臆病者の転生ヒストリア〜神から授かった力を使うには時間が必要です〜

たいらくん

文字の大きさ
161 / 228
第一章 王国編第二部(中等部)

エピソード133 悪い予感

しおりを挟む
「クライヴ、かなり遅くなったんだね? お茶会はそんなに話が弾んだの?」

「あぁ……ちょっとその後鍵を返しに行って先生と話し込んでたんだよ……」

「にしても遅かろうが。ワシとモーガンはクライヴを待っとったけぇなぁ。腹が空いたんじゃ」

 モーガンとショーンは不思議に思っているかも知れないが、二人とも深く聞いてくる事は無かった。

「オレもお腹空いたからちょっと遅めの夕食に行こうか」

 オレはそう言って、二人と一緒に食堂に向かった。
 食堂は夕食のタイミングをずらせたお陰が人が少なく、オレ達は【ナンってこった! 豚息子ポークがこんな可憐カレーな子を連れてくるとは!】と言うメニュー名のポークカレーを注文した。
 すると何故が料理長は先程のニヤケ面から一変して修羅の如くコックさん達に厳しい指導をされていた。

 そしてオレ達はポークカレーを受け取ると空いている席を探そうとした時に遠くの方からオレ達を呼ぶ声が聞こえてきた。

「お~い、こっちこっち、クライヴ、モーガン、ショーン」

 オレはキョロキョロと機嫌の良い声のする方へ見渡しそちらに進んでいたはずなんだが…………どうやら声の主に似た別の女子生徒の元へ行こうとしていたらしく、主はいつものツンが出てきた。

「アンタ! 聞こえてるでしょ! どこ行ってんのよこの変態! アタシが呼んでるんだから来なさいよ!」

(これである…………変態呼ばわり、そしてすぐ来なさいの犬扱い………………)

 オレは方向転換して怒りの主フィーネの元へ辿り着くことに成功した。
 そこには夕食を済ませたフィーネとリアナとクラリネさんが歓談して過ごしていた。

「みんなどうしたの? もしかしてボク達のせいかな?」

 そうモーガンが言うと、リアナが神妙な顔つきで話し始めた。

「あぁ……それもあるのだが、少し気になる噂を耳にしたのだが…………高等部の先輩に平民嫌いな先輩がいるらしくて、その先輩に関わった平民はみんな辞めていっているんだ。
 フィーネやクラリネに気をつけて欲しいと話をしていたんだよ。それでクライヴ達にも伝えないといけないと思ってみんなを待っていたんだ」

(へぇーこの学院でそんな事があるんだ。そんな事をしたら、その先輩って停学や退学とか何らかの処分があるだろう……)

「なんじゃそれ、ムカつく奴じゃのぉう」

「ショーンさん。あまり大きな声で言うと誰が聞いているか分かりませんよ」

「お、おぅ……」

 クラリネさんからのツッコミでショーンは少し驚いていた。

(仕方ないよショーン…………君の役割だよ)

「しかし見過ごせない事だね。学院側の対応はどうなっているんだろうか……流石にお咎め無しではなさそうだけどね」

「まぁオレ達は関わらないように気をつけないとな。リアナはヘンダーソン子爵の娘だし、フィーネはアリア様と友達だから、オレとモーガンとショーンとクラリネさんは気をつけないとね」

 暗くなりそうな話しをオレは笑顔で締めくくり、食堂から出ようとした。食器を片付けてそれぞれ各部屋に帰る中、オレは食堂の椅子にまた座って少し先程の話を考え込んでいた。

(今日のカーン達の出来事と繋がりが? いや流石にそれはないか……カーンとは初等部から一緒だが貴族との知り合いは居なかったと思うし……)
 
 そんな考え事をしていると突然フィーネがやってきた。
 フィーネは怒っているかのような心配しているかのようなそして少し泣き出しそうな……何と表現すれば良いのか分からない表情でオレに話しかけた。

「アンタ何で遅れたのよ! さっきアリアに聞いたんだけど、アンタが帰ってくるのがアリアが帰ってきてからかなり時間が経っていたらしいんだけど! アリアも驚いていたわ。
 クライヴ何を隠しているの? アタシには言えない事なの?」

