臆病者の転生ヒストリア〜神から授かった力を使うには時間が必要です〜

たいらくん

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第一章 王国編第一部(初等部)

エピソード? リアナサイド 前編続き

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 クセ毛と言うよりも見た事がない程の凄いクセ毛? にサイドの髪が刈り上げている部分とその上から髪が覆い被さっている……奇抜と言うか個性的と言うのだろうか?    
 見た事ない髪型をした男の子がこちらを見ていた。服装からして平民だと思うが、私の見る平民達はもっと落ち着いた短い髪型が殆どだったと思うが……

 平民であろう男の子が、ぼくを不思議そうに見ているので何かが付いているのだろうか? 
 恥ずかしい事だが急いで家を飛び出したからそれも仕方ない。

「ん? ぼくの顔に何かついてるかい」
 
  ぼくは彼に聞いてみると彼は恐縮して話しかけてきた。

「私の名前はクライヴと申します。先程はすみませんでしたヘンダーソン様。まさか貴族の方が入寮するとは思いませんでしたので少々驚きました」

 なんと平民でぼくの同じぐらいの歳なのに礼節をわきまえているとは……個性的な髪型をしている事で人ととなりを決めつけてしまった……ぼくはまだまだ平民の事を知らないようだ。騎士を志す人間として守るべき者達を知らぬとは恥ずべき事だ。
 しかしこのクライヴと言う彼は高い教養を持っているようで、貴族への対応も慣れているとは……

「止めてくれ、ぼくは騎士になる夢があるのだが、父上に反対されて勘当された身なんだ。だから家を出て来たので気軽にリアナと呼んでくれないか? それに同じ学院に入学するルームメイトではないか? 言葉を崩してくれると嬉しいんだが」

「わかったよ、よろしくリアナ。他の二人を紹介するよ」

 そう言ってクライヴは二人の女の子を紹介してくれた……のだがプラチナヘアーの整った顔立ちの女の子が突然ぼくに勢い良く話しかけてきた。

 フィーネという女の子はぼくの事をカッコいい? 騎士みたい? と言ってくれた。
 まさかこんなすぐに騎士みたいとぼくの一番嬉しい言葉を言ってくれるなんて……思った事を口にする子なのだろうか、フィーネは元気で人懐っこい性格でとても好感が持てた。

 もう一人の女の子はモーガンと言うらしい。モーガンも上級貴族のような品の良さを感じる。
 見た目は褐色の肌にシルバーブロンドのショートボブで笑顔が可愛らしい女の子だが、何故名前が男の子のような名前なのだろうか?

「いや、こちらこそ。使用人がいない環境には慣れておらず、少しわからぬ事があり色々と迷惑をかける事が多いと思うがよろしく頼む」
 
 そしてフィーネに引っ張られて、ぼくは部屋を選びに三階に向かった。
 しかしモーガンは何故かついてこずクライヴと話をしていた。
 
「モーガン、どうしたんだい? 三階に上がらないのかい?」
 
 するとモーガンは苦笑しながらぼくに説明をした。

「背も低いし、声も高いからよく間違えられるんだけど、ボクは男だからクライヴと同じ二階のエリアに住んでるんだよ。でも言われ慣れているから気にしなくて良いよ」

 まさかモーガンが男の子とは…………
 なんたる失態をしてしまったんだ…………
 ぼくはモーガンを傷つけてしまったのではないだろうか……騎士を志す者としてあるまじき行為だ!

「すまない! ぼくが勝手に勘違いしてしまい、モーガンに不快な思いをさせてしまって……せめてもの償いとして、ぼくに出来る事があれば何でも言ってくれたまえ!」

 クッ! 自分が情けない! ぼくはまたも人を見た目で判断してしまった…………
 
 その後はフィーネに三階に行って部屋を決めようと催促されて、正直フィーネに助けられた……

 そしてフィーネと三階に行くと、どの部屋も同じ作りになっていた。

「リアナ。ここはどの部屋も同じ作りなんだって、どの部屋にする? ちなみにアタシはこの部屋なんだよ」

「ふむ、そうだなぁ。せっかくこうしてフィーネ達に出会えたのも何かの縁だろう。ぼくはフィーネの向かい側の部屋にするよ」

「やったー! これからよろしくねリアナ」

「フフッ……ああ、こちらこそよろしくフィーネ」

 ぼくの事を騎士みたいと初めて言ってくれたフィーネとは、とても話しやすくてすぐに仲良くなった。

 部屋が決まったので、ぼくは荷物を下ろして部屋に整理していった。

「これは!」

 皮袋の中身を整理していくと、入れた覚えのないヘンダーソン家の家紋入りの剣が紐で縛っている皮袋に入っていた。

「誰が……もしかしてレベッカお姉様が……」

 家出をする前に装飾品を売りに行った時に、ぼくの部屋にお父様を通さないように使用人には伝えていた……もし入れるとすればレベッカお姉様しかいない…………
 この剣は…………レベッカお姉様からのいつでも帰れる場所を用意していると言う意味とぼくの小さい頃から夢だった騎士を目指す事を応援するという意味が込められているのだろう。

「フフッ……こんなぼくに優しく手を差し伸べるのが、やはりレベッカお姉様だなぁ。ぼくは立派な騎士になってからヘンダーソン家に行きお父様と話をしよう……それまでは絶対に帰らない」

