【完結】私の可愛いシャラン~夏椿に愛を乞う

金浦桃多

文字の大きさ
28 / 54
ルクスペイ帝国編(シャラン視点)

図書館での出会い

しおりを挟む

 銀髪碧眼の女性は、まじまじとこちらを見た後に、ハッとした様子で、こちらに足早にやって来る。

「───っ! 私は、ヤマティ皇国の華族、公爵家のスズランと申します。
 不躾ではございますが、貴方様のお名前を伺っても宜しいでしょうか?」

 見事なカーテシーで自己紹介され、面を食らったが、ヤマティ皇国と聞いて、僕は興味を持った。

「僕は、プロスペロ王国第三王子シャランです。
 亡き祖母は、ヤマティ皇国の元皇女モクレンです。」

 スズラン嬢は目を輝かせ、嬉しそうにした。

「やっぱり! 私の祖父はシロツバキと申しまして、モクレン様の弟にあたるのです。髪の色と目の色を見た時に、もしかしてと思い、ついお声を掛けてしまいました。」

 意外な繋がりに僕は驚いた。

「では、僕達は、はとこなのですね。」

「はい! お会い出来て光栄です。私は、シャラン殿下の一歳上なのです。シャラン殿下は成人なさったばかりなのですよね?  今、帝国の社交界はミカエル殿下とシャラン殿下のラブロマンスで持ちきりですよ。
 ───安心なさって。ほとんどの皆さまは、好意的に受け取とめております。
 でも一人だけ、気をつけて欲しい方がいらっしゃいますが。」

 一瞬、不安そうにした僕を気遣い、フォローしてくれるスズラン嬢に、信頼しても良さそうな気がした。

「そうだったのですか。……その方とは?」

 何となく気になって聞いてみる。

「もう、卒業しましたが学園に通っていた頃、私も親友も何かと因縁を付けられたので苦手な方なのです。
 ミカエル殿下にご執心でしたし、もしかしたらシャラン殿下にも……と、思いまして。」

 何か思い出したようで、表情が曇った。本当に大変だったようだ。

「───あら? いけないわ。
 図書館で長話を。私ったら失礼致しました。よろしければ今後、仲良くして頂きたいです。
 私、ヤマティ皇国の皇太子殿下シャクナゲ様の婚約者で、あの方ともはとこなのですよ。皇太子妃になったら忙しくなってしまうから、今のうちに外を見ておいで。と、留学をさせてくれたのです。」

 なるほど、僕は頷いた。

「今度、よろしければお茶会でも。二人では外聞が悪いのでもう一人呼びますね。エイデン様はご存知ですよね? あの方の婚約者のミラ侯爵令嬢です。私達、親友なのですよ。」

 にっこり笑うスズラン嬢は、どこか懐かしさを感じさせた。

「ミラ嬢なら、よくエイデンから、惚気け話を聞かされていますよ。」

「うふふ。あの二人も仲睦まじいのよ。では、招待状をお送りします。本当に会えて良かったです。」

「こちらこそ、まだ帝国での知り合いが少ないので楽しみにしてますね。」

 ミカエル様に確認を取っていないが、エイデンの婚約者と一緒なら安心してもらえる気がした。

「それではシャラン殿下、失礼致します。」

 そう言うと、スズラン嬢はその場を後にした。

「ねえ、イノックス。スズラン嬢って、おばあ様と笑顔が似ていなかった?」

 そう聞くと、イノックスは苦笑して答えた。

「私は、シャラン殿下にも似ていると思いましたよ。
 王太后陛下とシャラン殿下は似ておりますから。」

「そうなんだ。」

 僕は少し嬉しくなって、その後の調べ物にも力が入った。天国にいるおばあ様に、恥ずかしくない姿を見せたかったから。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 花言葉
 白椿→「完全なる美しさ」「至上の愛らしさ」
 白スズラン→「純粋な愛」「高潔な美徳」
 シャクナゲ→「危険」「警戒」「威厳」「荘厳」



しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

【完結】マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜

明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。 その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。 ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。 しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。 そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。 婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと? シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。 ※小説家になろうにも掲載しております。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら兄たちに溺愛されました~

液体猫(299)
BL
毎日AM2時10分投稿 【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸に、末っ子クリスは過保護な兄たちに溺愛されながら、大好きな四男と幸せに暮らす】  アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。  巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。  かわいい末っ子が過剰なまでにかわいがられて溺愛されていく──  やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな軽い気持ちで始まった新たな人生はコミカル&シリアス。だけどほのぼのとしたハッピーエンド確定物語。  主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ ⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌ ⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。 ⚠️若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!

処理中です...