(何で今日に限り、勘がいいんだよ! でも本当のことは言えないし……かと言ってモーガン達のように濁す事は出来なさそうだし…………)

「実は……内緒だったんだけど…………フィーネって四月一日生まれだろ…………本当は入学式の日にと思っていたけど、まだ誕生日プレゼントを探せていなくて学生通りの雑貨屋さんに少し立ち寄って何かないか探していたんだ…………せっかくサプライズしたかったのに…………」

「え? ひゃ、そ、そ、それならちゃんと言いなさいよ! じゃなくって……あ、その、あ、アンタが、内緒にしな、え? アタシが聞いたから……そ、そんな嬉しい事を、を……そんな事聞いても嬉しくないわ……違う……あの、その、えっと………………ぁりがとぅ………………」

 オレの嘘によってフィーネの顔を真っ赤になりポンコツ化してしまったがオレはフィーネに寮に戻ろうとエスコートして、オレも自室に戻った。

(あ、ぶなかったぁ! でも嘘がバレずに良かったぁ……フィーネさんチョロイーネには申し訳ないが打たれ弱いおかげで助かった……)

 そして平穏な日々が続いていた。カーンはニヤニヤとオレを見ていたが…………
 だが事件は週末の放課後、廊下で起きた。
 クラリネさんが男子生徒達に絡まれている!
 近づいてみると周りの学生は見て見ぬ振りをしており、クラリネさんは怯えて座り込んでいた。

「ふん! 薄汚い平民がこの美しい私に、いや美しさを引き立てるこの服になんて事をしてくれたんだい。弁償してもらうよ、勿論この服代の金貨二枚を明日までに用意するんだね。本当に穢らわしい」

 そうクラリネさんに吐き捨てるのは一組のモースト様で、ボールトン伯爵家の次男だった。
 そして周りの取り巻きはカーンと、もう一人はオレを痛めつけた生徒だ。

(カーン…………そんな事をしていると…………一年生中で嫌われるぞ…………)

 オレは騒動に巻き込まれたくないのと、怖いのでクラリネさんに危ない目にあわなさそうなら出ていく事をしなかった。
 理由は平民が首を突っ込むよりローズ様やアリア様が来てくれたら解決する問題だからだ。
 が……その時オレを痛めつけていた生徒がクラリネさんの三つ編みを引っ張り、クラリネさんは痛みのあまり涙を流していた。

(くそ! 今日に限って何でみんな休日の冒険者協会の依頼に向けて依頼の確認と武器屋さんに行っているんだよぉ)

 オレは見て見ぬ振りをする生徒達をかき分けて、クラリネさんの近くに行き、髪を引っ張る生徒の腕を【身体強化】で少し強く握った。

「痛てててて!」 

 クラリネさんの髪から手を離した生徒はオレを睨んできた。

「どうも、先日はお世話になりました」

 無理だと思うが穏便に済ませないか礼儀正しくお辞儀をしたオレだった……………………
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

元・異世界一般人(Lv.1)、現代にて全ステータスカンストで転生したので、好き放題やらせていただきます

夏見ナイ
ファンタジー
剣と魔法の異世界で、何の才能もなくモンスターに殺された青年エルヴィン。死の間際に抱いたのは、無力感と後悔。「もし違う人生だったら――」その願いが通じたのか、彼は現代日本の大富豪の息子・神崎蓮(16)として転生を果たす。しかも、前世の記憶と共に授かったのは、容姿端麗、頭脳明晰、運動万能……ありとあらゆる才能がカンストした【全ステータスMAX】のチート能力だった! 超名門・帝聖学園に入学した蓮は、学業、スポーツ、果ては株や起業まで、その完璧すぎる才能で周囲を圧倒し、美少女たちの注目も一身に集めていく。 前世でLv.1だった男が、現代社会を舞台に繰り広げる、痛快無双サクセスストーリー! 今度こそ、最高に「好き放題」な人生を掴み取る!

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

処理中です...