のための荷車?」
オレはこの光景に我慢できずツッコミを入れた。
「クライヴ、見てみい! ここからじゃ!」
ショーンは挑戦者の荷車を指差してオレに言った。
すると! どんどん加速する挑戦者はそのまま力一杯荷車を前方へ押した。
(えっ? 意味わからないんですけど、もう人じゃなくて荷車が飛んでいったんですが……)
荷車は飛び込み台を離れて空中で放物線を描いていた……が! なんと荷車の中から隠れていた細身の男性が立ち上がり、タイミングを見計らい荷車が池に落ち込む前に荷車を踏み台にしてジャンプした。
飛距離こそ七メートルだったが、まさかの荷車に人が隠れていたサプライズ演出に会場のボルテージは一気にマックスとなり、歓声で鳴り止まない。
その大きな歓声は会場を包む木々達の葉っぱを揺らし鳥達が空へ羽ばき、空からオレ達のいる飛び込み会場の様子を見ているようだった。
そしてオレはショーンの方へ振り向くと、そこには涙を溜めてガッツポーズをしながら雄叫びを上げているショーンがいた…………
「モーガン、リアナ……オレだけなのかな?
全然感動しなくて、むしろ違和感を感じてツッコミをしてしまうのは…………」
オレはショーンを見てから、すぐにモーガン達の方へ振り向いて質問した。
「ボクはよく分からないけど、笑えて楽しければ良いかなって思うようにしているよ」
モーガンも感動はしないようだった……
「クライヴ、生誕祭だから人それぞれの祝い方があるんだろう。ぼくはこのイベントが貴族のようにパーティーを開いたりドレスを着てダンスをするよりも、楽しくて、挑戦する人も観戦する人もみんなが笑っている姿が素晴らしいと思わないかい?」
リアナは貴族ならではの考え方でオレに伝えくれ、その考え方は少し納得できた。
その後の挑戦者は、たぶんこの飛び込みでは本来一般的な方法であろう走り幅跳びのように飛び込む人が多かったが、匠の十一メートルの記録を破る人はいなかった…………
そしてついに夕方を迎える事、前回のチャンピオンが登場した。
ごく普通の神父様に見えるが、その隣には鉱山作業員一名だけが立っていた。
「クライヴ! 目ぇ逸らすんじゃねぇ! おかしかろうこの二人がチャンピオンなんじゃ! 絶てぇ驚くけえ!」
ショーンは憧れのヒーローを見るように神父様に応援しながら手を振っている。
(そんなに凄いのか? 新譜の跳躍力がずば抜けているのか?)
神父様と作業員が踏み台を歩く度に歓声が大きくなっていくが、神父様は全く表情を変える事なく集中しているようだった。
そして飛び込み台の中心と池の間で立ち止まり、神父様は神に祈りを捧げていた。
会場は静寂に包まれて、神父様の祈りが徐々に大きくなり会場中に響き渡っていた…………別の意味で………………
なんと! 作業員が突然神父様の両脚を掴みジャイアントスイングをしている。神父様は少し顔が強張っているが祈りを捧げている。
しかし声がスイングスピードとともに絶叫に変わっていった……
そして大きく放たれた神父様は、スピードを保ったまま見事な放物線を描いて行き【主よ我を守りたまえアーメン】と声が聞こえた後にかなり鋭角に着水した。
何と……記録は……四十メートル……ぶっちぎりの一位だ!
神父様は気絶しているのか池に浮かんだままだが、会場は大盛り上がりで、何故か観戦者も池に飛び込んでいる……側転しながらとか、バク転してながらとか、二回捻りを加えてとか………………
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