【完結】最後にひとついいかな?

金浦桃多

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過去の出来事②

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 その後も、それ程間を空けず「ルナ」からの通知音が鳴り続ける。
 通知音に気づいたのだろう。風呂上がりの空が慌ててスマホをとる。
 
「ルナって誰? ずっと鳴ってたよ。」

 実花は、これはもしかしたら解放されるかもしれないと、先程から考えていた展開へ持ち込もうとした。
 
「る、ルナ?! そ、それは…、」

 珍しく必死で考えを巡らせて焦っている空に、

 (あー、コイツ突発的な事に弱いのかも。)

 と、実花は次のセリフを言おうとした。
 
 その瞬間、今度は空のスマホの電話が鳴る。
 慌てた空は、通話どころかスピーカーにしてしまった。
 天は何処までも実花に味方してくれた。
 
「もぉ~! なんで反応してくれないの?! ルナ、今日はヒマだから、エッチしようって誘ってるのにぃ~!」
 
 空は顔面蒼白で、必死に何か言おうとしていたが、それより早く実花はルナに伝えた。
 
「ルナさん、空はこれから、ずーっとヒマだから、何時でも誘ってあげて下さいね。」
 
「実花? な、ナニ言って…。」

「もう、我慢しなくて良いよね?   空、別れよう。理由は言わなくてもわかるよね? 
 じゃあ、もう連絡してこないで。さようなら。」
「み、実花?」
「え~、修羅場~? ルナ悪くないよね? だって、空ずっと彼女さんの文句言ってたしぃ~。不感症だって。」
「ば、バカ!! ルナ、後でかけるから!」

 帰ろうと準備をしていた実花に、自分でも薄々思っていた言葉を聞かされ、身体が硬直した。

「実花、これは違うんだ! ルナはただの友達だ!」

 実花に近づこうとした空から、一歩後ずさる。

「エッチする友達って、セフレって言わない?
 それに、私に不満があったみたいだし
 ───私も気持ち良く無かったし。
 もう無理だよ。本当に無理。じゃあね! 」

 実花は空の部屋から飛び出ると、真っ直ぐ電車に乗り、父が心配して見つけたセキュリティのしっかりした部屋へと戻った。

 帰ってすぐ、お風呂で普段より念入りに身体を洗い、湯船に浸かった。

「私、別れたことより、不感症って言われてた事にショック受けてる…...。」

 自分で言葉にした事で、より胸に突き刺さって、涙があふれてきた。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「実花? どうした? ……やっぱり、アイツに酷い事言われたんじゃないのか?」

 嫌な過去を思い返していた実花に、玲士は眉間に皺を寄せて覗き込んできていた。

「あ、ごめん。過去の嫌なこと思い出しちゃってた。」

「……そうか。」

 玲士は心配そうにはしているが、それ以上は何も言ってこなかった。

 玲士には空との過去の事を全て話してある。
 逆に実花にも玲士の過去の事を教えてくれた。

 だから二人の間に秘密にしている事はない。
 そして、思った事があれば、お互い溜め込まずに吐き出そうと約束もしている。

 今、実花はとても幸せだ。


 
 
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