臆病者の転生ヒストリア〜神から授かった力を使うには時間が必要です〜

たいらくん

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第一章 王国編第一部(初等部)

エピソード111 いざシェリダン子爵領

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 多分これは夢を見ているのだろう。

 気づけばオレは虹色の蝶が飛びかい、様々な光を放つ花達に囲まれた暗い森の中いた。
 オレはその森の中の明るく輝く庭園のような場所に寝転んでいた。
 ゆっくりと起き上がり辺りを見渡すと、黒髪のボブヘアーに半袖の白い襟付きシャツと黒色七分丈のズボンの子が森の奥に向かい歩いていた。
 オレは確信を持ってその子の跡を追って行く!

「アネッサ! 待ってくれ! オレだよ!」

 するとオレの呼びかけに応えるようにこちらを振り向き笑顔で手を振っている。
 そこにはオーシャンブルーの瞳をした綺麗な顔立ちをしたアネッサがいた……
 オレと同様に少し成長したのか僅かに背も伸びていた。

(あれ? どこかで見た事あるような? 思い出せない……)

 そしてすぐにアネッサはオレに背を向けて森の奥に消えていった…………

「待ってくれ! アネッサ! 君に伝えたい事があるんだ! アネッサァァ!」

「アネッサ、アネッサ! うるさいわよ!」

「グフォォォ……」

 どうやらオレはフィーネの肘が鳩尾にクリーンヒットしたようで悶絶しながら目を覚ました……

「何ニヤニヤしたり、寝言で叫んでるのよ! 本当に気持ち悪いわね」

(あぁここは現実のようだ……この痛み、この罵倒…………)

 気が付けば、オレは木陰で仰向けに寝ていた。
 フィーネに状況を説明してもらうと、あの後テリー様とジェイミー様が手合わせをしてたそうで、案の定ジェイミー様はボコボコにされて機嫌を損ねて屋敷に帰ったらしい。
 テリー様は現在目の前で護衛兵達に混じって訓練をしている。
 テリー様はオレが回復した事に気づくと、こちらに歩いてきた。

「クライヴ大丈夫か?」

「はい、少し眠たいぐらいです」

「ハハ、そんな事が言えるなら大丈夫だね」

 オレとテリー様が話をしていると一人の護衛兵にがオレ達の元に駆け寄ってきた。
 そしてテリー様は護衛兵に頷いた。

「はい! こちら小金貨五枚になります」

 護衛兵はそう言ってオレに皮袋を渡した。

「これは、冒険者崩れと依頼達成の分だよ。彼らをあのまま野放しには出来ないから、罪人として牢屋に閉じ込めているよ。その後は父上と話し合いになるが、一生鉱山で過ごす日々になるかな」

 テリー様は爽やかな笑顔でさらりとエゲツない事を言っていたが、オレは聞いていない振りをして褒賞金を素直に受け取った。

 そしてランパード家の皆様に挨拶を済ませて、夕方前にシェリダン子爵領行きの乗り合い馬車に乗った。
 約三日間のシェリダン子爵領への旅は思わぬ報酬で懐も温まった分、行きよりもプチ贅沢を楽しむ事ができた。 
 明日にはシェリダン子爵の町に到着する予定だ。

「ねぇクライヴ? クライヴが住んでいる町ってどんなところなの?」

 フィーネはソワソワしながらオレに聞いてきた。

「そうだなぁ。都市という程大きくはないかな。田舎の割と大きな町と言う言葉が一番しっくりするんだ。どこの通りに行くのも町の教会が目印になっているんだ。この教会が少し特殊で教会としての役割以外に井戸水の輸送や冒険者協会のような事等もしているんだ」

「へぇ……何と言うか、大変そうね神父さんが……」
 
「そうなんだよ! 最初はそんな事なかったけど、入学金を稼ぐ為に、神父様を巻き込んで色々と事業をやらかしてしまってさぁ……シェリダン様も面白そうな事はやってみよう! そんな考えをする領主なんで…………まぁ見てみたらわかるよ」
 
「フフッ……アンタに鎖をつけてないと何を仕出かすが分からないもの。町のみんなに同情するわ……」

 フィーネは溜め息を吐いてオレを見ているが、オレは町が少しでも活気が出るようにと思って行動した事なので少しだけフィーネの言葉にムッとした。

(なんか問題児扱いだけど、町を見たらフィーネもわかってくれるはずだ)

 そして早朝になって町が見えてきたが、太陽の光が眩しくてオレは目を逸らした……
 そして馬車が少しずつ町に近づくと、オレの表情は驚愕に変わった。

 ランパード辺境伯領方面と街道で繋がっている町の西側の入り口の門には以前のキャッチコピーの【水の精に守られた神の雫に出会える町】と刻まれているのかと思っていたが……
 【水神の雫と神の子の奇跡により守られた町】と刻まれていた。
 まさかの門の上には龍と子どもとシェリダン様の石像がこれでもかとインパクトを放ち飾られていた……
 誇張したキャッチコピーと成金の趣味のような石像…………
 一体どこが田舎の割と大きな町なんだとフィーネのジト目に耐えながら、オレは何事も無いように町を案内した。

「まずはオレのお気に入りの場所を紹か…………」

 オレは言葉に詰まってしまった……
 驚きで開いた口が塞がらなかった。

 教会の脇道を登ると大木のある丘にがあり、そこは下町の景色を見渡せるオレのお気に入りスポットなんだが……
 教会が大変な事になっていた。
 確かに教会のはずなんだが……
 教会が魔改造されていて、まず驚いたのは教会が二つあり、その全く同じ作りの教会達が合体していた。そして次にその教会の外側に工場と大きな倉庫がくっついており、教会の反対側には特産品・生活品販売店と書かれた大きなお店が建てられていた。

 もうオレはここから見る下町の景色が変わってしまい寂しさを感じた。
 そんなオレの心に反比例するように教会の建物がかなり主張をして景観を邪魔をしていた……

 他の場所も以前と少し変わってしまい、西側には旅行者を対象とした宿場や定食屋や商店等がかなり増えていて、騒がしい声が聞こえてくる……

 東側では街道沿いの宿場がなくなっており、街道沿いまで住宅街が広がっていた。かなり人口が増えたのだろうか、このエリアも騒がしくなっている…………

 そして教会から南側は商業区となっていたが、市場に活気はなく、様々な雑貨を販売している露店ののみしか見当たらなかった。

 露店の店主に聞いてみると、食料品やその他生活に必要なものは全て教会に併設してある特産品・生活品販売店に移ったとの事だった…………

「全然聞いてたのと違うけど?」

 オレが嬉しそうに話していたシェリダンの町の情報とはかけ離れた騒がしい町がそこには広がっていた……

「オ、オレも何が何やら…………とりあえず実家を案内するよ……」

「え、ちょ、その、アタシ、臭くない? 大丈夫かな?」

 フィーネは実家と言うワードに反応して頬を赤くして焦り出した。

「全然気にならないけど、これを渡すから風の精霊にこの香りを包んでもらったら」

 オレは実家用に花屋で購入した百合の花束の中きら一本取り出し、フィーネに渡した。
 フィーネはシルフにお願いをして香りを纏わせてもらっていた。
 品種によって違うのかフィーネからは甘さ控えめな清楚な香りがしていて、フィーネの顔は自信に満ち溢れていた。

(男っていつまで経っても女心がわからないなぁ)

 オレはそんな事を思いながらフィーネと一緒に実家へ向かった。
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