 この家紋入りの剣はぼくのそんな意志表示の為に部屋の壁に立てかける事にした。
 後は……シンプルなチュニックとズボンのみと割とシンプルな衣類とお母様の形見のネックレスけだけなので部屋の整理に時間はかからなかった。

「リアナ? フィーネだけど入ってもいい?」

「ああ。もう部屋の整理は終えたのでいつでもどうぞ」

 ぼくは扉を開けてフィーネを招き入れた。

「ええぇ! ちょっと何もないじゃない。服も男の子っぽいし、せっかくスタイル良いのに勿体ないよ」

 まさかのフィーネからの第一声がダメ出しとは……まぁでもその素直さが心地良いな。

「期待はずれな部屋だろう。ぼくは小さい頃から騎士になるのが夢なんだ。だからドレスを着飾ってパーティーに出るよりも護衛兵達と一緒に汗水流して訓練をする方が好きなんだ。その為どうしても服装が男性っぽい物になってしまうんだよ」

「じゃあ今度買いに行こうよ。一着ぐらい必要だしアタシもパーティーとかマナーとかよく分からないからリアナが教えてよ」

 こんなにもグイグイと来るのにぼくは慣れているないので、フィーネの熱意に負けて「分かった」と返事をしてしまった…………騎士に二言はない!  
 必ず約束は守らねば!

「じゃあ、アタシはクライヴ達を呼んでくるね」

「えっ? ちょ、ちょっと待ちたまえフィーネ」

 ぼくが顔を上げてフィーネに声をかけたが…………既にそこにはフィーネは存在しなかった……開かれた扉がゆっくりと閉まった。

 その後すぐに三人達がやってきた。
 みんなシンプルと言っているが、そもそも女子の部屋に男子が入ってくるのはどうかとおもうのだが……平民では当たり前の事なのだろうか?

 そんな疑問だらけの中、みんなで夕食に行く事になったが、そこでも衝撃を受けた!
 な、な、な、なんと言う事なんだ! メニューが全く分からないとは…………
 ぼくはフィーネに合わせてキノコと豆のパスタを食べる事にした。

 そして夕食後にそれぞれ明日の予定について話をした。どうやらみんな今日色々と家具や生活必需品を買いに行っていたらしく、明日も買い物に行くのはと話をしているが、ぼくに気を遣ってくれているのだろう。

「ぼくは特に買い足すようなものはないかな」

 ぼくがそう言うと、モーガンがみんなで親睦深める為にランチはどうかと、みんなが納得する提案をした。
 モーガンは周りの空気を読んで会話をコントロールするのに長けているのだな。
 
 フィーネは相変わらず天真爛漫と言うか素直な発言をして、クライヴはお金の事を気にしていた。
 王立学院初等部は平民が通えると言っても、入学金の小金貨二枚は平民にとって大金なのだろう。

 するとモーガンが、日々の生活や二年後の王立学院中等部の入学金の事も考慮して冒険者協会に登録して自分達でできる依頼を調べてみようと提案した。
 なるほど! 確かに冒険者として腕を磨き、高等部卒業後に騎士団の入団試験を受けるのが騎士になる為の一番の近道ではないか! つい笑みが溢れてしまう。

「フフ、腕鳴らしにいいな」

「良いねぇ! これでランチ代を稼ぐぞぉ!」

 みんなもワクワクしているようだが、フィーネはランチ代目的とフィーネならではの考え方をしていた。

 しかしクライヴが水を差すような発言をした。

「まぁ、危なくないんだったらオレも賛成するよ。討伐依頼とか痛いのは勘弁してくれ」

 何を言っているんだクライヴは! 自分の身を守る術を身につけるのは当たり前ではないのだろうか? その為には多少は痛い目をするのが成長に繋がるのではないか?

「クライヴ! 男なのに何を情けない事を言っているのだ! 王都は治安が良いが、他の街やその街道等危険はいくらでもあるんだぞ! 自分の身を守る術を身につけないと、他の人を危険に晒す事にも繋がるんだぞ! その為まずは一つ一つ自分達の力量の範囲で己を高める事も必要じゃないか! 君はそういう事も考えての発言なのか!」

「リアナ、クライヴはそんな奴じゃないよ! アタシを命懸けで守ってくれたもん!」

「ボクもフィーネから話を聞いたけど、あんまりクライヴは自分の事話したがらないから誤解されやすいんだ。さっきの発言もみんなの事を思っての発言だと思うよ」

 フィーネとモーガンがクライヴを庇っているが、どうしてもぼくの心がモヤモヤとする。こんな冷静になれない人間が騎士になれるのか? ぼくは一度頭を冷やしてクライヴに謝った。

「そうとは知らずクライヴすまなかった。ぼくは少し冷静さを欠いていたようだ。これではまだまだ騎士の道は遠いな」

 そしてモーガンの案で午前中は自由行動となったが、フィーネがお金を持っていないのだろうか? 何かソワソワとしていた。
 もしお金が無いのなら、ぼくが少し渡してもいいのだが、初対面の人間からお金を渡されるのはフィーネにとって重荷にならないのだろうか?

「フィーネ! オレが出すから良いよ。だからその作戦で決定で」

 クライヴが即座にフィーネを助けていた。先程はクライヴの事を悪く言ってしまったが中々男らしい所があるじゃないか…………ん? もしかして二人はお付き合いをしているのだろうか?
 まぁ二人の恋路も気になるが……明日は冒険者協会に行くので、念の為に二つの剣の手入れをしておこう。

 しかしそんな事より、この食堂は何であんなわかりにくいメニュー名なのだろうか…………………
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